政策評価

平成31年2月20日

1 日時

 平成31年1月11日(金曜日) 14時30分~16時10分

2 場所

 外務省 南272号室

3 出席者

(有識者)(五十音順)
秋月 謙吾 京都大学大学院法学研究科 教授
遠藤 乾 北海道大学大学院公共政策学連携研究部 教授
神保 謙 慶應義塾大学総合政策学部 教授
南島 和久 新潟大学法学部 教授
福田 耕治 早稲田大学政治経済学術院 教授
(外務省)
遠藤 大臣官房総務課長
河原 大臣官房考査・政策評価室長(司会)
村岡 大臣官房ODA評価室長
川埜 総合外交政策局政策企画室長
園田 大臣官房会計課首席事務官
舟津 総合外交政策局総務課首席事務官
ほか

4 議題

  • (1)平成31年度外務省政策評価(実施計画案等)
  • (2)政策評価をめぐる最近の動き
  • (3)行政事業レビュー

5 発言内容

【外務省】
 本日は第30回外務省政策評価アドバイザリー・グループ会合にご出席いただき感謝申し上げる。平成14年の政策評価法の施行後,外務省においては有識者の皆様のご意見を参考にし,その都度評価方法を見直しながら毎年政策評価を実施してきた。
 近年の評価結果の公表に当たっては,記載ぶりの正確さ,丁寧さ,具体的記述等を重視してきていることもあり,平成30年度は,評価書が650ページ余り,事前分析表も340ページ余り,併せて1,000ページの文書を作成した。
 このような外務省の評価書等の現状については,定量化になじみにくい外交政策の特性上,定性的な記述をなるべく詳細なものとして充実させる努力を重ねてきた結果としての意義がある一方で,国民に分かりやすいものとなっているかというと,議論があり得る。また,政策の改善に向けPDCAを回す上では,最近のEBPM推進といった新たな動きもある。
 これらの問題意識を背景として,外務省として,質の高い,メリハリのある効率的な評価を実施することを目指し,また,複数年にわたる評価がよりなじみやすいと考えられる外交政策の性格等にも鑑み,平成31年度の政策評価に当たっては,評価サイクルの見直し,評価書等作成文書の構成,フォーマットの改良を行いたいと考えている。
 なお,今年は平成最後の年であり,即位の礼で多くの外国首脳が来日するほか,6月のG20(大阪サミット),8月のTICAD7,ラグビーW杯など,重要な大型国際行事が目白押しの年である。これらは日本にとって,存在感や影響力を高めていく重要な機会でもあり,外交上の成果も踏まえながら評価を引き続き実施していく考えである。これらの諸行事を通じた成果を次の政策形成につなげることは重要と考えている。引き続き,先生方のご指導ご鞭撻をよろしくお願い申し上げる。

(1)平成31年度外務省政策評価(実施計画案等)

【外務省】
 まず,議題(1),平成31年度外務省政策評価,実施計画案等について,説明させていただく。
 政策評価は,国民への説明責任やPDCAの確保といった重要な機能を担っており,そこはしっかりと受け止めていきたい。一方で,政府全体としての働き方改革や,外務省としても業務合理化を進めていく中で,政策評価が如何にあるべきか議論を重ねてきた。現時点で確定的な答えが出ているわけではなく,効率的に実施しつつも,国民への説明責任にしっかり対応できるのか,また,政策評価法という法律の求めを的確に実施できるのかというところは,時間をかけながら,先生方のご知見もいただきながら考えていきたいと考えているが,平成31年度の実施計画を定めるべき時期を迎えており,これまでの省内での議論を踏まえて実施計画を作成した。
 外務省の政策評価の体系としては,地域別外交,分野別外交,広報文化,領事,外交実施体制,経済協力,国際機関分担金・拠出金で体系を作っている。これまでは,2年サイクルで評価を実施し,評定を付けない年にはモニタリングするという形で交互に行ってきた。それを試験的に3年のサイクルを導入して,今より中長期的な視点も持って評価を実施してはどうかという方向性にある。この試験的な3年サイクルを導入すると,まず2019年度については,全ての施策はモニタリングを行う。そして,2020年度は地域別外交等のグループについて,2021年度は分野別外交等のグループについて評定を付けることになる。
 こうした考えを踏まえて,平成31年度の実施計画では,その対象期間である平成31年4月1日から1年間において,事後評価の対象とする施策は該当なしとし,政策評価体系の全施策について平成30年度の実績の測定(モニタリング)を行うというものとしている。
 また,評価書の分量が多く,国民にとって分かりやすい評価資料なのかというところも工夫を考えている。これは,他省庁の例も参考し,分量を全体的に少し圧縮できればと考えている。来年度についてはモニタリングのみなので,モニタリング結果を事前分析表に記載し,31年度については事前分析表のみを作成することになる。
 議題(1)の「平成31年度外務省政策評価実施計画案」について説明させていただいた。先生方から,ご意見・コメント等,忌憚なくいただければと思う。
 なお,2019年は様々な重要な外交行事も予定されており,そういった行事が終わったところで,次の年度,またその次の年度に評定を付けることになるので,来年度の諸行事が実際に外交的にどのような効果があったのかという視点も,この3年サイクルの中で少し中期的に評定を付けていければと考えている。

