政策評価
外務省政策評価アドバイザリー・グループ第41回会合 議事録
1 日時
令和7年1月21日(火曜日)14時30分~16時00分
2 場所
オンライン方式
3 出席者
- (1)有識者(五十音順)
- 石田 洋子 広島大学副学長(ダイバーシティ担当)/特命教授
- 坂根 徹 法政大学法学部 教授
- 神保 謙 慶應義塾大学総合政策学部 教授
- 詫摩 佳代 慶應義塾大学法学部 教授
- 南島 和久 龍谷大学政策学部 教授
- 藤田 由紀子 学習院大学法学部 教授
- (2)外務省
- 川埜 大臣官房総務課長
- 菱山 大臣官房考査・政策評価室長(司会)
- 新井 大臣官房ODA評価室長
- 門元 総合外交政策局総務課首席事務官
- 前田 総合外交政策局政策企画室首席事務官
- 田宮 大臣官房会計課課長補佐
- ほか
4 議題
- (1)外務省政策評価制度(取組状況等)
- (2)令和7年度実施計画案
- (3)行政事業レビュー
5 発言内容
【外務省】
本日はお忙しい中、アドバイザリー・グループ会合にご出席いただき感謝する。最初に、詫摩佳代慶應義塾大学教授のアドバイザリー・グループ・メンバーご就任を心から歓迎したい。今後、当省の政策評価へのお力添えを是非よろしくお願い申し上げる。
今年最初の岩屋外務大臣の記者会見において、岩屋大臣から、「今年も国際情勢の激動が予想されます。だからこそ『対話と協調の外交』によって世界を分断から協調に導き、我が国と地域の平和を守り抜いていく、その決意で外交を進めてまいります」という発言があった。こうした中、PDCAサイクルを通じた不断の見直しを行いつつ、外交政策をより効果的かつ効率的に推進する重要性は引き続き高いものとなっている。政策の特性に応じた評価を行うために、各府省で政策評価制度の見直しが行われているが、当省としても、より活用される政策評価を実現すべく、種々の制度見直しを鋭意行っている。令和6年度の見直しを踏まえた令和7年度の政策評価の取組については、後ほどご説明する。
本日トランプ大統領が就任し、早速様々な新しい政策を打ち出している。こうした国際情勢の変化、外部要因の影響を受けやすい外交政策の特性故、政策評価の難しさが常にあるが、試行錯誤を重ねながら、そうした特性を踏まえつつ、より活用される政策評価をどのようにして実現していくかということに、皆様のお知恵をお借りしながら引き続き取り組んでいきたい。
アドバイザリー・グループ・メンバーにおかれては、令和7年度外務省政策評価実施計画、今回の評価書フォーマットの見直し、それから今後の当省の政策評価制度のあり方といったものを含め、忌憚のないご意見を賜ることができればありがたい。
(1)外務省政策評価制度(取組状況等)
【外務省】
当省政策評価制度の取組状況について、より活用される政策評価を目指し、継続性・安定性の観点から、政策評価体系及び3年周期の評価は維持した上で、政策評価書をより使いやすく、分かりやすい内容にすべく、今年度試行的取組として、主に三つの取組を実施した。一つ目が、政策評価書のパワーポイントでの作成、二つ目が5段階の評語の廃止、そして三つ目が事前分析表の取り止めである。
これらの取組により、外交青書や開発協力白書等の既存資料との重複感が解消され、記載内容の重点化を図ったことで、政策評価書の分量は約3分の1に縮減され、業務合理化にも資するものとなった。その他にも、省内関係部局と評価当局との双方向による緊密なコミュニケーションが増えるなど、様々な角度から肯定的な効果があった。
今年度の政策評価における教訓やアドバイザリー・グループ会合における有識者の方々からの所見も踏まえ、今後も更なる改善を継続していく。具体的には、令和7年度政策評価について、更なる改善策として、より分かりやすく、施策改善に役立つ評価書とすべく、基本的な方針を維持しつつも主に3点について改善していくことを目指す。
一点目として、評価書のフォーマットについて、これまでのアドバイザリー・グループ会合におけるご意見も踏まえ、見やすさを工夫して改善する。また、「今後の方向性」という欄に新たに「課題」を追記することによって、施策改善のPDCAにより役立てるようにする。また、「主な成果欄」にはなるべくアウトカムを記載するようにする。
二点目として、施策レベルの目標や分野レベルの中期目標について、分かりやすいように整理する。
三点目として、「個別分野」を「分野」という名称に改め、それらが各施策の下で評価対象となる具体的な分野を示すという構造を明確化するとともに、これまで個別分野がなかった外交実施体制の整備・強化、外交情報通信基盤の整理・拡充について、令和5年度事前分析表の測定指標を「分野」として引き上げて新設した。
