寄稿・インタビュー

インターファクス通信(ロシア)による河野外務大臣書面インタビュー

(2018年7月30日付)

「日本国外務大臣『日本はロシアに対し,安全保障に関する自らの立場を説明する用意がある』」

-河野太郎外務大臣は,日露両政府が安全保障分野における相互の懸念をいかに払拭する用意があるか語った-

平成30年7月31日

日露の外務・防衛大臣は,7月31日,「2+2」形式の会談をモスクワで実施する。会談を前に,日本の外務大臣は,ダリヤ・モロゾヴァ・インターファックス通信外交特派員へのインタビューにおいて,日露両政府が安全保障問題における双方の懸念をいかに払拭する用意があるか,新型ミサイル防衛システムの米国からの購入に関する日本政府の決定がいかなるものであったか,また,朝鮮半島において見られる肯定的な動きが,モスクワでの会談にどのような影響を及ぼすのかについて語った。

【問】モスクワでの次回「2+2」会合は,米朝首脳会談後,北東アジア情勢が好転する中で行われる。このような情勢の変化は,日露外相・防衛相間の協議の議題や性格に影響を与えるか。

【河野外務大臣】今回の日露「2+2」は,本年5月の日露両首脳の合意に基づき実施するものであり,昨年3月に実施して以来,通算3回目となります。ロシアはアジア太平洋地域における重要なプレーヤーであり,また隣国である日本とロシア両国が安全保障分野で対話し,意思疎通を図ることは,両国にとってのみならず,地域の安定のために重要です。歴史的な米朝首脳会談が行われるなど,国際情勢が大きく動く中で実施される今回の「2+2」は,時宜にかなったものです。北朝鮮やイラン,シリアを始めとする喫緊の国際情勢を含め,幅広い議題について議論を行いたいと考えています。日露両国の外交・防衛の責任者である四閣僚が一堂に会して直接意見交換することで,日露両国間の信頼関係の向上のみならず,日露関係全体の底上げを図っていく所存です。率直な協議を通じ,地域の平和と安定に大きく貢献するような,建設的な議論を行いたいと考えています。

【問】日本は,朝鮮半島問題の解決は,日露を含む6か国を中心とする全ての関係国の参加の下でのみ可能である,というロシアの立場を共有するか。 朝鮮半島において肯定的な動きが見られる中,日本は北朝鮮との関係をどのように進めていくか。

【河野外務大臣】まずは,現在行われている米朝間のやり取りを通じて,北朝鮮から具体的な行動を引き出すことができるかを見極める必要があります。その上で,日本としては,関係国と緊密に連携しながら,核・ミサイル,拉致問題の包括的な解決に向けた取組を進める上で,北朝鮮との対話枠組みの在り方を含め,何が最も効果的かという観点から,今後の対応を検討していきます。先般の歴史的な米朝首脳会談において,トランプ大統領は,相互信頼を醸成しながら,非核化の先の明るい未来を共有し,相手の行動を促す,という新しいアプローチを採用しました。これは相互不信の殻を打ち破る,突破口を開くものです。今後,日本としても,北朝鮮との間で互いに信頼を醸成し,拉致問題及び核・ミサイル問題の包括的解決の先に待っている未来像を描きつつ,その前提となる諸懸案の解決に向け,尽力していきたいと考えています。最後は,安倍総理自身が金正恩国務委員長と向き合い,日朝首脳会談を行わなければならなりません。そしてこれを行う以上は,北朝鮮の核・ミサイル問題及び拉致問題の包括的解決に資する会談としなければならないと考えています。特に拉致問題については,一日も早い拉致被害者の帰国を実現すべく,北朝鮮に対し大きな決断を迫る必要があります。