【有識者】
 外務省政策体系のうち,分担金・拠出金に関しては,2年度分(2020年度評価)と,1年度分(2021年度評価)に分けるということだが,3年度分ではないのは何か理由があったのか。

【外務省】
 分担金・拠出金の3施策については,数多くある国際機関への分担金・拠出金の中から案件を抽出して評価を実施しているが,3年サイクルの導入で31年度はモニタリングのみを行うことにより,2年分を評定の対象とするものと1年分を評定の対象にするものとでずれが生じるということである。

【有識者】
 実施計画については特に異論は無いが,次の参議院選挙後の参議院本会議から,政策評価に関する報告が求められることになっていると思うが,その際に,来年は評価対象施策については対象なしということになると何を報告するのか。個別に各省毎の審査を行うという話にもなっており,課題かと思う。

【外務省】
 試験的な3年サイクルを導入しても,引き続き評価を行わなければならないものにODAの事前評価等案件がある。また,総務省のガイドライン等では,メリハリを付けながら,評定を付けない年もしっかりモニタリングをして,評価を充実していくべしという方針と理解している。国会報告が具体的にどういう項目でどういうものを求められるかは,参議院改革の中でご議論があると思うが,そのご議論を注視しながら,しっかりとした対応をできるようにしていきたい。

【外務省】
 一つ補足させていただくと,参議院での国会報告がどのようになされていくのか,まだ詳細が分からないところが多々あるが,これまでの国会報告のサイクルを踏まえると,通常,今年度だと,昨年8月に公表された政策評価の結果を,これから総務省が全省庁分を取りまとめて今年の夏頃までに国会に報告するので,平成30年度政策評価の結果がまずテーブルされると思われる。そこは若干の時間のずれがあり得るのかもしれない。

【有識者】
 そうすると,本年の参議院での議論は,この実施計画とは関係ないということになるが,PRできるものをきちっと拾っておく必要があろう。もう一つ,フォーマットを拝見していると,おそらく分量は変わらないと思ってしまう。私が担当部局であれば,この様式を渡されたら,今までと違う事を言うわけにもいかないので,従前のものをコピーペーストした上で書き換えていくという作業にならざるを得ないと思う。そうすると分量が減らないということになるかもしれないが,そこは工夫をされるのか。

【外務省】
 今まで,冗長で繰り返しが多いところもあった。必ずしもフォーマットをいじるのみではなくて,読み手側をしっかり意識して,簡潔なものを作成するよう担当部局を引っ張っていきたい。こまめな各担当課へのアドバイスが大事だと思う。

【有識者】
 読者としては,サマリーがあると読みやすい。パッと見て分かりやすい工夫をもう少ししていただけると,少々冗長でもメリハリを持って読むことができるので,ご検討いただきたい。

