政策評価

令和6年8月16日

1 日時

 令和6年7月11日(木曜日)14時30分~16時00分

2 場所

 外務省南272号室

3 出席者

(有識者)(五十音順)
石田 洋子  広島大学副学長(ダイバーシティー担当)/特命教授
遠藤 乾   東京大学大学院法学政治学研究科 教授
坂根 徹   法政大学法学部 教授
南島 和久  龍谷大学政策学部 教授
藤田 由紀子 学習院大学法学部 教授
(外務省)
高羽 大臣官房総務課長
木村 大臣官房考査・政策評価室長(司会)
新井 大臣官房ODA評価室長
門元 総合外交政策局総務課首席事務官
山崎 総合外交政策局政策企画室課長補佐
田宮 大臣官房会計課課長補佐
ほか

4 議題

  • (1)令和6年度外務省政策評価
  • (2)政策評価をめぐる最近の動き
  • (3)行政事業レビュー

5 発言内容

【外務省】
 本日は第40回外務省政策評価アドバイザリー・グループ会合に御出席いただき感謝申し上げる。
 第1回会合から40回という節目を迎える本日、有識者の方々からの長きに亘る建設的かつ有益な貢献により、当省の政策評価の質の向上がしっかり図られてきていることに感謝申し上げる。
 本日の会合では、当省の分野別外交として、安全保障・軍縮不拡散、経済、国際法、情報分析そして地球規模の諸問題への取組を含む経済協力、これらの施策に関して、令和3年度から令和5年度までの3年間の実績に係る評価について議論していただく。
 評価対象期間を振り返ると、ロシアによるウクライナ侵略は、既存の国際秩序を根本から揺るがし、また、中東情勢の悪化により、国際社会の対立構造はより複雑化している。さらに、「グローバル・サウス」と呼ばれる途上国・新興国の存在感の高まりによって、国際社会の多様化が進む一方で、国境や価値観を超えて対応すべき課題は山積している状況。こうした国際情勢の背景において、日本は、令和5年のG7議長国としての成果を踏まえて、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化し、「誰一人取り残さない」というSDGsの理念に基づき、「人間の尊厳」が守られる安全・安心な世界を実現するための外交を推進している。これまで以上に外交の重要性が高まり、当省にも大きな役割が求められている。
 外交政策は、国際情勢の変化の影響を受けやすいという特性があり、その政策評価の難しさを既に反芻しているところである。評価の客観性を高めるため、定量的な測定項目及び参考指標を可能な限り設けつつも、その多くは多面的な外交政策の一側面を示すにとどまるため、定性的な測定項目を中心としつつ、客観的な情報・事実などに基づく実績を主に記載するアプローチで臨んできた。
 先生方におかれては、あらかじめ送付させていただいた政策評価書案について貴重な御意見を賜り、改めて感謝申し上げる。いただいた御意見及び本日の会合における議論を踏まえて、評価の質を更に高めたい。また、PDCAサイクルを通じた外交政策の一層の推進に努めていく。
 当省として、「より活用される評価」を目指すため、日々、政策評価制度の見直しを行っている。本年度は新しい形式で実施し、使いやすく、分かりやすい内容となるよう工夫を試みた。今後も外交政策の特性を踏まえ、試行錯誤を重ねて引き続き具体的に改善を図っていく考えである。本日は、この点も含めて、先生方から忌憚のない御意見・御助言を賜りたい。

(1)令和6年度外務省政策評価

【外務省】
 まず、令和6年度の政策評価書についての概要を説明する。当省の政策評価体系は、現在、6つの基本目標の下、16施策を3グループに分け、3年に1度、過去3年度分の実績を評価している。これに基づき、令和6年度は、6施策の評価を実施した。令和6年度の当省の政策評価については、第39回会合で御説明したとおり、「より活用される評価」の実現を目指し、評価書の形式を簡潔なものに見直した。今回、評価書をパワーポイントで初めて作成することになり、原課は戸惑いがあったと思われるものの、記載要領に則って、特にアウトカムに相当する成果に留意して、ポイントを絞って作成してもらった。その結果、より使いやすく、見やすいものになった。他方で、有識者の皆様から書面でいただいた御所見のとおり、今後の課題も多々あると承知しており、本日の会合でも先生方の忌憚のない御意見をいただき、それを踏まえて改善に努めていく。

