演説

伊藤外務大臣政務官演説

中央アジア人間開発報告書発表記念シンポジウム
伊藤外務政務官による開会の辞

平成17年12月7日14時30分~14時50分
於:東京ウィメンズプラザホール

(写真)伊藤政務官

ご列席の皆様、

 本日は、我が国とUNDPとの共催により、このシンポジウムを開催できますことを大変うれしく思います。我が国と中央アジアとの間には、1000年以上前からシルクロードを通じて繋がりがあり、中央アジアについて初めて作成された人間開発報告書が東京で発表されるのは、誠に意義深いことです。カルマン・ミジェイ局長をはじめとするUNDPの方々には、本報告書完成に際して心より祝意を表します。

ご列席の皆様、

 1991年末、中央アジアにおいてウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタンという5つの独立国家が誕生しました。独立後、中央アジア諸国は民主化と市場経済導入のための改革に取り組み、成果をあげてきました。一方、この地域においては、依然としてガバナンス、環境、テロ、麻薬犯罪、感染症などの克服すべき課題が多いことも事実です。UNDPの人間開発報告書においては、中央アジアの抱える様々な問題に対処するために地域協力を一層推進すべきことを提唱しています。

 我が国としても、中央アジアの平和と安定がユーラシア大陸全体、ひいては、国際社会の安定と繁栄にとって重要であり、また、同地域からのエネルギー供給が世界エネルギー市場の安定に寄与すると考えており、この観点から中央アジア諸国の地域内協力を支援する方針をとっています。2004年8月に当時の川口順子外務大臣が中央アジア諸国を歴訪した際、我が国の提唱により、「中央アジア+日本」対話の枠組みが立ち上げられました。この枠組みにおいては、麻薬、テロ、環境、エネルギー、水、輸送、貿易・投資等の地域的課題の解決に向けて、中央アジア諸国の地域内協力を奨励するとともに、我が国も触媒としてこれを支援していくこととなりました。これまで我が国は中央アジア諸国に対してインフラ、保健医療、市場経済化など様々な分野における二国間の協力を実施してまいりましたが、今後は「中央アジア+日本」の枠組みの下で地域協力促進のための支援にも取り組んでいく考えです。

ご列席の皆様、

 中央アジアにおいてミレニアム開発目標を達成するためには、地域協力というマクロの視点とともに個々の人間に着目した「人間の安全保障」の視点を踏まえることが極めて重要です。例えば、中央アジア地域の安定と発展を実現するには、貿易・投資を通じた経済成長の実現のみならず、人々の生存や尊厳に影響しうる麻薬犯罪、テロ、感染症といった脅威にも対処する必要があります。「人間の安全保障」は、まさにこうした人々の直面する脅威に対して分野横断的に対処する取組であり、我が国が目指すアプローチです。「中央アジア人間開発報告書」においても、「人間の安全保障」の視点が盛り込まれていることを歓迎します。我が国は従来からUNDPと協力しつつ、「人間の安全保障」の普及のために努力しており、今回の「中央アジア人間開発報告書」の作成についても我が国の「人間の安全保障基金」を通じて支援しています。

ご列席の皆様、

 これまで中央アジアにおける地域協力の進展は、政治的経済的理由により限られたものにとどまっています。今後、中央アジア地域の安定と発展のために地域協力を一層推進するにあたっては、麻薬対策のように協力が可能な分野から一つ一つ実績を積み上げて、協力を拡大していく方法が有効です。本日のシンポジウム及び今回作成された報告書が、中央アジアにおける地域協力の促進に貢献することを期待して、私の挨拶とさせていただきます。

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