寄稿・インタビュー

(2017年11月23日付)

「河野外務大臣:北朝鮮問題の対応には,日露の緊密な連携が不可欠」

平成29年11月30日

 日本の河野太郎外務大臣は,自身のモスクワ訪問を前に,日露関係の状況,北方領土における共同プロジェクトの評価及び探求のための日本の調査団の作業の結果,及び北朝鮮の核ミサイル問題の解決に関する日本のビジョンにつき,インターファクス通信のダリア・モロゾワ外交特派員に語った。

(問)現在の日露関係の水準の評価如何。二国間協力を進める上で,顕著な進展があるか。あるとすれば,どの分野か。

(河野外務大臣)日露はアジア太平洋地域の重要なパートナーである。地域の大国である両国が安定した関係を築き,協力を深めることは,地域の安定と発展にとっても極めて重要。
 しかし,残念ながら日露の協力の潜在力が活かしきれているとは言えない。例えば,経済分野では,日露間の貿易額(16年164億ドル)は日中の17分の1,日韓の4分の1であり,日露双方の協力を通じて経済関係はさらに発展する余地があると考える。同時に,日露両国にとって最も重要な課題は平和条約の締結。両首脳は,戦後70年以上経っても平和条約が締結されていないことは異常であるとの認識で一致している。平和条約の締結により,両国関係をその潜在力に見合う形で発展させることが可能になると考える。私はこの状況を打開したいと考えている。日露両首脳は,昨年末のプーチン大統領訪日の際,平和条約問題を解決する自らの真摯な決意を表明するとともに,四島における共同経済活動に関する協議の開始に同意した。日露間ではこうした首脳間の合意事項を着実に実現してきている。私も今回の日露外相会談でラヴロフ外相と率直に話し合い,更なる協力の促進に向け努力したい。
 日露間では,現在,昨年安倍総理が提案した8項目の「協力プラン」の具体化を進めており,特に,都市環境整備,医療,エネルギーなどの幅広い分野で互恵的な協力が活発化してる。今回,私とシュヴァロフ第一副首相が共同議長を務める貿易経済日露政府間委員会でも,この前向きな流れを更に加速したい。
 来年は,「ロシアにおける日本年」,「日本におけるロシア年」。この相互交流年を通じて,幅広い分野で両国国民間の相互理解も深まるものと期待する。

(問)北方四島における共同事業の評価・探究のための調査団の作業に対する評価如何。共同経済活動に関して具体的な進展はあるか。

(河野外務大臣)四島における共同経済活動については,早期に取り組むプロジェクトの候補5件((1)海産物の共同増養殖プロジェクト,(2)温室野菜栽培プロジェクト,(3)島の特性に応じたツアーの開発,(4)風力発電の導入,(5)ゴミの減容対策)が特定された。これらのプロジェクトはいずれも,豊富な自然,地理的環境といった四島が持つ潜在力を活かしつつ,日露双方の知見を活用して四島に住む人々の生活を良くしたり,人的交流を活性化したりする試み。
 10月末の第2回現地調査は,これら5つのプロジェクトの具体化に向け,極めて有意義な調査であったと考える。現地では,それぞれのプロジェクト候補について,関連施設等を訪問し,同行の専門家の知見も得て,具体的かつ専門的な意見交換を行ったが,共同経済活動に対する現地の高い期待感が伝わってきた。また,コジェミャコ・サハリン州知事との意見交換も有意義であった。
 今後については,今月10日のベトナムAPECの際の日露首脳会談において,両国首脳は,双方の法的立場を害さない形で,来春に向けてプロジェクトを具体化するための検討を加速させることで一致した。
 四島における共同経済活動の実現に向けた議論を通じて,日本人とロシア人が共に四島の未来像を描くことは,相互の理解と信頼を深めることにつながり,平和条約締結にとって大きなプラスになると確信している。今回の訪露で,私自身も,共同経済活動の実現に向け,ラヴロフ外相と議論を深めたいと考えている。

(問)日露関係における重要な問題の一つは,日露平和条約の締結と考えるが,日本側は,北方領土における共同経済活動は,共同での経済的活動を増やす活動であると同時に,平和条約に向けた一歩であると繰り返し述べてきた。この問題をどのように解決するか,貴大臣の決意を伺いたい。

