世界が報じた日本


2014年7月9日付

平成26年7月18日

 昨日の安倍晋三氏の議会での演説は,日本政府と豪州政府の関係の豊かさ,深さ,そして広がりを示すものであった。我々は,開かれた政治システムに始まり,競争市場,自由貿易,人権,法の支配に至るまで,多くの利益を共有し,多くの共通理念を有している。その関係は,試練に耐えてきた友好関係である。トニー・アボット首相が念を押したように,「両国の国民や指導者は,過去が未来の妨げになることを許さなかった」からこそ,70年前の恐ろしく破壊的な戦争の灰の上にこのような関係を築くことができたのである。安倍総理は,第二次世界大戦中に亡くなった若い豪州兵士たちに対し,日本の「最も誠実な哀悼の意」を示し,「歴史の暴戻」を繰り返さないと強く約束した。しかし,この歴史的瞬間は,20年に及ぶ経済低迷と,戦後の平和主義憲法によって課された戦略的硬直性から抜け出した,より自信に満ちた日本の証でもあった。

 かつて軍国主義国家だった日本は,国際社会の模範的な市民となり,アジア太平洋地域の安定と繁栄を促進するために貢献してきた。我々は今,日本自身がそう望んでいるように,日本がより「普通の国」であるべきとの主張を目にする。もちろん,このより大胆な姿勢は豪州外交にとって試金石となるものであり,特に我々の最大の貿易相手国である中国とのつきあい方が試されることとなる。中国国営の新華社通信は,その厳しい社説において,安倍総理が「反中国ネットワークを構築する」ために豪州を利用したと主張した。それに加え,日本の首相の訪問は「アジア太平洋地域に新たな不安定をつくり出す」とも主張している。このような気障りで誤った主張は,中国国内の読者にはうまく作用するかもしれないが,より広い場において奏功することはない。

 中国政府は,ベトナムやフィリピンなど近隣諸国とのいくつかの領土係争において,そのレトリックと攻撃的態度を昂じさせている。南シナ海の係争海域で,中国はベトナムの海岸に近い海域に5基の石油掘削装置を移送し,ベトナムを驚愕させた。中国は尖閣諸島を巡って日本とも争いがあり,中国空軍は数百回(原文のママ)にわたり日本の領空内に飛来している。ビショップ外相は,中国大使を招致し,中国政府が軍事区域を拡張したことに対する懸念を表明した。続く中国訪問で,ビショップ外相は公の場で譴責された。安倍総理は昨日,中国を名指しはしなかったが,太平洋とインド洋をつなぐ広大な海と空が「オープンで自由」であること,紛争が平和的に解決されることを求めた。総理は,「何か主張する際は法を遵守し,力や,威嚇を用いてはならない」と述べた。

 アボット首相は,信頼できる外交的な表現を用いて,「古い友人を失うことで新しい友達を獲得しない」と宣言した。私たちは,オバマ大統領のアジアへの「ピボット」を歓迎し,米国がそのために資源を更に割り当てることを望む。また,中国への輸出に対する貿易障壁の撤廃も望む。変わりゆく外交の地雷原の中を進むことは常に容易とは限らないが,アボット政権は,豪州がそれぞれの国と共有する部分に焦点を当てることを通じて,すべての友好関係を強化することを望んでいると述べた。豪州が,米国,中国,日本,インドネシア,インド,韓国と強く実りのある関係を追求しているのは何ら特別なことではない。例えば,私たちの貿易の51%は中国,日本,韓国との間で行われている。オーストラリア国立大学のヒュー・ホワイト氏は,豪州は米国との戦略的同盟と中国との経済関係とのいずれかを選択しなければならないというインチキな考えを,とりつかれたように売り歩いている。我々は,アボット首相と同様,このような漫画的な戦略観をきっぱりと拒否する。これは,我々が中国のために米国にこの地域から出ていくよう促せというのものであり,誤った道である。

 安倍総理が述べたように,日本は,我々の戦略的,経済的パートナーシップに関して「制限なし」にしたいと考えている。日本は鉄鉱石採掘などの地域産業を発展させる上で重要な役割を果たしてきたし,日本の投資は1,260億ドルに上る。これは中国による投資額(米国及びニュージーランドの投資額には及ばない)の4倍以上である。これは,食料,資源,エネルギーのみならず文化,教育及び技術交流の面にもわたり,膨大な可能性を秘めた,決定的に重要なパートナーシップである。日豪両首脳が本日,本紙に書いているように,今回の貿易協定は,将来をよく見通した50年前の合意と同様に,今後何十年にもわたって両国に繁栄と友情をもたらすだろう。

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