政策評価

令和元年8月27日

1 日時

 令和元年7月19日(金曜日) 14時30分~16時04分

2 場所

 外務省 南272号室

3 出席者

(有識者)(五十音順)
秋月 謙吾 京都大学大学院法学研究科 教授
遠藤 乾 北海道大学大学院公共政策学連携研究部 教授
南島 和久 新潟大学法学部 教授
山田 治徳 早稲田大学政治経済学術院 教授

(外務省)
遠藤 大臣官房総務課長
河原 大臣官房考査・政策評価室長(司会)
村岡 大臣官房ODA評価室長
園田 大臣官房会計課首席事務官
前田 総合外交政策局 政策企画室長 兼 総務課外交政策調整官
ほか

4 議題

  • (1)令和元年度外務省政策評価(モニタリング),令和2年度以降の外務省政策評価に関する考え方
  • (2)行政事業レビュー

5 発言内容

(1)令和元年度外務省政策評価(モニタリング),令和2年度以降の外務省政策評価に関する考え方

【外務省】
 第31回外務省政策評価アドバイザリー・グループ会合にご出席いただき,感謝する。
 ご案内のとおり,先月は,G20大阪サミットがあり,日本政府としてのアジェンダに沿って,しっかりとした発信ができたと思っている。G20メンバー以外にも,8つの招待国,9つの国際機関が参加し,日本ではこれまでにない大きな国際会議であり,無事に議長国を務められたというのは,今年前半の大きな成果であったと考える。
 これからまだTICAD,ラグビーのワールドカップ,即位の礼もあり,大型の国際的行事が続くが,そうした中で引き続き最大限の効果的な発信,政策の推進に努めていければと考える。
 同時に,日韓関係や,日露交渉,日米関係など外交課題が多々ある中において,しっかり外交を進めていく必要があり,そうした中で,来年度については,各地域局の政策を中心とした政策評価を実施する予定である。
 本年度から,3年周期の評価サイクルを試験的に導入することとし,今年については,モニタリングを実施したが,来年度の政策評価において,初めて3年間の実績についての評価を実施する。本日は,3年周期の評価の初年度となる来年度の評価の判定基準を中心に,今後の政策評価に関して我々が現時点で考えているところをご説明させていただく。具体的な実施計画,判定基準については,例年どおり,次のアドバイザリー・グループ会合の際に,改めてご説明させていただければと思っている。
 評価制度を改善し,より効果的,効率的な外交政策を進めていく観点から,先生方から頂くご意見は非常に貴重なものと思っている。本日も,忌憚のないご意見を頂きたい。

【外務省】
 議題Iの令和元年度の外務省の政策評価について,年度当初,総務省に提出した外務省の政策評価の実施計画にも記載したとおり,本年度についてはモニタリングを行い,事前分析表の暫定版をお手元に配布している。
 前回お話したように,働き方改革や業務合理化といった中で,これまで外務省で培ってきた政策評価のやり方についてもいろいろ合理化できるところ,見直していけるところがあるのではないかという観点から,3年サイクルの評価を今年から試験的に導入している。3年サイクルを採ったことにより,29年度目標,30年度目標,令和元年度目標,の3つの目標を並べており,この事前分析表をご覧になって,非常に分厚いなと思われたのではないかと思う。29年度目標,30年度目標は,既に立てているものであり,それ自体を変えることはしていないが,令和元年度の目標については,比較的コンパクトな目標立てにするよう,各局とも心がけてくれたと感じている。もう1,2年,このプラクティスを続けていけば,目標や記載自体も含めて,もう少し薄くなってくると考えている。これが今,外務省が政策評価において取り組んでいる現状である。
 これとも関連して,議題IIとして,令和2年度以降の外務省政策評価に関する考え方に入らせていただく。令和2年度は,地域局の政策を中心に,平成29年,30年及び令和元年の3年度分の評価を実施する予定である。次回の会合で確定させる予定の判定基準について,これまでは,2年分の評価をそれぞれの年ごとに付けた評定をチャートにかけて2年間の判定を導き出すという形をとっていた。今回,試験的に3年のサイクルを導入することになったわけだが,引き続き1年ごとに評定を付けて,それを3年分掛け合わせるとなると,かなり複雑になると想定される。1年ごとの「s」「a」「b」「c」「d」を3年分掛け合わせると,計算上は125通りのパターンができてしまい,評価を効果的・効率的,合理的に実施する上でも,この中から評定をつけるのは非現実的ということもあり,3年分の評定を付ける際には,3年分を通期に考えて評定を付ける仕組みを導入するのが現実的なやり方として,評価制度も合理化したいと考えている。
 次に「政策評価体系」について,有識者の皆様からご指摘があったこともあり,また我々もいろいろ悩んできた点であるが,分担金・拠出金の評価についての合理化案である。これまではサンプル的にいくつかの分担金・拠出金を抽出して評価するということをやってきたが,政策評価体系の中での位置づけも,分担金・拠出金だけが他の政策・施策から浮き出た形になっていたと認識している。また,政策と予算の一致という観点からも,必ずしも分担金・拠出金を区別して説明することが唯一の説明方法でもないということもある。分担金・拠出金については,基本的にいずれかの局が所掌していて,いずれかの政策の実施遂行のために支出しているものであるため,この政策評価体系の基本目標からは落とし,各局の施策の中で,分担金・拠出金についても必要に応じて読み込んでいくことができないかということで,細部を詰めているところである。
 さらに,これまで2年周期で評価を行ってきた当省の施策も大きく分けて主に地域局の施策を評価する年と,主に機能局の施策を評価する年ということで二つのグループに分けて実施してきたところであるが,3年周期を導入したことにより,今ここで確定するということではないが,このグループ分けについても,今の2つから3つのグループに編成し直して,3年周期の中で3つのグループを回していくことができないか検討しているところである。

