- 10月1日,国際海洋法裁判所(ドイツ,ハンブルク所在)の裁判官会議において,裁判所長選挙が行われ,我が国出身の柳井俊二(やない しゅんじ)判事が新裁判所長に選出されたことを我が国として歓迎します。
- 海洋における紛争の平和的解決と,海洋分野における法的秩序の発展において国際海洋法裁判所が果たしている役割が益々増大している中で,柳井判事は,同裁判所における我が国出身の裁判官として,これまで6年間にわたり,重要な貢献を行ってきました。柳井判事が,今般,日本人として初の国際海洋法裁判所長に就任したことは,裁判官団の同判事への高い評価を示すものです。我が国出身者が重要な国際機関の長に就くことは、我が国による国際社会への重要な貢献であると考えます。
- 我が国としては,国際海洋法裁判所の活動に引き続き協力し,海洋分野における法的秩序の維持と発展に積極的に貢献していきたいと考えており,柳井裁判所長の活躍に期待すると同時に,可能な限りの支援を行っていきたいと考えています。
- なお,柳井裁判所長の就任により,現在,国際社会で権威のある司法機関において裁判所長を務める我が国出身の裁判官は,国際司法裁判所の小和田恒(おわだ ひさし)所長と並び二人となります。我が国としては,国際社会における法の支配の推進に引き続き積極的に貢献していきたいと考えています。
(参考)
1. 国際海洋法裁判所(ITLOS)
(1)国連海洋法条約に基づき,同条約の解釈・適用に関する紛争の司法的解決を任務として,1996年,ドイツ・ハンブルクに設置された。海洋法の分野において有能の名のある者のうちから,国連海洋法条約締約国によって選挙される全21名の独立の裁判官の一団で構成される。
(2)国連海洋法条約は1994年に発効し,現在の締約主体数は161カ国及び1地域(EU)。我が国は同条約を1996年に批准した。
(3)これまでに19の事案が付託され,9つの判決と5つの暫定措置命令,1件の勧告的意見が下されている。
(4)これまで,我が国は,山本草二判事(任期:1996年10月1日~2005年9月30日),柳井俊二判事(任期:2005年10月1日より9年間)の2名をITLOS裁判官として輩出してきている。
2. ITLOS所長選挙
(1)ITLOSは,裁判官21名により構成される裁判官会議において,3年ごとに裁判所長及び裁判所次長を選挙する(任期は10月1日から3年間,再選可)。選挙は裁判官の互選により秘密投票で行われ,過半数の票を得た者が当選者となる。
(2)今回の選挙では,柳井判事が所長に選出されたほか,ホフマン判事(南アフリカ出身)が次長に選出された。
3. 柳井俊二 ITLOS判事略歴
1937年生まれ。東京大学法学部卒。1961年に外務省入省し,条約局長,総合外交政策局長,外務審議官,外務事務次官,駐米大使等を歴任し,2002年に退官。2005年6月に行われた裁判官選挙においてITLOS裁判官に選出され,同年10月より現職(任期は2014年9月までの9年間)。