寄稿・インタビュー


2014年6月30日付フィナンシャル・タイムズ紙掲載

平成26年7月1日

私の「第三の矢」は,日本経済につきまとっていた悪鬼を退治する(仮訳)

~経済回復なくして財政健全化はない,と安倍総理は記す


 日本経済再生のための政策パッケージを導入して以来,日本の将来の見通しについて,私がよく尋ねられる三つの質問があります。

 まず初めに,人々は,私が,アベノミクスの「第三の矢」を本当に約束しているかを知りたがっています。間違いなく,私は約束しています。我々の構造改革は,今月,そのギアをハイギアに加速させました。日本は今年,法人税を2.4%引き下げ,翌年度も更なる税率引き下げを行う予定です。数年で法人実効税率の水準を20%台まで引き下げることを目指しています。これは,経済成長を促進し国際的な投資家を引きつけることにつながります。コーポレート・ガバナンスの強化もまた,日本企業の株主価値を高めるために極めて重要です。

 今月,我々は,企業が社外取締役を任命するか又はなぜそうしないのかについて説明を求める規則を設けました。2015年までに,東京証券取引所は幅広い内容のコーポレートガバナンス・コードを導入し,ここでも企業にこれを「実施するか又は実施しない場合の理由の説明」を求めます。100以上の機関投資家は,英国で使われているものに類似したスチュワードシップ・コードを受け入れました。また,我々は,1兆2千億ドルの資産を有する年金積立金管理運用独立行政法人について,前向きな改革を推進しています。可能な限り早くそのポートフォリオの見直しを完了させ,被保険者に利益をもたらすとともに,成長を促す投資も呼び込みます。

 我々は,日本のベンチャー精神を復活させつつあり,創業間もない企業に政府調達への参入機会を創出し,エネルギー,農業,医療サービスを含む分野で市場を開き,新規参入者を促進し,制度改革を追求します。我々は,企業が煩わしい規則から解放される国家戦略特区を設立し,更に一層の規制緩和が計画されています。選ばれた都市は,建物の高さを規制する区画規制から自由になります。会社を始めるための複雑でわかりにくい手続は,ワンストップのプロセスに置き換わります。また私は,最近数か月の間に,環太平洋パートナーシップ協定とEUとの経済連携協定の交渉を加速させました。

 2番目に私がよく聞かれる質問は,日本経済は,4月に実施された消費税増税に耐えうるのかというものです。1997年の場合と異なり,兆候は元気づけられるものです。夏の旅行の予約は昨年よりも好調です。私は,消費は多少落ち込んでも,一時的なものとみています。

 雇用市場もまた,改善しています。有効求人倍率は,18か月連続で上昇しており,ここ8年近くの中で最高水準に達しています。中小企業を含む多くの企業が賃金を引き上げ,この10年で最も急速な上昇をもたらしました。夏のボーナスも大幅な伸びが見込まれています。日本経済の回復により,輸入は昨年,過去最高の8000億ドルに達し,世界経済に貢献しています。

 3番目の質問は,日本の経済成長は,高齢化社会と低下する出生率の中でも持続可能かというものです。私の答えは明確です。我々は全ての国民の支持を必要としています。私が日本で「ウィメノミクス」の旗印を掲げて以来,53万人の女性が労働市場に参入しました。大企業は,少なくとも1人の女性を役員として任命することを誓約しました。上場企業は,この秋に発表されるルールの下で,その進捗状況を確かめるための外部からのチェックを受けることになります。国家戦略特区で,外国人労働者を家政婦として雇用することを可能にすることで,働く母親たちを支援します。

 我々は,人々がその才能を最大限生かせるように支援する必要があります。キーワードは多様性です。柔軟性を欠く労働制度は,女性,若者,高齢労働者や特別な能力を有する人々などを含む全ての人々が,十分に能力を発揮できるよう見直していきます。これまで活用されてこなかった資源を開花させることは,力強く持続可能な成長につながります。

 財政の持続可能性は,極めて重要です。2014年度の予算では,プライマリー・バランスが,中期財政計画における目標を上回る500億ドルの改善を見ました。しかし,経済再生なくして財政健全化はあり得ません。我々は,経済を着実に再生させることを通じて,財政状況を改善します。

 我々の連立政権は,衆参両院で過半数を有しています。政治環境は,今や我々の改革を推進するに有利なものとなっています。日本の国民は,「決められない政治」からの脱却を求めてきました。国民の支持を受けて,私は,この一連の改革の実行に断固コミットしています。

(寄稿者は,日本の内閣総理大臣である。)

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