国際問題プレゼンテーション・コンテスト

平成29年10月13日

 外務省は,9月24日(日曜日),日本橋社会教育会館にて「国際問題プレゼンテーション・コンテスト」を開催しました。今年のテーマは「私の提言 国際社会で活躍する日本人を増やすための方策とは」でした。
 全国各地から応募があった事前審査論文の選考を経て本選出場権を得た5名による様々な観点からのプレゼンテーションが披露されました。審査委員会による厳正な審査の結果,聖心女子大学の佐々木初奈子さんが外務大臣賞,山口大学の嶋原成美さん,京都大学の金世栄さん,国際教養大学の池田あい呼マリアさん,東京大学の高橋亜紗美さんが優秀賞を受賞しました。

(写真1)受賞者の皆さん 受賞者の皆さん(優秀賞は,当日発表順となっています)
(写真2)外務大臣賞を受賞した佐々木初奈子さん 外務大臣賞:佐々木初奈子さん
(聖心女子大学)
(写真3)優秀賞を受賞した嶋原成美さん 優秀賞:嶋原成美さん
(山口大学)
(写真4)優秀賞を受賞した金世栄さん 優秀賞:金世栄さん
(京都大学)
(写真5)優秀賞を受賞した池田 あい呼マリアさん 優秀賞:池田 あい呼マリアさん
(国際教養大学)
(写真6)優秀賞を受賞した高橋亜紗美さん 優秀賞:高橋亜紗美さん
(東京大学)

審査委員による講評

村田 俊一 関西学院大学総合政策学部教授

 皆様、本日は誠にありがとうございました。私の大学生時代を思い出すような非常にいいプレゼンテーションでした。世界の今の状況の中でMDGs(ミレニアム開発目標)、SDGs(持続可能な開発目標)という言葉がなかなか出てこなかったが、世界の中の日本と考えると、世界のNorm規範・規約というものを、途上国と、そして産業国と相互に責任を持って実行していく日本の立場は非常に重要です。
 21世紀型の求められる人材というのは、打たれ強く、心の痛みの分かる若者です。国内でもマーケタブル、海外でもマーケタブル、オールラウンドな人材が日本には必要。都会集中型の人材育成ではなく、都会でも地方でも活躍できる人材育成。地方公共団体の国際的な役割が今グローバルで話し合われており、若者が地方でも活躍でき、国際協力に従事でき得るような、生産性の高い魅力的な地方を創出することが非常に大事。日本に人材はいないのかと私はふと考えると、日本にはいる。ただ、外に出せない状況にある。日本はいい人材を囲い込んでしまう。プレゼンテーションの中で、30年前に私が言ったこととかなり共通したところがあるというのは、まだ日本というのはインターネットでもSNSでもコミュニケーションできるのに有効活用せず外に出せないような非常に複雑な二重構造に私たちが生活をしているということ。情報の選択や相互依存。外交的にも途上国と隣国と産業国とバランスよく付き合っていくこと。その中での英語教育であり、その内容重視です。最終的に受験制度改革をしなければならない時期がもうとうに来ている。そういうメッセージをあなた方から受け取りました。
 一番素晴らしかったのは、真剣にあなた方がこれからの人材育成のことをしっかりメッセージとして伝えていただいたというのが一番心に残りました。もう一度繰り返します。これからの人材はオールラウンドで、国内のみならず海外でも両方を行ったり来たりしながら活躍できるようなマーケタブルな、そして一番困っている、一番やっぱり悩んでいる、そして貧しい、そして声の聞けない、声の届かない人たちに耳を傾ける、心の痛みの分かる人材になってほしいと思います。本日はどうもありがとうございました。

