寄稿・インタビュー

「核兵器のない世界はまだ実現できる」

平成28年4月10日
広島には、海と山に囲まれた美しい自然、豊かな文化と長い歴史があります。私の地元である広島は、原爆投下から蘇った「平和」と「希望」の象徴です。私自身、そして広島の人々にとって、軍縮・不拡散の問題は常に特別な意味を持ってきました。

ちょうど2週間前、「核兵器のない世界」の実現に向けた取組について議論するため、若者たちが広島に集い、私は彼らの意見に耳を傾けました。「被爆者の方々から平和のバトンを受け継ぎたい」、「世界のリーダー達に核兵器廃絶に向けて真剣に取り組んでほしい」、若者たちはこう述べました。 

彼らの思いを胸に、議長として週末のG7外相会合を開催します。史上始めて被爆地広島で開催されるG7外相会合であり、軍縮・不拡散についてしっかりと取り上げたいと思います。

昨年のNPT運用検討会議以降、核兵器国と非核兵器国との対立が深まっており、残念ながら「核兵器のない世界」に向けた国際的な機運はしぼみつつあり、被爆地広島出身の外相として強い危機感を感じています。

これが我々の直面する現実であり、今週のG7広島外相会合では、核の問題を含む安全保障が重要な議題となります。

また、北朝鮮による1月の核実験及び2月、3月の弾道ミサイルの発射は、地域のみならず、国際社会共通の深刻な脅威です。核兵器国と非核兵器国の双方が含まれるG7として、広島の地から力強いメッセージを発出し、国際的な機運を再び盛り上げ、「核兵器のない世界」に向けた取組を再起動させたい、そのために共に「広島宣言」を発出できるよう議長として尽力します。

4月11日には、G7各外相が揃って広島平和記念資料館を訪問し、原爆死没者慰霊碑への献花を行います。世界の指導者に被爆の実相に触れてもらうことは、「核兵器のない世界」を目指すという国際的な機運を盛り上げる上で重要な一歩になると確信しています。

我々は、その他にも喫緊の課題に直面しています。今年に入ってからも、先月のブリュッセルにおける悲劇をはじめ、各国でテロ攻撃が頻発しています。テロ・暴力的過激主義が激化し、欧州や一部のアジア諸国にも地域的広がりを見せています。これは国際社会として取り組むべき課題です。無辜の市民の命を奪う卑劣なテロは、平和と繁栄という人類共通の価値への挑戦であり、日本は断固これを非難します。

また、深刻化する難民問題に対しても、その背景にある根本原因に中長期的に取り組み、暴力的過激主義を生み出さない寛容で安定した社会の構築に向けて取り組む必要があります。

G7は、国際秩序へのコミットメントを含む基本的な価値を共有しており、国際社会が直面する喫緊の課題への対応を主導すべきと考えます。広島においてジョン・ケリー米国務長官を含む各国の外相をお迎えし、これらの課題に対して率直な議論を行いたいと思います。

これらの脅威に対応していくためには、現実的な取組が必要です。G7各国がそれぞれ強みをいかした対策を行い、協働して取り組むべきです。その中で、日本としては、日本の強みを活かし、短期的な人道的な支援と中長期的な観点から開発協力を組み合わせて貢献していきたいと思います。

8年振りにアジアで開催されるG7外相会合であり、北朝鮮や海洋安全保障といったアジアの問題についてもしっかり取り上げ、G7としてゆるぎない対応を取りたいと思います。南シナ海等で見られる力による現状への変更の試みは、法の支配に基づく国際秩序への挑戦です。G7は、公海における航行・上空飛行の自由の確保や一方的な行動の自制、海賊対策を含む海上交通の安定確保に向けた取組の重要性といった認識を共有しており、適切なメッセージを発したいと思います。

被爆から70年を経て、広島は「平和」と「希望」の象徴となっています。その広島にG7各国の外相をお迎えし、平和、繁栄、未来への希望といったメッセージを共に発したいと思います。

寄稿・インタビューへ戻る