寄稿・インタビュー

マニラ・ブレティン紙(フィリピン)による安倍総理大臣インタビュー

(2017年11月12日付)

「安倍総理大臣:ASEANは世界の成長センターである」

平成29年11月14日

【問】ASEAN経済共同体(AEC)が発足したが,AEC及びASEAN経済圏の市場統合の評価いかん。世界経済における大きなパラダイム・シフトが進行する中,ASEAN経済圏は今でも魅力的なマーケットと考えるか。

【安倍総理大臣】「戦略的パートナー」であるフィリピンへの再訪問を楽しみにしています。本年1月に外国首脳として初めてドゥテルテ大統領の地元ダバオ市を訪問した際には,地元の方々からも熱烈な歓待に深く感激し,また大統領の私邸での懇談を通じて,大統領個人との信頼関係を更に深めました。ドゥテルテ大統領議長の下で開催されるASEAN関連首脳会議においても,両国の深い絆と強固な協力関係を基に,地域や国際社会の諸課題に共に取り組んでいく考えです。
 緩やかに市場統合を続けるASEANは,目を見張る成長を続け,今や世界の成長センターとなっています。そこには寛容と調和の精神で未来を見つめる,若く活気に満ちた人々がいます。50年の歴史の中で,GDPは,225億ドルから2.6兆ドルと名目ベースで100倍以上増加しました。人口も1.8億人から6.4億人まで増加しています。このように高成長を続けるASEANは,ポテンシャルに満ち溢れた非常に有望な市場であり,世界有数の生産拠点でもあります。
 この世界で最もダイナミックに成長しているアジア太平洋地域全体において,自由で公正なルールに基づく経済圏を構築することにより,地域の成長は更に確実なものとなると考えます。我が国としては,ASEANとともに,質の高いRCEP協定の妥結を達成し,自由貿易を推進することが重要と考えます。
 ASEANの道路には多くの日本の車が走り,ASEANに進出した日本企業は従業員の福利厚生に意を用い,コミュニティーと共生してきました。日本の食卓にASEAN原産の果実が並ぶのも今や日常風景です。日本とASEANの結び付きは強固であり,共に成長の果実を育んできました。
 次の50年のASEANの更なる成長に貢献していくために,日本は高い安全性を誇り,雇用や技術移転を生み,社会・環境面への配慮等の特徴を有する,国際スタンダードに則った「質の高いインフラ」整備や人材育成を含む技術協力等に引き続き取り組んでいきます。
 一昨年に発足した経済共同体と共に,50周年を迎えたASEANに対し,改めて祝意を表明するとともに,日本は今後ともASEANに寄り添う,良きパートナーとして,共に成長していく決意です。

【問】中国の軍事力拡大や南シナ海における軍事拠点設置,北朝鮮による核・ミサイル開発,アジア太平洋地域における米国の影響力低下等,アジア太平洋地域の安全保障が厳しさを増す中,日本はどのように対処していくのか。日本は自国の防衛において米国への依存度を低下させ,より主体的な役割を担うのか。

【安倍総理大臣】北朝鮮の核・ミサイル問題を始め,日本を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増しています。こうした中,日本の防衛力を適切に整備するとともに,日本外交の基軸たる日米同盟の抑止力・対処力を不断に強化することが極めて重要です。加えて,ASEANやインド,豪州等,戦略的利益を共有するパートナー国との安全保障協力の更なる深化も図っています。
 特に,北朝鮮の脅威は,日本のみならず,フィリピンを始めとするASEAN諸国及び国際社会全体にとっても現実のものです。その対応に当たっては,国際社会全体で,あらゆる手段により北朝鮮に対する圧力を最大限まで高め,政策を変えさせなければなりません。
 また,南シナ海の状況は改善していません。重要なことは,法の支配や航行の自由といった基本原則を訴えつつ,ASEAN・中国間のCOC交渉を進展させることにより,南シナ海の非軍事化を追求していくことです。これはまさに本年8月に発出された「ASEAN外相共同声明」にも盛り込まれた点であり,日本としてもフィリピンを始めとするASEAN諸国等と共に,こうした基本原則の重要性を訴えていきます。
 また,国際社会の安定と繁栄の礎たる,法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序を維持・強化することが重要です。先般,トランプ米大統領が来日した際にも,世界の活力の中核であるインド太平洋地域をいずれの国にも分け隔てなく安定と繁栄をもたらす自由で開かれた国際公共財とするために,具体的な協力を進めていくことを確認しました。フィリピンに対するインフラ整備や海洋法執行機関の沿岸監視能力の向上支援もその一環です。こうした考え方に賛同していただけるのであれば,いずれの国とも自由で開かれたインド太平洋の実施に向けて協力できると考えており,明日からのASEAN関連首脳会議においても,協力を呼びかけていく考えです。


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