【有識者】
 外務省政策評価制度に関するコメントについて、新たなフォーマットでの評価書は見やすくなった反面、端的に書かれている分、「施策目標」と「次期施策目標」がほとんど同じで重複感が否めない。この評価をやることによって、どのようなフィードバックがあって、それがどのように次期目標につなげられたのかという視点でみると、中にはちゃんとフィードバックして次期中期目標を変えられた分野もあるが、全くそのまま同じで「切り貼り」したような分野が多い。今回の政策評価改善の目的は「役立つ評価」、「使われる評価」を実現することだったので、次期目標策定にあたり、何をフィードバックして、どの点を変更したのかについて説明があれば、読み手側は納得感が得られる。もちろん、評価の結果として目標を変える必要がないということであれば、例えば、「順調に進んでいることが判明したため、引き続き現状の目標のまま進める」というような説明を記載するなど、評価をしたことが分かるような構造になっていれば、より良いのではないか。
 また、基本的にこの評価書は有効性やインパクトを中心に、評価結果そのものがアウトプットやアウトカムのレベルの達成度を評価することになっている。そのため、何か学びを得るということになると、妥当性や、背景・経緯も見ていないと、達成したか否か判定が難しい。政策評価でそこまで詳しく記載するのが難しいとすれば、せめて評価結果の箇所で、経済協力開発機構開発委員会(OECD/DAC)評価基準で新しく加わった「整合性」(coherence)は政策レベルでの関与が高いと思われるので、この観点からの評価があっても良いと思う。例えば、他ドナーとの連携、ドナーに限らず、他分野との連携などについてである。
 さらに、取組と評価結果のところが、アウトプットを書いてあるところもあれば、活動の取組を書いているところもあり、又は、アウトプットを超えたインパクト・アウトカムまで書かれているところもあるので、全体として、取組のところは取組内容で、評価結果はできればアウトカム、どのような成果やどのようなインパクトがあったのかを記載して、達成度の評価を作成するのが良いのではないか。記載事項を整理しないと、折角のパワーポイントの流れで示した中期目標と評価結果、そして次期目標への方向性に沿って流れないので、読み手としては分かりにくい。
 最後に、参考指標があるが、割と唐突に記載されているので、この参考指標はどの分野の、何のエビデンスとして記載されているのか、何を強調したいのか、分かりにくいものがほとんどである。数値を示すことは重要なことなので、掲載することは良いことであるが、参考指標の位置づけをもう少し明確にしたほうが良い。
 なお、個別分野の評価書については、施策II-1「国際の平和と安定に対する取組」の個別分野8「ジェンダー平等の実現に向けた国際協力の推進」について1点指摘したい。国際社会においてジェンダーバランスは良くないという書き方で、だからこそ、ジェンダー分野における日本の国際的なプレゼンスを高めようという書き方になっているが、何となく分かるような、分からないような表現になっている。書き直す必要はないが、ジェンダーの部分は他の分野と比べて日本が特に厳しい状況にあるため、我が身を振り返りつつ、国際社会から学ぶというようなスタンスであえて腹を割って書いた方が受け入れてもらいやすいのではないか。

