寄稿・インタビュー
「歴史的な転換期におけるG7の揺るぎない結束」
ロシアによるウクライナ侵略が国際秩序の根幹を揺るがす中、国際社会は歴史的な転換期を迎えている。G7における政策協調がこれまで以上に重要なのは言うまでもない。岸田総理は、G7議長として議論を牽引し、力による一方的な現状変更の試みやロシアが行っているような核兵器による威嚇、ましてやその使用を断固として拒否し、法の支配に基づく国際秩序を守り抜くというG7の強い意志を、力強く世界に示したいとの決意を示している。
私自身、今年のG7外相会合では、豊かな自然に恵まれた軽井沢町で、G7の外務大臣と国際社会の喫緊の諸課題について、率直かつ踏み込んだ意見交換を行いたいと思う。
まず、ウクライナ情勢である。ロシアによるウクライナ侵略は、欧州のみの問題ではなく、国際社会全体が依って立つ原則そのものへの挑戦であり、G7の結束が一層重要になっている。昨年、G7は、オンラインを含め首脳会合を6回、外相会合を11回も開催するなど、前例にない頻度で緊密に連携し、国際社会の取組を主導してきた。
2023年、日本議長国の下でもこうした姿勢は変わらない。2月18日にミュンヘン(ドイツ)で開催したG7外相会合では、G7として法の支配に基づく国際秩序を堅持するというコミットメントを強調するとともに、公正かつ永続的な平和へのウクライナのコミットメントを歓迎した。2月24日には、岸田総理大臣がG7首脳テレビ会議を主催し、対露制裁やウクライナ支援をはじめとするロシアによるウクライナ侵略への対応について本年もG7として結束して取り組んでいくことを改めて確認した。
岸田総理は、先月21日、ウクライナを訪問し、ロシアによるウクライナ侵略による被害などの状況を直接視察するとともに、ゼレンスキー大統領と首脳会談を行い、ウクライナ国民に対する日本とG7を始めとする同志国の揺るぎない連帯を直接伝えた。さらに、ゼレンスキー大統領に対し、日本がこれまでに表明した総計71億ドルの支援を着実に実施していくことに加え、エネルギー分野などを始めとする新たな二国間無償資金協力等を4.7億ドル供与すること、また、NATOの信託基金を通じた殺傷性のない装備品支援に3000万ドルを拠出することを伝えた。ゼレンスキー大統領からは、日本からの支援に対して深甚なる謝意が表明された。
ウクライナにおける惨劇を繰り返さないためにも、ロシアによる侵略は一日も早く終わらせなければならない。私自身、G7として一致したメッセージを出せるよう、外相会合での議論をリードし、G7広島サミットでの議論につなげていく考えだ。また、ウクライナでの情勢による影響への対応やその影響を受けている国々との関係強化についても議論を行っていく考えである。
次に、インド太平洋である。この地域は、世界経済の成長エンジンだが、同時に様々な挑戦にも晒されている。この地域を、力や威圧とは無縁で、自由と法の支配を重んじる場として豊かにしていくことは、G7のみならず世界全体の利益である。こうした観点から、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」は妥当性を増しているビジョンであり、新興国・途上国との関係強化の観点からも重要だ。日本政府は、先月、歴史的転換期におけるFOIPの考え方やFOIPを実現するための協力の拡充について具体的に示すことが重要と考え、FOIPのための新たなプランを発表した。
FOIPの実現のためには、各国との連携も不可欠である。日本は、G7メンバーが関連する戦略等を発表し、インド太平洋への関与を強化していることを歓迎する。今回の外相会合でも、G7としての連携を再確認するとともに、我々のビジョンを共有する国の輪を更に広げ、グローバルな舞台でさまざまな国々と協力していくという力強いメッセージを出したいと考えている。
このほか、中国、北朝鮮等の地域情勢や、国際的なパートナーとの協力、核軍縮・不拡散など様々な課題についても議論する予定である。G7広島サミットの成功につなげるべく、議長として、風光明媚な軽井沢でのG7外相会合で充実した議論を行いたいと思う。