こうした見直しにかかる検証過程において、総務省とも意見交換を行い、同省の理解も得ている。引き続きより活用される政策評価を目指して不断に改善していきたい。
【有識者】
前回の会合で、評価書のパワーポイント化で非常に分かりやすくなった一方、業界用語が多く、外交、国際協力、あるいは政策レベルのことをよく知らない人が見た場合、わかりにくいと発言した。その点についても、今回の改善策として拾い上げ修正すると認識しているので、期待している。
令和7年度に政策評価の対象となる施策は、広報や在外公館の活動など、各国共通である上、項目が抽象的な施策と承知。何をもって評価したら良いのか分かりにくい分野で、今度は見直しにより簡潔になったことで逆に読者が理解する際の難易度が上がるかもしれない。あるいはものすごくシンプルになってしまうかもしれない。いずれにせよ工夫が必要となるのではないかと考える。
【有識者】
令和6年度の政策評価書のパワーポイントでの作成や政策評価書が3分の1ぐらいの分量に削減されたことなどを含め、政策評価書をより使いやすく、分かりやすい内容にするための努力は確認できた。また、政策評価書の分量を縮減したというだけでなく、事前分析表の取り止めや、外交青書、開発協力白書、外務省ウェブサイト等のハイパーリンクを活用するということなどが、評価作業の負担軽減にも繋がったと理解できた。
そして、このような令和6年度政策評価の見直しの実績を踏まえて、その見直しにかかる基本的方針は維持しつつ、より分かりやすく活用される評価書に向けた取組として、令和7年度の政策評価の取組は意義があるものではないかと考える。
その上で、令和6年度政策評価書案の段階で外部有識者が確認した評価書の中では、ほぼ全ての施策の中で外交青書、開発協力白書、外務省ウェブサイト等へのハイパーリンクを付した活用があり、また参考指標もいろいろ示されていたが、一つだけ施策の中でそのような対応が確認できなかったものがあった。もちろんその施策の特性の影響はあったものと理解しているが、今回はそういった特性が顕著にある施策はないように見受けられるので、是非全ての施策において外交青書、開発協力白書、外務省ウェブサイト等へのハイパーリンクを付した活用を可能な範囲で検討いただきたい。また、参考指標を含めた参考情報の提示を含め、より具体的かつ根拠を示した形での政策評価書が全ての施策において作成されることによって、評価対象施策全体の平仄が揃い、より望ましいものになるので、それを実現いただきたい。
また、外務省政策評価体系についてコメントしたい。令和6年度に評価の対象となった施策の中で、施策だけが記載されていたものもあったが、令和7年度政策評価体系については全ての施策の中で複数の分野が示されており、政策評価体系全体の統一感、換言すると、各施策の間の統一感が示されているという意味でも、改善がなされたと評価できる。加えて、令和7年度政策評価体系の表は一部行間も工夫がなされており、行数は増えたものの依然1ページに収まっているので、一覧性は引き続き確保されている。
【有識者】
毎年のこの評価制度の見直しが進んでいて、令和6年度評価書のドラスティックな変化を通じて、また今年、その変化、改善を続けていくという方向性を大いに歓迎したい。
以前、評価の時期が近づくと、また苦行が始まるみたいな感じになり、電話帳のような枚数の評価書をびっくりして読んで、それぞれの項目にコメントするというのは、非常に意義がある作業でありながら、すごく大変であった。おそらくそれは外務省の中で評価書を作成する側にとっても同じ負担、悩みがあったのではないか。そのため、原点に立ち返って、これは公共政策を良い形でフィードバックし、そしてより良くしていくというプロセスということの目的を達成するような形に沿うのが良いと考えるので、この枚数を軽減し、ピンポイントに絞った形で評価を進めていくという方向は歓迎する。
最近いろいろ感じていることではあるが、昔から外交の評価というものは相手もいるし、長期的な成果もあるため、単年度でなかなか判断することができず、評価書を作るのもやはり難しいし、他の省庁と比べても非常に難しいということは言われていた。他方で、外交の一つの成果にしても、おそらく有識者やいろんな方たちの間でも、やはり評価が分かれることもたくさんあると考える。そのように考えていくと、特に外務省としては、どのような政策目標を達成しようとして、それがどの程度達成されてきたのかという指標を、もう少しベンチマークとして明らかにできると良いのではないかと考える。
