寄稿・インタビュー
ハワイ報知紙(米国)による河野外務大臣インタビュー
(2018年8月21日付)
「日本とハワイの絆を深めるために」
日本の河野太郎外務大臣は,米国で特に大きな(日系人)コミュニティーを有するホノルル,サンフランシスコ,ロサンゼルスの3都市を訪問する。21日からは最初の訪問地ホノルル市を訪れ,さまざまな分野・世代の日系人との交流を通じて,日本と在米日系人との絆を強化する。
【問】今回の大臣の米国訪問とハワイ州に立ち寄られた目的を教えてください。
【河野外務大臣】今次訪米では,全米有数の日系人コミュニティーを擁するホノルル,サンフランシスコ,ロサンゼルスの3都市において,様々な分野・世代の現地日系人の皆さんと交流します。
私は,外務大臣に就任する前から,日本と米国の絆を一層強化していくためにも,日本と在米日系人の結び付きを強化していかなければならないと考えてきました。
中学校1年生の時に初めて米国を訪れた際,お世話になった日系人の方から,第二次世界大戦中の強制収容の話を聞き,日系人の歴史に関心を持ちました。国会議員になってからは,来日する在米日系人リーダーの方々と日本の国会議員との食事会の幹事を務めたことが縁となり,在米日系人とのお付き合いが広がりました。
そうした在米日系人とのお付き合いの中で感じたことは,日本人は在米日系人のことをより深く知るべきだということです。日系人の方々が,多大な困難を乗り越え,米国において信頼と尊敬を勝ち取られたこと,それが今日の強固な日米同盟の礎となっていることを,多くの日本人に知っていただきたいと思います。
同時に,在米日系人の方々にも,日本をより深く知っていただきたいとも感じています。外務省は,2000年から毎年,在米日系人のリーダーを10名程日本にお招きしていますが,こうした取組を通じて,在米日系人の方々に,日本をより身近に感じていただきたいと考えています。
今次訪米を契機として,日本と在米日系人が相互理解を一層深め,日米同盟の強化につながることを強く期待します。
【問】外務大臣として中短期で解決したい課題は何でしょうか。
【河野外務大臣】日本の外交・安全保障の基軸は,日米同盟です。地域の安全保障環境が引き続き厳しい状況にある中で,日米同盟の重要性はこれまでになく高まっています。
地域や国際社会の諸課題の解決に向け,揺るぎない日米同盟のもと,日米両国は手を携えて積極的な役割を果たしていく決意です。
また,インド太平洋軍司令部が所在するハワイが,日本の安全保障において,不可欠な役割を果たしていることにつき,ハワイの皆様に感謝します。
その上で,まず,北朝鮮について,日本としては,先般の米朝首脳共同声明のとおり,朝鮮半島の完全な非核化に向けた北朝鮮のコミットメントを含む米朝首脳間の合意が,完全かつ迅速に履行されることを期待しています。
引き続き,拉致,核・ミサイル問題の解決に向け,日米,日米韓三か国で協力し,国際社会と緊密に連携していきます。
ハワイを含むインド太平洋地域は,世界人口の半数以上を養う世界の活力の中核です。法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序は,国際社会の安定と繁栄の礎であり,インド太平洋を自由で開かれた「国際公共財」とすることにより,地域全体の平和と繁栄を確保していくことが重要であると考えています。
この観点から,日本は「自由で開かれたインド太平洋戦略」を推進しています。具体的には,(1)航行の自由,法の支配,自由貿易などの普及・定着、(2)質の高いインフラ整備等を通じた連結性の強化などによる経済的繁栄の追求,(3)海上法執行能力の構築支援,防災,不拡散等を含む平和と安定のための取組を進めているところです。
引き続き,米国を始めとする関係国と緊密に連携しながら,自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた取組を推進していきます。
【問】ハワイ在留邦人と日系人にメッセージをお願いします。
【河野外務大臣】日本とハワイの間には,様々な分野で深いつながりのある特別な関係があります。ハワイには,全米有数の日系人コミュニティーが存在します。多くの日本企業がハワイに進出し,雇用創出に貢献していますし,観光やビジネスでの頻繁な人的往来は,日本とハワイとの距離を一層縮めています。また,米国インド太平洋軍司令部(INDOPACOM)は,インド太平洋地域の平和と繁栄に大きく貢献しています。
今回のホノルル訪問では,第100歩兵大隊,第442連隊の元メンバーから日系人学生まで,幅広い分野・年代の日系人の方々とお会いします。また,イゲ・ハワイ州知事やハワイ選出の連邦議員,ホノルル商工会議所関係者といったハワイの政財界を代表する方々と意見交換を行うほか,インド太平洋艦隊司令部等を訪問する予定です。
本年は,1868年のハワイへの移住を皮切りに,日本人の本格的な海外移住の歴史が始まってから150周年の節目の年に当たります。日本の国際化への先駆者である「元年者(がんねんもの)」の方々は,日本と米国の架け橋となったばかりでなく,今日の全米各地,世界各国の日系社会と日本との絆の礎を築かれました。本年6月には,秋篠宮同妃両殿下の御臨席を得て,海外日系人大会及び元年者150周年記念式典が開催されました。このような記念すべき年にハワイを訪問することができ,大変嬉しく思います。
日系移民150周年を盛り上げ,日ハワイ関係の一層の強化を通じて,日米関係を更なる高みに引き上げていくため,取り組んでまいります。在留邦人,日系人の方々からも,引き続きお力添えを頂ければ幸いです。