【外務省】
 サマリーについては,これまでもご指摘をいただいたことがあったが,近年の試みとして,これまで評価書の冒頭に載せていた「概要」の部分で,以前よりは,各施策毎の主なポイントを盛り込んでいくということを始めており,ここを如何に工夫していけるのかということも今後検討できればと思う。

【有識者】
 例えばパワーポイントの資料が最近よく作られるようになっていると思うが,文書そのものをパワーポイントで代替することもあり得ると思う。かつて文部科学省は一枚紙とパワーポイントで実績評価を作成しており,その方が分かりやすいということもあるかもしれない。工夫の余地は色々あると思っていただいても良いと思う。

【外務省】
 何がやりやすいのか,どう上手くアピールできるのかについて,評価書を記入する担当部局側の視点も大事だと思う。試行錯誤する中で,工夫していきたい。

【有識者】
 要するに,2019年,外務省は通常とは少し質的に違う業務を抱えておられると。政策評価というのはあくまでも業務の内容・質を上げるためにやっているわけで,そのために本業が差し障るようなことがあってはいけない。一方で,評価サイクルが変わること,また,その理由付けの対外的な説明はどうか。政策評価には,内部管理,対外的な態度表明等,色々な側面があり,その辺の基本方針はどうか。

【外務省】
 もう少し長期のサイクルを導入できないかを考え始めた背景としては,もちろん来年度の行事の要素が無いわけでは無いが,やはり最初の立ち位置としては,これほど分厚くなってしまっている評価書と事前分析表が,本当に国民への対外説明として望ましい形かどうか,更には,外務省内の評価書作成にかける業務量を考えた時に,来年度の行事があろうが無かろうが,このやり方をこのまま続けていくのがいいのかどうか,というところをまず考え始めた。それは当然,外務省全体として,政策評価のみならず,様々な外交課題にかかる業務を合理化できないかという流れでもある。全体的な発想で考え始めた中で,試験的に3年間のサイクルを導入できないかという考えに至った。

【有識者】
 そうすると2019年の外交行事というのは,一つの契機であって,これを機に評価全体のスリム化を図ろうという流れの中で位置付けるということでよろしいか。

【外務省】
 まさに現実的に来年度の様々な外交日程を考えたところもあるが,やはり,中長期的な視点で物事を見ていくのが良いのではないかと考えている。この実施計画については,外務省のホームページにも公表するので,省外の方にも見ていただける。

【外務省】
 来年度を特別に考えるというよりは,そもそも何のために政策評価をやっているかと言えば,PDCAの一部としてであり,その実質をきちんと確保して,外部に対しての説明責任という観点からも,何が一番良い評価なのかを考え,少しペースも含めて見直していくということである。もちろん,たまたま他の業務も多々あるという時期ではあるが,将来的にずっと多大な業務があり続けるであろうし,将来的に見直すことは当然あり得るとは思うが,まずは試験的にこの3年サイクルというのをしばらくやってみるという方向で,今,少なくとも我々としては考えている。

【有識者】
 政策評価の「標準化」と「重点化」,二つの要素が最近入ってきたわけだが,「標準化」の方で,モニタリングとか,様式を定めてこれに合わせて評価をやっていくということをされている。
 もう一つの要素が「重点化」だが,外務省で,3年に一度という形で「重点化」をされるという解釈だと思う。他方で,対象政策について絞り込みをやるとか,部局から離れて評価をやるということは選択されなかったということかと思っている。色々考え方があり,例えば,地域局はもう外してしまって機能局だけ評価してみることも十分考えられると思う。
 もう一つ「重点化」の考え方で,一つの局を単位にしてしまって,局の中で重点目標をまずしっかり立てて,それが3年間で達成できたかどうかの説明だけをすると。要するに日常業務の説明が入っているから冗長になっているところが多分にあるかと思うのだが,まさに戦略的外交が重要になるわけだから,国益は何かとか,外交の戦略性みたいなことをもっと表に出していかないといけない。事前分析表を作るときに戦略目標みたいなものを先に作って,それを軸にして,この2本立ての評価をやる,そしてそれを外務省のPRに使うこともあり得ると思う。何故そのようなことを言うかというと,政策評価の見直しというのはなかなかできることではないので,大胆に見直ししていこうというのであれば,それくらい柔軟に構えても良いのではないかとも思える。

