寄稿・インタビュー

アゼルタージュ通信(アゼルバイジャン)への河野外務大臣寄稿

(2018年9月5日付)

平成30年9月6日

 9月5日から6日にかけて,私は,日本の外務大臣として19年ぶりにアゼルバイジャンを訪問します。日本とアゼルバイジャンの各国との外交関係は,昨年,25周年を迎えました。これを受けて,この地を自らの足で踏み,日本とアゼルバイジャンの関係のさらなる進展に寄与することができるのは,私の光栄であり,喜びです。特に,資源豊かで国際的なエネルギー安全保障におけるキープレーヤーであるアゼルバイジャンとのさらなる関係の強化は日本にとって非常に重要です。

 日本とアゼルバイジャンの間には,両国を結びつけるいくつものエピソードがあります。例えば,日本の支援で建設されたシマル・ガス発電所第1号機は,アゼルバイジャンの国内電力消費の約10%を発電しており,アゼルバイジャンの人々の生活と経済成長を支えています。また,バクーやイスマイリ地区には美しい日本庭園が造園され,市民の憩いの場となっています。そのほか,日本の「富士メガネ」社は,国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と協力し,2005年から毎年アゼルバイジャンを訪問し,国内避難民に対して無償でメガネの寄贈を行うなど,積極的に支援活動を行っています。本年7月にも同社は,約2,800人以上の視力検査を行い,2,000組以上の眼鏡を寄贈しました。日本でもその功績により2017年に勲章を受章しています。今回の訪問を契機に,このような二国間の繋がりを,両国に,また世界に広く伝えることができるのは,嬉しいかぎりです。

 コーカサス地域は,東西南北の世界を結びつける重要な「結節点」です。この地域の安定は,地域レベルの関心事に止まるものではなく,国際社会の平和と安全に直結します。コーカサス地域の西には欧州,東にはカスピ海を挟んだ対岸に中央アジアが広がっています。その先の先には日本を含む東アジアの一大経済圏があります。私は,アジアと欧州をつなぐゲートウェイとして,重要な役割を担うコーカサス地域の自立的な発展のための協力を進めたいと考えます。

 コーカサス地域へのこれまでの日本の関与において常に心に置かれてきたこと,そして今後の日本の関与においても忘れてはならないことは,コーカサス地域の「自立的な発展」のための国造りを支援することです。このことは,19世紀半ばに開国した後,日本が「自立的な発展」を目指す中で学んできた,経験,教訓をコーカサス地域と共有していくことでもあります。日本としては,次の2つの柱を通じて,コーカサス地域の「自立的な発展」を支援していく考えです。

 1つ目の柱は,人造りです。国造りは,人造りから始まります。インフラも,制度も,人が使いこなすことで,初めてその機能を発揮します。日本が150年前に新しい国を造り始めたときに,最初に力を注いだことは,世界から最先端の知恵と技術を吸収し,これを日本に持ち帰ることができる人材の育成でした。地域としてのコーカサスに,日本の経験を共有していく上でも,情報を媒介する「人材」が必要です。
 また,日本の国造りにおいて,常に心がけてきたことの一つは,「法の支配」です。国造りの中で,公正さと,予見可能性を確保するのは,法律であり,その担い手たる優秀な法律家です。「法の支配」の担い手たる法律家の育成は,国造りの礎です。日本は,訪日招へい,人材交流などの様々な機会を活用し,コーカサス地域における若い法律家の育成を支援していきます。
 また,コーカサス地域において,地域と日本の架け橋となる知日派・親日派を育成していくことも重視しています。その観点から,日本語教育に対する支援やアゼルバイジャンのテレビ局より放映希望のあった『犬夜叉』などのアニメをはじめとした日本の放送コンテンツの提供等の取組を継続していきます。

 これに加えて,アゼルバイジャンに対して,保健医療,水資源・防災,社会保障,運輸交通,資源エネルギー,経済政策,民間セクター開発,農業開発・農村開発といった分野での訪日研修を実施します。また,国際石油開発帝石(INPEX)や日揮などの日本企業もアゼルバイジャン国営石油会社(SOCAR)の若手社員に対する研修を実施するなど,官民を挙げて,人材育成支援を行っています。

 そして,これらの人材が目指すべきは,インフラやビジネス環境が整い,各国からの投資が集まる「更に魅力あるコーカサス」です。これが2つ目の柱です。
 これまで,重要性と潜在性に溢れるコーカサス地域に対して,日本は,その安定化,民主化,経済社会開発,市場経済化に協力してきました。先に述べたシマル・ガス発電所の建設に加え,日本は,学校整備や病院の改修,給水設備の整備やごみ処理施設の建設,灌漑設備の整備など,アゼルバイジャンの人々の生活改善支援を続けてきました。さらに,先代のヘイダル・アリエフ大統領のイニシアティブにより交わされたACG油田の開発にかかる「世紀の契約」には複数の日本企業も参加し,これまでアゼルバイジャン政府とともに,アゼルバイジャンの基幹産業であるエネルギー産業の発展のために貢献してきました。これらは,日本が常にアゼルバイジャンの発展に寄り添っている証です。
 こうした基礎的インフラ等への支援に加え,例えば,日本はコーカサス地域の各国との間で,投資協定を作るべく力を注いでいます。アゼルバイジャンとの間でも,今回の訪問を通じて,投資協定について有意義な議論ができることを期待しています。投資協定により,各国に投資する日本企業にとって公正かつ予見可能性がある制度枠組みが整備され,日本からの投資を呼び込む前提が整うことになります。また,このような枠組みを設けるだけでなく,その活用の知見についても,コーカサス地域の各国の専門家たちと共有したいと思います。日本は,コーカサス地域の各国に対して投資協定・投資仲裁分野における各国政府の職員教育活動を支援します。
 また,ビジネスの拡大は,人の往来の拡大に繋がります。コーカサス地域の各国の人々が,日本をより訪問しやすくするための手続の簡素化も進めます。
 これに加えて,現在シマル・ガス火力複合発電所第2号機の建設が進んでおり,本年中にも完成することが期待されています。この400メガワット級の発電所が稼働することにより,電力の供給がより安定し,アゼルバイジャンが推進している経済多角化のため基盤を固めることができます。また,地方中核都市において上下水道施設の整備事業実施・維持管理体制を強化するための支援を通じ,アゼルバイジャン国内で広く衛生的で持続可能な居住環境が整備されるよう,協力していきます。さらに,昨年延長された「世紀の契約」に基づき,エネルギー分野での協力も,今後も長期的に続けていきます。

 日本は,これら二つの柱で,コーカサス地域の「自立的発展」を支援していきます。私たちのアゼルバイジャンやコーカサス地域の各国との協力は,閉じられたものではありません。他の国,国際社会がコーカサス地域の各国と行う協力と有機的に結びつき,ポジティブな化学反応を起こしていくものと期待しています。今回の訪問が,日本とアゼルバイジャン,さらには日本とコーカサス地域の各国との関係強化のための一つのマイルストーンであり,この先に続く輝かしい道程の第一歩となることを確信しております。


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