寄稿・インタビュー

ポリティカ紙(セルビア)による安倍総理大臣インタビュー

(2018年1月15日付)

「日本の安倍総理大臣特別インタビュー:セルビアは西バルカンの安定の鍵を握る」

平成30年1月16日

 日本の総理が再びベオグラードを訪問するまでにちょうど31年が必要だった。本日の安倍総理の訪問の前,1987年の全く同じ日付に,安倍総理の先達の一人,中曽根康弘総理が我が国の首都を訪れている。記録によれば,中曽根総理はユーゴスラビアを公式訪問した最初の総理であったが,ベオグラードを訪れた最初の日本の総理ではなかった。というのも,大平総理がチトー大統領の葬儀に参列したためである。ハイレベルの訪問という意味では,1976年に,当時の日本の皇太子殿下及び妃殿下,つまり現在の天皇皇后両陛下がユーゴスラビアを訪れている。ユーゴスラビアは日本が戦後初めて外交関係を樹立した社会主義国家であった。

 国際関係という文脈では,安倍総理のベオグラード訪問と中曽根総理のそれは,非常に似通っている。中曽根総理訪問の時期は冷戦のピークにあり,現在は米露の関係がここ数十年で最も緊張した状態にある。1987年には,世界で最も影響力のあるメディアが,中曽根総理がベオグラードからレーガン大統領とゴルバチョフ大統領に対して送った訴えを放映した。中曽根総理はそのベオグラード大学における演説の中で,米ソの大統領に対して,レイキャビクにおける会談の失敗を乗り越えて核軍縮の交渉に戻るよう働きかけたのだった。その時ポリティカ紙が報じたとおり,中曽根総理は,「米ソの核軍縮の交渉は東西の間の戦略的均衡を確保し,欧州及びアジアからの核兵器の均等な除去を保障するだろう。」と指摘した。

 今回の特別インタビューに当たって,国際関係における日本の役割は,と質問したところ,安倍総理は以下のように述べた。

 私は,外交を二国間の点と点という観点ではなく,地域の国々との関係も含めた面で捉え,地球儀を俯瞰する観点から積極的に推進しています。今後も,自由,民主主義,人権,法の支配といった普遍的価値を共有する国々と協力しながら,その外縁を広げ,法の支配,航行の自由,紛争の平和的解決といった基本原則を確固たるものとし,世界の平和と繁栄に貢献していく考えです。

【問】今回のベオグラード訪問とセルビア首脳らとの会談に何を期待するか。

【安倍総理大臣】初めてのセルビア訪問を大変楽しみにしております。今回の訪問において,知日家のブチッチ大統領と共に,両国の将来を語り合い,友好関係を一層促進したい,そう期待しています。セルビアは西バルカン地域の安定の鍵を握る国であり,日本と価値を共有する欧州の結束という観点からも私はセルビアとの関係を重視しています。西バルカン地域最初の訪問国としてセルビアを訪問できることを嬉しく思います。

【問】日セルビア二国間関係をどう評価するか。

【安倍総理大臣】日本とセルビアの関係は,幅広い分野において着実に発展しています。特に経済関係では,大きな発展の可能性があります。今回の私の訪問に世界的に活躍する商社や情報通信業,現地でも多くの雇用を生み出す製造業など,日本が誇る企業のトップが同行していることは,日本企業のセルビアへの関心の高まりを示すものです。今後,両国の経済関係は益々緊密になっていくことでしょう。
 文化やスポーツ面での交流も重要です。セルビアでは,近年,日本語学習者が増加しているほか,日本の武道も盛んです。2016年の剣道欧州選手権では,日本人監督率いるセルビア女子剣道代表が準優勝し,セルビア剣道連盟創設以来,初めてメダルを獲得しました。両国の力を合わせて,これまで成し遂げられなかった成果が出たことは大きな喜びです。
 2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会を控え,スポーツ強豪国であるセルビアとスポーツ分野でも更なる交流を深めていきたいと思います。
 今回の私のセルビア訪問を通じ,日本とセルビアの関係を一層力強く発展させていきたいと決意しています。