(河野外務大臣)アジア太平洋地域の重要なパートナーとして,また,地域の大国同士として,その潜在力に見合った関係を築くためにも,平和条約の締結が必要。平和条約の締結に向け,多くの先輩方が多大な努力を積み重ねてきた。政治家であった私の祖父や父も,日ソ・日露間の平和条約締結のために尽力した一人。私自身も,こうした先人の努力を引き継いで,この問題の解決に向け貢献したいとの強い思いを持っている。
 日露両首脳は,昨年末のプーチン大統領訪日の際に,平和条約問題を解決する自らの真摯な決意を表明し,その後も,この問題について,率直な対話を続けてきている。また,両首脳の合意に基づき交渉が開始された四島における共同経済活動については,5件のプロジェクト候補が特定され,双方の法的立場を害さない形で,プロジェクト候補を具体化するための検討が進められている。こうした取組みを通じて,日本人とロシア人が共に四島の未来像を描くことは,相互の理解と信頼を深めることにつながり,これは,平和条約締結にとって大きなプラスになると確信している。
 こうした,未来志向の発想の中で,日露の外相間の対話が果たす役割は非常に重要だと考える。ラヴロフ外相との間で率直な対話を積み重ねることで,平和条約の締結という日露共通の目標に一歩ずつ近づいていきたいと考えている。

(問)北朝鮮のミサイル・核問題の解決のため,どのように取り組むべきと考えるか。日本は北朝鮮問題を共に解決するためにロシアとの間でどのような話合いを行っているか。日本は,北朝鮮に対する制裁措置を引き続き強化していくべきと考えるか。

(河野外務大臣)北朝鮮による核実験や日本上空を通過する形での弾道ミサイル発射は,日露を含めた国際社会に対する,これまでにない重大かつ差し迫った脅威であり,断じて容認できない。日本としては,そのためにはロシアを含む国際社会との連携が不可欠。あらゆる手段を通じ北朝鮮に対する圧力を最大限まで高め,北朝鮮の政策を変えさせなければならないと考える。
 我が国は,各国に対し,安保理決議の完全な履行を求めるとともに,北朝鮮との「外交」関係や経済関係の縮小,ロシアにおける有効な就労に関する許可を有している北朝鮮籍海外労働者約2万5千人の削減などを働きかけている。
 北朝鮮問題への対応に当たっては,安保理常任理事国であり,六者会合のメンバー国でもあるロシアの役割は重要。11月10日のAPEC首脳会議の際に行った日露首脳会談でも,安倍総理からは,安保理決議の完全な履行が不可欠であることを強調し,また,北朝鮮による日本人拉致問題へのロシアの理解と協力を求め,今後ともプーチン大統領と緊密に連携していくことを確認した。
 北朝鮮が核・ミサイル開発を執拗に追求する中で,日露共通の目標である朝鮮半島の非核化に向け,国際社会全体で結束して,諸懸案の解決に向けた具体的な行動を強く求めていかなければならない。そのためには,日露の緊密な連携が不可欠。この点についても,今回の日露外相会談で協議したい。

(問)ロシアと日本の間の人の往来は依然として少ないが,日本によるロシア国民に対して如何なる査証緩和措置を執ってきたか。今後,更なる緩和措置の用意はあるか。

(河野外務大臣)日本人もロシア人もお互いに相手国に高い関心を有していながら,様々な理由で実際に相手国を訪れる機会がまだまだ少ない。このことに鑑み,安倍総理とプーチン大統領の下で人的交流促進の取組が進められており,査証緩和においても既に様々な成果が出ている。
 特に,昨年12月のプーチン大統領訪日の成果として,本年1月1日から日本側が導入した査証緩和措置によって,日本を訪れるロシア人数は着実に増加している。本年1~9月の訪日ロシア人数は約5万5,000人と,昨年の同時期の約3万9,000人と比べ,約40%増となっている。
 ロシアは我が国の観光客誘致の重点対象国の一つでもあり,今回の緩和措置の効果を見極めつつ,具体的な方策を更に検討していく考え。来年の「日本におけるロシア年」及び「ロシアにおける日本年」やロシアのサッカー・ワールドカップ開催を契機に,日本とロシアの両国民が互いの国の魅力を知る機会が増え,人的交流が今後更に活発化していくことを強く期待している。


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