【有識者】
 外務省政策評価制度についてまずはコメントさせていただく。本グループ・メンバーを長年やらせていただいているが、この新しい様式に移行する際に懸念事項として指摘してきたことがあり、それは予算との絡みの話である。今までは、この数年間の予算とこの評価対象となっている年度で予算をどれぐらい使ったのかということを横並びで見ることができた。どこで、どのぐらい予算がついて、どこまで執行されたのか、一目で分かった。それに比べ、今年度の評価書案では、予算欄が全て空欄で規模感も分からなくなり後退した。コメントする立場として予算・執行情報が一助となっていたため、正直残念。
 また、メンバー職を依頼された際に、適度に厳しく助言してほしいということで、あまり褒めたことがなかった。今回、取組と評価結果というセクションが分かれていたところは良かったと考える。それは、どのような取組が事実上なされてきて、どのような経緯をたどってきたかが分かるだけでなく、その結果について、外務省としてプラスに捉えているとか、逆にここはもうちょっと改善できたのではないかと意見が分かるからである。特に国際経済のところは明瞭に記載されていて良い。他方で、分野によっては、せっかく取組と評価結果というセクションを分けたにもかかわらず、評価結果のところに再び事実や結果を羅列して、エビデンスがないまま「寄与した」や「貢献した」という記載が結構あったのも事実。取組で書いた事実関係を繰り返すというよりも、その取組自体を外務省自身がどのように検証したのか、もう少し書き分けるほうが良いのではないか。取組・活動について評価されたいという感情はある程度理解できるが、何が問題でどこが障壁となって引っかかっているのか、あるいはどこを伸ばしていけるのか、そういう情報が全面的に評価書に記載されると、良い評価書につながると思う。
 さらに、他の先生からも御意見があったが、参考指標はどういう意味で参考になるのか。昔から外交は数値化することが難しいことは分かっているが、気になった。
 なお、個別分野については、施策II-1「国際の平和と安定に対する取組」の「個別分野1:中長期的かつ総合的な外交政策の企画立案と対外発信」について、政策論争と政策コミュニティの議論が活性化されていくことは良いことだと考えるが、他方で、日本国際問題研究所のような老舗シンクタンクは世界各地から見たときに、意見交換相手として確立しているところもあって、例えば、そこの予算が数億円規模で削られるとなると、かなりオペレーションに響く。案件が採択されれば他の案件が削られるというゼロサム的要素があると思うが、単年度ベースで、スクラップ・アンド・ビルド方式で予算の貼り付けを繰り返していると、外交政策コミュニティの中長期的政策の維持発展に繋がらないのではないか。そういう問題意識は評価書からは読み取られなかった。
 「個別分野3:国際平和協力やその他の安全保障上の協力の拡充、体制の整備」にある平和構築人材育成は地味な作業であるが、着実に取り組んでいるところは高く評価したい。現行の参考指標よりも、むしろ定着率や何名育成されたのかなどの情報を全面的に押し出していけば良いのではないか。
 「個別分野7:国際社会における人権・民主主義の保護・促進のための国際協力の推進」については、ジェンダー平等の話ともかかわるが、女性・平和・安全保障(WPS)と絡めて上川大臣自ら指揮を執られて取り組まれていることは非常に良いと考える。取組から日が浅いせいかもしれないが、これら取組をポジティブに考えつつ、これがどういう方向・実態に繋がっていくのか、評価書からはこの点は分からないままであった。施策VI-2「地球規模の諸問題への取組」で人間の安全保障の問題がうたわれているが、大臣が主導されているWPSの話は人間の安全保障の問題と非常に親和性が高いので、これまで日本外交が担ってきて、積み上げてきた人間の安全保障の文脈や枠組みの蓄積の上で統合的にこういうアクセントをつけながら進めているという打ち出し方のほうが良いのではないか。
 なお、人権関係で疑問を持ったのは国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の話しである。人道的支援の中断を継続することは、根幹である生命に響く話で、日本は加担しそうになった側面がある。非常に政治化された環境下でどのように日本として関与していくのか非常に悩ましいところではあると考える。上川大臣の記者会見などもレビューしてみたが、「我が国の立場を伝えた」と書いてあるが詳細については記載されていない。評価書には人権関係やジェンダーのことが書かれている割には、このUNRWAに対する支援の中断についての話しは一切なかった。評価書の記載分量が減ったことに関係するのかもしれないが、こういうことをレビューしないと意味がないのではないか。何がどううまくいったのか、いかないのか、支援中断が妥当だったのか、再開した後どうなっているのか。また、ガザの道路や病院などのインフラに日本の血税が入っていると思われ、そういうインフラが破壊されることについてもう少し怒ってもよいのではないか。今まで積み上げてきたものを踏まえてどのような外交を展開したのか、していないのか、人権を推進するという立場をとりながらどう判断し、それをどう評価したのか知りたかった。