【問】日本政府はセルビアの外交方針をどう見ているか。

【安倍総理大臣】現在,セルビアはEU加盟に向け,様々な改革を実施しています。日本は,セルビアのEU加盟プロセスが着実に進展していることを歓迎し,セルビアのEU加盟に向けた改革努力を力強く支援していきます。セルビアに対する初の円借款案件として,ニコラ・テスラ火力発電所に対する排煙脱硫装置の設置を支援していることは,正にそういった観点からセルビアの環境分野での改革を後押しするものです。

【問】日本は,セルビア市民にとって極めて友好的な国の1つと捉えられている。

【安倍総理大臣】首都ベオグラードの中心部に位置するカレメグダン公園には,日本からの支援への感謝の印として「日本の泉」が設置されています。日本の支援が,セルビアの皆様に感謝され,大切にされていることを大変嬉しく思います。今後も,環境,保健,教育等の様々な分野においてセルビアの発展をサポートするための協力を続けていきます。

【問】総理が欧州を訪問しているこの時,北朝鮮という世界で最も焦点が当たっている国が日本のすぐ隣に位置している。

【安倍総理大臣】今日,我が国を取り巻く安全保障環境は,戦後,最も厳しいと言っても過言ではありません。特に,北朝鮮は,国際ルールを踏みにじって核・弾道ミサイルを開発しています。そして,弾道ミサイルの射程はセルビアにも届き得るものであり,これまでにない重大かつ差し迫った脅威となっています。
 北朝鮮は過去に,94年の米朝合意,2005年の六者共同声明の二度,核の放棄を約束しながら,結局,それを反故にし,核・ミサイル開発の時間稼ぎに使ってきました。このことを踏まえれば,北朝鮮とは対話のための対話では意味がありません。

【問】この問題を解決するためにどのような方法を考えているか。

【安倍総理大臣】北朝鮮は完全な,検証可能な,かつ,不可逆的な方法で核・ミサイルを放棄するとのコミットメントと具体的な行動を示さなければなりません。
 北朝鮮に政策を変えさせるため,国際社会が一致結束して北朝鮮への圧力を最大限まで高め,北朝鮮の方から対話を求めてくる状況を作っていく必要があります。
 北朝鮮が繰り返す挑発的な言動を受け,「北朝鮮が暴発するかもしれない」という議論があることは承知しています。しかし,そう思わせることは,いわば北朝鮮の交渉戦術の一つでもあり,これを恐れることは,北朝鮮の交渉力を高める結果になります。

【問】日本政府は何を行おうとしているのか。

【安倍総理大臣】我々は,北朝鮮の脅しに屈することなく,状況をしっかりと分析し,冷静に対応していく必要があります。累次にわたり国連制裁決議が成立し,EUはこれに加えて,2017年10月,北朝鮮に対する独自制裁を決定しました。欧州,そして,セルビアとも緊密に連携しながら,国際社会全体で北朝鮮への圧力を高め,北朝鮮の核・ミサイル,そして我が国にとって何よりも重要な日本人拉致問題の解決に向けて全力を尽くしていきます。国連では,累次の安保理決議を経て対北制裁を強化してきており,国連加盟国であるセルビアにも着実な履行を期待しています。

【問】第二次大戦後,日本はその経済復興の速さによって「経済の奇跡」との呼び名をほしいままにした。今日の世界の経済秩序をどう見ているか。

【安倍総理大臣】経済面においては,自由で公正なルールに基づく経済圏を世界に拡大していくことが重要です。こうした中,ヨーロッパとの関係では,昨年末に,日EU・EPA交渉が妥結に至りました。日本は,世界の活力の中核であるインド太平洋地域を法の支配に基づく自由で開かれた「国際公共財」とし,この地域全体の平和と繁栄を確保していくため,「自由で開かれたインド太平洋戦略」を推進しています。欧州との連携を深める上で,この点も視野に入れたいと思います。この考え方に賛同してもらえる国であれば,いずれの国とも自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて協力することができると考えています。


このページのトップへ戻る
寄稿・インタビューへ戻る