勝間 靖 早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授

 皆さん、おつかれさまでした。村田先生から非常に適切な講評があったので、私から付け加えることはあまりないのですが、あえて五点を申し上げたいと思います。
 一点目は,この国際問題プレゼンテーション・コンテストで言うところの「国際問題」とはいったい何かということを、我々で今後も考えていかなくてはいけないと思います。地球規模課題と言ってもいいかと思います。国際社会で活躍するために今、国際社会で何が課題とされているかを知る必要があります。たとえば、持続可能な開発目標ということであり、そのほかにも環境、武力紛争、人道危機の問題とか多くの問題があります。現状を把握し、そうした「国際問題」の解決に何をすべきか考えることが重要です。
 二点目は、いろいろ理屈をこねているより、「現場に行け」ということです。現場に行くと見えることがある。最も声を上げられない弱い立場にある人の声に耳を傾ける、ということをお勧めしたい。そこから「国際問題」解決の糸口が見つかると思います。
 三点目は、教科書で読んで理屈として分かっているとしても、これが意欲に繋がるかというと、必ずしもそうでないということです。現場に行って、理不尽な状況に置かれている人たちの姿を見ると、私たちの中には憤りであるとか、悲しみであるとか、色々な感情が出てきます。私自身が国連を目指したのも、そういった不条理、「なんでこんな状況にあるのだろう」ということに対する怒りであったり悲しみが原点です。そして、それが意欲、モチベーションにつながります。
 四点目は、コミュニケーション能力です。語学力について非常に重視されていますけれど、語学を含めたコミュニケーションの能力が非常に重要です。
 五点目は、コミュニケーション能力も含めてですけども、コンピテンシーといって職務遂行に必要とされる総合的な能力が国際機関などでは重視されているということです。逆に言うと、専門性がどれだけ重要かと聞かれると、必要だけれど、それで十分ではない、ということです。私自身、大学に在籍した年数は誰にも負けないくらい長いのですけれど、途上国の現場に行ったら自分が無力だと感じました。大学院で学んで博士号まで取ったとしても、それで人々を救えるかというと、どうすればいいか難しい。そういった無力感を味わいました。そういう意味でも、コンピテンシーという概念を知っていただきたいと思います。
 最後に、今後も皆様のご活躍をお祈りしております。ありがとうございました。

隈元 美穂子 国連訓練調査研究所(ユニタール)広島事務所所長

 皆さん、おめでとうございます。私が皆さんくらいの年齢の時には、果たしてこんな素晴らしく出来ただろうかと思う、素晴らしいプレゼンテーションでした。他のパネリストの方々からの評価に追加しまして、今後更にプレゼンテーションを磨く中でのヒントを私からお伝えできればと思います。
 一点目は、パワーポイントプレゼンテーションの効果的な利用方法です。
パワーポイントはツールであり、自分を助ける道具として使用することが大事であるという点です。例えば、パワーポイントに凝り、そちらに聴衆の注目がいってしまう状態は避けなければいけません。最近ではパワーポイントプレゼンテーションを使用せずに話しをする事を導入している組織もある程度です。パワーポイントを使うかどうか、使うなら有効に使用する事が大切です。
 二点目をお話します。今回みなさんがされたプレゼンテーションの準備は実際に国際連合で仕事をするプロセスと実は類似する点があるなと思いました。そのプロセスは、まず課題に焦点を当て、現状を把握する、そして根本原因を見つける。そこから解決策を考えていくのですが、現時点では何が実施されているのか、その問題点は何か、予算や時間などの制約などを考えて現実可能な解決策を絞っていきます。これは国連が実施をするプロジェクトマネジメントのプロセスとすごく似ています。その中で特に大切なのは根本原因を探り、何ができるかを考え優先順位を決めることです。今後課題に向き合い対処する上でそこを更に考えていかれるといいと思います。
 最後に、皆さんはこれからすぐ、もしくは数年先に社会に出て色々な分野で活躍されていくことと思います。若い世代の方々にとってのロールモデルであるとの意識を持ち、次世代のリーダーとしての自覚を持って頑張って行って欲しいと思います。おめでとうございます。

焼家 直絵 国連世界食糧計画(国連WFP)日本事務所代表

 皆さん、おめでとうございます。非常に質の高いプレゼンテーションを聞くことができまして、私自身も学ぶことがありました。他の先生方がかなり学術的なコメントをされましたので、私の方からはちょっと違ったアングルでひとつコメントをさせていただきます。
 私自身19年間で過去9か国勤務しました。結論と言いますか、やはり長く勤める上で大事なのは精神力・体力・適応力だと思います。そういった精神力・体力などは、いざ身につけようと思って身に付くものではないので、やはり今皆さんが日々どのようなかたちで人と接しているかだとか、どのように物事に対して自分で解決しているかだとか、人に批判をされた時に誰かと喧嘩をするような状況に陥った時に、どのようにそういった状況に対応していくだとか、むしろそういったことが非常に重要になってくるのではないかなと思います。私自身もやはり一番厳しい環境で、特に私の場合アフリカだとか中東で勤務することがありましたが、やはりそういう一番厳しい環境で一番学ぶことが多く、一番成長することが出来たので、皆さんは、今後、学生生活・社会人経験においても自分ができると思った所にとどまらず、新しく、これは自分には向いてないのではないのかなと思うことにもチャレンジをして、どんどん成長をしていっていただきたいと思っています。また国連を目指したいと思っている方も今後出てくるかもしれませんが、是非そういった時には当方もキャリアセミナーなどいろいろやっていますので、またご相談に乗っていければと思っています。本日はありがとうございました。

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