寄稿・インタビュー

「対パンデミックのG20。日本の見方」

令和3年6月30日

 福島の事故から10年後もEUによる日本産食品の規制は多い。茂木大臣は、日本が「年内に途上国に18億回分のワクチンを供給するのに必要な資金を確保」と述べた。
 茂木外相がイル・フォリオ紙に対し、「より良い回復」を実現するためのレシピについて独占的に語る。

 ローマ。明日からマテーラでG20外相会合が始まる。地球上にある20の経済大国によるパンデミック後の最初の会合であり、多国間主義に基づくシステムを再構築していくために欠かせない機会となる。G20の中で最も重要な国の一つ、日本の外務大臣を2019年より務める茂木敏充大臣と、日本の外交政策にとって最も重要な課題につき話すことができた。

 「パンデミックという危機の克服、『より良い回復』の実現、将来の危機への備えと対応の強化、これらを実現するためには、多国間主義の下、G20が結束して行動することが肝要です。現在、国際社会が直面する共通の課題はコロナ対策と気候変動です。それぞれの課題に関し、日本は多国間主義をベースに国際社会と緊密に協力しながら取組を進めています」と茂木大臣は説明する。

 「例えば、途上国を含めたワクチンの公平なアクセス確保のため、日本はGaviと共にCOVAXワクチン・サミットを共催し、年内に途上国に18億回分のワクチンを供給するのに必要な資金を確保しました」

 さらに、同大臣はイル・フォリオ紙に対し、「また、実際にワクチンを一人一人に届けるため、『ラスト・ワン・マイル』支援も重視して実施しています」と述べた。

 「気候変動に関しては、世界の排出量の4分の3を占めるG20には、将来世代に対する特別な責任があります。今こそ、各国が野心を引き上げ、行動すべきと考えます。日本は、2030年度の削減目標を46%へ引き上げ、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電への政府による国際的な新規直接支援を年内に終了します。さらに、2021年からの5年間で官民合わせて6.5兆円の気候資金支援を実施することにコミットしています」

 「最優先のコロナ対策、気候変動対策に加え、ポスト・コロナの途上国における持続可能な開発の実現もG20の重要テーマです。そのためには、途上国向けの開発金融の公正さ、透明さを確保することが重要です。このような分野で、多国間主義に基づきグローバル・ガバナンスを強化する必要があります」

 「アフリカ開発も、日本にとって重要な課題の1つです。日本は、四半世紀を越える歴史を誇るアフリカ開発会議(TICAD)を通じて、アフリカ自身が主導する発展を後押ししてきました。2022年には、チュニジアでTICAD8を開催予定です。新型コロナがアフリカの経済社会に甚大な影響を及ぼす中、今回G20外相会合でのアフリカに関するセッションにおいて、私から、アフリカ開発のための国際的連携を呼び掛ける考えです」

 「また、貿易については、新型コロナ、デジタル化、新興国の成長等の新たな世界経済に対応すべく、公平な競争条件の確保も含め高い水準の多国間のルール作りを目指し、年末の第12回WTO閣僚会議に向けWTO改革でもG20で連携していきます」

 「日本は、こうした山積する重要課題に大きな責任を持つG20諸国の結束のため、議長国イタリアと緊密に連携し、会議の成功に協力していく考えです」

 日本とイタリアは、とりわけ日EU経済連携協定が発効した2年前から両国間の関係をさらに強力なものにしている。日本とEU関係をさらに改善できる点があるとすれば、何か。そのためにイタリアはどのような協力ができるだろうか、という問いに対して、大臣は以下のとおり述べた。

 「日EU関係は、日EU経済連携協定(EPA)及び日EU戦略的パートナーシップ(SPA)という法的基盤によって、かつてなく緊密です」

 「日EU・EPAを基盤に、イタリアを含むEUとの経済関係を更に強化するとともに、自由貿易の旗手として、保護主義的な動きに対抗し、自由で公正な経済圏を更に拡大していくべく協力していく考えです」

 「日EU・EPAをきっかけとして、日本の消費者が高品質なチーズやワインなどのイタリア産品をより身近に感じることになり、日本とイタリアの貿易にも好影響を与えています」

 「そのような中で、5月に開催された日EU定期首脳協議では、様々な分野での日EUの連携・協力の強化で一致しました」

 「まず、本年4月にEUが発表した『インド太平洋における協力のためのEU戦略』を私自身、EUがインド太平洋に関与していく強い意思として歓迎していますが、日EU首脳間で、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた協力の強化を確認しました。イタリアが、日EU間の連携強化に向け主導的な役割を果たすことを期待します」

 「また、気候及び環境分野の協力枠組みである『日EUグリーン・アライアンス』を立ち上げることで一致しました。今後、この枠組みに基づき、日EUで気候変動及び環境分野の取組を加速し、国際社会をリードしていきたいと考えています」

 「さらに、デジタル・トランスフォーメーション推進は、ポスト・コロナの世界経済においてますます重要性が高まっており、日EU間でのデジタル分野での協力強化に取り組むことでも一致しました。『信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)』の推進や、安全でオープンな5Gネットワークの推進及びビヨンド5Gにおいて、イタリアとも協力できればと思います」

 最後に茂木大臣は「東日本大震災から、今年で10年となりました。震災の際の、イタリアからの温かい御支援に感謝しています。日本はEU以上に厳しい基準を課し、食品の安全を確保しています。多くの国々が日本産食品への輸入規制を撤廃する中、EUではいまだに規制が維持されています。イタリアの皆様の御理解と御協力を得て、1日も早くEUの規制撤廃が実現されることを強く期待しています」と締めくくった。

(ジュリア・ポンピーリ記者)

イル・フォリオ紙(イタリア)による茂木外務大臣インタビュー(掲載記事(イタリア語)(PDF))別ウィンドウで開く

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