「学生と語る」
令和6年度「学生と語る 私の提言」
開催報告


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令和7年2月13日(木曜日)、令和6年度「学生と語る 私の提言」を外務省で開催しました。これは、日本の次世代を担う学生に外務省や外交官の仕事を知ってもらい、日本の外交政策や国際情勢等に対する関心や理解を深めてもらう目的で例年開催しているもので、本年度は、新たにプレゼンテーション部門を加え、学生による政策提言の内容で競うコンテストを行いました。開会式の後、主要な外交政策である「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」をテーマとした基調講演、その後、テーマ別の4つの分科会((1)情報戦、(2)日韓関係、(3)国連、(4)気候変動)を行いました。昼食を挟んだ午後には、学生による政策提言のコンテストを行い、審査員による審査を経て、生稲晃子外務大臣政務官の出席の下で表彰式を行いました。さらに、参加いただいた大学生・大学院生と外務省員との懇談の機会も設けました。対面、オンラインあわせて計117名の学生に参加いただき、活発な対話が行われました。
開会挨拶

北村 俊博 外務報道官
開会式では、北村外務報道官から、冒頭、最近の国際情勢や日本外交の基本方針に触れた上で、日本の次代を担う学生を主役とした参加型イベントを通じて、日本の外交政策等について理解を深めてもらう事業目的や国内広報の意義を述べつつ、今回新たに追加した政策提言型のプレゼンテーションを含む各種プログラムの趣旨を説明しました。また、自由闊達な議論を通じて視野を広げ、参加学生の将来にも資する有意義な機会になることを祈念する旨述べ、開会の挨拶としました。
基調講演


テーマ:地政学的競争の激化とFOIP実現に向けた日本外交の取組
講師:永森 沢吾 総合外交政策局 総務課 外交政策調整官
永森外交政策調整官から、日本の主要な外交政策である「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の沿革や概要、具体的な取組について、自身のこれまでの経験も踏まえつつ説明しました。学生との間では、将来的なFOIPに対する評価、関係国との足並み、近隣国との関係等に対する質疑応答がありました。参加学生からは、「FOIPの背景となる歴史や概念を学ぶことができ、非常にためになった。また、政策に対する外務省としての政策や世界に対する捉え方について、話の節々から感じることができ、外交政策に対する見方が変わるきっかけとなった。」等の声がありました。
分科会


FOIPに関する基調講演を踏まえて行われた4つの分科会では、各テーマについて外務省員の講師による概説、少人数でのグループワーク(グループ毎のディスカッション及び各グループ代表による発表)、学生と講師との間で質疑応答を行いました。午後のプログラムであるプレゼンテーション・テーマの、日本への支持を広げる広報戦略とも内容を連動させ、分科会においても各テーマに沿った広報戦略をグループワークの題材に設定して議論を行いました。
テーマ:情報戦と日本外交
講師:松永 香織 大臣官房広報文化外交戦略課 主査
松永主査から、偽情報や情報戦について概説後、グループワークの題材として、外務大臣の外国訪問の際に、訪問先の国民に向けてFOIPに関する日本外交の取組への支持を広げる目的で発信するSNS用のショート動画の構成・内容を取り上げました。学生からは、「情報戦において外交官が何を意識して職務に取り組んでいるのか、また、情報戦における困難な点について知ることができた」等の声がありました。
テーマ:日韓国交正常化60周年を迎えた日韓関係
講師:早野 まい アジア大洋州局北東アジア第一課 課長補佐


早野課長補佐から、日韓関係の変遷や現下の戦略環境の下での二国間関係等についての概説後、国交正常化60周年を通じて日韓交流を一層後押しするためのSNS発信用のショート動画の構成・内容を題材とするグループワークを行いました。学生からは、「日韓関係について、最近ニュースで取り上げられているようなものを含め、様々なトピックについてお話を聞くことができた。」等の声がありました。
テーマ:国連創設80年と平和に向けた日本の貢献
講師:藤澤 詩乃 総合外交政策局 国連企画調整課 事務官


藤澤事務官から、国際連合の沿革・概要、日本の国連外交等についての概説後、日本外交の取組を広く発信するため、国連総会の一般討論演説を題材にグループワークを行いました。学生からは、「実際の業務内容をイメージできる、非常に良い機会だった。」等の声がありました。
テーマ:COP30へ向けた日本の気候変動外交
講師:中澤 風美子 国際協力局 気候変動課 課長補佐


