国際機関を通じた協力
国際連合大学(UNU)の概要
令和6年2月1日
1 目的と使命
- 国連大学の目的は、国際連合とその専門機関が関心を寄せる「人類の存続、発展および福祉にかかわる緊急かつ世界的な問題」の解決に資する研究を行うこと(国連大学憲章)であり、国連や学術研究者ならびに一般市民に向けてその活動から得た知識の普及を行っている。
- また、国連大学の世界的研究ネットワークに途上国の学者や研究者を率先して参加させ、かれらの知的孤立状態の解消を図る他、能力の育成を行うことも重要な責務としている。
- 基本的機能
- 国連システム全体のシンクタンク
- 学者・研究者の国際的共同体
- 新しい創造的な理念の討論の場
- 途上国をはじめとする能力育成のサポート
- 修士及び博士号の学位授与
2 概要
(1)設立経緯
1969年、ウ・タント国連事務総長(当時)は、国連憲章に合致し、多くの国から集まった教授陣と多くの国々の学生からなる国際的な「大学院大学」の設置を提唱したが、国連総会での議論の結果、国際的な教育・研究機関のネットワークを張り巡らす国連のシンクタンクとして、1972年、国連総会で設立が決議採択され、1975年に東京で活動を開始した。
(2)特徴
- 国連のシンクタンク的存在。
- 本部(東京)と世界各国に位置する研究所やプログラムから成る。
- 主として途上国出身の大学院生や若手の学者・研究者、政策立案者等を対象に、講座、セミナー、ワークショップや専門家とのプロジェクト事業を実施している。
- 2010年から大学院プログラムを開設し、UNU-IAS、UNU-MERIT、 UNU-EHS及びUNU-FLORESにて実施。国連機関等で活躍する人材の輩出を目指す。
- 国連大学の活動はすべて各国政府、公的機関、国際機関、財団等からの任意拠出金によって支えられており、国連の通常予算からは資金提供を受けていない。
国連大学本部
- 本部所在地:渋谷区神宮前5-53-70
(1975年東京・渋谷に暫定本部が開設され、1992年7月より現在の恒久本部施設に移転) - 最高意思決定機関:国連大学理事会(年1回以上開催)
- 個人資格の「任命理事」:12名
- 国連事務総長、UNESCO事務局長、UNITAR事務局長から成る「職務上の理事」:3名
- 国連大学学長
- 学長、国連事務次長(Rector, UN Under-Secretary-General ):チリツィ・マルワラ(Tshilidzi Marwala)
- 上級副学長、国連事務次長補(Senior Vice-Rector, UN Assistant Secretary-General):白波瀬 佐和子
- 学長室長(Executive Officer):サビーネ・ベッカー・ティエリー(Sabine Becker-Thierry)
- 欧州事務所副学長(Vice-Rector in Europe)(ドイツ、ボン駐在):申曉萌(シェン・シャオメン)
研究拠点
国連大学(UNU)の学術研究及び人材育成活動は日本を含む世界各国13の研究拠点によって実施されている。
- サステイナビリティ高等研究所(日本・東京、2014年開設)
UNU-IAS : Institute for the Advanced Study of Sustainability
2014年に「国連大学高等研究所」(横浜、1996年開設)と「国連大学サステイナビリティと平和研究所」(東京、2009年開設)を統合する形で開設。サステイナビリティとその社会的・経済的・環境的側面に注目しながら、政策対応型の研究と能力育成を通じて、持続可能な未来の構築に貢献することを目指す。「持続可能な社会」、「自然資本と生物多様性」、「地球環境の変化とレジリエンス」の3つの分野で先進的な研究手法と革新的なアプローチを使って活動している。さらに、日本やその他の国々の主要大学との緊密な協力のもと、修士・博士課程、ポスドク・フェローシップ、短期コースを提供している。2008年、石川県金沢市にいしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(UNU-IAS OUIK)を開設。 - 政策研究センター(UNU-CPR)(米国・二ューヨーク:2014年開設、スイス・ジュネーブ事務所:2022年開設)
UNU-CPR: Centre for Policy Research - 地域統合比較研究所(ベルギー・ブルージュ、2001年開設)
UNU-CRIS: Institute on Comparative Regional Integration Studies - 在マカオ研究所(中国・マカオ、2015年開設)
UNU Macau - 環境・人間の安全保障研究所(ドイツ・ボン、2004年開設)
UNU-EHS: Institute for Environment and Human Security - 物資フラックス・資源統合管理研究所(ドイツ・ドレスデン、2012年開設)
UNU-FLORES: Institute for Integrated Management of Material Fluxes and of Resources - グローバルヘルス研究所(マレーシア・クアランプール、2007年開設)
