寄稿・インタビュー

(2018年11月5日付)

「日本外交のトップは韓国との第二次大戦を巡る論争において日本企業を擁護」

平成30年11月8日

 日本外交のトップである河野大臣は,日韓関係を揺るがす恐れのある数十社の日本企業にのしかかる強制労働に関する請求の問題を解決する責任は,韓国にあると述べた。

 河野大臣は4日のインタビューで,1910年から1945年の日本占領時に朝鮮半島の人々に労働を強制したとして日本企業に賠償を命じた韓国大法院の判決は,日韓関係に「深刻な挑戦」をもたらしていると述べた。日本は,3億ドルの支払いを約束した1965年の協定により,この請求権の問題は既に解決済みと主張している。

 東京で行われたインタビューで河野大臣はブルームバーグに対し,「明白である。韓国の人々からの要求については全て韓国政府が対処する責任があり,これが韓国政府がすべきことである」とし,「これが1965年の日韓間の合意だ」と述べた。

 韓国大法院は新日鉄住金に対し,1945年以前に同社の前身企業に強制労働を強いられたと提訴した4名の原告に各1億ウォン(8万8千ドル)を賠償するよう命じた。安倍総理は先週国会において,日本の植民地時代に朝鮮半島から日本に来た全ての労働者が徴用されていたわけではないとし,今回の原告である4人は募集に応じた人たちであったと述べた。

 今回の判決は,昨年文大統領が当選して以来,鍵となる米国の同盟国の間で浮かび上がってきた複数の論争の一つである。日韓両国は,第二次大戦前及び戦中の旧日本軍の売春宿への女性の売買を巡る不一致を解決する合意についても論争を広げており,また,先月には韓国での国際観艦式への参加を日本が見送ることになった「旭日旗」を巡る争いもあった。

 河野大臣は,元労働者の問題は他の諸問題とは「全く違う次元の問題である」と表現した。日本の外務省によると,69社の日系企業が関与する15件の他の起訴が保留中であるという。日本外務省は本件の訴えを起こしている人々につき,「旧朝鮮半島出身労働者」という呼称を用いている。

 河野大臣は「韓国政府と国際法に基づく合意を結んだとしても,その合意を韓国大法院が望めばいつでも覆すことができるのであれば,それは,いかなる国にとっても韓国政府との間で物事を進めることが難しいことを意味する」と述べ,「韓国はこの問題にまず対処しなければならない」とし,そうでなければ関係は前進しないと付け加えた。

 来年1月にも開始される見通しの日米貿易対話に関し,これまで日本が二国間対話開始の前提としてきた(譲歩の)上限を超える要求をすることを米国政府関係者が最近示唆していることにつき,河野大臣はそのような要求には応じないとし,日本の譲歩と引換えに,米国も何かを提供しなければならないと述べた。

 自動車関税賦課の脅しを受け,約2年間引き延ばしてきた米国との貿易交渉開始を日本は受け入れた。トランプ大統領がTPPから離脱した後,米国は貿易赤字を相殺するため,日本市場への米国の自動車と農産品のアクセス拡大を迫っている。

 安倍総理はこの交渉の対象範囲は自由貿易協定よりも狭くなるとしており,日米両国は,センシティブな農産品については,日本が他の貿易協定で提供した水準以上のアクセスを強要されないことで合意している。

 しかし,ペンス副大統領は後に,米国は日本との間で自由貿易協定の交渉を行うと発言しており,また,パーデュー農務長官は,米国は最低でも12月30日に発行するTPPや,EUとのEPAで約束された内容と同等の市場アクセスを得るべきだと述べた旨報道されている。

 河野大臣は,「安倍総理とトランプ大統領は枠組みに合意しており,交渉はその枠組みの中で行われる」と述べた。その上で河野大臣は「どのような貿易交渉も相互に満足するものでなければ合意に至らない。もし我々が米国に何かを与えるのであれば,米国も我々に何かを与えなければならない」と述べた。

<河野外務大臣によるその他のコメント>

北朝鮮の金正恩について
 「シンガポールでの米朝首脳会談以降,何も進展していない。我々は皆それを承知している。国際社会は団結して対応する必要があり,金委員長が正しい行動をとることを待つ必要がある。」

二回目の米朝首脳会談について
 「トランプ大統領は金委員長に,正しい判断をすれば何が起きるかを再認識させることができる。シンガポールでの米朝首脳会談により,金委員長は経済発展に対する国内の期待を高めたに違いない。金委員長は自国を統治し続けるために,その経済成長をいつかは提供しなければならない。トランプ大統領は金委員長に対し,金委員長が出来ることを思い起こさせることができる。」

地域における一連の首脳会談へのトランプ大統領の欠席について
 「トランプ大統領はこれまでのどの大統領よりも北朝鮮問題について関与してきている。またトランプ大統領は,北朝鮮や東シナ海,南シナ海といった問題における日本の立場を強力に支持してきている。トランプ大統領はアジアの問題に非常に強くコミットしていると考える。」

TPPについて
 「米国のTPP復帰は,米国の農業者や製造業者にとっても有益であろう。我々は,現在のTPPは米国がTPPに復帰すると決断するまでの応急的なものであると考えている。」


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