寄稿・インタビュー

ジェチポスポリタ紙(ポーランド)による河野外務大臣書面インタビュー

(2018年7月6日付)

平成30年7月9日

【問】現与党「法と正義」(PiS)が政権に就いて以来,ポーランドは特に法の支配を巡って何度も欧州委員会等と対立しており,外国企業の活動環境が悪化するおそれもあると一部の専門家が懸念している。現在のかかる状況は,ポーランド及びポーランドの欧州における政治的・経済的地位に対する日本の見解にどのような影響を及ぼし得るか。

【河野外務大臣】日本は結束した強い欧州を支持しています。欧州の結束が揺らぐと,法の支配に基づく,自由で開かれた国際秩序の維持が困難となり,保護主義的な動きが高まります。こうした動きを踏まえると,日本とポーランドが共に自由で開かれた国際秩序を維持するために日・EUの文脈でも協力・連携していくことの意義が益々高まっていると考えます。
 私は,1984年に半年間ワルシャワ経済大学(当時,中央統計計画大学)に留学していました。ポーランドへの思い入れは深く,今回再び貴国を訪問できたことを大変嬉しく思っています。日本とポーランドは基本的価値を共有する戦略的パートナーであり,日本は欧州で存在感を増しているポーランドの役割を重要視しています。ポーランドには300社以上の日本企業が進出し,約4万人の雇用を創出しています。日本のポーランドへの累積投資額は米国,ドイツに次いで第3位であり,アジア最大の投資国としてポーランド経済に貢献しています。一昨年には,東京(成田)-ワルシャワ間の直行便が就航しました。これにより,両国間の人的交流は,観光客の往来やビジネス活動等を含め,飛躍的に増大しています。

【問】トランプ大統領と金正恩委員長の会談により,朝鮮半島危機を打開する新たな希望が生まれた。しかし,北朝鮮は過去に何回も非核化を約束しながら履行しなかった。今回は朝鮮半島の非核化が達成されると考えるか。また,「米国第一主義」を提唱する米大統領は東アジアの同盟国の安全を保障してくれると考えるか。それとも日本は自国の防衛を強化すべきと考えるか。

【河野外務大臣】先般の米朝首脳会談は,歴史的なものです。1994年米朝枠組合意や2005年六者会合共同声明といった過去の教訓を踏まえれば,先般の米朝首脳会談において,金正恩国務委員長が,朝鮮半島の完全な非核化についてトランプ大統領に対して,自ら署名した文書の形で直接約束した意義は極めて大きいと考えています。
 トランプ大統領が述べているとおり,これからプロセスが始まります。今般の会談においてトランプ大統領は,相互信頼を醸成しながら,非核化の先の明るい未来を共有し,相手の行動を促すという新しいアプローチを採用しました。今回の会談は,互いの相互不信の殻を打ち破る,突破口を開くものと考えています。米国は,同盟国の防衛に対するコミットメントを維持するとの立場であり,日米同盟へのコミットメント及び在日米軍の態勢は変わらないものと理解しています。日本は,地域の平和と安定のため,引き続き米国と緊密に連携していきたいと考えています。日本と地域の平和と安全を守るためには,日本の防衛力を適切に整備するとともに,日米同盟の抑止力・対処力を不断に強化していく必要があります。日本を取り巻く安全保障環境が大変厳しい状況にある中,国民の命と平和な暮らしを守るため,何をすべきか,常に現実を踏まえて,様々な検討を行っていきます。

【問】習近平国家主席はおそらく毛沢東以来,最も影響力のある指導者であり,中国を経済のみならず政治・軍事大国にする政策を着実に進めている。このような中国の方向性はアジアの安定にどの程度の危険性があると考えるか。

【河野外務大臣】中国の経済発展は日本にとってもチャンスであり,中国が地域や国際社会に建設的に貢献しながら平和的発展を進めていくことは,歓迎すべきことです。日中両国は,北朝鮮問題を始め,地域及び世界の平和と繁栄に大きな責任を共有しています。日中両国は協調を深めていく必要があります。5月には,李克強総理が国務院総理としては8年ぶりに日本を公式訪問されました。同訪問では具体的な成果も数多く上がりました。日中両国の相互理解・相互信頼を増進し,不測の衝突を回避すること等を目的とした防衛当局間の海空連絡メカニズムが10年に及ぶ協議を経て妥結されました。日中関係改善の流れが大きく加速していることは喜ばしいことです。
 一方で,中国の国防予算は長期にわたり高い伸び率で増加しています。東シナ海及び南シナ海における一方的な現状変更の試みは,国際社会共通の懸念事項となっています。特に,東シナ海では,日本固有の領土である尖閣諸島周辺海域において中国公船による領海侵入も継続しています。中国には,軍事に関する透明性の一層の向上や,国際的な規範を遵守する姿勢の強化が強く求められています。
 日本と中国の間には,隣国ゆえの複雑な問題もありますが,引き続き,主張すべきことは主張しながら,首脳を含めたハイレベル往来やあらゆる分野での対話・協力を推し進め,大局的な観点から安定的に関係を発展させていく考えです。


このページのトップへ戻る
寄稿・インタビューへ戻る