【外務省】
 外務省の政策評価体系は長年この体系でやってきているという現実はある上で,まさに先生の仰った「重点化」というところで,政策評価というものを機能的に使っていくためにも,一つの局であったり,一つの塊について特化していくということも手法としてあると思う。
 他方で,外務省が予算要求をする際に,施策と予算の体系の一致が求められている。どの施策を見ても,どの局を見ても,今年の予算要求はゼロというところは無く,予算要求をする以上,何らかの形で,政策評価の施策が予算に対応しているという説明を求められるという現実があるので,直ちに何らかの施策の評価をやめるということが,予算要求を含めたPDCAサイクルの中で実現し得るのかというのは,勉強したい。

【有識者】 
 その点については,一つは,行政事業レビューシートで担保するということが考えられる。もう一つは,他省庁の評価もご参照いただければと思うが,評価と予算の体系が一致していないこともある。例えば,予算を機動的に執行するとか,そういうこともされている。他省庁がどうされているのかということも十分比較の対象になると思う。

【外務省】
 ご指摘について,他省庁の例も含めて勉強していきたい。

【有識者】
 同じ文章のコピー・アンド・ペーストを減らすだけでも,随分分量は薄くなるのではないか。大学の業界だと「自己盗用」と言われ,同じ文章が出てきたらチェッカーに出るので,そういうことにすごく神経質に文章を読む。フォーマットがあるので一応書かざるを得ないので,前に書いた文章をそのままコピペするのは分かるが,それならば,フォーマット自体に重複があるということになる。ルールとして,同じ文章をそのままコピー・アンド・ペーストしないとしてしまうか,何か工夫したらもっと薄く簡潔な報告書になるのではないか。
 二点目としては,例えばIWCについて,大きな政策転換があった場合,これまでの評価の仕方をやめるのか。30年度評価書を見ると,中長期目標として持続可能な利用といった日本の主張に賛同してくれるような国を増やしていくとか,達成手段として色々な関係者を呼んで等々と書かれているが,これらは今後どうなるか。交渉上のコストと,脱退することで得られる利益,日本の国益と国際的な評判,そういうのをひっくるめて,色々な側面から評価できると思う。そこで,今までやってきたやり方と違う,環境の変化が生じたとき,達成の方法も全部変換せざるを得ないし,評価基準も変えざるを得ないということが出てくる可能性が今後もあると思うが,どのようにお考えか。

【外務省】
 評価において,基準やものさしを決めることは大事であるが,同時に,その年度の中で起こってくること,評価サイクルの中で起こってくること,その中には,大きな変更を伴うものもあり,場合によっては,基準や目標値がそのままで良いのか問うことが当然ある。評価全体を,プロセスを管理する官房と,実際に評価を担当する担当部局との間で,お互いそれぞれ何が良いのかというのを,その都度,不断の議論をしていくことが大事だと思う。担当部局とも議論をしながら,目標値の設定についての議論も当然出てくるかと思う。そういうサイクルの中で起きることなどにも,硬直的になることなく,評価自体が意味のある評価になるように,担当部局とこまめにコミュニケーションしていく必要がある。

【有識者】
 先ほど言及があったが,国際機関にかかる施策の評価は,私の記憶だと毎年3つとか幾つかサンプリング的に選ぶと承知するが,この評価は3年後に行うのか,毎年やるのか。

【外務省】
 毎年サンプリングをして,政務・安全保障,経済・社会,地球規模の諸問題の各分野から一つずつ案件を抽出する。具体的に申し上げると,今年度,もともと来年度評価をすることを想定して抽出して,目標を設定した案件が3つあるが,来年度これだけをやるというのもどうかということで,来年度はモニタリングをする。ある年に案件として選び,目標を設定し,次の年にその目標の達成状況を評価するということで繰り返してきているのだが,それを1年,来年度モニタリングをすると,2年分の実績が積み上がる。それを次の32年度(2020年度)に2年度分の実績を評価するので,今年度選んだものについては,ちょっとイレギュラーな形になる。そのあとは,また新しい案件を3件抽出するので,それについては1年分の実績を翌年に評価するということで,元のサイクルに戻っていくという予定である。

