平成17年5月11日
於 :国連内デリゲーツ・ダイニング・ルーム
皆様、本日はようこそお集まり頂きました。NPT運用検討会議のこの特別な日に皆様と歓談する機会を得ることができたのは、私にとって大きな喜びです。
最初に、議題がようやく採択されたという良いニュースを皆様と、分かち合うことができたのは、大変喜ばしいことです。これは、最初の一歩ですが、間違いなく歴史的な一歩でもあります。私は、議長とこの会議のすべての参加者に対して、この最初の成果に、深く敬意を表したいと思います。
私は広島の出身です。私は、被爆者の方々に囲まれ、その経験を聞きながら育ちました。私たち日本人、そして広島の人々は、「憎悪の連鎖」に国々を巻き込むのではなく、核廃絶を希求する願いのために、国境を越えて連帯することを選んだのです。このような広島の思いは、日本の核政策にも色濃く反映されています。日本は、核武装する選択肢を放棄することを決定し、非核三原則を堅持してきました。また、国際的な核軍縮努力の先頭に立ってきました。広島で生まれ、広島で選ばれた私にとって、このような広島の声と日本の政策を架橋することこそ使命であると考えます。
我が国は、1994年より毎年国連総会に核軍縮決議案を提出し、圧倒的多数の支持を得てきました。また、「21世紀のための21の措置」を提案しました。この中で、我が国は、全ての核兵器国による全ての種類の核兵器の一層大幅な削減、CTBTの早期発効、FMCT交渉の早期開始等を謳っています。
唯一の被爆国である我が国にとって、広島の悲劇を人類の記憶にとどめることは重要な使命であると考えます。日本は、優先事項の一つである軍縮・不拡散教育を21の措置において提唱しています。日本政府も、若き軍縮問題の専門家を養成するために実施されている国連軍縮フェローシッププログラムに積極的に貢献しています。日本政府は、過去約20年間に5つの大陸、150ヶ国から合計約550名以上の若手外交官を広島及び長崎へ招聘しています。このプログラムに参加した外交官の多くが今回のNPT運用検討会議でも活躍していることに、私は大変感銘を受けました。
外交努力が成果をあげるためには、幅広い市民の支持が不可欠です。本日のNGOセッションも、幅広い市民の声を各国政府に直接届けるための極めて有意義な機会であったと考えます。 軍縮・不拡散分野において市民活動が具体的な成果を生んだ例として、対人地雷禁止条約が挙げられると思います。私自身、昨年12月、ケニアのナイロビで開催された対人地雷禁止条約の第一回検討会議に出席し、対人地雷問題解決のために各国のNGOが多数努力されているのを確認して参りました。核兵器と対人地雷では異なったアプローチが必要と考えますが、NGOの連携が有益であり得ると考えます。軍縮・不拡散を進める上で、それを支持する市民社会の声が推進力になります。
私はこの建物のホールの被爆者の展示から、これらの折り鶴をここに持ってきました。日本の言い伝えによれば、願いを込めながら千羽鶴を折ればその願いが叶えられるといいます。今や、折り鶴は国際的な平和のシンボルです。私は、これらの折り鶴が持つ特別なシンボルとしての意味が、今日、ここに集まった私たち全員に力を与えてくれることを期待します。
私は、核兵器が廃絶され、平和で安全な世界が一日も早く訪れることを願ってやみません。そして、かつて人類は、核兵器という恐ろしい兵器を持っていたのだと、子供たちが歴史の教科書の中でのみ知ることが出来る日が来ることを私は願ってやみません。
ご静聴ありがとうございました。