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平成29年8月22日
集合写真
インタビューの様子
インターンの3名

 日下部夏希(東京大学教養学部4年・海上安全保障政策室インターン),原田誠也(早稲田大学政治経済学部3年・地球規模課題総括課インターン),福山大輔(東京大学法学部3年・軍備管理軍縮課インターン)の3名の平成29年度外務省インターン生が,外務省で過ごす中で感じた印象や疑問点について,国際経済課の木花和仁さん(入省9年目)にお話を伺いました。

 多様な人材の集まるチャレンジングな職場環境,在外公館でのユニークな経験など,外務省で働くことの魅力を,熱く語っていただくことができました。その座談会の模様を紹介したいと思います。

1 木花さんの略歴と外務省の志望動機を教えてください。

 2009年に入省後,軍縮不拡散・科学部の不拡散・科学原子力課で研修生として勤務し,在外研修はアメリカのNYU School of LawとStanford Law Schoolでそれぞれ1年ずつ行いました。研修後は在ナイジェリア大使館に2年間勤務し,2年前から現在の部署,国際経済課で日―EUのEPA交渉などを担当しています。米語を選択したのは英語に苦手意識があったためで,アメリカのロースクールに行くのは法学部,そして公共政策大学院時代からの憧れでした。

 外務省の志望動機としては大きく分けて二つあります。一つ目は,振り返ると「初心」に戻るということなのですが,法学部で初めて入った国際政治のゼミを志望する際にぼんやりとではあっても外務省を志し始めたのを覚えています。もう一つは,好きで学んできた国際法の知見を生かす仕事がしたかったからです。もともと法学一般に興味があり,その上で,国内のような権力装置がない中で発展段階にある国際法は特に面白いと感じていました。国際法は国内法と比べ,違反行為を取り締まる上位主体がないなど熟度が低いと言われがちですが,安保理決議に法的拘束力があるように,現在はそれも少しずつ変わってきています。学部生時代前半は全力で勉強できなかったという思いから,もっと学びたいと研究もできる公共政策大学院に進学しましたが,そうやって打ち込んだことが外務省では実際に生きています。国際法は学生の皆さんにもぜひ勉強してほしいです。

2 外交に当たるに際しての他省庁との連携や役割分担,そしてその中で木花さんの思う外務省員にしかできないことについて教えてください(例:木花さんが担当されている経済分野について)。

 日本とEUのEPA交渉での経験について話しますね。第一に,交渉において一番大切なことはチャンネルを一元化することです。他省庁をまとめて「日本」としての立場を一元化し,相手と交渉するというこの仕事は外務省にしかできないことだと考えています。EPA交渉であれば関税,投資,サービスなど様々な要素があり,それぞれに利害関係者が複数いるので,全員が100%満足する結果を得るのは不可能です。その中で,交渉全体を見ていつどのカードを切るか決めるのは外務省であり,そこに交渉の面白さがあります。

Q.交渉の中で,win-set2-level gameといった国際政治,交渉学の理論の実践だと感じたことはありましたか?

 よくありました。Win-setの考え方は本当にその通りで,お互いがそれぞれの希望の100%からどれだけ歩み寄れるのか,お互いに合意できる範囲がどれだけあるのかということが交渉の結果を決めます。日―EUのEPA交渉は大枠合意に至るまで4年3ヶ月かかりましたが,時間がかかるのは当然で,相手の本音を見極めながら少しずつ歩み寄っていきます。ゲーム理論でいうペイオフが予め分かっている場合と違い,実際の交渉では相手がどこまで妥協できるのかが分からないので,直接対話することで相手の本心を感じ取るのが鍵になりました。

 2-level gameの考え方も,EUとの交渉においては時に実感することが多かったです。例えばEUは共通通商政策(common commercial policy)について決定する排他的権限を持っていますが,交渉結果について加盟国の理解が得られるよう加盟国の意向を諮らなければならず,加盟国政府に頻繁に説明をしています。仮に,交渉相手がEUのような加盟国の集まりではない通常の一国であっても,交渉を行う政府の後ろには国民の代表である議会があり,それぞれの議員が多様なステークホルダーの利害を代表しています。これは,日本の場合も同様です。交渉は代表同士で行う一方で,それぞれが背負っている人たちの利害にかなわなければ交渉結果を実現することはできないので,EUとの交渉はまさに2-level gameの分析が当てはまるケースだと思います。

 なお,ステークホルダーに諮る必要があるというと交渉が不利になると思われるかもしれませんが,実は必ずしもそうではありません。例えば,ここを妥協すると加盟国が納得してくれないと主張し,Win-setが小さいと相手方にシグナルすることで,相手方の譲歩を引き出そうとすることも交渉戦術としてあります。

