アメリカ合衆国
岸田外務大臣及び中谷防衛大臣共同会見記録
(平成28年7月5日(火曜日)11時17分 於:飯倉公館)
平成28年7月6日
- 冒頭発言
【中谷防衛大臣】私から,本日は日米間で共同文書を発表できましたが,これは,6月4日にシンガポールでカーター国防長官と会談を行って合意をしたことを踏まえて,その後,日米間で外務・防衛当局が真摯に取組んできた成果でありまして,事件・事故の再発防止にとって,大きな意味があるものであります。私としては,事件・事故の再発防止をするに当たっては,在日米軍において,犯罪行為は厳罰に処すことを明確に打ち出して,それを徹底するなどの抑止的な措置を講じていただくということが重要なことであると考え,直接,ドーラン在日米軍司令官に申し入れるなど,飲酒運転等につきましても,その根絶に向けた措置を日米間で,繰り返し協議をしてまいりまして,本日,ドーラン在日米軍司令官より飲酒運転に対する規制や処分,訓練の強化等の取組について発表されたわけでありますが,この発表の内容はこの最近の事例を踏まえた取組を見直した結果,厳格な対策を講じているということを明確にしたものでありまして,私としては,在日米軍には,本日の発表をこれからしっかりと実施をしていただくとともに,二度と飲酒運転が発生しないように効果的に抑止をし,飲酒運転を根絶するための一層の努力を求めてまいりたいと考えております。今後とも引き続き,日米両国で,このような犯罪防止等につきまして,協力を進めてまいりたいと考えております。
- 質疑応答
【岸田外務大臣】先ほど,申し上げましたように,今般,この日米両政府の間で協議を行い,そして,具体的な再発防止策に対して,内容において一致したもの,これが今回の発表であります。そして,今後,具体的な内容について,集中的な協議を行っていかなければならないわけですが,できるだけスピード感を持って,この作業は進めていきたいと考えます。具体的な期限というものは何も設定していませんが,これは多くの関係者の皆様方の思いに応えるためにも,スピード感を持って対応しなければならない課題であると考えております。
【記者】先ほど,岸田大臣から軍属の範囲を,今回,明確化することができたというお話がありました。確認なのですが,明確化することによって,これまで地位協定の身分を有する軍属というのが,これによって狭められるのか,それとも今後,先ほど仰った文書の中で,狭める対象を更に絞り込むということになるのか,どちらの意義があるというふうに考えているのでしょうか。
【岸田外務大臣】今日の発表内容については,更に協議を行って,具体化していかなければならないと考えますが,例えば,今回の事件のシンザト被告人でありますが,これまでの協議でのやり取りを踏まえれば,こうした見直しが行われた後は,シンザト被告人のような状況に置かれた者,これは軍属には当たらない。こういったことについては,日米で既に一致した認識であります。引き続き,協議を行いたいと考えます。
【中谷防衛大臣】狙いというのは,軍属の範囲を明確にすることによって,軍属の地位を有しないとされた者については,日米地位協定の地位・特権,こういうことを有しないわけです。つまり,このような者は,日本の裁判権,また,それに基づく刑事裁判手続,これは,完全に実施されるわけでございますので,こういった点において,そういう特権がなくなって,しっかりと日本の法律で日本人と同様の処罰を受けるということでございます。このような目的というのは,より明確に軍人・軍属を規定することによって,よりしっかりと管理をしてもらう。指示,また,管理が末端まで至るようにさせていくということが一つの狙いであります。ただ,同時に,このような者についても,在日米軍の業務の関わりのある限りにおいては,適切な管理・監督が行われるということが期待されるものであります。
【記者】今,岸田大臣の方から,「シンザトは当たらなくなる」というのは,ここにあるような,高度な技術または知識を有する者、在日米軍に不可欠な者と,こういうのはやはり盛り込んだと。技術アドバイザーやコンサルタントですね,そういうところから除外していく人間というのが出てくるということでしょうか。
【岸田外務大臣】具体的なことについては,しっかりこれから協議し,確認していきたいと思いますが,少なくとも,今回のシンザト被告人については,この軍属には当たらない,この点については,日米で一致をしているということを御説明させていただきました。このように,従来,軍属に当たるとされていた方の中でも,今回の取組の結果として,軍属に当たらないということになる一つの例として,申し上げた次第です。
【中谷防衛大臣】これは,一層,軍属の条件を明確にして,軍属の地位を得るために,適格性というものの基準を,特定を通じて,米側は,軍属の認定を,一層厳格に行なうことによって,適格者のみが軍属の地位を得るということを確保し,よりしっかり管理・監督するということにあると考えます。
