寄稿・インタビュー

パラグアイと共に次の100年の自由で開かれた国際秩序維持・強化を目指して

令和3年1月8日
パラグアイの皆様、新年明けましておめでとうございます。

2021年の幕開けに、日系人を始めとする両国国民が紡いだ伝統的な絆や深化・拡大を続ける経済関係により、南米有数の親日国と言われるパラグアイを訪問することができ、非常に嬉しく思います。

今回の訪問は、国際会議への参加以外では、日本の外務大臣として初のパラグアイ訪問です。100年以上の外交関係を有する伝統的友好国であるパラグアイと、次の100年に向け、一層の関係強化に向けた新たなページを開きたい、そして「包容力と力強さを兼ね備えた外交」をパラグアイで自ら推進したいと考え、今回の訪問を決めました。

まず、我々を温かく迎えていただいたパラグアイの皆様に心から感謝申し上げます。マリオ・アブド・ベニテス大統領やフェデリコ・ゴンサレス外務大臣と胸襟を開いた率直な意見交換ができることを楽しみにしています。

30年前、この地で貿易投資自由化の先駆的取組であるメルコスールの設立条約が署名されました。その条約が首都アスンシオンの名を冠するのは、パラグアイが自由で開放的な経済政策を高く掲げてきた証左でしょう。

新型コロナが世界的に拡大し、経済及び人々の生活が大きな打撃を受け、国際社会の変動が加速化・複雑化する中、「自由で開かれた国際秩序」を維持・強化していくことは、かつて無いほど重要です。このような中、日本としては、自由、民主主義、法の支配、人権と言った基本的価値を共有し、自由で開かれた経済を掲げるパートナー国であるパラグアイとの関係を幅広い分野において更に強化したいと考えています。

喫緊の課題である新型コロナ対策として、現在パラグアイの保健・医療体制強化のため、3億円の支援を実施しています。同様に世界各国の日系人団体の事業やパラグアイを含む中南米諸国の日系人団体が運営する医療福祉施設等も支援していくことを決定しました。これら支援がパラグアイの新型コロナ対策の一助となれば幸いです。

この他にも、日本はこれまで、パラグアイとの友好関係を強化するために様々な取組を行なってきました。60年以上に及ぶ経済協力は両国の友情を表す有形無形の財産として蓄積され,パラグアイ国民に評価され、強固な二国間関係の土台となっていることは、喜ばしいことです。最近では、従来の開発支援のみならず、新しい分野での交流も進んでいます。例えば、本年、九州工業大学との協力により開発されたパラグアイ初の小型衛星「グアラニーサット」が国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」から放出され、国民の生活向上に役立つ情報収集を行う予定です。

また、日パラグアイ経済関係は近年着実に深化・拡大しています。日本の経済界は、パラグアイの政治・経済の安定、優秀な労働人口、親日的土壌やマキラ制度等の投資優遇措置を好感し、2013年以降の進出企業数は3倍近くになりました。これら進出企業は、雇用創出、技術革新や人材育成等を通じて、パラグアイの経済発展に貢献しています。今次訪問では、この互恵的な経済関係を更に活発化させるべく、アブド・ベニテス大統領、ゴンサレス外相と意見交換したいと考えています。

文化・人物交流も活発です。2019年の外交関係100周年に際しては、両国首脳がロゴマーク除幕式を行い、双方において、合計100以上の記念行事が行われました。日本ではパラグアイ伝統楽器アルパの演奏やニャンドゥティ刺繍の展示会が開催され、パラグアイにおいては「着物ショー」や和太鼓の演奏などが開催され、お互いの伝統文化を楽しむことを通じて、相互理解が深まったことを喜ばしく思います。

また、両国の関係は日系社会なくして語ることはできません。1936年に初めて日本人がパラグアイの「ラ・コルメナ」に移住して以来、85年以上に亘り、両国を繋ぐ架け橋として、日パラグアイ友好関係の土台を築いてきました。

日系人の方々が取り入れた「不耕起栽培」により大豆の生産量が3倍になり、今では大豆がパラグアイの主要産業の一つに成長しました。農業分野のほかにも、政治やビジネス、更には宇宙工学といった先端科学の分野においても、日系人の方々が活躍しております。艱難辛苦を乗り越え、様々な分野においてパラグアイに貢献し、「圧倒的な親日国」となる素地を作った日系人の皆様、そして彼らを温かく受け入れたパラグアイ国民の皆様に敬意と感謝の意を表します。

スポーツに目を転じれば、現在日本では、人類が新型コロナに打ち勝った証、また、東日本大震災からの復興を発信する「復興オリンピック・パラリンピック」として、東京オリンピック・パラリンピックを開催すべく準備を進めています。パラグアイから、初めてパラリンピックにも選手団を派遣すると伺っており、パラグアイにとっても特別な大会となることを期待しています。

今次訪問を契機に、日パラグアイ間の交流と協力が益々促進され、政治・経済・文化・スポーツ等あらゆる分野で、両国を結ぶ友好の絆を更に強化していきたいと思います。
日本国外務大臣 茂木敏充

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