寄稿・インタビュー

(2018年5月20日付)

「河野外務大臣『北朝鮮は核兵器及び全てのミサイルを廃棄すべき』」

平成30年5月21日

 20日夜,マクリ大統領はサン・マルティン宮殿において,ブエノスアイレスに到着するG20各国の外相を迎える。今次G20外相会合には,日本の河野太郎外務大臣も出席する。IMFの中で大きな影響力を持つ日本は,アルゼンチンの財政混乱の早い段階において,アルゼンチンへの支持を表明した。クラリン紙のインタビューに対し,河野大臣はアルゼンチンと日本の二国間関係を強調するとともに,北朝鮮に対しては強い警告を発し,北朝鮮が韓国及び米国に対して行った非核化のコミットメントに改めて言及した。

【問】トランプ米大統領と金正恩国務委員長の会談への貴国の期待如何。北朝鮮の非核化とは,日本への脅威を含む全ての軍事的脅威が取り除かれることを意味するのか。

【河野外務大臣】南北首脳会談において,金正恩国務委員長による北朝鮮の非核化に向けた意思を文書上で確認しました。さらに,北朝鮮は,北部の核実験場を閉鎖することを発表しました。こうした一連の動きは,拉致,核・ミサイルといった諸懸案の包括的な解決に向けた前向きな動きとして歓迎しています。
 5月16日,北朝鮮は一方的な核廃棄の強要を受け入れられないとしつつ,米朝首脳会談の前提条件として,米国の「敵視政策」の終了等を求めており,北朝鮮の動向を注視する必要があります。
 歴史的な米朝首脳会談が核・ミサイル,そして何よりも重要な拉致問題の包括的な解決に向けて前進していく機会になることを強く期待します。
 日米間では,北朝鮮に対して,(1)核兵器のみならず,生物・化学兵器を含む全ての大量破壊兵器の廃棄を求めること,(2)米国に届くICBM級のみならず,我が国を射程に入れるスカッドやノドン等の短・中距離弾道ミサイルを含むあらゆる射程の弾道ミサイルの廃棄を求めること,(3)これらの廃棄に当たっては,完全な,検証可能な,かつ,不可逆的な方法で行うこと,を求めていくことで一致しており,この方針は揺るぎません。
 米朝首脳会談に向け,6月にカナダで開催されるG7シャルルボワ・サミットの機会も活用していきます。地域の平和と安定を確保するためには,朝鮮半島の非核化が不可欠です。
 引き続き,北朝鮮に政策を変更させるため,日米,日米韓で緊密に連携し,国際社会とも協力しながら,我が国としてもしっかり役割を果たしていきます。

【問】日アルゼンチン関係の評価と今後の展望いかん。

【河野外務大臣】日本とアルゼンチンは,人権,民主主義,法の支配,市場経済といった普遍的価値を共有し,また,地域及び国際場裡の課題に共に取り組む戦略的パ-トナ-です。
 近年は首脳レベルの往来が緊密化しており,2016年に安倍総理がアルゼンチンを訪問,昨年はマクリ大統領閣下が訪日しました。本年は,今回の私の訪問に加え,11月末のG20サミット,さらに明年は日本がG20議長国に就任しますので,4年連続の両国首脳の相互訪問が期待されています。
 さらに,昨年10月には日本と中南米諸国との間では初めてとなるワーキングホリデー制度が日亜間で開始されました。スポーツ分野では,本年10月にアルゼンチンでユース五輪,明年に日本でラグビーワールドカップ,2020年には東京オリンピック・パラリンピックの開催が予定されています。こうした機会を通じ,これまで以上に両国国民が相互に訪問し,お互いの理解と友好関係が一層深まることを期待しています。
 このような良好な二国間関係の根底には,アルゼンチン日系社会の存在があると思います。アルゼンチン日系社会は,約65,000人に拡大し,両国関係の「架け橋」として重要な役割を担っています。日系社会を温かく迎え入れて下さったアルゼンチン国民の皆様に感謝すると共に,日系社会がアルゼンチン社会の一員としてアルゼンチンの発展に貢献してきたことを誇りに思います。
 本年は日本とアルゼンチンにとって,外交関係樹立120周年の節目の年です。この記念すべき年に,外務大臣としてアルゼンチンを訪問できることを嬉しく思います。

【問】日本政府は,アルゼンチン政府とIMFとの財政支援に関する交渉に対し強い支持を表明している。他方で,経済的な観点から,マクリ政権は何らかの失敗を犯したと考えるか。そうである場合,マクリ政権に対し,どのようなアドバイスを行うか。

【河野外務大臣】日本は,自由開放経済を推進するマクリ政権の改革努力を引き続き支持しており,マクリ大統領のリーダーシップの下,アルゼンチン政府が現在の状況に適切に対応し,アルゼンチンとIMFの協議が円滑に進むことを期待しています。
 今回の訪問では,日本政府としても,貿易投資環境改善の方策について議論すること,一層の法的枠組みの構築を進めること,両国の牛肉を含む農産品の輸入についての調整が前進していることを確認するとともに,地域経済活性化への協力についても確認する予定です。
 日本企業もマクリ政権の経済運営に期待し,この2年間で進出企業は50から100社に倍増した他,5月28日にはマクリ政権発足以来最大規模の経済ミッションがアルゼンチンを訪問し,第25回経済合同委員会が開催されます。


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