寄稿・インタビュー
コンパス紙(インドネシア)による河野外務大臣インタビュー
(2018年6月24日付)
「河野外務大臣は開かれたインド太平洋を共に実現する考え」
日本の河野太郎外務大臣は,6月24日から26日にかけて,ジャカルタを公式訪問する。訪問に先立ち,コンパス紙は,河野大臣に書面インタビューを実施した。
【問】日本はASEANにおけるインドネシアの立場を,経済及び政治の観点からどのように見ているか。また,日本はインドネシアとの友好関係を維持するために,どのように取組む考えか。
【河野外務大臣】インドネシアは,人口及びGDPにおいてASEAN全体の4割を占めています。政治・外交面では南シナ海問題を含む地域的課題等においてリーダーシップを発揮するなど,まさにASEANの盟主と言えます。
インドネシアはASEAN唯一のG20メンバーでもあり,国際社会でも様々な分野でイニシアティブを発揮しています。先般の国連安保理非常任理事国選挙で当選したところ,私は,インドネシアが国際社会において更なる役割を果たすことを期待します。
インドネシアと日本は,基本的価値を共有し,地域及び地球規模の課題に共に取り組む戦略的パートナーです。両国国民は心と心で固く結ばれ,困難なときには互いに助け合える,真の友の関係にあります。2004年のスマトラ沖地震や,2011年の震災に際して,お互いが真っ先に支援を表明したことは,その証左です。
本年,両国は国交樹立60周年を迎え,様々な記念事業が行われています。大事なことは,60周年を一過性のお祭りとして終えるのではなく,両国の協力関係の更なる強化に向けて,私達が,たゆみなく歩み続けることです。私は,この度,両国が次なる一歩を踏み出していく上で,その一助となれるよう,強い決意を持ってインドネシアを訪問します。
【問】日本はインドネシアが提唱するインド太平洋構想をどのように見ているか。この構想は,日本が提唱する「自由で開かれたインド太平洋戦略」のコンセプトとどのように関連付けられるか。
【河野外務大臣】インドネシアは,ジョコ政権において,「世界海洋軸構想」を提唱し,このコンセプトの下,海洋外交,海上安全保障及び海の連結性強化に積極的に取り組んでいると承知しています。日本は,こうしたインドネシアのイニシアティブを,地域の平和,安定及び繁栄に資するものとして,高く評価しています。
日本も,「自由で開かれたインド太平洋戦略」を推進しています。この戦略は,インド太平洋地域における法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序を維持・強化することにより,その地域をいずれの国にも分け隔てなく安定と繁栄をもたらす「国際公共財」とすることを目指すものです。
インドネシアが提唱するインド太平洋のコンセプトでは,ASEANの中心性・一体性,法の支配,航行の自由,自由で開かれた包摂的な秩序,透明性,連結性の強化,そして自由貿易の促進などが強調されています。これらは日本が推進する「自由で開かれたインド太平洋戦略」と共通点が非常に多く,私達は,大いに連携していけるものと考えています。
日本の戦略は,ASEANの中心性と一体性を完全に支持するものです。インドネシアやASEAN諸国と緊密に連携しながら,法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて,特に海洋分野を中心として,協力を具体化していきたいと考えています。例えば,パティンバン港(西ジャワ)の整備,離島開発支援,海上保安機構BAKAMLAへの海上法執行能力構築支援などは,この戦略の下での協力の具体的な好例です。
【問】最新の朝鮮半島情勢の進展とトランプ米大統領と金正恩委員長との米朝首脳会談を,日本はどのように見ているか。
【河野外務大臣】先日の米朝首脳会談は,歴史的な会談であり,開催に至るまでのトランプ大統領のリーダーシップに対して,心から敬意を表します。
また,この会談において,金正恩国務委員長が,朝鮮半島の「完全な非核化」について,トランプ大統領に対して,自ら署名した文書の形で,直接,約束した意義は大きいと考えています。
核実験や弾道ミサイル発射が頻繁に行われ,敵対的な空気が充満した状況から,今回の首脳会談を経て,まずは,お互いの信頼を醸成していくための話合いがスタートすると考えています。
日本としては,国際社会共通の目標である朝鮮半島の「完全な非核化」を実現すべく,引き続き,米国及び韓国と緊密に連携しながら,インドネシアを含む国際社会とも協力し,北朝鮮に対して安保理決議の完全な履行を求めていきます。北東アジアに真の平和を実現する方針に全く変わりはありません。
また,日本にとって何よりも重要な拉致問題について,トランプ大統領は安倍総理の考え方を直接,金正恩委員長に明確に伝えてくれました。拉致問題の早期解決に向け,インドネシアの皆様の支援もいただきつつ,日本自身が北朝鮮としっかりと直接向き合い,両国間で解決していかなければならないと考えます。