【有識者】
 このドメイン毎にサンプルを3つくらい挙げるという方式自体は変わらないのか。

【外務省】
 そこは変わらない。

【有識者】
 国際機関に関しては,実際どのように使っているのかが良く見えてこないところがある。扱う政策が結構センシティブそうな国際機関もあり,あまり深掘りできずに評価したような印象がある。そこは新しいサイクルを導入しても変わらないのか。どのようなものに予算を使っているのかを見ると大体活動が見えるものだが,国際機関はなかなか見えにくいという印象は変わらないのか。

【外務省】
 国際機関への拠出金は色々な性格のものがあると思うが,ある程度,個別の事業に対して出しているものもあれば,その国際機関を運営していくための運営費,足腰のところに拠出していくという形もあり,それぞれの拠出金毎に性格が違うので,一般化するのは難しい。特定の事業ではない足腰部分への拠出のところになると,個別に捉えにくいというのはあるかもしれない。

【有識者】
 3年サイクルにすることで流れが見やすくなり,推移を追いやすくなる一方,各年度毎にアクセントをつけてやっているものがどこまで見えるのか分からない。各担当の業務の積み上げがこの分厚い本になっていて,ある期間でどういうことに力点を置いているのか,全体的に戦略目標みたいなものとの関連が見えず,日常業務がパイルアップされているように見える。予算との関連で言えば,評価とはそういうものなのだろうが,実質的な外交の評価が3年サイクルで分かりやすくなっても,目標との関連が今までと同じだと,世界政治がダイナミックに動いて,だからどこか違うところに重点を置き始めたとか,そういった戦略との関連が見えにくい評価書になるのではないか。例えば中期目標と各年度目標があるが,中期目標は,大体何かの問題に照らして二国間関係を強化するとか,全部においてそうだったりする。3年サイクルにするのは良いが,中期目標等との関連や書き方等,中期目標の更に上の戦略目標との関連が見えるようにしないと,相変わらず日常業務ってこんなに大変なんですね,で終わるという感じがしている。
 具体的には,今年度の評価書で,トランプ大統領の就任から1年半経っていたが,相変わらず日常業務をやっているという書き方にも見える。本当は色々変えて,色々な工夫をして,あるいはトランプ大統領が出てきたが故に,アメリカに力点を置いてやっていると思うが,ルーティンの積み上げに見える。

【外務省】
 戦略的な視点というものが何らかの形で見えてくるのが,政策の評価のあり方としては大事なポイントだと思う。他方で,なるべく定量的な説明や指標,数値化が推奨されている中で,戦略的な要素がどう定量的な説明とマッチするのかということを常に悩みながらやってきている。ここは今後時間をかけて先生方からもご意見をいただきたい。外務省としてしっかりと政策評価をしていく上で,そういう戦略的なところが滲み出てくると良いと思いながら,定量化の他,予算との関連も踏まえつつということで,なかなか確定的な答えに至っていない。ご指摘いただいた点については大事なポイントとして,引き続き考えていきたい。

【有識者】
 必要とされる要素は,(1)まず予算との関係で,なるべく多くの課室の業務を評価すること,(2)戦略性を軸にした分りやすさということ,幹部の方にも読まれる評価書にしていくこと,(3)指標という点がある。指標については議論が無かったが,例えば二国間関係を維持するという話とか,あるいはハイレベルの会合を持つとか,あるいは国連機関に人を出すとか,何種類かに分けられると思う。種類別に見ないと評価の仕方というか,指標に対する論調を整理できないと思う。あとは,これら3点はそれぞれ別の方向を向いており,この現状の上でバランスを取ろうとするとやはり難しいので,それぞれの方向で,何ができるのかを検討した上で,現状,取り込めるものは何かと考えていただいた方がすっきりしそうな気がする。

