寄稿・インタビュー

(2019年5月17日付)

「日本国外務大臣,日本・中央アジア諸国間の協力の将来性を強調」

令和元年7月1日

 18日,ドゥシャンベにおいて,「中央アジア+日本」対話の枠組みで第7回外相会合が開催される。同会合を前に河野太郎日本国外務大臣は,日本・中央アジア諸国間の協力の今後の展望について次のように語った。

 「今回,外務大臣に就任して初めて,中央アジアの地を踏むことができ,大変嬉しく思います。私は明日,ドゥシャンベでの「中央アジア+日本」対話の第7回外相会合に出席します。議長を務めるムフリッディン外相をはじめとしたタジキスタンの皆様の御協力に感謝するとともに,友人達と中央アジアと日本の協力の未来について語り合うことを楽しみにしています。日本は中央アジア各国と,その独立のときから連綿と「協力の物語」を紡いできました。2015年には歴史的な安倍総理の5か国訪問が行われました。2017年には,外交関係樹立25周年という一つの節目を迎えました。タジキスタンとの二国間関係についても,昨年10月のラフモン大統領訪日により,新たなページがめくられました。

 このような関係が一層深まる中,私は,明日の会議で,この地域に対する日本外交の基本的アプローチが,中央アジアの「開かれ,安定し,自立的な発展」を支え,地域協力の「触媒」として各国と手を携えていくことである点を,改めて強調したいと思っています。

 日本は,海への出口を持たない中央アジアの世界に開かれた発展のため,連結性の向上を支援します。日本の古都奈良には,8世紀に中央アジアからもたらされた楽器,衣服,刀剣,食器などが往時のままに保管されている宝物庫があります。当時このシルクロードを行き来した文化,知識について触れずに,日本の歴史を語ることはできません。私たちは,21世紀のこの地域が,西はカスピ海とコーカサス地域を経て欧州につながり,東はアジア,南はインド洋に連結する,ユーラシアの新しい回廊となり,発展することを望んでいます。

 そして,そのような回廊を支える地域のインフラは,国の財政の持続性や自立性を損なう形で建設されてはならず,誰もが公正に,平和裡に使えるものでなければなりません。開放性,透明性,経済性及び対象国の財政健全性といった国際スタンダードに則った質の高いインフラづくりを進めるために,手を携えていきたいと思います。インフラを運用・管理する人材も重要です。「中央アジア+日本」対話の下でのイニシアティブは,このような人材の育成に主眼を置いたプロジェクトを含みます。

 一方,今日,地域の最大の脅威の一つは,テロや暴力的過激主義です。先日スリランカでも大規模なテロが発生し,多数の死傷者がでました。我々は,あらゆる形態のテロを強く非難します。アフガニスタンと長い国境を接する中央アジアの安定と安全は,国際社会全体の平和と安定にとっても不可欠です。日本は,中央アジア各国と,国境管理をはじめとする麻薬密輸・テロ・暴力的過激主義対策や,アフガニスタン安定化の分野において協力を進めてきましたし,今後も続けていきます。

 また,中央アジアの諸国が,他国に過度に依存することなく自立した発展を享受するため,人々の生活に直結する農業分野においても,「中央アジア+日本」対話の枠組みの下で取組が進んでいます。

 そして,ユーラシアの新しい陸の回廊は,地域の自立的な発展に資する潜在性も秘めています。それが「観光」です。中央アジア各国が個別に取り組むのでなく,連携して,例えば複数の国を巡る魅力的な観光ルートをつくることができれば,いかほど効果的でしょう。観光を通じた相互理解の促進は,地域の平和と友好の強化にとっても重要です。この分野における実践的な協力の方向性につき,明日の外相会合で議論される予定です。

 これらの分野を含め,中央アジアの「開かれ,安定し,自立的な発展」を目指した日本の協力は,国づくりのための人づくりに貢献することを主な柱とし,これまで26年間で農業,運輸・交通,経済,保健,ガバナンス,防災,観光等さまざまな分野で,中央アジアから10000人以上の研修員を受入れ,3,400人以上の専門家を派遣してきました。日本で学んだ人々の中から,今やタジキスタン政・官界でも活躍している人材が輩出されていることは喜ばしい限りです。

 中央アジアは,豊かな可能性に溢れた地域です。一つ一つの国が魅力的なのは言うまでもありません。しかし,地域として協力すれば,一層輝かしい化学反応を起こすことができます。地域協力の「触媒」となりたいとの思いから日本が世界各国に先駆けて「中央アジア+日本」対話を立ち上げたのは,2004年のことでした。それ故に,昨年3月に第一回中央アジア諸国首脳実務会合が開催されるなど,いま,地域協力を進める強いダイナミズムが生まれていることを非常に嬉しく思います。

 そして,このような「中央アジア+日本」対話の枠組みでの協力が,タジキスタンとの強固な二国間の友好関係に支えられているのは言うまでもありません。アフガニスタンと長い国境を接するタジキスタンは中央アジア地域安定の要であり,昨年はタジキスタンの和平構築に尽力された秋野UNMOT政務官殉職から20年目の節目でした。そのような中,昨年10月にラフモン大統領が訪日され,天皇陛下とのご会見,安倍総理との首脳会談等,両国関係の進展において重要な行事が行われました。二国間の交流強化は要人往来に限りません。2020年東京オリンピック・パラリンピックを控え,青森県青森市がタジキスタンの事前合宿地に決定しました。今回ドゥシャンベで「中央アジア+日本」対話が開催され,二国間会談も行われることは,日・タジキスタン関係を更なる高みに引き上げるものと確信しています。

 日本では今月1日,新天皇が即位され,新たなる時代が始まりました。今回の私の訪問が,日本と中央アジアの間の「協力の物語」の新しい章の始まりとなることを期待しています。」


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