【記者】今回の事件が,直接的に日米地位協定が関係あるものではないこともあって,軍属の範囲の見直しが,事件の再発防止に繋がるかというのが疑問視する声も,特に沖縄県から上がっているわけですけれども,今後,日本政府としては,県の求める抜本的な改定であったり,そうした更なる措置を検討されているのか,今回はこれでとどめるのか,また,今回のことが,再発防止に繋がるのか,その点,どうお考えでしょうか。
【岸田外務大臣】まず,私が,今,説明させていただきましたのは,この日米地位協定上の地位を有する,こうした米国人に対する対応についてであります。そして,再発防止ということを考えますと,あわせて在日米軍自体が行なう様々な措置・対応があります。これらと合わさることによって,結果を出す,こういったことを考えて行かなければなりません。それぞれが合わさることによって,是非,今後,再発がしっかり防止される,具体的な結果に繋がるよう,関係者がそれぞれの立場で努力をしていかなければならない,このように考えるべきだと思います。
【中谷防衛大臣】また,共同発表で,モニタリングを実施するということでありますので,米政府は軍属を含め,米軍人等の地位協定上の地位のモニタリングを強化しますので,こういった地位を得るための適格性,先ほど話がありましたが,これについて作業部会を設けて,日米合同委員会の枠組みの中に設置するということでございますので,今後とも,協議をしてまいりますが,こういったことを通じて,軍属に対する管理・監督が一層強化されて,ひいては,軍属による犯罪が,効果的な再発防止に繋がるということが期待されるということであります。
【記者】今回の軍属の一部が外れるということで,日本の裁判権によって処罰されるというお話がありましたが,沖縄の方からは,この一部の外された人が,基地の中に逃げ込んだりとか,証拠隠滅を図った場合に,米軍の協力が得られなくなるという可能性が出てくるというような指摘もありますが,その点は,今後,交渉の中で,どのように米軍に訴えていくのでしょうか。
【中谷防衛大臣】特権がなくなりますので,そのようなことはできないわけであります。地位協定に基づく軍属の特権や地位がなくなるわけでありますので,そのようなことについては,日本の裁判権に基づく刑事裁判の手続が完全に適用されるということになります。
【記者】基地内での捜査が,日本側ができるかという点では,今後どのように担保されるとお考えでしょうか。
【中谷防衛大臣】軍属の地位を有しておりませんので,日本の裁判権,また,刑事裁判手続を完全に履行されるということで,そのような,特別な権利は有していないということです。
【記者】基地の中でも,日本側の警察が捜査までできるという認識でよろしいでしょうか。
【中谷防衛大臣】これは,地位を失いますので,日本の裁判権と刑事裁判の手続が完全に適用されるということです。
【記者】岸田大臣に確認したいのですが,先ほどのシンザト被告のような人は,軍属にならないということなのですが,この合意が実行された後には,現状よりも,軍属の人数は減るというふうに考えてよろしいのでしょうか。
【岸田外務大臣】確認したいのは,今後,日米で合意した取組が実施されたら,シンザト被告人のような立場の人間は,軍属から外れるということであります。そして,具体的な人数その他は,具体的な適用をしっかり確認しなければならないと思いますが,少なくとも,この範囲は縮小される,これは間違いありません。要するに,軍属という特権を得る人間の範囲は縮小される,これは間違いないところであると考えます。
【中谷防衛大臣】人数のお尋ねがありますが,本年3月末の時点で,日本国内には約7,000名の米軍属が存在するということでありますが,今回の共同発表で,軍属の分類例示については,一致したものでありますが,それぞれの分類の軍属数については,今回の共同発表を踏まえて,現在,米側に確認中でありますけれども,コントラクターの人員は,約2,000名存在すると承知しておりまして,今回の発表を踏まえまして,さらに協議してまいりますので,数については,減るのか,増えるのかは,予断をもってお答えすることはできないということでございます。
【記者】今回,日米地位協定の改定ではない方式にしたことはどういうことなのかというのと,沖縄は,地位協定の改定を求めてきましたが,今回,共同発表という形にしました。どういうふうにこれから沖縄に理解を求めていくのでしょうか。
【岸田外務大臣】まず,確認したいことは,先ほど申しましたように,従来のような地位協定の運用の改善にとどまるような措置ではないということであります。更に一歩進んで,法的拘束力のある政府間文書を作成する。こうしたものを目指していきたいと我々は考えています。そして,政府間文書がどのようなものになるのか,引き続き,協議をしていきたいと存じます。是非,従来の対応との違いは,しっかりと沖縄の皆さんにも説明した上で,引き続き,具体的なものをしっかりと固めて,御説明を続けていきたい,このように思います。