【有識者】
 まず、外務省政策評価制度についてコメントさせていただく。今年度の政策評価から、「より活用される評価」の実現を目指すということで、令和6年度に評価書をパワーポイント形式で作成され、公開資料の積極的な活用及び一部ハイパーリンクの活用や簡潔な記載への留意等相まって、使いやすく分かりやすい内容にするという見直しの意図は、本政策評価書によく反映されているものと評価できる。
 それを前提として、個別の施策の話をする。施策II-1「国際の平和と安定に対する取組」に関しては、3点ある。第1点目は、本施策の個別分野3に係る国際平和協力の推進・拡充については、国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)への4名の司令部要員派遣を継続したのみならず、新たに副参謀長及び同職の補佐官の2名の派遣が決定されたことは、国連平和維持活動(PKO)への日本からの人的貢献の増進として評価できる。今後の方向性としては、他のPKOミッションへの司令部要員派遣等を含めて、将来の展開に期待したい。
 第2点目は、同施策の個別分野6「国連を始めとする国際機関における我が国の地位向上、望ましい国連の実現」に係る安保理非常任理事国就任については、184票という多数の支持を得て選出され、様々な地域情勢及び重要なトピックに関する議論に積極的に貢献してきたことは大変評価できる。今後は、次の非常任理事国就任に向けた継続的な取組とともに、G4を含む有志国と引き続き連携して困難な課題である安保理改革に向けた取組を更に強化していくことに期待したい。
 第3点目は、施策II-1の個別分野10に係る「原子力の平和的利用のための国際協力の推進」について、東電福島第一原発事故後の対応としてALPS処理水の取扱いについて、国際原子力機関(IAEA)と緊密に連携し、科学的根拠に基づき、高い透明性をもって丁寧な説明に努め、それによって、国際社会の多くの理解の醸成を伴った形で対応が進められていることは評価できる。今後も引き続き、原発事故や廃炉等の経験と教訓を国際社会に効果的に共有していくことが望まれる。
 次に、施策II-2「国際経済に関する取組」に関しては、施策の個別分野1で多角的貿易体制の維持・強化と経済連携の推進について取り上げていた。特に環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)への英国加入が決定したことは評価できる。今後については、CPTPP以外の、例えば、世界貿易機関(WTO)改革、すなわち紛争解決制度の改革や協定履行監視機能の強化等を含めた改革や、他のEPA・FTA交渉等も容易ではないものの、将来の成果が待たれる。
 施策II-3「国際法の形成・発展に向けた取組」に関しては、施策全般において重要な「法の支配」について、政治・安全保障に加えて経済・社会といった様々な分野で具体的な取組と進展が図れた上に、国際司法機関や国際法規の形成及び発展に関する主要な国際機関に対し、人材面や財政面等から貢献もなされていることは評価できる。今後も継続的な取組が期待される。
 施策II-4「的確な情報収集及び分析、並びに情報及び分析の政策決定権者等への提供」に関しては、情報の収集・分析・共有及び提供等についての新技術を活用した取組は評価できる。留意点としては、インテリジェンスに関わるため、偽情報対策だけではなく、ハッキング対策を含む機密情報漏洩防止対策等のセキュリティ対策にも引き続き十分に取り組んでいただくことが求められる。
 施策VI-1「経済協力」に関しては、目標4で取り上げられた国際協力機構(JICA)・中小企業を含む民間企業・地方・NGO・大学・研究機関等や国民といった日本の幅広い関係主体との互恵的な連携の強化は、本施策の推進全般において重要であり、本評価対象期間中の関係する様々な取組は評価できる。今後も日本からの経済協力が効果的に一層推進されていくことが期待される。
 施策VI-2「地球規模の諸問題への取組」に関しては、個別分野2で取り上げた防災の主流化の推進については、日本が世界をリードできる重要な地球規模課題の分野であるという経緯・背景等があるところ、この3年の間では、2023年5月のハイレベル会合での「仙台防災枠組(2015-2030)の中間レビュー」において、2030年までの目標達成に向けた各ステークホルダーの取組加速の必要性を示すことに積極的に貢献する等、国際防災協力の推進に関与したことは評価できる。今後は同枠組みの目標達成に向けた引き続きの取組が期待される。
 最後に、複数の施策に関するコメントとして、今年度の政策評価の対象となった6つの施策のうち4つについては、各施策の具体的な取組・推進・達成等の目標として、今期に関しては各冒頭で、また次期に関しても評価結果の後に箇条書きで各々示されている。他方で、施策II-4 及び施策V-1に関しては、今期・次期共に、施策II-4は一文、施策V-1は二文での記載になっているため、他の4施策のように、各施策の冒頭や評価結果の後に数点の箇条書きの形で明示をなして統一するのも将来的にあり得るのではないか。施策II-4は3つの個別分野、施策V-1は6つの個別分野から構成されているため、調整は可能ではないかと思われる。次回の評価機会に向けて今後この点の実現可能性の検討をお願いしたい。

