寄稿・インタビュー

ニューヨーク・タイムズ紙(米国)への安倍総理大臣寄稿

(2017年9月17日)

「北朝鮮からの脅威に連帯を」

平成29年9月17日

英語版 (English)

 北朝鮮が9月3日に強行した核実験は,国際社会に対する正面からの挑戦であり,これまでにない重大かつ差し迫った脅威だ。先週には,日本上空を飛び越える弾道ミサイルを発射した。類似のミサイル発射からわずか2週間しか経っていない。北朝鮮は,国連決議に違反してミサイル発射を繰り返し,その射程は欧米にまで及んでいる。
こうした北朝鮮による国際社会に対するあからさまな挑戦に対し,国連安全保障理事会は,9月11日,北朝鮮への石油分野における供給規制,北朝鮮からの繊維製品の輸入禁止,加盟国による北朝鮮籍の海外労働者に対する労働許可の発給禁止を含む新たな制裁決議を全会一致で採択した。
 これらは重要な一歩だが,北朝鮮は繰り返しこれまでの決議に違反してきた。国際社会は団結し,制裁を完全に履行しなければならない。
 北東アジアについていえば,四半世紀以上前から,北朝鮮の化学兵器や短・中距離ミサイルによる脅威に直面している。
 加えて,日本は,1970~80年代に,北朝鮮により,1977年に拉致された13歳の少女をはじめ,多数の無辜の国民が拉致されその多くが帰国できていないなどの被害に遭っている。  国際社会では,誰もが平和的解決を望んでいる。国際社会の連帯が極めて重要だ。
 北朝鮮の場合には,問題解決のために,外交的手法を優先し,話し合いを重視する本来のやり方では効果をもたない。国際社会の一致した圧力が伴うべきことを歴史が物語っている。
 1990年代初めに,北朝鮮がNPTやIAEAからの脱退を表明し,国際社会の危機感は一気に高まった。当時,日米韓が,北朝鮮と対話し,核開発の停止と引き換えに軽水炉2基の建設や重油の提供に合意した。アジア諸国や欧州の協力を得ながら,日米韓3か国が主たる財政負担を行った。
 しかし,その後何が起きたか。北朝鮮は,重油提供や軽水炉の建設が数年進んだ後,合意に違反し,ウラン濃縮計画の存在を認めた。
 2002年末になると,北朝鮮はIAEA査察官を国外に退去させ,翌年にはNPTを実際に脱退した。今度は,日米韓に中露を加え,北朝鮮をも参加させた六者会合を開始した。そこで北朝鮮は朝鮮半島の検証可能な非核化に合意した。しかし,北朝鮮は,その後,2005年には核兵器保有宣言を,2006年には核実験を強行し,5カ国による対話を通じた問題解決の試みは頓挫した。
 北朝鮮は,これらの対話での約束の一部の履行に着手して,支援,制裁解除などの「対価」を得,その上で約束の大宗をことごとく反故にした。こうした歴史や,北朝鮮がなお弾道ミサイルの発射や核実験を続ける実像を前にすると,今,仮に対話を呼びかけても無駄骨に終わるに違いない。北朝鮮の眼には「自分たちがミサイル発射や核実験をしたから,諸外国は屈して対話を求めてきた」とさえ映りかねない。だから,今は,北朝鮮への圧力を最大限に強めるべき時だ。もはや一刻の猶予も許されない。
 半世紀近くの長い期間に,北朝鮮がミサイル開発や核実験を続けることが出来てきたのはなぜだろうか?長い間,国連による制裁を受けている北朝鮮が,原料,資材,大出力のエンジンを入手するための巨額の資金をいかにして得てきたのであろうか?統計によれば,アジア諸国を中心に北朝鮮との貿易を続けており,中には昨年になっても,なお,その量が増えている国もある。国連によれば,弾道ミサイルに外国製部品が使われたり,また,北朝鮮から製品や役務を購入したり,北朝鮮労働者を使ったりしている国もある。アジア諸国で作り上げられたフロント・カンパニー・ネットワークが北朝鮮の外貨へのアクセスを可能としている。
 日本は,日米同盟,日米韓の結束で対応してきており,すべての選択肢をテーブルの上に置く,との米国の立場を確固として支持している。
 今回の核実験の強行に対し,北朝鮮に対して格段に厳しい制裁措置を課す国連安保理決議第2375号が,9月11日に全会一致で迅速に採択されたことを評価する。しかし,国際社会としてそうした制裁を一致して採択したことで満足してはならないことを強調したい。累次の決議を厳格かつ完全に履行し,北朝鮮が核・ミサイル開発に必要とするモノ,カネ,ヒト,技術の入手を阻止すべきだ。
 北朝鮮は,今や世界全体にとっての重大かつ差し迫った脅威となっており,国際的な不拡散体制への深刻な挑戦だ。一刻も早く,北朝鮮に挑発を止めさせ,核や弾道ミサイルを廃棄し,拉致した被害者を帰国させる。
 国際社会の連帯と連携,国連の役割の有効性は,かつてなく強く求められている。

寄稿は,ニューヨーク・タイムズ紙のホームページ別ウィンドウで開くから閲覧可能です。


このページのトップへ戻る
寄稿・インタビューへ戻る