【外務省】
 ご議論に感謝申し上げる。議題(1)31年度外務省政策評価,実施計画については,更にコメントが無いようであれば,平成31年度外務省政策評価実施計画については,アドバイザリー・グループの先生方にご了承いただいたものとしたいと思う。

(2)政策評価をめぐる最近の動き

【外務省】
 外務省としても政府の中でEBPMを推進していく取組に加わっている。外務省の政策では,比較的EBPMになじみやすいもの,なじみにくいものがあるが,やれるところから試行錯誤しながら,EBPMを推進していきたいと考えている。外務省では政策立案参事官をヘッドとして,官房その他の関係課室長レベルでタスクフォースを設置しており,比較的取り組みやすいところから実例創出を行ったり,ロジックモデルができないかを検討している。EBPMをめぐっては内閣官房行革事務局とは,連絡を密にしており,また,各府省のEBPM担当課室とも連絡をよくしながら,できるところから色々な工夫をしていきたいと考えている。政府全体の動きともよく連携して,引き続きEBPMの推進に取り組んでいきたい。

(3)行政事業レビュー

【外務省】
 行政事業レビューは,直近では昨年の11月に,いわゆる「秋のレビュー」が行われた。今回,対象となったのはJICAであり,表題的には「JICA運営費交付金(技術協力)」のうち,「開発協力の重点課題」という形だが,具体的には2つ,1点目は,昨今報道等にもあったJICAの執行管理問題が,2点目は,財務省の予算執行調査でも指摘された事項で,コンサルタント契約の調達方法について取り上げられた。
 JICAの予算執行管理問題は,実際,JICAの方で事業を進めていった中で,想定よりもかなり順調に進んでしまったが故に,お金が足りなくなってしまった,という問題が起きた。コンサルタント契約の調達方法の指摘の関係では,企画競争において,点数の配分というのが,技術点が100点で価格点が2.5点というような設定自体がおかしいのではないかというご指摘とか,単価が高止まりしているとか,結果として競争性があまり無いという点が指摘され,レビューで議論された。JICAの予算逼迫,執行管理問題については,昨今そういう報道をされたところもあるが,JICA自身も,「予算執行管理強化に関する諮問委員会」を立ち上げ,昨年12月に最終報告書がとりまとめられた。レビューにおいては,いわゆるガバナンスの改善やプロジェクト強化に加えて,実際にそのチェック機能が働き,改善の効果が確認できるまで,外部のチェックを継続的に入れてしっかり検証することは必要であるとのご指摘を受けた。
 2点目のコンサルタント契約の調達方法についても,様々なご指摘をいただいた。先ほど申し上げた,点数が技術点100点に対して価格点2.5という設定を改善し,もう少し価格点は上げることをJICAから説明したのに対して,それはそれでやるべしということに加え,もっと期間内でしっかり実現できるかどうかという実現可能性をしっかり精査する仕組みや,あるいはそもそも契約変更によって増額してしまうというケースが相当多く,だから単価が上がるので,そういう増額のリスクを踏まえた全体的な調整の仕組みをしっかり強化することを通じて,事業の合理化,効率化を図るべきである,という点が主に指摘された。
 今,申し上げたような指摘事項を踏まえて,現在,外務省国際協力局の方で,しっかりフォローアップしているが,外務省としてもJICAの事業に対して重点化を更に進めるべしということもご指摘いただいている。様々な事業について,中長期的に我が国にとって裨益するものかどうかを踏まえた具体的な判断基準を示して,その基準を満たすような形で,実際にJICAが案件形成・採択をできるよう,外務省がJICAに対して示していくべきだという点もご指摘をいただいたので,そういう点も含めて引き続き国際協力局の方でフォローアップしていくという形になっている。

【外務省】
 特に評価のあり方について,今までのものだけではなくて,少し大きな視点で見直してみたらというご意見を頂いた。我々としても有意義な評価を作っていけるように努めたい。まさに国民への説明も含めて,きちんとした形での評価を作っていければと思っており,我々でまずきちんと議論をした上で,改めてご相談申し上げていきたい。


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