寄稿・インタビュー

タス通信(ロシア)による岸田外務大臣書面インタビュー

(2017年3月19日付)

「自分にはラヴロフとの間で信頼関係が築かれている」

平成29年3月24日

 3月20日,東京において3年半ぶりに「2+2」フォーマットでの日露外務・防衛閣僚協議が行われる。同会合の開催は,ウクライナ及び日本側による対露制裁への参加に係る状況に関連する容易ではない時期を経て二国間関係が本質的に改善していることを示す重要な指標である。最近,1945年以来二国間にない平和条約の策定交渉を含む,多くの分野における接触の中で進展が見られる。この点について,ヴァシーリー・ゴロヴニン・国営タス通信特派員が岸田文雄日本国外務大臣と話し合った。

(問)東京で本年3月20日に「2+2」フォーマットでの日露外務・防衛閣僚協議が行われる。貴大臣は同会合においてどのような問題を提起し,どのような成果を期待しているか。安全保障分野で日露が協力していける分野はどのような分野か。

(岸田外務大臣)アジア太平洋地域における重要なプレーヤーであり,また隣国である日露両国が安全保障分野で対話し,相互理解を深めることは,両国にとってのみならず,地域の安定のために重要です。
 先般弾道ミサイルを発射した北朝鮮の動向をはじめ,アジア太平洋地域における安全保障環境が厳しさを増す中で,両国の外務大臣及び防衛/国防大臣が安全保障分野に関する突っ込んだ議論を行うため,今月20日,第2回日露外務・防衛閣僚協議(「2+2」)を東京で実施します。
 日露両国の外交・防衛の責任者である四閣僚が一堂に会して直接意見交換することで,日露両国間の信頼関係の向上に資するだけでなく,地域の平和と安定にも大きく貢献するような,建設的な議論を行いたいと考えています。
 安全保障分野での日露間の具体的な協力については,昨年12月のプーチン大統領訪日の際の日露首脳会談でも議論され,今後も進めていくことで一致したところです。両国の外務当局間でもテロ対策協議を始めとする各種協力が行われているほか,実務的な協力の一例として,アフガニスタン及び中央アジア麻薬対策官に対する研修を挙げたいと考えています。
 この麻薬対策に関する協力では,日本政府から国連麻薬・犯罪事務所(UNODC)への資金拠出を通じ,2012年9月以来,モスクワ郊外のドモジェドヴォにあるロシア内務省の施設においてアフガニスタンの麻薬対策官に対し,講義及び訓練を行っています。これまで7回実施されてきており,昨年3月からは中央アジア諸国の麻薬対策官も研修に参加するなど,アフガニスタン及び中央アジア諸国の麻薬対策能力の向上を通して,日本とロシアが協力して地域の安定に寄与する,成功例の一つであると高い評価を受けています。

(問)ロシアと日本は平和条約締結交渉を活発化させているが,両国の立場は近づくのかにつき,見通しはいかがか。

(岸田外務大臣)戦後70年以上を経た現在でも両国の間に平和条約が締結されていない状態は異常な状態であると考えています。両首脳は,双方に受入れ可能な形で,領土問題を最終的に解決することで,平和条約を締結するとの決意を表明しています。
 日露間では,これまで,この問題の解決のため,長年議論を行ってきた。1956年の国交回復以降も,歴代の両国首脳の尽力により,北方領土問題の解決に向けた動きが見られた時期もありました。
 安倍総理は,そうした交渉の経緯を踏まえながら,この問題を自分たちの世代で解決するという強い決意を持って交渉に臨んでいます。
 私とラヴロフ外相の間でもこの問題について真剣に議論してきており,昨年末にプーチン大統領が訪日した際の首脳会談では,両首脳が二人だけで膝を突き合わせて交渉を行い,その結果,平和条約問題を解決するとの両首脳の真摯な決意が表明されました。
 その上で,両首脳は,四島における共同経済活動と元島民の四島への往来について協議を開始することで合意しました。
 首脳会談後の共同記者会見において,プーチン大統領も「もし誰かが,我々が関心を有しているのは経済関係の構築だけであり,平和条約を後回しにすると考えるのであれば,それは違う。自分の考えでは,最も重要なのは平和条約の締結である」と述べ,日露間に平和条約が必要であるとの考えを強調していました。
 現在,首脳間の合意を具体化すべく,日露間では精力的に交渉が行われています。今月20日には自分とラヴロフ外相の間でも議論する予定であり,この問題を前進させていきたいと考えています。

(問)特別な制度の下で島で共同経済活動を実施することが,現在,重要なテーマとなっている。貴大臣は,このような活動のどの分野が最も見込みがあると考えているか。安倍総理は,島にはロシア国民がいることを考慮し,ロシア人も日本人もそこで共に平和に住めるような条件を作ることになると幾度か発言している。そのために,日本側は具体的にどのような努力をする考えか。

(岸田外務大臣)北方四島における共同経済活動については,昨年12月の首脳会談の結果,漁業,海面養殖,観光,医療,環境及びその他のあり得べき分野での協力について協議を開始することで合意しました。
 豊かな自然,地理的環境といった,北方四島の潜在性を考えれば,これらの分野はいずれも有望であると考えています。
 日本においては,私を座長とする関係省庁の協議会を設置し,具体的案件の形成に向けて検討を行っています。18日には,モルグロフ外務次官の訪日を得て,東京で次官級の公式協議が行われる予定です。
 日露両国が共に四島の将来像を描く作業を行うことには大きな意義があります。
 日露双方の法的立場を害さない形で行うことができるよう,日露双方で建設的に取り組んでいきたいと考えています。

(問)安倍総理は何度もプーチン大統領との個人的な信頼関係が出来たと発言している。大臣もロシアのラヴロフ外相とは数多く会われているが,貴大臣とラヴロフ外相との間にも同様に強固な個人的信頼関係が構築されていると考えるか。

(岸田外務大臣)ラヴロフ外相は,職業外交官としての長いキャリアを持ち,外相も10年以上務めるなど,様々な国際問題について造詣が深く,また議論にも強いとの印象があります。
 ラヴロフ外相とはこれまで8回会談したが,自分が大臣に就任した直後に2013年4月にロンドンで行った会談は印象に残っているものの一つです。初めての会談でしたが,北方領土問題の歴史的な解釈や法的な立場をめぐって長時間に亘り議論を交わしました。
 その後,昨年4月の日露外相会談では,北方領土問題について,双方の歴史的な解釈や法的な立場に違いがあり,双方に受入れ可能な解決策を作成していくことが必要であることを確認しました。その結果,その後の交渉に弾みを与えるような前向きな議論を行うことができたと考えています。
 これまでラヴロフ外相と,電話会談を考慮すれば,既に13回にわたり会談を積み重ねる中で,困難な問題であっても,胸襟を開いて率直に議論をできる信頼関係が築かれていると感じています。


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