平成17年6月27日
於:ニューヨーク
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ピン総会議長、アナン事務総長、ご列席の皆様
まず、本件会合開催の労をとられた総会議長に対し感謝申し上げます。
平和と安全、人権や機構改革の問題とともに、開発はほとんどの加盟国にとって非常に大きな重要性を持っております。9月の首脳会合の成功はミレニアム開発目標及びより広い国際的開発課題に向けどれだけ進展することができるかに大きくかかっています。
議長、
十分な開発資金を確保し、効果をあげるためには包括的なアプローチが必要です。まず何よりもODAの他に途上国において利用可能な資金源も効果的に動員されることが必要です。貿易と投資もまた開発プロセスの成功に必要不可欠な役割を担っています。
まず、ODAに関し、我が国は、1990年代を通じて、唯一援助を増額し世界のODA量の約2割を担ってきた最大のドナー国であります。我が国はMDGsに寄与するためODAの対GNI比0.7%目標の達成に向け引き続き努力します。それを見通し、我が国は今後我が国にふさわしい十分なODAの水準を確保する考えです。我が国のコミットメントについては小泉総理が4月にインドネシアで開催されたアジア・アフリカ首脳会議において表明しました。最近の閣議においてもODAの事業量の戦略的拡充を図ることとされました。
また、アフリカに対しては、今後3年間でODAを倍増し、引き続きその中心を贈与とする考えです。
議長、
貧困削減と欠乏からの自由への戦いの鍵となるのは持続的な経済成長です。そして持続的な経済成長は海外からの援助のみでは、それが如何に寛大な事であっても、達成することが困難です。インフラを含め、投資環境の改善措置は非常に重要です。東アジアの経済発展の成功はこれを証明しています。
東アジアの成功には様々な理由がありますが、最も重要な点は国自身の自助努力があったことです。過去25年間、東アジアが受け取ったODAの総額は他の地域に比べて少なかったにも関わらず、東アジア・大洋州における一人当たりGDPは飛躍的に増加し、実質的な貧困削減に結びつきました。我が国は経済インフラの整備と人材育成を中核とした我が国ODAが東アジアの成功を導いたと自負しております。これは特に円借款について真実です。実際、我が国民間セクターからの直接投資や、その結果引き起こされる輸出や市場機会の増加が東アジアの経済発展に大きく寄与しました。
東アジアにおける発展の経験は、発展の成功がODAのみでなく、基本的に貿易と投資の促進を通じて実現可能であることを示しています。貿易と投資を通じて得られる資金量はしばしばODAよりもはるかに大きくなります。経済成長の促進なしに貧困削減に取り組むことは動力のない船を造ることに等しいとも言えます。そのような船は遠くまで我々を連れていくことはできません。
我が国が1990年代から重視してきたオーナーシップとパートナーシップという2つの概念はモンテレイ合意でも確認されている基本認識であり、これを改めて確認することは重要であります。オーナーシップの概念においては、各途上国は異なる制度政策環境に応じ、現実的な開発目標を貧困削減戦略文書に盛り込み、それらを達成するための政策を着実に実行していくことが必要です。こうした政策にはガバナンスの改善、汚職の排除、制度の強化が含まれます。
議長、
これを念頭において我が国がこれまでMDGs達成に資するため実施してきた努力の例を幾つか挙げたいと思います。
まず、我が国はTICADプロセスを促進してきました。1993年に開始されたTICAD及びこのイニシアティブにおいて実施されているプログラムやプロジェクトは人材育成を含む幾つかの分野でMDGsへの重要な貢献を行っています。2008年にはTICAD IVが開催される予定です。
特に昨年行われたTICADアジア・アフリカ貿易投資会議では、アジア及びアフリカ地域からの参加者がインフラ整備や制度構築による地揚産業の振興の重要性を強調しました。また、市場ニーズの把握や比較優位商品開発の推進のためにお互いに協力することに同意が示されました。また、中小産業の振興についても協力がなされます。
第2に、我が国は先週保健関連ミレニアム開発目標に関するアジア太平洋ハイレベル・フォーラムを開催し、私も参加しました。このフォーラムで我が国は「保健と開発に関するイニシアティブ」の推進を表明しました。これは、開発途上国における個々の人間の保健の改善を重視しています。このようなアプローチは保健分野における人間の能力開発の基礎を築くものであり、MDGsの達成に貢献できるものです。
第3に、多くの途上国にとって農業分野はその開発戦略において重要であります。我が国はこれまで農業分野におけるDAC加盟国によるODA総額の約40%を担ってきました。
アフリカでは、例えば、アフリカ諸国の指導者が農業分野の重要性を改めて確認し、国家予算の少なくとも10%を農業関連分野に配分することをアフリカ連合宣言で公約しました。我が国はこれらの決意を歓迎するとともに、これに応じて、農業試験研究の支援、地方農村開発、農業政策の策定について支援を増加する考えであり、本年2月に表明したアフリカン・ビレッジ・イニシアティブを展開していきます。
また、アフリカが持続可能な貧困削減の達成を支援し、中小産業の発展も含め民間セクターの開発を支援するために、5年間で最大12億ドルに及ぶソフト・ローン融資枠をアフリカ開発銀行とともに開始します。
第4に、我が国は4月のアジア・アフリカ首脳会議において発表された、人材育成及びキャパシティ・ビルディングを目指した「新たなアジア・アフリカ戦略的パートナーシップ行動計画」におけるイニシアティブの実施を支援していくつもりです。我々はアジア太平洋地域には後発途上国、内陸開発途上国、小島嶼開発途上国といった貧しい国が未だ多く存在することを忘れてはなりません。イニシアティブの一つとして我が国は他の関心諸国とともに「アジア・アフリカ開発大学ネットワーク」構想の実現化につき検討していく予定です。
最後に、IFFや国際税などの新たな資金調達メカニズムに過度に焦点をあてることなく、現実的かつ実践的なアプローチを取りつつ、着実な進展を図る必要があります。これらはコンセプトのみならず技術的にも多くの問題を抱えています。すなわち、援助国は各々の制度や状況に基づき各々の能力範囲で適切なイニシアティブを強化していく努力を継続していかなければなりません。
議長、
2005年は、国連改革や開発にとっても重要な年であります。両分野において目に見える成果を出すために努力を惜しむべきではありません。我が国は加盟国、そして議長、ファシリテーター、事務総長の皆様方とともにこれに取り組んでいくつもりです。そして9月の首脳会合が国連と全人類の将来にとって歴史的なものとなることを目指したいと思います。
ありがとうございました。