【有識者】
 3点ほどコメントしたい。
 第1点目であるが、外務省政策評価制度に関し、多くの先生方からの御指摘が既になされているが、一定の読みやすさは改善されたと思われる。今回のパワーポイント化のモデルとなった法務省等の政策評価書を拝見すると日常業務でも非常に使いやすい分かりやすい資料になっている。それに比べ、外務省の政策評価書はそのような形にまで到達していない。例えば、写真、表、図はパワーポイントに馴染むのでそれを活用したり、現地情報を出すなど、外務省なりのやり方で工夫してほしい。
 なお、法務省の評価書では予算の記載はない。そもそも予算の記載は事業レベルでなければ意味はないと考えるが、施策の括りになったときどれだけ意味があるのか、考えないといけない。新しい評価書の様式の中に施策レベルでの予算を組み込むか否か引き続き検討いただきたい。
 第2点目は、統一的な評語がなくなったという点に関し、統一的評語は前回まではs,a,b,c,dなどで示されており、評語自体に各種課題があったといえども分かりやすさがあった。評語により、取組が進み外交的努力が実を結んだことなど把握できたり、低い評価があれば課題があることが把握できたりしていた。評語がなくなって、改めて寂寞感を覚えるが、やはり評語はあったほうがよいのではないか。
 他方で、外務省の政策評価は目標管理型になる前はs,a,b,c,dという評語はなかった理解しているので、元に戻ったいえばそれまでであるが、他の先生も御指摘のとおり、統一的な評語に代わる何かを設定したほうが良いのではないか。あるいは評価結果のところで、今のボトルネックや課題は何であるのか、特に課題解決に向けた取組を行う場合、課題を明確にしたほうが良いかもしれない。具体的な課題があるが外交が絡むので書けない場合は具体的に書く必要はないが、何を今後の課題として見据えているのか、伝わる程度の記載はほしい。
 第3点目は新しい政策評価の方向性が整ってきたということで、次のステップについて話したい。
 評価書を拝見して「褒めるべき箇所はどこか」という視点でみたが、どこを褒めるべきか分からなかった。褒めるべきポイント、逆にいえば、外務省からするとPRポイントとなるが、その情報をもう少し特筆しても良いのではないか。
 他方、課題の記述も重要である。SDGsに対する取組や在外公館知的財産担当官制度は中長期的取組であり、一定の成果があったと理解しているが、前者のSDGsはあと5年で総括の時期を迎えるということ、後者は設置から約20年が経っており、そろそろ取組から得た教訓を評価プロセスの中でストックしていく必要があるのではないか。
 参考指標の整理については、先生方からもご指摘があったが、ロジックモデルがないと整理ができないだろう。「どういう位置にこの参考指標があるのか。」「これがアウトプット・レベルなのか、アウトカム・レベルなのか。」という整理である。もっとも、施策レベルでロジックモデルを書くとなると、かなり抽象度の高いものになってしまう。そのあたりどうするのか、ロジックモデルの使い方自体を含めて外務省として前広に検討していただく必要がある。

