寄稿・インタビュー
菅総理大臣インタビュー
(2021年9月22日付、ブルームバーグ通信(米国))
「中国の軍事的台頭は日本経済を脅かすかもしれない 菅首相が警告」
- 菅首相はインタビューの中で、クアッド及び仏と協力していきたいと述べた
- 恒大集団をめぐる問題で中国経済が失速すれば、世界に影響
菅首相は、初の(対面での)クアッド首脳会談に先立って行われたブルームバーグによるインタビューの中で、中国による急速な軍事的影響力の拡大と一方的な現状変更は、日本にリスクとなるかもしれないと述べた。
菅首相は、金曜日に日米豪印のクアッド諸国を集めてホワイトハウスで開催される初の対面での首脳会談に先立って、「インド太平洋地域における中国の台頭に伴うパワーバランスの変化や、新型コロナウイルスの拡大で広まっている自国中心主義が相まって、不確実性が増している」と指摘した。
一部の民主主義国家は、中国が地域における影響力と軍事力を増大させる中で、バランスを取ろうとしていると見られている。中国は、米国が仲間内のグループを作ろうとしているとして非難している。
菅首相はインタビューの中で、中国が軍事力を背景に現状変更を試みていることは、「我が国の平和と繁栄にとってリスクになる可能性がある」と付け加えた。
菅首相は、日本が日米同盟を強化することで抑止力を強化し、また自国の防衛力整備を進めるべきとの考えを示しつつ、中国との対話を維持することは引き続き重要であるとも述べた。
9月29日の与党・自民党総裁選を経て、菅首相の後継者、つまり日本の首相が選出される予定だ。そのような中、日本の指導者による訪米は、一年にわたる任期の最後の外遊となる。
菅首相は外交の初心者との見方がある中で就任した際、日本の最大の貿易相手国である中国との関係は下り坂にあった。それに加え、与党内の一部の大物政治家は、日本の安全保障における台湾の重要性に関して発言したことで、台湾を自国の領土の一部として見る中国側との摩擦はさらに増した。
クアッド首脳会談が開催されようとする中、クアッド参加国のうち2カ国はフランスとの間で争いを抱え、クアッドが他国との間で地域の安全保障に関する協力を進めていく見通しには暗い影が落ちている。米英豪間の安全保障協力枠組み、いわゆる「AUKUS」は、豪州が原子力潜水艦を保有することを可能にすることが狙いの一つであり、一部のアジア諸国は地域における軍拡競争に繋がりかねないとの反応を示している。
菅首相はAUKUSについて問われると、「我が国は関係国との協力が進むことを期待している」と答えるとともに、日本が協力を進めたい国としてフランスに明示的に言及した。また、潜水艦計画をめぐる米豪仏の争いについて問われると、菅首相は、G7諸国は同盟国として力を合わせることで合意しており、また米国のバイデン大統領は国連総会での演説の中で、同盟関係を維持することの重要性を強調したことに言及した。
他にも、菅首相は以下のとおり発言した。
恒大集団に関して、「中国の不動産の話であるので,中国に投資している人への影響があると思う。その観点では、日本に直接的な影響がある可能性は低いと思う。他方で、中国経済が失速すると、日本のみならず、世界経済に影響するので、注視しながら対応していきたい。」
台湾に関して、「我が国は、中台間の軍事バランスの変化を含む様々な動向を常に注視している」、「台湾をめぐる問題が、両岸当事者間の直接の対話により平和的に解決されることを期待している。」