平成17年6月14日
18時30分―20時30分
場所:飯倉公館
外務大臣政務官の河井克行でございます。我が国政府を代表して一言歓迎のご挨拶を申し上げます。
生産性に関係する概念は我が国には古くからあり、私たち日本人は子供の頃から、勤勉や、能率的に働くことの大切さを教えられてきました。例えば「早起きは三文の得」といった勤勉さや生産性に関わる諺は、200年も前から今日まで親から子へと連綿と伝えられてきました。また、私が政治家になるべく研鑽を積んだ松下政経塾設立者の松下幸之助氏も、「生産こそ復興の基盤」という理念を掲げつつ戦後日本の経済復興と日本経済の興隆のために献身して参りました。
我が国における生産性運動は本年で50周年を迎えました。私は、戦後、アジア地域が目覚ましい経済発展を達成した要因の一つが、この生産性の向上にあったと確信しています。「KAIZEN(日々の創意工夫の習慣づけ)」や「5S(整理、整頓、掃除、清潔、しつけ)」が日本語のまま今の生産性運動に採用され、アジアの生産性向上にも役立っています。
アジアの生産性は過去数十年で世界のどの地域よりも著しい向上を遂げました。1965年には、アフリカの年間一人当たりGDPは546米ドルだったのに対し、東アジアはたったの157米ドルでした。しかし、2002年には、アフリカの575米ドルに対して東アジアは1,050米ドルと、劇的に状況が変わりました。このアジアの経済発展の過程において、日本政府はアジアの途上国に対して積極的にODAを供与してきましたが、アジアの発展のために、民間企業による投資、貿易、そして、この生産性運動が果たした役割を我々は忘れるべきではありません。
APOは、本年設立44周年を迎えました。APOは各国・地域生産性本部(NPO)とともに、設立以来、加盟各国のアジア・太平洋地域における専門家派遣、各種訓練コースやセミナーの実施など、地道な人材育成の努力を弛みなく続けてきました。
既に5,400件以上の事業を実施し、約43,000名が事業に参加され、参加者の中には現在、政界、産業界等の枢要な地位を占める方も多数いると聞きました。この長きにわたる継続的な事業の実践と成果は賞賛に値します。
APOは、本部こそ日本にありますが、事業の実施は日本のみならず、20の全てのAPOメンバーの生産性本部(NPO)によって実施される事業によって成り立っていると聞いています。こうした事業の実践の中で育まれた各国・地域のNPO間のネットワークは極めて大切なAPOの財産であり、官民協力の成功モデルでもあります。
また、APOが培ってきた知見やノウハウは、アジア以外の国々のためにも貴重なものとなると思います。先立って、アジア・アフリカ首脳会議で小泉総理は、「アジアの発展の原動力となった生産性運動を高く評価するとともに、生産性運動の知見をアフリカに伝播することを我が国として支援する」旨表明いたしました。このようにAPOはアジア人のアジア人による国際協力の組織から、アジア人以外の地球市民のためにも、その活動の器をさらに拡げるよう、期待しています。
最後になりましたが、今回のAPO理事会の東京での開催にあたり、ご尽力頂いた関係者の皆様に謝意を表するとともに、APOとNPOの一層の発展と残り2日間のAPO理事会の大成功をご祈念し、乾杯の音頭をとらさせて頂きます。