【有識者】
 グループ分けの話は,要するに,地域別外交を一つのグループとして,残りの部分を2つのグループに分けようというイメージでよろしいか。それともまた別の組み立て方を考えておられるのか。

【外務省】
 細かい検討は,これから必要になるが,例えば,第一グループとして基本目標III,IV,Vを一つのグループとし,また,第二グループを基本目標I,第三グループとして基本目標のIIと残りの部分,として分ける考え方が,バランスとしてあると考えている。詳細については,それぞれの施策のボリュームもあるため,今の段階で明確には決まっていない。

【有識者】
 国際機関の話だが,何年かやってみて,分担金・拠出金というのが出てきたり,いろいろ政策目標が出てきたりして,本当のところ,何がどのように使われているのかが判然とせず隔靴掻痒的なイメージが確かにあるが,同時に,この分担金・拠出金の活動は続くものと理解する。あまりクリアには理解できなかったが,これは評価をやめてしまうということなのか。

【外務省】
 やめてしまうということではなく,それぞれの分担金・拠出金には,安全保障,経済,文化,開発等,多種多様なものがあるので,それを主管している局課は,必ずこの地域別外交または分野別外交,経済協力といったところで,それらの施策を実現する上での必要なツールとして,分担金・拠出金を使っているというのが現状であり,政策評価法に基づく外務省の政策評価としては,分担金・拠出金もこれらの評価の中で,必要に応じて評価していくという考え方である。
 一方で,政策評価法に基づく評価ではないが,外務省独自の取組として,国際機関評価というものを行っている。基本的に,毎年当初予算で要求するすべての任意拠出金について,その機関が国際社会で果たしている役割の有用性,日本外交との連携性,財政マネジメント,人事面での取組といった,いくつかの基準を立てて評価している。分担金についても,一定のサイクルで評価している。評価の結果を予算に反映させていこうという発想から外務省独自の取組として行っているものであり,外務省のホームページ上,全ての評価シートを公表している。したがって,分担金・拠出金については,政策評価法上での扱いは,さきほど述べたように,各施策と関連づけて,必要に応じ分担金・拠出金にも言及することとし,個々の分担金・拠出金の評価については,別途外務省独自の制度として評価をしていくという形を考えている。国際機関評価自体はもう既に行っているので,その取組は引き続き継続していくということである。

【有識者】
 趣旨はわかるが,この国際機関についての評価は,「見える化」の逆になってしまうのではないかという感想をもった。それが根拠のない懸念であればいいが,どのように考えておられるか。

