寄稿・インタビュー


(2014年9月7日付)

平成26年9月10日

「安倍総理,感謝の気持ちでスリランカを訪問」

 安倍総理は,サンデイ・タイムス紙との独占インタビューの中で,失踪者調査委員会の任務拡大といったスリランカの国民和解の努力が,国連人権理事会の決議に示された懸念を払拭することを期待している旨を述べた。

 7日スリランカに到着する安倍総理は,第2次世界大戦後の日本の国際社会への復帰を後押ししたスリランカに対して,感謝の念を持って訪問する旨を述べた。インタビューは,書面を通じて行われた。

 安倍総理は,スリランカにおける戦争犯罪及び人権侵害の問題を巡る国連人権高等弁務官事務所による調査について,直接的な発言は避けたが,「スリランカ政府は国民和解の進展のため,失踪者調査委員会の任務を拡大する等,前向きな取組を行っていると承知している」と答え,「日本としては,スリランカのこうした努力が指摘の人権理事会決議に示された懸念を払拭することに繋がることを期待している」と述べた。また,安倍総理は,日本はスリランカに対して,国際社会との信頼醸成の促進を含めた支援を引き続き実施していく旨言及した。

 「日本は,長年にわたり,明石康政府代表を中心に,一貫して和平の進展を希求し,和平プロセスに積極的に関与・貢献してきた」と安倍総理は述べ,「内戦終結後も,スリランカの平和構築を後押しし,国民和解が進展するよう関与を維持してきた。30年に及ぶ内戦が終了した今こそ,63年前に日本に寛容な精神を示してくれたスリランカにおいて,国民の皆様が寬容の精神を再び発揮し,真の国民和解を実現することを心より願っている。」と述べた。

 安倍総理夫妻は,7日昼12時45分に到着し,翌8日午前9時に当地を出発する予定である。安倍総理は,到着後すぐに,日本の支援で行われているバンダラナイケ国際空港改善事業フェーズ2の除幕式に参加する。また,ラージャパクサ大統領と首脳会談を行い,国会議事堂を視察予定である。

 多数の日本企業が同行している総理一行は,日スリランカ経済フォーラムに参加した後,大統領主催晩餐会に出席する。

 安倍総理夫人は独自のスケジュールで,カールトン幼稚園等を訪問する予定である。総理夫妻は,8日の出発前にケラニア寺院を参拝する。1957年に日本の総理として初めてスリランカを訪問したのが安倍総理の祖父である岸信介元総理であった。安倍総理は,「古都キャンディーのペラデニア植物園には,今も祖父が植えた木が大切に育てられていると聞き,遠く離れた日本より,一度はスリランカを訪問したいとの想いを馳せていた」と回想している。

 1951年9月6日のサンフランシスコ講和会議にて,ジャイエワルデネ財務大臣(当時)が日本から戦争賠償金の受け取りを拒否した感動的なスピーチから63年後,安倍総理のスリランカ訪問が行われる。ジャイエワルデネ財務大臣は,サンフランシスコ講和会議にて,「憎悪は憎悪によって止まず,ただ愛によって止む」と仏陀の教えを述べた。

 安倍総理は,この仏陀の言葉を引用し,「戦後の荒廃から復興への道へと歩み出そうとする際,日本の国際社会への復帰を後押ししてくれたのがスリランカであった」と発言した。「それから60年以上にわたり,日本は平和国家として世界の平和に貢献してきた。今回はそのような感謝の想いをもって訪問に臨む」と安倍総理は述べている。

 2013年3月,安倍総理は,国交樹立60周年を越えた二国間パートナーシップの強化につき,ラージャパクサ大統領と日本で意見交換をした。「我々は,スリランカの友人として,スリランカ国民とともに国造りに貢献できていることをうれしく思っており,今後も信頼に基づいた質の高い協力を続けていきたいと考えている」と安倍総理は述べた。

 安倍総理は,日本が最大の援助国ではなくなりつつあり,今や中国がスリランカの発展にとって最も重要なパートナーに代わりつつある状況の下での,今回の来訪目的について質問を受けた。今やスリランカの開発パートナーとして,中国が最も重要であると広く理解されている。多くの日本の専門家は,中国軍及び中国の商業機関,シーライン交通網といった中国の「真珠の首飾り」戦略にスリランカが組み込まれているのではないかと懸念を示している。

 安倍総理は,質問の内容に直接回答することを再び避けつつ,「スリランカは,インド洋シーレーンの要衝に位置し,近年7%以上の経済発展を遂げている新興国として,その潜在性に関心が高まっている」と答えた。

 安倍総理は,「両国は,同じアジアの海洋国家として,さらに協力関係を深化・拡大し,共に成長していくことができる関係にあると確信している。美しい自然と豊富は歴史遺産に惹き付けられて,日本からの観光客も急速に増加している。今回の訪問を契機に,スリランカとの歴史的友好関係を再確認し,これまで以上に民間経済関係を活性化させ,相互理解並びに相互信頼に基づく二国間関係をさらなる高みへと引き上げたいと考える」と述べた。


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