【有識者】
 委員として今回初めて評価書を拝見するもので、過去との比較はできない点を断った上で、4点ほどコメントしたい。
 第1点目は、過去の評価書では説明責任に重きが置かれていた傾向が指摘されていたが、今回の評価書でもやはりいまだに全体的に説明責任に重きが置かれている傾向が見られた。その反面、課題の発見等が十分ではない印象を受けた。どの部局も評価書案に大変真面目に取り組まれたことは伝わってくるが、「やらされている」感も透けて見える。施策評価を施策の振り返りの機会として積極的に活用していこうというような姿勢が各部局から見られないので、今後、やらなければいけないものだから評価書を作っているというのではなく、この評価という機会を利用して、新しい課題を発見していこうという機運を高めるために活用していただきたい。
 第2点目は他の先生方からも御指摘があったとおり、今回の資料では、予算額や執行額の記載箇所が空欄のままであったのが気になった。私自身としては、事業レベルだけではなく施策レベルでもそれらは重要な参考情報であると考えているので、改善できるのであれば、次回からはある程度の数字が入った評価書案を拝見したい。
 第3点目VI-1「経済協力」で事前に書面にてコメントしたが、活動実績がそのまま施策目標の実現に貢献する分野と、そうでない分野がある。基本的には活動や取組が施策目標の実現にどのように、どの程度貢献したのかを検証するのが評価である。評価の際に課題を発見し、改善すべき点を明らかにして、それをフィードバックしていくことに意義があると考える。活動内容が目標に貢献したとあるが、実際は必ずしも直結する訳ではないと考える。確かに活動がストレートに目標に結びつき、貢献する分野もあるが、そうでない分野もあるので、その点を明確に区別すべき。書き方の問題かもしれないが、特にVI-1について、個別分野のシートの記載は活動内容等がとても丁寧に記載されているのに対し、それを要約しなければいけない施策レベルでの「過去3年間の取組の主な評価結果」の記載は、文の末尾の表現がほとんど「目標に貢献した」となっており、エビデンスも何もなく、この書きぶりに違和感を受けるので、改善を検討していただけることを期待したい。
 最後に、外交分野における特性のため、効果測定が難しい上に、短期間で効果が出るものではないことは理解した。その点に関して、一定の期間を経た後での振り返りの機会を積極的に設けるべきではないか。中長期的スパンで政策ないし施策の評価・検証を行うことは意義が大きいと考える。施策II-1「国際の平和と安定に対する取組」の個別分野には、外部研究者やシンクタンクとの連携を強化したとの内容の記載がある。外部研究者やシンクタンクとの連携おいては、将来の外交政策の方向性の分析や提案などが中心であるのかもしれないが、その中に、中長期的なスパンでの施策の振り返りなども取り入れてもらえるとより良いのではないか。

【外務省】
 改めて、貴重な御意見に感謝申し上げる。政策評価の改善に向けて、厳しくも温かい御意見をいただけた。
 取り急ぎ、先生方から共通に取り上げていただいた御所見について、当方からの意見として4点お伝えしたい。
 第1点目として、参考指標の評価結果がポツンと置かれているという指摘に関し、外交施策は、累次御説明しているとおり、定量的測定が難しいため、定性的評価が主体となるが、その中でも客観性を高める観点から、これまで定量的な測定指標を設けてきた。他方、定量的な指標の多くは多面的な外交政策の成果の一側面を示すにとどまり、無理に数値指標を設定していたものもあったため、令和6年度の評価制度の見直しに当たっては、全般的にこれまでの定量的な測定指標については、思い切って参考指標に改め、評価対象としてではなく、評価する際の参考・補足情報と位置づけるようにした。そのため、参考指標については、評価結果に相当するものを記載しないことにした。ただし、今回の先生方からの御指摘を踏まえて改めて見直した結果、「参考指標」という用語は、測定対象と誤解されるおそれがあることに気づき、今回、これまで用いてきた「参考指標」という表記を「参考」に修正することにした。他方、「参考」であるからには、評価書の本文の内容を補足する参考情報になっていることが読んでいてすぐ分かるようになっていることが重要であり、その点、来年度の評価では明確になるように改善していく。
 第2点目として、事業ごとの予算額・執行額が記載されていないことについて予算と政策評価書について「概要」で簡潔に言及しているが、評価書の見直しにより、事前分析表の作成を廃止したので、今までのいわゆる施策の「達成手段」となる事業ごとの予算額・執行額については、外務省ホームページの行政事業レビューシートを直接ご覧いただく形にした。具体的には、外務省ホームページの「行政事業レビューシートの公表」部分において、施策ごとにそれぞれの事業に関するレビューシートが掲載されているので、要すれば御確認いただきたい。
 また、外務省ホームページにおいて、「政策評価体系ごとの予算額(総括評)」というものが掲載されており、そこで施策ごとの予算額を御確認いただける。事業ごとの予算額の記載の適否は改めて考えていきたいと思う。
 第3点目として、中期目標と次期目標が一緒である点について。外交政策の目標は中長期的な継続性をもっているので、評価の結果として、当初の中期目標と次期目標が引き続き一致するケースが今までも多々あり、今回もその状況は変わらなかったということであるが、一方で、次期目標が評価の結果を反映する形で修正されているものもある。原課がアジャイルに対応していることは具体的に各目標の取組や評価結果にて示すようにしている。ただし、先生御指摘のとおり、評価結果からの課題の抽出やそれらの次期目標へのフィードバックが必ずしも十分ではないと思われるような評価書の内容も見受けられるため、そのような問題意識は今後とも原課にもしっかり共有しつつ、引き続きより役に立つ評価書を目指していく。
 第4点目として、アウトカムを示すエビデンスが記載されていない点について。政策評価制度の見直しを受けて、より有効性の観点を重視することにして、当室から原課に対しては、アウトプットだけではなく、いかなるアウトカムがあったか、またボトルネックや今後の課題についてもしっかり記載するように促した。また、ただ「貢献した」というアウトカムを記述するだけでなく、どのように貢献したのか、というエビデンスを定性的なものであれ記載するようにも勧奨した。それに対して、対応してくれたところもあるが、それが十分できなかったところもあった。この点は、来年度に向けた改善点の一つなので、先生からの御所見を記載しつつ、エビデンスが明記されるような形でアウトカムが書かれるよう、また、ボトルネックの記載ついても改善を図っていきたい。ボトルネックについては外交上、赤裸々に記載することはできない場合もあるが、公表できる範囲での気づきの点ということで、今後そのような記載を重視した評価書にしていきたいと考える。