「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)など様々な大原則があるが、中原則とも言える施策等を評価するには何を参考にすれば良いのか考えてみた。その結果、毎年の概算要求プロセスで概算要求と予算案の中で外務省が立てている3つのポイントや柱に辿り着くのではないかと考える。概算要求は目標と予算要求が明確になっていて分かりやすい。このように毎年何を目指しているのかという土台を踏まえて、3年ごとにやっているこの評価のシステムをうまく整合できたらいいのではないかと感じている。もちろん、年度のタイムラインも少し異なる上、もしかすると概算要求も年度毎に表現を変えることもあろうかと思われるため、なかなか難しいところではあるが、目標と達成した成果を評価軸として分かりやすくするためには、概算要求や予算書を参照するのが良いのではないか。
【有識者】
政策評価に関してはこれまでいろいろな規律が設けられていたが、規制緩和という表現が適切であるかどうかは分からないが、政府全体で見直しが行われており、その流れで今般の見直しがされたものと承知している。そうすると、外務省側でどのようにして政策評価に責任を持っていくのかが問われる。
外務省側から説明のあった、より活用される評価以外にも、国民に分かりやすい説明責任は重要と考える。だがこの二つの両立は難しい。当面はより活用される評価に舵を切る選択をされたと受け止めたので、まずは「どうやったら活用されるのか」について、引き続きご検討いただきたい。
もちろんアカウンタビリティ確保の方向に舵を切る時期も来るだろう。この場でも何度か触れたが、米国の国務省の評価書が非常に分かりやすい。同省は、米国際開発庁(USAID) との共同戦略計画を打ち出している。日本の外交政策も、戦略的外交への転換が検討されており、その軌道は似ている。国務省の評価を見ると、2018年から2022年のもので、目的が4つ、目標が16と非常に絞られており、これが戦略的外交とリンクしており分かりやすい。外務省職員の多くの努力の上で外交は成り立っており、それが正当に評価される形を取れるためにはどうしたらよいのか。その一助になるとも思うので、引き続き分かりやすさも追求していただければと考える。
なお、トランプ外交下で非常に変化が激しくなることが十分に予想される。そのなかで会議の回数、あるいはどれだけハイレベルの会議ができたかというところは大事になってくるのかもしれない。そういった形で外務省のパフォーマンスを見ていくことについて、改めて考え直しても良いのかもしれない。
更に、行政事業レビューとの関係について、どのように整理を進めるのか、また、総合外交政策局との戦略的外交との関係をどのように整理していくのかについても、少し自由度が上がったところで考える余地が出てきている部分もあるかもしれない。引き続き検討・追求していただきたい。
最後に、新たな政策評価実施計画について、「事後評価の方法」の箇所について質問させていただきたい。末尾の方に「評価について省内で総合的な審査を行う」とある。この「審査」とは、外部要因の影響等まで見つつ省内の調整を行うことまで書かれているのか。
【有識者】
委員に就任してちょうど一年を迎えた。今年度のいろいろな作業を通じて、いろいろ勉強になる点が多くあった。前回の会議などで指摘した点などをよく汲み取り、工夫していくということで、来年度の政策評価に期待する。
一点ご教示いただきたい。令和7年度の政策評価に向けた取組の中にあった「個別分野」の整理は、これまでの「個別分野」の名称を「分野」とすると理解したが、これはどういう狙いで「個別」という文字を落とすのか。今まで、外務省の政策評価体系の中で基本目標があって、その下に施策番号があり、更にその下に番号がついているものが、個別分野と理解しているが、まずはその理解でよいか。例えば、施策という言葉と分野という言葉を背景や経緯なしに考えた場合、印象としては、施策より分野の方が広い概念を指すような言葉としての印象として受ける。施策の下に「個別分野」があるという理解であったら、違和感はあまりない。逆に、施策の下に「分野」があると、若干違和感を覚える。このような問題意識があるため、整理した際のお考えを伺いたい。それ以外は特にないが、より良い評価になるよう、引き続き来年度も取り組んでいただきたい。
【有識者】
簡素化されたことは、作成側にも、読み手にも良いことだと考える。施策別、分野別の評価になっているようであるが、近年、経済安保と保健政策の連関など個々の施策や分野の相互関連も大いに存在し、評価が異なることもあろうかと考える。例えば経済安保の観点からは評価できる施策が、保健外交の観点からみれば、評価できない場合などである。その点は評価書ではどのように扱われているか。
【外務省】
貴重なご意見、コメントに感謝する。これまでいただいたご意見等に対してコメントする。
