寄稿・インタビュー
林外務大臣書面インタビュー
(2022年3月19日付、アラブ・ニュース紙(サウジアラビア))
「日本の外務大臣、東京からUAEとトルコ訪問へ」
日本の林芳正外務大臣は、3月18日に東京を出発し、3日間の日程でアラブ首長国連邦(UAE)及びトルコ共和国を訪問、外相会談の実施や様々なイベントへの参加を予定している。
東京出発前にアラブ・ニュース・ジャパンが行った林大臣とのインタビューでは、エネルギー資源の安定性やウクライナ情勢など、幅広い課題について話し合うと述べた。
インタビューで同大臣は、サウジアラビアは、アラブ・イスラーム諸国の盟主であり、G20のメンバーでもあることから、中東地域の安定の要であると述べた。また、「今後も幅広い分野で両国の戦略的パートナーシップを一層強化していく。」と林大臣は述べた。
同大臣は、19日にトルコに到着し、メヴリュット・チャヴシュオール外相と会談、その後共同記者会見が予定されている。
また、林大臣は、20日にアブダビに到着し、UAEのスルタン・ジャーベル産業・先端技術大臣と会談予定。その後、シェイク・アブダッラー・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン外相と会談し、同外相主催のワーキングディナーに出席する予定。
東京の外務省高官はアラブ・ニュース・ジャパンに対し、林大臣のUAE訪問には2020年ドバイ万博への訪問が含まれるかもしれないと述べた。
インタビューにおいて、林大臣は、今回の訪問の主要日程は外相会談の実施及び様々なイベントへの参加であると述べた。また、同大臣は、「トルコは、地政学上の要衝にあり、日本の戦略的パートナーである。」と述べた。
林大臣は、「今回の訪問では、経済、教育、宇宙、気候変動を含む幅広い分野での協力につき確認したい。特にウクライナ情勢を巡っては、トルコは、ウクライナ、ロシア双方との緊密な関係を活かし、積極的な外交を展開していることから、今回、突っ込んだ意見交換を行い、緊密な連携を確認する考えである。」と述べた。
また、同大臣は、「UAEにおいては、外交関係樹立50周年の節目の年を捉え、従来のエネルギー分野を超えた幅広い分野での協力推進を図る。UAEは本年から国連安保理非常任理事国を務めており、今月は国連安保理議長国を務めている。ウクライナやイエメン、北朝鮮情勢等での緊密な連携を確認する。」と加えた。
日本とUAE、サウジアラビアそれぞれの二国間関係について、外務大臣は、中東は日本にとって重要な地域であり、特にエネルギー安全保障の観点から重要であると説明した。
また、「日本が輸入する原油のうち、約3割がUAE、約4割がサウジアラビアからの輸入であり、両国はエネルギー安全保障上の重要なパートナーである。」と同大臣は述べた。
林大臣は、アラブ・ニュース・ジャパンに対して、最近のウクライナ情勢を受け、原油価格が高騰している問題もあり、二か国との連携の重要性はこれまで以上に高まっていると述べた。
「今回のUAE訪問でもこの点についてしっかり意見交換を行う。 同時に、日本はこれらの地域とは、伝統的なエネルギー分野にとどまらず、様々な協力を通じて良好な関係を築いてきている。」と林大臣は述べた。
また、日本の外務大臣は、UAEとは、近年では再生可能エネルギー、水素・アンモニア、科学技術、教育、インフラ、宇宙等の幅広い分野での協力も進んでいると述べた。
「包括的・戦略的パートナーシップ・イニシアチブ(CSPI)」枠組文書への早期署名を含め、引き続き様々な分野で二国間関係を強化する考えであり、3月15日に行われた岸田総理大臣とムハンマド・アブダビ皇太子の電話会談においても、この点について一致した。」と同大臣は加えた。
林大臣は続けて、「サウジアラビアは、アラブ・イスラーム諸国の盟主であり、G20でも重要な役割を担う中東地域の安定の要である。日本とサウジアラビアは首脳レベルでも良好な関係を構築してきており、本年2月3日に行われたムハンマド皇太子との電話会談において、岸田総理大臣は、「日・サウジ・ビジョン2030」の協力枠組み等を通じて、サウジアラビアが推し進める脱炭素・産業多角化や経済社会改革を官民挙げて後押ししていく旨述べている。今後も幅広い分野で両国の戦略的パートナーシップを一層強化していく。」と述べた。
サウジアラビアとUAEは、ロシア・ウクライナ間の情勢の平和的解決を呼びかけた。本インタビューの中で、林大臣は、「ロシアによるウクライナ侵略は、ウクライナの主権と領土の一体性を侵害し、武力の行使を禁ずる国際法に対する深刻な違反にあたり、力による一方的な現状変更を認めないとの国際秩序の根幹を揺るがすものであり、断じて認められない。我が国は強く非難する。」と述べた。
「現地時間3月2日の国連総会の緊急特別会合で採択された「ウクライナに対する侵略」決議案は、UAEやサウジアラビアを含む141か国という国際社会の圧倒的多数の支持を得て採択された。」と同大臣は加えた。また、「これは、国際社会で幅広く共有されている強い意思が改めて確認されたものであり、我が国として歓迎している。引き続き、国際社会が結束してロシアに対して強いメッセージを発出していくことが重要である。」と述べた。
林大臣は、「原油市場の安定化は消費国・生産国双方の利益であり、UAEやサウジアラビアには、OPECプラスのメンバーとして更なる原油供給及び生産余力確保を通じて、世界の市場の安定化に貢献していただくことを期待している。今後も、我が国として、事態の改善に向けて、G7を始めとする国際社会と連携して取り組んでいく考えであり、UAEやサウジアラビアといった中東諸国とも緊密に連携して対応していく考えである。」と述べた。
サウジアラビアがイランの核開発に懸念を抱いている中、林大臣は、日本はイランとの伝統的な友好関係を活かし、率直な会話を行える立場にあると述べた。
「我々は、イランを通じてイランが影響力を有する勢力に対し、地域の平和と安定に反する行動をとらないよう求めるとともに、イエメンにおける停戦と和平の実現に向け、建設的な対応を求めてきている。また、グランドバーグ国連イエメン担当特使による活動を始め、国際社会のイエメン紛争の終結に向けた取組を後押ししていく。」と同大臣は説明した。
林大臣は続けて、「私自身、関係国カウンターパートとの電話会談の機会に、イエメンにおける停戦と和平の実現に向けた働きかけを行ってきている。引き続き域内外の関係国と連携しつつ、人道支援及び政治的働きかけの両面から、イエメン及び中東地域の平和と安定の実現に向け粘り強く取り組んでいく。」と述べた。