(2)政策評価をめぐる最近の動き

【外務省】
 令和6年3月、総務省行政評価局は「効果的な政策立案・改善に向けた政策評価のガイドライン」を策定した。同ガイドラインは、令和5年3月の政策評価の運用見直しを踏まえ、各行政機関における政策効果の把握・分析の取組を後押しするため、各行政機関の取組例も参考に、総務省が効果の把握・分析の手法等について得られた知見や方法を整理し、政策評価審議会の審議を経て、策定したものである。
 同ガイドラインは、政策立案や改善に当たって、政策の適切な現状把握のための「測定のポイント」や、政策をより効果的なものにするための効果分析の取組例が掲載されており、政策評価書等の作成時のみならず、政策の立案、実施を含む幅広い場面で参考にできるものとして政府全体で共有があった。
 同ガイドラインで紹介されているような他省庁の取組も参考としながら、中長期的な国益の観点に多分に立脚する外交政策の特性を踏まえつつ、当省政策評価の見直しを不断に進めて行きたい。

(3)行政事業レビュー

【外務省】
 先ほど御議論があったとおり、政策評価制度については見直しがなされているところであるが、予算に紐付いた行政事業レベルで評価する行政事業レビューについても見直し・改善が進められているところ、主に本年2月の前回会合からの進捗について、簡単に3点御紹介したい。
 まず第1点目として、本年2月から3月にかけて、内閣官房行政改革推進本部事務局(以下、行革事務局)を中心に各省横断的なワークショップが開催され、EBPM(Evidence Based Policy Making、証拠に基づく政策立案)の観点からより良いレビューシート作成についての議論が行われた。外務省関連では、特にレビューシートへの反映が難しい分担金・拠出金について、それを所管する原課と、行革事務局、総務省行政評価局、また会計課、考査・政策評価室が一同に会し議論を行い、最終的に所管する原課も含めて一定の成果が得られたと考えている。
 第2点目として、先月頭に、行政事業レビューの公開プロセスが実施され、3つの案件について議論された。内容については先日、外務省ホームページに掲載されたが、このうちの1つの国際連合薬物・犯罪事務所(UNODC)拠出金は、今年度政策評価の対象であることも踏まえ選定されたものであり、今後も政策評価と行政事業レビューをよく連携させていきたい。
 最後に、レビューシートは、予算編成の際の参照資料として、財務省主計局としても重視していると承知しており、会計課としては、今後、外務省内の予算査定においてもより重視していく方針。現在、令和7年度予算概算要求に向けた省内プロセスが進んでいるが、政策評価と同様、合理化を進めつつ、より意味のある資料となるよう検討を続けていきたい。

【外務省】
 本日は、忌憚のない御意見やコメントをいただき、感謝申し上げる。外交という政策上の特性を踏まえつつ、いろいろな工夫をしながら、できるだけ政策効果の把握や施策の改善に役立つ評価としていきたい。先生方におかれては、引き続き御指導・アドバイス等を賜りたい。


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