中澤課長補佐から、気候変動交渉の経緯や日本の取組、途上国支援等について概説後、COP30に向けて日本の気候変動外交への支持を広げるための広報を題材にグループワークを行いました。学生からは、「グループワークは取り組みやすく、同じグループのメンバーがどんどん意見を出してくれたので刺激を受け、楽しく参加できた。」等の声がありました。
プレゼンテーション/表彰式


テーマ:「私の提言 地政学的な競争が激化する中、日本への支持を広げる広報戦略とは」
今回のテーマ設定の背景として、地政学的な競争が激化する中、偽情報の拡散を含む情報操作などを通じた、認知領域における国際的な情報戦が恒常的に発生していることを踏まえ、日本への支持を広げるための積極的な広報活動を展開する必要があるという前提で、各学生の興味関心に沿って取り上げたい外交政策を選び、国内・国外に向けた広報戦略について、柔軟な発想での個性ある提言をしていただきました。
事前に発表者の募集を行った結果、57名の学生から提言(要旨)の提出があり、外部有識者を含めた審査員による厳選なる書面審査を通過した以下の6名が、ファイナリストとして当日プレゼンテーションを行いました。
表彰式では、生稲外務大臣政務官から挨拶及び最優秀者への外務大臣賞の授与が行われました。生稲政務官は挨拶の中で、国際社会の平和と安定を希求する日本への理解と支持を広げるため、積極的な広報活動を展開することがいっそう重要となっていること、日本の政策や取組を正確に発信し、日本の多様な魅力を伝えることを通じて国際社会における日本の存在感を高めていく取組を行っている旨述べました。また、日本の次代を担う学生のアイデアは日本の未来を築くために不可欠であること等プレゼンテーションを開催した目的を述べつつ、発表者6名の方々が独創的、且つ、斬新な発想で、熱のこもった発表をいただいたことに敬意を表しました。最後に、世界の人々の心に響くような発信の重要性を改めて考えるきっかけとなれば大変嬉しく思う旨述べました。
プレゼンテーションの審査員3名



【外務大臣賞】


タイトル:オールジャパン・オール中東で紡ぐ日・中東・水素ビジョン
東京大学 経済学部経済学科4年 小倉 朋子(おぐら ともこ)さん
小倉さんは、(1)日本の水素技術の優位性の強化、(2)日本のエネルギー安全保障の確立、(3)気候変動対策に取り組む日本として海外からの支持獲得という目指す成果・目的のために、日・中東・水素ビジョンという手段・方法を掲げ、国外向け広報として「水素×観光産業」を、国内向け広報として「水素×スポーツ産業」を提案し、水素を通じたグローバル・サウス諸国との信頼関係構築等について提言を行いました。
【優秀賞】

タイトル:「届ける」を「共に」 RIC インド太平洋の「架橋」
東京大学 教養学部文科一類1年生 河合 隆志(かわい たかし)さん
河合さんは、偽情報対策について他国から支持される基本理念を持つべきとして、R(Resilience)は国民の情報リテラシーの養成、I(Inclusive)は国民を誰一人取り残さない広報、C(Community)は国民を「外交」のパートナーに、という3本柱を掲げ、国内向け広報戦略では偽情報に関する視聴者参加型ショートドラマの制作を提案し、RIC(リック)によって偽情報という洪水に負けないインド太平洋の架橋となるべき等の提言を行いました。
【入賞】(発表順)

タイトル:QUADとASEANの架け橋たれ QUASEA(QUAD-ASEAN戦略的協力機構)が切り拓くインド太平洋の未来図
京都大学 法学部2年生 長尾 昌明(ながお まさあき)さん

長尾さんは、FOIPが理念に留まっているのではないか、中国との経済的結びつきが深いASEAN諸国からの理解が不足しているのではないかと指摘し、国外向け広報戦略では、QUASEA(QUAD-ASEAN Strategic and Engagement Association, QUAD-ASEAN 戦略的協力機構)の設立を日本が主導すること、安全保障モデルとしてMRDS(相互役割分担型安全保障モデル、Mutual and Role-Distributed Security model)を提言、また、国内広報戦略として、外務省に「インド太平洋庁」の新設を提言しました。
タイトル:災害大国ゆえの強み グローバル広報で築く防災リーダーシップ
名古屋大学 理学部地球惑星科学科2年生 森宗 陽平(もりむね ようへい)さん