UNU-IIGH: International Institute for Global Health - 政策主導型電子ガバナンスに関するオペレーティング・ユニット(UNU-EGOV)(ポルトガル・ギマランイス、2014年開設)
UNU-EGOV: Operating Unit on Policy-Driven Electronic Governance - アフリカ自然資源研究所(ガーナ・アクラ、1986年開設)
UNU-INRA: Institute for Natural Resources in Africa - 水・環境・保健研究所(カナダ・ハミルトン、1996年開設)
UNU-INWEH: Institute for Water, Environment and Health - マーストリヒト技術革新・経済社会研究所(オランダ・マーストリヒト、2006年開設)
UNU-MERIT: Maastricht Economic and Social Research Institute on Innovation and Technology - 世界開発経済研究所(フィンランド・ヘルシンキ、1985年開設)
UNU-WIDER: World Institute for Development Economics Research - 中南米バイオ技術プログラム(ベネズエラ・カラカス、1988年開設)
UNU-BIOLAC: Biotechnology Programme for Latin America and the Caribbean
3 沿革
- 1969年:
- 第24回国連総会でウ・タント事務総長が「国連大学」の設立を提唱
- 1972年:
- 第27回国連総会で国連大学設立決議を採択
- 1973年:
- 第28回国連総会で「国連大学憲章」を採択、大学本部の東京首都圏内設置を決定
- 1975年:
- 東京の「暫定的本部施設」を開設、活動を開始
- 1976年:
- 「国際連合大学本部に関する国際連合と日本国の間の協定」締結
- 1989年:
- 東京青山に「恒久的本部施設」の建設を開始
- 1992年:
- 本部施設完成(6月)、移転(7月)
- 1993年:
- 本部施設開所式
- 1996年:
- 本部施設隣接地に高等研究所(UNU-IAS)開設
- 2004年:
- 高等研究所(UNU-IAS)横浜に移転
- 2009年:
- サステイナビリティと平和研究所(UNU-ISP)開設
- 2010年:
- サステイナビリティと平和研究所(UNU-ISP)において大学院プログラム開設
- 2011年:
- 高等研究所(UNU-IAS)において大学院プログラム開設
- 2014年:
- サステイナビリティと平和研究所(UNU-ISP)と高等研究所(UNU-IAS)が統合し、サステイナビリティ高等研究所開設
4 活動
(1)活動形式
- 学術研究(基礎/応用研究)
- 政策調査/研究
- 大学院レベルの人材育成プロジェクト(修士課程、博士課程、研修プログラム、ワークショップ、フェローシップ/インターンシップ等)
- コミュニケーション、普及、アウトリーチ活動(出版、国際会議・シンポジウムの開催等)
5 予算(2カ年予算、暦年予算)
(1)予算規模
- 2022/2023年
- 1億2700万ドル
(2)日本政府からの拠出等(本部(含むサステイナビリティ高等研究所))
- 外務省
- 2023年1億5,553万円
- 文部科学省
- 2023年 1億3,500万円
- 環境省
- 2023年 3億4,835万円
6 我が国の協力
(1)国連大学基金への拠出(外務省)
公約した1億ドルの拠出を、1985年度までに支払い完了。
(2)「恒久的本部施設」の建設・提供(文部省(当時))
国連との協定により、1989年に着工し、1992年6月30日に完成・引渡し完了。
- 総工費:約120億円
- 位 置:東京都渋谷区神宮前(青山都電車庫跡地の都有地、都が国連大学に無償貸付)
- 規 模:地上14階、地下1階(高さ約65メートル)、延床面積約2万平方メートル
(3)その他
- 「暫定的本部施設」の借上(文科省)
1992年度まで、国連との協定により「暫定的本部施設」(渋谷の「東邦生命ビル」フロアー)を借上(年間約2.5億円)。 - 「恒久的本部施設」の設備・備品の提供(文科省)
協定上の義務ではないが、移転後の円滑な事業実施に資するため、設備・備品の一部を提供(総額約10億円を1991~1993年度に措置) - 情報センター設置に伴う情報機器購入経費等に5千万円拠出(1998年度追加拠出、外務省)
- 1996年に高等研究所(IAS)が設置された。2014年にサステイナビリティと平和研究所(ISP)と統合。関係各省庁は資金協力を実施。
- 国内支援団体としては、公益財団法人国連大学協力会(理事長:小宮山 宏 株式会社三菱総合研究所理事長)及び一般財団法人佐藤栄作記念国連大学協賛財団(理事長:松室 久子)がある。