【外務省】
 地域外交をやっていく上でも,分野別外交をやっていく上でも,国際機関との関係は切っても切り離せないところがある。欧州外交一つとっても,日露,日英といった二国間関係に加えて,やはりEUやNATOといった国際機関の存在も大きい。例えば国際法でも,当然,そこには国際法と関係の深い国際機関が存在するので,基本目標の「分担金・拠出金」をなくしても国際機関の扱いが軽くなるということはないと考えている。逆に,分担金・拠出金,国際機関も含めて,各分野の施策の中で扱い評価することとした方が,バイとマルチをどう使い分けていくのか,どう影響させていくのかといった視点が出てくるのではないかと考えている。

【有識者】
 そもそも分担金・拠出金を政策評価の中で評価書を書いて説明していくことになった目的や経緯をご説明いただきたい。

【外務省】
 当時の記録を可能な限り遡り,わかる範囲でお答えすると,予算と政策の一致,連携性,という観点からの求めがあったという経緯があったと理解している。
 今回改めて考えたときに,必ずしも,当時の予算項目と政策評価体系の一致というところだけにとらわれなくても,それぞれの施策の中でも,分担金・拠出金,国際機関というものを取り扱っているので,自ずとそちらとの関連で,予算との関係についても説明可能であろうと考えているところである。

【有識者】
 個々の分担金・拠出金は地域局なり機能局なりの中で吸収でき,論理的整合性はあり,二重計上になっているところを論理的に整理したという趣旨で理解してよいのか。

【外務省】
 そういう趣旨でご理解いただくことで,結構である。

【有識者】
 来年から,地域局で3年周期の評価を始めるということにつき,二点伺う。一点目は,事前分析表から,どれか一つの施策を取り上げて,29年度・30年度と令和元年度の目標の違い,具体的にこういう風にやり方が変わっているという点を教えていただきたい。もう一点は,来年度から3年周期の新しい評価のやり方をするため,評定の付け方に工夫が必要であるという説明を伺ったが,評定を付ける目的,何のために評定を付けるのかという点を確認させていただきたい。

【外務省】
 例えば,中・東欧諸国の関係で,個別分野の3「中・東欧諸国との間での二国間及び国際社会における協力の推進」の3-1のところで,「政府間対話の進展」という項目を立てて評価をしてきているが,29年度目標,30年度目標をご覧いただくと,項目1の中に(1)から(5)まで各地域別に要人往来などを含めたハイレベル間の頻繁な会談を引き続き実施するとして,2以下で,議会間,議員間交流とか,招へいスキームを活用した招へいの状況,等々と並んでいた。令和元年度目標では,主管課がこれを見直し,国・地域に着目して,主にドイツ,ウクライナ,西バルカン諸国,ヴィシェグラード諸国といった形ですっきりとさせた。目標設定の根拠欄でも「より適切に各国との取組に関する進捗状況や,訪問成果を評価に反映させることを狙いとして,昨年度までカテゴリー別としていた要人訪問の項目を,国別・国郡別で整理することとした。」とされている。今までのやり方だと,一つの国について繰り返し言及されるなど,記述の分量が嵩む要因となっていたが,今回,目標の立て方を国あるいは地域に着目することで,一体的に相手国・地域との関係を評価しやすくなったと考えている。

【外務省】
 評定を付ける趣旨について,まずは,法令の求めとして,行政機関の長が政策評価を行って,評定付けを含めて政策評価を行い,その事業についてPDCAを,それぞれの組織の中で回していくということがある。評定を付けるのは,組織全体として,組織が行っている業務が,PDCAの中で適切に目標が設定され,想定された効果を発揮しているか否か確認し,その過程で組織全体として気づきを得て,新しい取組につなげるという発想をしっかりと定着させていく上での重要な手法であるという考えに基づくものと理解している。

【有識者】
 コメントを申し上げる。前者の目標設定の重点化は,評価書自体が厚くなっていることもあり,この方向性はいいと思っている。特に重点的なところに注目するということをはっきりさせていくことは,非常にいい方向だと思う。
 他方,後者の評定の付け方については,もう少しご議論をいただく余地があると思う。評定を付ける目的として,課室長の下でのマネジメント,自らの反省の気づきとするのは一つの方向性としてある。他方で,大臣を含めた幹部に対しての注意喚起情報として情報を整理していくという役割をもう少しはっきりさせていく方向もある。三つ目は,国民に対する説明責任,国民に対する注意喚起,情報発信としての位置づけである。この3つが矛盾なく統合されると良いが,ずれてくる部分もあると思う。今後は新しいルールの下で,どこに焦点を置くのかということは,もう一度ご議論いただきたい。たくさんの部局がそれぞれに評定を付けているため,ある程度の統一はあった方がいいのではないかと思われる。