次の議題で説明しようと考えていた令和7年度政策評価の実施計画について、コメントをいただいたので、まず同実施計画についてご説明する。
令和7年度の実施計画については、事後評価の対象として、外務報道官・広報文化組織、領事局及び大臣官房の4つの施策(内外広報・文化交流・報道対策、領事業務の充実、外交実施体制の整備・強化及び外交情報通信基盤の整備・拡充)に係る令和4年度から6年度の3年間の実績等の施策別評価、並びに政府開発援助の未着手・未了案件に係る評価を行う予定である。
同実施計画の関連等でご指摘のあった点については、関係課室とのやり取りの中で共有しながら、どのような工夫ができるか考えていきたい。
また、ハイパーリンクを全ての施策に活用した方が良いのではないかという点、また参考指標を含めた参考情報の提示についてのご指摘についても、関係課室と協議していく中で、ご指摘の点を紹介していきたいと考える。
更に、概算要求や予算書の参照についてのご指摘も、貴重なご意見として参考にさせていただく。
加えて、より活用される政策評価書を継続すべきとの点については、試行的取組として実施しているものであるが、引き続き、来年度以降も不断の取組を続けていきたい。国民への情報共有という観点についてのご指摘もあったが、政策評価書は、政策策定者のみならず国民への情報共有という観点からも非常に有効であるので、引き続きそういった観点から政策評価書の作成に取り組んでいきたいと考える。
行政事業レビュー等のご指摘については、引き続き関係課と連携して対応していきたい。「事後評価の方法」に係るご質問については、有識者ご指摘のとおりである。
分野の記載について、基本的にはご理解のとおりで、個別分野は個別に独立していた訳ではなくて、各施策にぶら下がっていることをより分かりやすくするという観点から見直した経緯がある。一つのアイディアとして、施策の下にぶら下がる分野として、例えば、分野1、分野2、分野3、など、混乱を招かないような形での記載もあり得ると考えているので、検討していきたい。
最後に、政策部局間の評価割れについて、政策評価書自体は主管課室が作成するが、実際は、関係部局間で連携し意思疎通を図りながら丁寧な合意形成を図った上で政策を展開している。それを政策評価の観点から、どう分析してどのように政策評価に記載していくのかは重要な点であるので、今後の評価書の作成業務にあたり、参考とさせていただく。
(2)令和7年度実施計画案
上記議題1当省コメント内で説明済みのため割愛。
(3)行政事業レビュー
【外務省】
メンバーの先生方のこれまでの御協力に改めて感謝申し上げる。本日は、政策評価と予算の連携という観点から、行政事業レビューシート・システム(RSシステム)についてご説明したい。
RSシステムは、行革事務局の主導の下、昨年4月から全省庁で運用開始となった。これまでExcelファイル等で個別に作成されていたレビューシート、セグメントシート、基金シートをシステム上で一元的に管理するもの。同システムを用いることで、RSの作成に際して一部の作業が合理化された他、同システムの運用開始に合わせてRS上に記載する金額を百万単位から千円単位に変更する等の取組により、事業全体をより管理しやすくなったもの。また、これまでのRSは、各事業の情報を確認するために年度毎に存在するシート内容を個別に確認する必要があったが、システムの運用以後は、事業毎に固有のシステムIDが付与される形となったことで、事業の継続性や派生する関連事業等を追いやすくなった。
そのため、国民の皆様のみならず、事業をハンドルする各省庁においても、以前のRSに比べると格段に管理しやすくなっているとともに、行革事務局の目指すEBPMの考え方がより反映しやすい形となったと考える。
なお、今年度はRSシステム導入初年度のため、今後行革事務局に各省庁からの改善点等の意見が蓄積され、更にシステムがアップデートされる見込み。
政策評価と同様、RSについても合理化を進め、より意味のある資料としていくため、また予算編成の際の参照資料として、当省内の予算査定においてもより活用していくためにも、引き続き検討を続けていきたい。
【外務省】
本日は忌憚ないご意見、貴重なコメントを頂き感謝申し上げる。ここ数年進めている改善に向けた取組については、有識者の方からユーモアを込めて「苦行」という言葉を頂いたが、作成する役所側にとっても評価していただく先生方にとっても、また、出来上がった評価書を活用する政府、国民の皆様にとってもまさに三方良しの改革だと考えるので、引き続き、本日いただいたご意見、アドバイス、そして今後更にいただくアドバイス等を踏まえながら、しっかりと改善、見直しを続けていきたく、引き続きのご協力をよろしくお願いしたい。