【問】日露平和条約に係る協議を巡る状況いかん。共同経済活動を通じ平和条約問題はその解決にどの程度近づいたと考えるか。

【河野外務大臣】日本とロシアが,アジア太平洋地域の重要なパートナーとして,また,地域の大国同士として,その潜在力に見合った関係を築くためにも,四島帰属の問題を解決し,平和条約を締結することが必要です。日露平和条約問題は,先人たちが70年以上にわたり解決できなかった難しい課題であります。日露両首脳は,戦後70年以上経っても平和条約が締結されていないことは異常であるとの認識で一致しており,2016年末のプーチン大統領訪日の際に,平和条約問題を解決する自らの真摯な決意を表明しました。その後も,両首脳は,信頼関係に基づく率直な対話を重ねてきています。また,四島における共同経済活動については,5件のプロジェクト候補が特定され,双方の法的立場を害さない形で,早期実施に向けた作業を加速しています。元島民の四島へのより自由な往来に向けた取組も進んでいます。昨年,歴史上初めての航空機を利用した四島への墓参を実施しました。今年も,7月22日から23日にかけて,二度目の航空機墓参が実現しました。こうした取組を通じて,日本人とロシア人が共に四島の未来像を描くことは,相互の理解と信頼を深めることにつながり,平和条約締結にとって大きなプラスになると確信しています。こうした未来志向の発想の中で,日露の外相間の対話が果たす役割は非常に重要です。ラヴロフ外相との間で率直な対話を積み重ねることで,平和条約の締結という日露共通の目標に一歩ずつ近づいていきたいと考えます。

【問】エネルギー分野を含む日露の経済プロジェクトはいかなる成果をあげているか。

【河野外務大臣】安倍総理は,日露関係を「最も可能性を秘めた二国間関係」と呼んでおり,経済を含む幅広い分野で日露協力の大きな可能性を開花させたいと考えています。私も外務大臣就任以降,貿易経済日露政府間委員会等を通じて,経済プロジェクトの実現を含む日露経済関係を後押しすべく取り組んできました。ロシアの豊富な資源ポテンシャル,地理的な近接性等の観点から,日本のエネルギー供給源多角化及び安定供給確保にとって,日露のエネルギー協力は重要です。伝統的な協力分野である石油・ガスの上流分野に加え,風力発電等の省エネ・再生可能エネ分野での協力や福島第一原発廃炉等の原子力分野での協力も着実に進展しています。8項目の「協力プラン」は,日本の技術と経験を活かし,ロシア国民が生活環境の改善を直接実感できる協力の推進に主眼が置かれており,安倍総理が2016年5月にこのプランを提案して以降,医療や都市環境等の分野でプロジェクトの具体化が進められています。例えば,都市環境では,渋滞対策や昨今ロシアで必要性が増している廃棄物処理で日本の技術を活用した協力が進められています。5月の首脳会談の時点で130件を超えるプロジェクトが生み出されていますが,大きな潜在力があります。31日の貿易経済政府間委員会共同議長間会合では,露側新議長のオレシュキン経済発展大臣との間で,9月までのあり得べき成果について大いに議論したいと考えています。

【問】日本は,米国からイージス・アショア・システム及び新レーダー(ミサイル防衛システムのための米国製最新型レーダー)を購入することを最終決定したのか。北朝鮮からの脅威のリスク低減に伴ってこれを見直す可能性はあるか。日本政府はロシア政府とのやり取りの中で,イージス・アショア,ペトリオット,イージス搭載駆逐艦といた自国の防衛システムがロシアに向けられたものではないことを保証するつもりはあるか。

【河野外務大臣】日本のミサイル防衛システムについては,日本の国民の生命・財産を守るための純粋に防御的なシステムであるとともに,日本が主体的に運用するものであり,ロシアを含めた周辺諸国に脅威を与えるものではありません。日露間には,閣僚級「2+2」や日露安保協議等,対話の枠組みがあります。こうした機会を活用しながら,引き続き説明していきたいと考えます。一方で,ロシア側は,地対艦ミサイルの配備等,極東における軍備強化を既に進めています。日本としては,このような動きについても,ロシア側から説明を受けていきたいと考えます。


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