3 ナイジェリアでの在外勤務経験を通じて感じたことについて教えてください。

 大使館の仕事と職員の生活について話していきます。主として経済とODAなどの開発協力の仕事を担当していたのですが,在ナイジェリア大使館は大きな公館でなかったこともあり,会計,警備といったバックオフィス以外の業務,具体的には,政務,広報文化を含む幅広い業務に携わることができました。経済班の業務は,日-ナイジェリア経済関係と,日本企業支援の2つに大きく分けられますが,本日は日本企業支援についてお話したいと思います。ナイジェリアはアフリカ内で人口・GDP共に1位の国です。しかし安全性の問題から,日本企業が参入への関心はあってもなかなか実現できないという現状があり,それ故企業支援が必要となります。企業の方と直接お会いすることでニーズを聞き出し,情報提供やトラブル解決の仲介などを行いました。役所と企業は距離があると感じる方が多いと思いますが,大使館では企業との距離が非常に近かったです。日本人が少ないこともあり,ほとんどの方とは顔見知りで,現地での悩みや必要とするものを直に知ることができました。

 次に職員の生活について,治安の心配をされる方もいますが,職員の安全はしっかり保障されています。移動は常に車でdoor-to-doorで行い,居住地も比較的安全な場所で生活を行うようになっています。また,外交官としての立場があるため,海外での立場は日本企業関係者を始め一般の人に比べると恵まれていますが,それは,彼らの支援をしっかり行うことが私たちの使命であるからだと強く感じていました。また,家族の時間を得られる,子どもを英語に慣らせる,という点から,地域に関わらず家族同伴で大使館勤務をする職員も多いです。ホームパーティーを通じて,外交官同士や職員の家族同士の親睦が深まるということも大使館ならではのことでしょう。大使館と本省にはそれぞれ別の仕事・役割があり,どちらにも魅力があります。

4 国際法といういわば「理想」と実際の外交現場の間の関係や隔たりについて,木花さんの法学を学んだ経験と外務省での勤務経験を踏まえて意見をお聞かせください。

 伝えたいことは,大きく分けると二つあります。一つは交渉を通じて条約を作っていく際の現実について,もう一つは国際法にも国際法なりの効力があり,秩序を保っているのだということについてです。まず一つ目ですが,日―EUのEPA交渉に携わった経験を通し,国内法のように精緻な法的文書を国際法において作ることは非常に難しいと感じました。たとえばEPA交渉であれば,日本には日本が過去に他国と結んできたEPAのスタンダードがあり,EUにはEUが他国と結んできたFTAのスタンダードがあるわけです。その中には似たような内容を意味しながら違う言葉や言い回しを使うものが多くあります。また,両者の利害が完全に一致することなどありません。そういう状況でなんとか1つのものに合意するためにはお互いに妥協が必要で,精緻なものになりきらなくてもそれが現実だということです。あえて曖昧さを残す言葉を使ったり,もともとのスタンダードとは異なる言葉を用いなければならなかったりすることもあります。しかし一方で,それは交渉の醍醐味だとも思いました。しっかりとした法的知見を土台とすることで,自国の利害をどう表現し,どう相手に呑ませるか工夫するのはとても面白いです。

 次に二つ目の話になりますが,国際法は必ずしも実効性がないわけではありません。国際社会に国家の上位主体はない一方で,違うやり方で秩序を保っていると見ることもできます。国内であれば私的救済は禁止されていますが,国際社会で違反行為が行われた場合には,国際法に則って対抗措置を施すことを通じ原状回復を図ることもあります。冒頭で話したように拘束力のある安保理決議など,国際法の在り方も変わりつつありますし,非常に面白い分野です。

5 結婚を含め,今後の将来設計についてお聞かせください。

「常に未定。しかし結婚への固い意思はあります。」。と申し上げた上で,私の将来設計において重要な要素は,「自分のやりたいこと,気持ちを見失わないこと」と「よい組織を作ること」の二つです。まず一つ目について,私が常日頃考えていることは,「初心」に戻って国際政治,特に安全保障の分野に携わりたいということと,国際法をもっと使う仕事をしたいということです。この思いは,入省当時から変わりません。しかし,入省後に様々な分野を取り扱ったことで,関心のある分野が広がるという変化もありました。

 二つ目についても,入省当時から変わらない思いです。今年で入省9年目となり,他の人の仕事を考える立場になる機会が増えてきました。そんなときに思い出すのは,研修生時代の尊敬する上司のことです。彼のモットーは,「帰れる時には部下を帰らせる」というものでした。事前に残業を申し出なければ,定時に職員を帰宅させるという方で,私も手伝いで先輩方を「早く帰宅してください」と急かしていました(笑)。自分の上に立ってほしいと思うような上司になれるよう,日々奮闘しています。仕事の効率性を高めるため,定時後は仕事の依頼をしない,要件は簡潔に明確に伝える,などを心がけています。しかし率先して早期退社することをなかなか実現できないように,まだまだ課題もあります。また,「男性の育休」も是非取りたいと思っています(笑)。

 最後に,外務省で総合職職員として働く上では,自分の外交官としての力だけでなく,組織をマネージメントする力も重要だと私は思います。やってみると面白いと思える仕事がどこの部署にもあることも外務省の魅力の一つです。

 木花さん,お忙しい中貴重なお話をありがとうございました!


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