寄稿・インタビュー
茂木外務大臣書面インタビュー
(2021年1月7日付、オ・グローボ紙)
「ブラジルの5Gネットワーク構築について連携していきたいと思います」
令和3年1月8日
オ・グローボ紙によるインタビューによれば、ブラジルに7日に到着する茂木外相は8日、ボルソナーロ大統領表敬、アラウージョ外務大臣との会談、協力覚書署名を予定している。また、商業関連の議題についても進めていく模様。日本企業 ―日本式地上デジタルテレビシステムをブラジルに導入した国の企業― は5Gネットワーク構築にも独自の技術を有しており、中国企業の代わりとして市場の一角を占めるようになっている。オ・グローボ紙が茂木外相に対し書面で実施したインタビューのテキストは以下のとおり。
【問】今回の訪問の目的を教えてください。また、現在の日ブラジル関係をどのように評価しますか。
【答】地域を代表する大国であり、法の支配、自由、民主主義、人権等の基本的価値を共有し伝統的な深い絆で結ばれたブラジルを訪問できて喜ばしく思います。温かく受け入れていただいたブラジル政府及び国民に心から感謝します。
中南米を含め世界中で、国際社会の変化が加速化・複雑化する中、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持と強化に向けた国際連携の重要性が増大しています。日本とブラジルは、基本的価値を共有し、両国間には日系人社会等によって培われた伝統的な深い絆や深化を続ける経済関係があります。両国は、二国間のみならず国際場裡でも連携・協力を進める「戦略的グローバル・パートナー」です。
昨年は、日ブラジル外交関係樹立125周年、在日ブラジル人コミュニティ30周年を通じて二国間関係が更に強化されたほか、アジア、南北米州大陸のキープレーヤーである日米伯の連携強化を目的とする3か国協議の枠組みも発足しました。
また、日本は、ブラジルの新型コロナ対策を支援すべく約5億円(約480万ドル)の機材供与を実施している他、汎米保健機構等を通じ中南米各国を支援しています。
今回の訪問で、このように年々拡大・深化を続ける日ブラジル関係を更に強化したいと思います。
【問】2019年のメルコスール・EUのFTA締結を踏まえ、日本はメルコスールとFTAを締結する可能性はあるのでしょうか、あるいは締結に向けて交渉中なのでしょうか。
【答】日本は、ルールに基づく貿易投資自由化というメルコスールの先駆的な取組を評価しています。ASEANと同等の経済規模、積極的な統合と深化を踏まえ、日本企業もメルコスールへの進出を強化してきました。
日本とメルコスールとの貿易・投資関係の強化が、双方にとって有益な形で実現するよう、いかなる対応が望ましいか引き続き議論を続けていきます。
【問】ブラジルから日本への輸出される品目の多くは第一次産品であり、これらのいくつかは時にアマゾンの森林減少に繋がる場合があります。日本は環境に配慮した認証制度による貿易制限措置を取る可能性はあるのでしょうか。
【答】環境保全は、保護と開発を持続的に両立させることが重要です。日本は成長戦略の柱に経済と環境の好循環を掲げて、グリーン社会の実現に最大限注力する中、ブラジルとも協力を進めています。
具体的には、日本は、ブラジルに火災予防機材等を供与しているほか、日本の衛星画像を活用した森林消失の監視・予測プロジェクトを長年実施しています。
また、日本は、AI等を活用して薬剤や燃料等の利用を最小化するスマート農業など、持続可能な農業に向けた支援も検討していきます。
今回の訪問では、自然資源の保全と開発の両立に向けた日ブラジル協力を促進するため、生物多様性協力覚書にも署名します。こうした取組を通じ、アマゾン地域を含む自然環境の保全と持続可能な開発に向け今後とも協力していきます。
ブラジルは先般、パリ協定に基づき2060年までに炭素中立の達成を表明したところですが、日本も2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロとする、「カーボンニュートラル」の実現を目指しています。地球規模での気候変動問題についてもブラジルと緊密に連携していきます。
【問】ブラジルにおける5G通信技術の採用の議論について、英国においてHuaweiの開発を禁止後に日本企業のNECと富士通が開発を支援する中、日本企業のブラジル市場に対する関心、提供できる競争力・利益、ブラジルの通信を監視しない保証の提供方法はいかなるものでしょうか?
