寄稿・インタビュー
ロイター通信主催「ロイター・ネクスト・バーチャルフォーラム」(2022年12月1日付)
林大臣出演:冒頭スピーチ
「ロイター・ネクスト・バーチャルフォーラム」にお招きいただきありがとうございます。本日、皆さんとご一緒できることを嬉しく思います。本日のフォーラムのテーマは「より良き明日への新たなビジョン」ですが、今我々の眼前では、力や威圧による一方的な現状変更の試みが躊躇なく正面から行われ、ポスト冷戦時代の終焉とも言える国際秩序の動揺が展開されています。本日は、現下の国際社会が直面する厳しい状況について、認識を共有するとともに、我々が目指すべき未来の姿について述べたいと思います。
現在も続くロシアによるウクライナ侵略は、明確な国際法違反であるとともに、我々が多くの犠牲と努力の下に築き上げてきた国際秩序の根幹を脅かす、許されざる暴挙です。また、ロシアによる核の脅しを深刻に懸念しており、断じて受け入れることはできません。ましてや、その使用はあってはなりません。ロシアによる侵略が現実となり、国連安保理が機能不全に陥る中、基本的価値や原則を共有するG7の政策協調がこれまで以上に密接に行われるようになりました。G7は、先日のドイツ・ミュンスターでの会合を含め本年だけで10回と、過去に例を見ない頻度で外相会合を重ね、緊密に連携しながら、対露制裁とウクライナ支援を強力に推し進めてきました。G7として、力による一方的な現状変更は、欧州であれ、東アジアであれ、いかなる場所でも許してはならないという強い決意を確認し、国際社会を牽引してきました。来年のG7議長として、引き続きG7として法の支配に基づく国際秩序を守り抜いていくという力強いコミットメントを示していきたいと思います。また、こうしたメッセージが国際社会から広範な支持を得られることも重要です。この一年、G7以外にも、東南アジア、中央アジア、大洋州、アフリカなど各地に足を運び、各国外相との関係を深め、国際秩序の擁護のため協働してきました。
先般、開催されたASEAN関連首脳会議、G20バリ・サミット及びAPEC首脳会議においても、岸田総理から、また、APEC閣僚会議において自分から、こうした日本の立場を訴えました。
同時に、ロシアの侵略は、世界のいかなる国・地域にとっても「対岸の火事」ではありません。実際、国際秩序への挑戦は、東アジアでも続いています。例えば、東シナ海・南シナ海における力による一方的な現状変更の試み、北朝鮮による核・ミサイル開発は止まず、むしろ増加しています。台湾海峡の平和と安定も重要です。
日本は対立を求めず、対話による安定した国際秩序の構築を追求します。そして同時に、ルールを守らず、他国の平和と安全を武力や威嚇によって踏みにじる者が現れる事態には常に備えていなければなりません。そうした事態を防ぎ、自らを守る手段として、抑止力と対処力を強化することが重要です。これは、日本自身が、新たな時代を生き抜く術を身につけ、日本が平和の旗手として発言し続ける上では不可欠です。日本政府として、日本の防衛力を5年以内に抜本的に強化します。同時に、日米同盟の抑止力・対処力の強化をしっかり図っていくとともに、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた取組を、関係国や地域のパートナーとも連携しつつ、推進していきます。
このような考えの下で、日本政府は、本年末までに新たな国家安全保障戦略を策定します。また、海上安全保障や海上法執行、サイバー、デジタル、グリーン、経済安保といった分野にも重点を置きつつ、我が国の取組を強化する新たなFOIPプランを来春までに発表します。我が国は、憲法に示されている平和主義の理念の下、戦後日本の平和国家としての延長線上に立ちつつ、現実の国際環境の変化に即した形で地域の平和と安定を維持、強化していくため、弛まぬ努力を行っていきます。
インタビュー映像は、以下の映像リンクから閲覧可能です。(注:2時間9分9秒から林大臣出演)
大臣インタビュー(YouTube)(英語)