寄稿・インタビュー
岸田総理大臣書面インタビュー(2023年5月3日付、ノティシアス紙)
「ここ10年の間にモザンビークは対日輸出を倍増させた」
ノティシアス紙は岸田日本国総理大臣に書面インタビューを行ったところ、内容は以下のとおり。
「ここ10年の間にモザンビークは対日輸出を倍増させた」
ここ10年の間に、モザンビークから日本への輸出はほぼ2倍となり、日本からの輸入は2.5倍に増加した。岸田総理大臣は、ノティシアス紙のインタビューにおいて、コロナ禍の影響があったものの、二国間の経済関係は年々強固なものとなっていると説明。本日からモザンビークを訪問予定の同首相は、モザンビークが有する大きな経済的潜在力を誘因として、日本企業のモザンビークへの関心が高まっていると評価。また、既に動き出しているビジネス分野の交流がより発展するよう、日本政府として引き続き民間の動きを力強く後押ししていくことを望んでいるとし、以下のとおり続けた。「今回、私の訪問に合わせてモザンビークを訪問するアフリカ貿易・投資促進官民合同ミッションに多くの日本企業が参加していることがその証左である。本ミッションの派遣を皮切りに、エネルギー・資源分野にとどまらない重層的なビジネス関係を構築し、『自由で開かれたインド太平洋(FOIP)』の連結性を高めていきたい。」
岸田首相は、日本の総理大臣としては9年ぶりの今次訪問を通じ、良好な日・モザンビーク関係を、更に一段高いレベルへ昇華させたいと考えている。日本政府にとって、モザンビークは非常に重要なパートナーであり、「それ故に、共に手を携えて法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向け協力していく。また、スーダン情勢を始めとするアフリカの平和と安定についても一層緊密に連携していく」と述べた。
また、モザンビークは、アフリカ有数の天然ガス埋蔵量を誇り、重要鉱物資源に富む南部アフリカの主要国であり、本年から両国は共に国連安保理非常任理事国を務めている旨言及。
「1977年の外交関係開始以降、日・モザンビーク関係は良好。モザンビーク内戦終結後の1993年、我が国はアフリカ地域において初めて、モザンビークへのPKOに自衛隊を派遣した。」と述べ、モザンビークが有する大きな潜在力を国の発展に繋げるため、アフリカ南東部の大動脈であるナカラ回廊の開発をはじめ、日本が人材育成、保健医療、教育、農業など、幅広い分野で協力してきたことを想起した。岸田総理は「日本企業も、大規模プラントへの投資等、モザンビークの成長に貢献してきており、今後もその貢献を続けていく」としている。
「ガス関連プロジェクトはエネルギーの安定に貢献」
カーボデルガード州ロヴマ流域における天然ガス採掘は、モザンビークの経済発展に大きく貢献するのみならず、世界のエネルギー安定供給に大いに資するだろうと岸田総理は考えている。
日本企業の三井物産とJOGMECが投資するアフリカ最大規模のLNG開発事業について、「武装集団による周辺地域への襲撃により停止している生産設備の建設を近く再開できれば、モザンビーク全体の発展にも資する」と述べ、それ故に岸田総理にとって、モザンビーク政府や関係国と連携しつつ、北部地域の治安向上に資する支援は優先事項となっている。
この一環として、昨年末、5つの国際機関に計760万ドルを拠出し、カーボデルガード州復興のための人道・開発支援を実施した。「こうした支援が、モザンビーク政府による北部地域の早期の安定化に向けた取組の強化に貢献することを期待する。今後も、エネルギー安定供給のためにモザンビークの方々と緊密に連携していきたい」と述べた。
技術移転分野については、日本は無償資金協力を通じて職業訓練センター、教員養成校、医療従事者養成学校などの施設を整備し、国の未来を支える人材を育成してきた。「農業分野においても、ザンベジア州では技術協力『コメ生産性向上プロジェクト』を実施し、稲栽培技術の普及、種子生産管理体制の改善、灌漑施設維持管理などを支援してきた」ことに言及。
一方で、日本政府はABEイニシアティブや「資源の絆」を通じ、産業や鉱物資源、農業等の幅広い分野において、モザンビークの若者が日本で専門的な知識や技能を身につける留学の機会を提供している。その成果として、例えば、「資源の絆」のこれまでの参加者の中には、日本留学からの帰国後、今ではテテ工科大学の学部長として活躍している者もいる。また、ABEイニシアティブの参加者には、帰国後、ADIN(北部統合開発庁)と共に北部地域の住民の支援を行っている者もいる。
岸田総理にとって、2023年はJICA海外協力隊の派遣から20年を迎える年であり、教育・保健医療・社会福祉・青少年活動等の分野でこれまでに累計約350名の隊員が活動してきた。
「モザンビーク滞在中に現在派遣中の隊員の方々とお話する予定。TICAD8において、私は、アフリカと「共に成長するパートナー」として、「人」に注目した日本らしいアプローチで取組を推進していくことを発表した。今後も、多様なスキームを組み合わせ、包括的なアプローチで人材育成に取り組んでいきたい。」と述べた。
「社会分野が引き続き優先事項」
モザンビークと日本との協力において、保健サービス向上、教育の質の改善等の人間開発・社会開発、経済成長・生産性向上・雇用の創出が引き続き最重点分野となる。
岸田総理は、天然資源・自然環境の持続的な利用及び平和構築及び治安対策分野において、両国は更に努力を続けていくべきであるとし、「経済成長の基盤となるインフラ整備を支援するという方針のもと、我が国は、技術協力『橋梁維持管理能力強化プロジェクト』を進めてきている」と述べた。
また、日本の大学も含めた産・官・学連携体制の下、モザンビークの道路公社や民間企業が適切な橋梁維持管理を行うために必要な技術移転を実施しており、「実際に日本の技術を活用した橋梁補修工事が現地で行われるなどの成果を上げている」と述べた。
運輸分野では、インド太平洋における連結性強化に資するナカラ回廊開発の一環として、円借款にてナカラ港の開発を支援(371億円(2.7億米ドル))。
更に、日本政府は今般、航空輸送の機能強化のため、30億円(2230万米ドル))の航空管制関連機材の供与を決定した。
岸田総理は、「ポストコロナの人的・物的往来の増加を見据え、これらの支援が、交通インフラの連結性を高めることに繋がることを期待している」と断言した。