寄稿・インタビュー
上川大臣のG7外相会合出席に際するコリエレ・デッラ・セーラ紙(イタリア)への書面インタビュー
(令和6年4月17日)
「日本の上川陽子外務大臣:私たちは軍事力強化する中国を懸念している。女性にふさわしい役割を与えるために戦う」
「上川陽子外務大臣が語る。カプリで行われるG7外相会合に参加するためイタリアへ。権力の頂点に立つ女性が多くなれば、国際レベルで持続可能な平和に到達するチャンスが増える。」
ゆっくりとした速度ではあるが変わっていく日本の顔である。上川陽子氏(71歳)は、昨年9月より岸田内閣の外務大臣を務める。同氏については、東京の公園で咲く桜の木の下で、日出ずる国の最初の女性総理になるかもしれないとささやかれている。本日よりG7外相会合に出席するためにカプリにいる上川大臣に私たちはインタビューを行った。
(問)日伊関係をどのように評価するか。また、今年2月のメローニ首相の訪日はどのような成果を残したか。
(答)2026年の日伊国交160周年の節目を前に、日伊関係は飛躍的に進展しており、戦略的パートナーとして、各分野において具体的な協力案件が進展している。2025年には大阪・関西万博、2026年にはミラノ・コルティナダンペッツオ冬季オリンピック等の両国で開催されるイベントを通じて、両国の人的交流がより活発になることが期待される。
本年2月のメローニ首相の訪日時には、メローニ首相からG7日本議長年の成果をしっかり引き継ぐ旨発言があり、私自身大変心強く感じた。岸田総理からは、G7プーリア・サミットの成功に向け日本が協力を惜しまないことを伝え、両首脳が緊密に協力していくことを確認できた。
また、二国間関係について、次期戦闘機の共同開発、空母打撃群を含む艦艇の寄港等の安全保障分野、社会保障協定の発効等の経済分野での協力をはじめ、様々な分野で緊密に協力していくことで一致した。
今回のG7外相会談の機会でも、本年のG7の成功に向けてしっかりと議論すると共に、私自身タヤーニ副首相兼外務・国際協力相と連携し、二国間関係を一層促進していきたい。
(問)日本は欧州と同様、外部からの深刻な脅威に対応するため、依然として米国に依存しているが、自らの軍事力を純粋な防衛手段から、同盟国を「支援する」手段に一転することは考えられるか。
(答)我が国周辺には、強大な軍事力を有する国家などが集中し、また北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の透明性を欠いた軍事力の急速な増強など、我が国は、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面している。
この中で、我が国は、2022年12月に策定した国家安全保障戦略等を踏まえ、積極的な外交を展開するとともに、防衛力を抜本的に強化し、米国を始めとする同盟国・同志国等と連携して対応していくことが必要であると考えている。
こうした観点から、我が国としては、日米のいずれかがもう一方に「依存」するのではなく、日米同盟の抑止力・対処力の更なる強化に日米で「共に」取り組んでいくことが必要。そのために、日本の防衛力を抜本的に強化し、その裏付けとなる防衛費の相当な増額を確保するとともに、日米二国間の役割及び任務を深化させ、共同の能力の強化に取り組んでいる。
(問)中国はロシアとともに民主的な西側諸国との対決の道を選んだように見受けられるが、台湾有事等の外交の危機が衝突に発展するのを防ぐため、日本ができることは何か。
(答)我が国は戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に置かれる中、「国家安全保障戦略」に基づき、危機を未然に防ぎ、平和で安定した国際環境を能動的に創出するための力強い外交を展開している。
中国は、国防費を継続的に高い水準で増加させ、十分な透明性を欠いたまま、核・ミサイル戦力を含む軍事力を広範かつ急速に増強させているほか、ロシアとの連携も含め、日本海、太平洋等でも、軍事活動を拡大・活発化させている。
中国に対しては、昨年11月の日中首脳会談を始め、あらゆる機会に中国の軍事的活動についての懸念を直接提起してきている。私(大臣)も、昨年11月の日中外相会談の際に、王毅・外交部長に対し、直接こうした懸念を伝達した。
同時に、インド太平洋地域を含む国際社会の平和と安定のため、関係諸国とも連携しつつ、安全保障分野における様々な対話や交流を通じ、中国に対し、国防政策及び軍事力の透明性向上や国際的な行動規範の遵守を働きかけていくことが重要と考えている。
(問)イタリアは日本と同様高齢化社会であり、外国人材を受け入れるべきとの考えもあり、移民を受け入れている一方、日本は外国人の受け入れに消極的であると見受けられるが、この問題をどのように考えるか、日本の立場いかん。
(答)外国人材の受入れに関しては、現状、政府においては、専門的・技術的分野の外国人については、我が国の経済社会の活性化に資するという観点から、積極的に受け入れていく、それ以外の分野については、日本人の雇用、産業構造への影響、教育、社会保障等の社会的コスト、治安など幅広い観点から国民的コンセンサスを踏まえつつ政府全体で検討していくとの考え方に基づき、外国からの人材を受け入れている。
一方、人口減少、生産年齢人口の減少は、今後も国民生活に深刻かつ多大な影響をもたらすものと認識しており、それに伴う労働力人口の減少への更なる対応は喫緊の課題である。このような方針に沿って外国から人材を受け入れることは重要なものと認識している。
(問)男女平等推進のため、外務大臣としてどのような外交的取組を行ってきたか。上川大臣は、日本人女性が総理大臣になれると思うか。大臣は史上初の総理大臣に就く意思はあるか。
(答)私は、外務大臣就任以来、ジェンダー平等の推進、とりわけ女性・平和・安全保障(WPS)を力強く推進してきた。
国際社会が不透明さを増す中、SDGsの誰一人取り残さないとの理念に基づき、女性や女児の保護や救済に取り組みつつ、女性自身が指導的な立場に立って紛争の予防や復興・平和構築に参加することで、より持続可能な平和に近づくというWPSの考え方は、益々重要になっている。
そうした観点から、第一に、本年1月には、組織横断的な連携を目的として、外務省内にWPSタスクフォースを立ち上げた。
第二に、バイ、マルチのあらゆる機会にWPSの重要性について発信してきている。本年2月の日・ウクライナ経済復興推進会議では「WPSセッション」を主催し、WPS視点を踏まえて同国の復旧・復興を支援する旨強調した。
第三に、今年でWPSに関する最初の国連安保理決議の採択から24年になるが、WPSにイノベーションをもたらし新たな次元へと引き上げるため、各国訪問等の際に「WPS+I(イノベーション)」とする政策フォーラムをこれまでに5回開催し、多様なステークホルダーから知見を集約してきている。
これらの取組で得られた知見や示唆を踏まえてWPSを更に推進し、我が国としてジェンダー平等と女性のエンパワーメントの促進、そして平和な国際社会の構築に貢献していく。
同時に、女性参画を推進し、女性候補者の割合が高まるよう、各政党への自主的な取組の要請や、国や地方議会での女性議員数の「見える化」、女性議員比率向上の好事例の広報等、確実に進めていく。
私は、2000年の初当選以来、信念に基づき、政治家としての職責を果たすことに専念してきた。現在は、内閣の一員として、豊かで明るい可能性に満ちた日本、世界から尊敬され、必要とされる日本を、次の世代に引き継ぐため、与えられた外務大臣の職責に「一意専心の思い」で取り組んでいる、ということに尽きる。