寄稿・インタビュー

デーニ紙(ウクライナ)による岸田外務大臣書面インタビュー


(7月17日付)

平成26年7月17日

クリミアの強制的併合は国際的秩序を破った


 日本とウクライナは遠く離れているが,両国間には原発事故を経験したという共通点がある。福島原発事故が起こるまでは日本がウクライナに支援をしてきたが,福島原発事故が起こった際には,ウクライナも日本を支援した。去年の岸田大臣来訪の一番の目的はチェルノブイリ関連だった。今年,日本の外交のトップが再びウクライナを訪れ,デー二のインタビューに応じた。

(問)
 今回のウクライナ訪問で,日本側が期待しているのは何か。また,期待している成果は,昨年の訪問時に「デーニ」紙へのインタビューで述べられていたものとどう異なるか。

(岸田外務大臣)
 今回私が外務大臣としてウクライナを訪問するのは,2度目となる。昨年8月の訪問の際は,キエフのほか,チェルノブイリを訪問し,原発事故という深刻な経験を共有する両国が協力を進めることは有意義との思いを深めたところである。
 ウクライナを巡る状況は大きく変わった。日本は,一貫してウクライナの主権及び領土の一体性の尊重及び法の支配の尊重を主張してきた。力を背景とする現状変更は決して容認できない。これは,一地域の問題ではなく,国際社会全体にとって極めて重要な原則である。
 今回の訪問では,ウクライナ政府の要人と会談を行い,ウクライナの平和と安定のためには政治・経済改革の実施が不可欠である旨述べ,また,ロシア及び分離派との対話,紛争の平和的解決を呼びかけたいと思う。また,ウクライナの政治・経済改革を支持し,これを積極的に支援する姿勢を伝えたいと考えている。
 特に,日本としては,ウクライナの安定のためには,(1)経済状況の改善,(2)民主主義の回復,(3)国内の対話と統合の促進が重要と考えている。これらの3点について引き続き支援を行っていく。

(問)
 今後の二国間協力関係の発展について,日本はどのような見通しを持っているか。既にウクライナにおいて開始されているプロジェクトの進行状況はどうか。

(岸田外務大臣)
 日・ウクライナ関係は,2012年に外交関係樹立20周年を迎え,様々な分野で交流が活発化している。昨秋来のウクライナを巡る状況の変化にかかわらず,両国間の伝統的に良好な関係に変わりはなく,また,昨年の私の訪問でも強調させていただいたとおり,二国間協力には大きな潜在性があると考えている。
 日本としては,まずはウクライナの経済状況の改善のため,決定済みの最大約15億ドルの支援を着実に実施していく。
 また,日本との経済関係の強化のため,今回の自分(岸田大臣)のウクライナ訪問には,経済協力関係者が同行するなど(複数の)経済ミッションを派遣したいと考えている。
 従来から進めている原発事故後の協力は,原発事故という深刻な経験を共有する両国間での有意義な取組である。6月には,福島/チェルノブイリ共同観測プロジェクトの一環である日本製超小型衛星を搭載したウクライナ製のロケットが打ち上げられるなど,この分野での協力は着実に進展している。協定に基づき,今後も同分野での両国間の協力を継続していく。

(問)
 ロシアによるクリミア編入,ウクライナ東部の不安定化へのロシアの関与等,最近のウクライナ情勢に関し,日本ではどのような見方がされているか。

(岸田外務大臣)
 ロシアによるクリミア編入や東部ウクライナの状況については,日本でも連日報道され,日本国民も高い関心を持っている。
 このような状況の下,日本政府は,一貫して法の支配,ウクライナの主権及び領土一体性の尊重を主張している。日本としては,クリミアの併合は明白な国際法違反であり,力を背景とする現状変更は決して容認できない。また,ウクライナが一日も早く,平和と安定を達成することを強く願っている。
 日本としては,今後ともG7各国と連携しながら,問題の平和的・外交的な解決に向け,役割を果たしていく。また,ウクライナ新政権が推し進める民主化・市場経済化のための取組を後押ししていく。

(問)
 G7の一員として,日本はロシアにどのような制裁を科しているか。更なる制裁を科す用意はあるか。

(岸田外務大臣)
 日本は,G7の連携を重視しつつ,独自の措置をとってきている。具体的には,3月18日,ロシアによるクリミアの独立承認を受け,(1)査証簡素化に関する協議を停止し,(2)投資協定,宇宙協定及び危険な軍事活動の防止に関する協定の3件の新たな国際約束の締結交渉開始を凍結した。
 4月29日には,ウクライナの主権と領土の一体性の侵害に関与したと判断される計23名に対し,日本への入国査証の発給を当分の間停止することとした。
 今後の対応については,ウクライナ情勢の展開をみつつ,G7各国と連携して検討していく。

(問)
 日本は,今後,アジア地域の安全保障に積極的に関与すると聞き及んでいるが,理由は何か。背景にあるのは中国やロシアの積極的な行動か。

(岸田外務大臣)
 日本を取り巻く安全保障環境は,一層厳しくなっている。グローバルなパワーバランスの変化,軍事技術の急速な進展により,大量破壊兵器や弾道ミサイルの開発・拡散,サイバー攻撃や国際テロ等,国境を越える新しい脅威が増大し,もはやどの国も一国のみでは,自国の平和と安全を守ることはできない。
 このような考えの下,日本は,国際協調主義に基づく「積極的平和主義」の立場から,地域及び国際社会の平和と安定及び繁栄の確保にこれまで以上に積極的に寄与していく。
 今般,安保法制の整備の基本方針について閣議決定を行った。こうした取組は,国民の命と平和な暮らしを守り,もって国際社会の平和と安定にこれまで以上に貢献するためのものである。もとより,特定の国を対象としたものではない。
 我が国は,平和国家としての歩みを引き続き堅持していく。我が国の政策に対し,これまで多くの国から支持を得ている。これは,戦後の平和国家としての日本の歩みや実績が世界中の多くの国から信頼され,今日の決定がその延長線上にあるものと受け止められているからだと確信している。しかし,日本の安全保障政策について各国の理解を得る努力は引き続き重要であり,今次訪問においても,私自身からしっかりと説明したいと考えており,中国やロシアを含む関係国に対しても今後とも丁寧に説明していく考えである。

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