【答】菅政権がスピード感をもって経済のデジタル化を推進する中、5Gネットワークの構築は日本の成長戦略の中核です。
ブラジルの通信を監視しない保証を得るためには、ルール作りが必要です。日本は、情報の窃取などの不正な活動を許さない「自由、公正かつ安全なサイバー空間」の維持のため、サイバー空間の重要な一部を成す5Gネットワークを含め、国内法令の整備や国際ルールの構築に積極的に取り組んでいます。
日本は、5Gネットワーク構築にあたり、オープンかつセキュアで、多様なニーズに柔軟に対応可能な5Gモデル(オープンRAN)を推進しています。これは、通信事業者が特定の1社に依存することなく、複数のベンダーの強みを活かしながら、最適な5Gネットワークを構築することを可能にするモデルです。
長年、ブラジルで活動してきた我が国のNECや富士通といったベンダーは、5Gネットワークを一社でも構築する能力を有していますが、これらの企業はオープンRANモデルの下で、他のベンダーとも協力しながら、ネットワーク構築に貢献する用意があると承知しています。
このように、日本は官民を挙げて制度設計及びネットワークインフラ建設の両面において、多様なサプライチェーンを維持しつつ、オープンかつセキュアなソリューションをブラジルに提供する用意があります。
ブラジルは、世界で初めて日本方式の地デジを採用するなど、長年にわたり、デジタル分野で日本との協力実績があります。5Gネットワークの構築についても、こうした実績を踏まえて、しっかりと連携していきたいと思います。
【答】地域を代表する大国であり、法の支配、自由、民主主義、人権等の基本的価値を共有し伝統的な深い絆で結ばれたブラジルを訪問できて喜ばしく思います。温かく受け入れていただいたブラジル政府及び国民に心から感謝します。
中南米を含め世界中で、国際社会の変化が加速化・複雑化する中、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持と強化に向けた国際連携の重要性が増大しています。日本とブラジルは、基本的価値を共有し、両国間には日系人社会等によって培われた伝統的な深い絆や深化を続ける経済関係があります。両国は、二国間のみならず国際場裡でも連携・協力を進める「戦略的グローバル・パートナー」です。
昨年は、日ブラジル外交関係樹立125周年、在日ブラジル人コミュニティ30周年を通じて二国間関係が更に強化されたほか、アジア、南北米州大陸のキープレーヤーである日米伯の連携強化を目的とする3か国協議の枠組みも発足しました。
また、日本は、ブラジルの新型コロナ対策を支援すべく約5億円(約480万ドル)の機材供与を実施している他、汎米保健機構等を通じ中南米各国を支援しています。
今回の訪問で、このように年々拡大・深化を続ける日ブラジル関係を更に強化したいと思います。
【問】2019年のメルコスール・EUのFTA締結を踏まえ、日本はメルコスールとFTAを締結する可能性はあるのでしょうか、あるいは締結に向けて交渉中なのでしょうか。
【答】日本は、ルールに基づく貿易投資自由化というメルコスールの先駆的な取組を評価しています。ASEANと同等の経済規模、積極的な統合と深化を踏まえ、日本企業もメルコスールへの進出を強化してきました。
日本とメルコスールとの貿易・投資関係の強化が、双方にとって有益な形で実現するよう、いかなる対応が望ましいか引き続き議論を続けていきます。
【問】ブラジルから日本への輸出される品目の多くは第一次産品であり、これらのいくつかは時にアマゾンの森林減少に繋がる場合があります。日本は環境に配慮した認証制度による貿易制限措置を取る可能性はあるのでしょうか。
【答】環境保全は、保護と開発を持続的に両立させることが重要です。日本は成長戦略の柱に経済と環境の好循環を掲げて、グリーン社会の実現に最大限注力する中、ブラジルとも協力を進めています。
具体的には、日本は、ブラジルに火災予防機材等を供与しているほか、日本の衛星画像を活用した森林消失の監視・予測プロジェクトを長年実施しています。
また、日本は、AI等を活用して薬剤や燃料等の利用を最小化するスマート農業など、持続可能な農業に向けた支援も検討していきます。
今回の訪問では、自然資源の保全と開発の両立に向けた日ブラジル協力を促進するため、生物多様性協力覚書にも署名します。こうした取組を通じ、アマゾン地域を含む自然環境の保全と持続可能な開発に向け今後とも協力していきます。
ブラジルは先般、パリ協定に基づき2060年までに炭素中立の達成を表明したところですが、日本も2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロとする、「カーボンニュートラル」の実現を目指しています。地球規模での気候変動問題についてもブラジルと緊密に連携していきます。
【問】ブラジルにおける5G通信技術の採用の議論について、英国においてHuaweiの開発を禁止後に日本企業のNECと富士通が開発を支援する中、日本企業のブラジル市場に対する関心、提供できる競争力・利益、ブラジルの通信を監視しない保証の提供方法はいかなるものでしょうか?
【答】菅政権がスピード感をもって経済のデジタル化を推進する中、5Gネットワークの構築は日本の成長戦略の中核です。
ブラジルの通信を監視しない保証を得るためには、ルール作りが必要です。日本は、情報の窃取などの不正な活動を許さない「自由、公正かつ安全なサイバー空間」の維持のため、サイバー空間の重要な一部を成す5Gネットワークを含め、国内法令の整備や国際ルールの構築に積極的に取り組んでいます。
日本は、5Gネットワーク構築にあたり、オープンかつセキュアで、多様なニーズに柔軟に対応可能な5Gモデル(オープンRAN)を推進しています。これは、通信事業者が特定の1社に依存することなく、複数のベンダーの強みを活かしながら、最適な5Gネットワークを構築することを可能にするモデルです。
長年、ブラジルで活動してきた我が国のNECや富士通といったベンダーは、5Gネットワークを一社でも構築する能力を有していますが、これらの企業はオープンRANモデルの下で、他のベンダーとも協力しながら、ネットワーク構築に貢献する用意があると承知しています。
このように、日本は官民を挙げて制度設計及びネットワークインフラ建設の両面において、多様なサプライチェーンを維持しつつ、オープンかつセキュアなソリューションをブラジルに提供する用意があります。
ブラジルは、世界で初めて日本方式の地デジを採用するなど、長年にわたり、デジタル分野で日本との協力実績があります。5Gネットワークの構築についても、こうした実績を踏まえて、しっかりと連携していきたいと思います。