森宗さんは、日本が年月をかけて培ってきた防災力は世界に誇る財産であるとして、国外向けの防災広報では、日本の知見を生かした学びから実践へと繋げる若者による防災イノベーションや現地に適した防災広報を、また、国内向けの防災広報では、政府のみならず日本国民が個人レベルでも外国人観光客や在留外国人を支援できる仕組みを構築する等を提言しました。
タイトル:世界遺産外交を市民へ
名城大学 外国語学部国際英語学科3年生 杉本 葵(すぎもと あおい)さん

杉本さんは、日本のソフトパワーに焦点をあて世界遺産外交をとりあげ、危機遺産保護のSNS活用方法の見直しを提言し、効果として、国外ではグルーバル・サウスからの支持や安定した協力、日本支持への国際世論の形成、国内では幅広く危機遺産について知ってもらいつつ、外交について専門的な知識がない市民にも理解してもらいやすくなる等の発表を行いました。
タイトル:日本の宇宙技術力とルール形成能力を実感する広報
上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科国際関係論専攻博士前期課程1年生 出口 隼詩(でぐち しゅんし)さん
出口さんは、日本の宇宙技術の高さや宇宙分野のルール形成における日本の役割を実感、体験できる広報をすべきとして、国外向け広報戦略では、日本の民間宇宙企業の技術を諸外国の課題解決に繫げるアイデアをマッチングさせるプラットフォームの形成、及びJAPAN HOUSEを活用した成果を伝えるイベントの実施、国内向け広報戦略では、社会人や学生向けに、戦略ゲームの「ポリミリ」を参考にした合意形成ゲームを通じた広報を提言しました。
【学生特別賞】

「学生特別賞」は、審査員3名による審査とは別に、会場で参加した学生に最も良かったと思うプレゼンテーションに1人1票で投票してもらい、最多得票数を集めた発表者に授与されたものです。河合 隆志(かわい たかし)さんが受賞しました。
熱のこもったプレゼンテーションを行った発表者6名からは、表彰式で、「皆様の温かい声援の中で発表ができたことをとても嬉しく思っている。」、「緊張していたが、自分の伝えたい思いが伝わったのかと思い、非常に嬉しく思っている。」、「参加者から個人的にも意見や質問をもらい、大変刺激をもらった。この経験を生かして今後も学生生活の糧にしていきたい。」、「分科会を含め、対話する機会を通して、普段は話ができない皆さんとお話しすることができて、大変良い学びになった。」等の声が寄せられました。
また、プレゼンテーションを聴講した参加学生からは、「自分では想像もつかないような多面的な発想を学ぶことができた。」、「斬新な政策提言で、日本の外交における興味分野が広がった。」、「統一されたテーマがありつつも、各発表者の選んだ視点が多岐にわたり、非常に示唆に富む内容でインスピレーションを受けた。」、「それぞれ異なった発表で、とても質が高かったため勉強になり、同世代として自分も頑張らなければとすごく刺激になった。」等の声がありました。
外務省員等との懇談会


表彰式に先立ち、参加学生と外務省員等との懇談会を行いました。これに加え、昼食休憩の時間においても外務省員との懇談の機会を設けました。この2つの懇談には延べ35名以上の外務省職員が参加し、リラックスした雰囲気の中、外務省の仕事や外交官のキャリア含め幅広い話題について、参加した学生との間で自由で活発なやりとりが行われました。参加学生からは、「外務省の職員と心置きなく話ができ、大きな糧となった。」、「ざっくばらんに会話でき本当に良かった。」、「女性職員から普段は聞けないようなライフイベントとの両立や、詳しい業務について聞くことができた。」、「普段はなかなか聞くことの出来ない現場の生の話や、入省するまでの経緯が聞けて、大変参考になった。」等の声がありました。

全体を通じての参加者の感想
- 外交官と話をする機会の他、プログラム全体を通して学生参加型であった点が大変良かった。
- 同世代の学生がこんなにも幅広い知識と視点をもっているということに刺激を受けた。また外務省員の方と直接お話する機会が持て、外務省の仕事に対するポジティブな印象が強まった。
- ディスカッションを通して外務省の仕事の中で大事にしている理念を学ぶことができ、外務省員の方とのコミュニケーションは非常に有意義だと感じた。
- すごく濃密な時間を過ごせて良かった。
- とても勉強になり、来年もまた参加したいと思った。