【有識者】
 G20のホスト国として,SDGsの実施に関して,政策評価での試作のグルーピングはインパクトのあるポイントだと思う。国内外の世論や国内・国際社会に希求していく観点からも重要であり,評価にどのような形で入れ込むかは様々なやり方があろうが,加味されてよいのではないかと思う。

【有識者】
 3年周期について,単年度毎の記述に対して,経年で目標設定なり評価なりができるというメリットを考えていたが,記述の工夫などはどこに見られるようになるのか。

【外務省】
 実際のところは,今後の評定付けの中で,少しずつ見えてくる気はするが,全般的に見ると,やはり2年だと視点が短く,3年分の目標を並べ,その進捗状況,実績等がつながることによって,ご指摘のような,中期的な視点で物事を見ることが出来るところがあるのではないかと考えている。この3年周期を導入した背景だが,働き方改革,業務の合理化,といったものもあるが,今の2年より少し長い目で施策を見て,より中期的な視点からPDCAを回していくことを試験的に取り入れてみるのが良いのではないかという点があった。

【有識者】
 例えば,「測定指標」の各年度目標の前に「中期目標」という欄があり,ここに期待するところである。アメリカやイギリスなど,書き方が変わっておらず,「引き続き日米同盟を一層強化する」みたいなことになっている。「一層」とか「引き続き」という話になり,この間の背景の上下動みたいなものが見えない書き方になっている。そうせざるを得ないのかもしれないが,3年にしたメリットが見えない書き方になっている。3年の目標というところも活かした方がいいのではないかと思った。

【外務省】
 この「中期目標」の設定も,元々の,29年度目標を立てた時点から変わっていない。ご指摘のとおり,3年サイクルを導入するに当たっては,この中期目標の立て方についても工夫の余地があるかもしれないので,今後の検討課題とさせていただきたい。

【有識者】
 国際機関に対する評価について,どの部局が担当しているのか,いつ頃から始められて,それは公開されているのか,例えば外務省のホームページから見ることができるのか,教えていただきたい。

【外務省】
 大臣官房国際機関評価室が担当しており,同室長は考査・政策評価室長が兼任している。同室が設置されたのが2年前,この夏が国際機関評価室で行う評価の3年目になる。基本的に毎年予算要求する任意拠出金の評価をしながら,分担金についても一定のサイクルで評価している。評価結果については外務省ホームページに公表しているので,先生方始め国民の皆様方に,評価結果,また,評価シートをご覧いただくことができる。

【有識者】
 基本目標の7つのうちの一つ,基本目標VII「分担金・拠出金」を落とすが,それに対する評価自体は別のところでやっているということはわかった。あくまで一つのアイデア,提案だが,折角そのような取組をしているのであれば,個別のものについては我々なりに評価しているということがわかるようにしてはどうか。日本はこれだけ資金を出し,それでこれだけのベネフィットを受けているということを当然分析されているだろうから,それを政策評価においても活用しない手はないと思う。いまの示し方だと,一つ丸ごと落とすという形に見えてしまうため,そういう努力をされているということを,なるべく活用された方がいいという気がする。

【外務省】
 ご指摘はそのとおりと考える。この国際機関評価は国民の皆様へのアカウンタビリティということで,ホームページにも公表しているが,他方,これは必ずしも政策評価法の求めに応じた形でやっているものではないため,政策評価法との関係で,整理が必要なのか必要ではないのか,細部を検討しているところである。

【有識者】
 「中期目標」についての指摘は重要だと思う。例えば外交関係は3年間で状況が変化しているわけだが,中期目標を書き換えるということはあり得るのか。それともこれは初期に長期的視点から設定したものであり動かないということになるのか。中期目標の変更可能性についての質問である。

【外務省】
 初期に設定した中期目標を一切変えないという整理をしているわけではない。基本的には,初期に設定した中期目標は,今回特に変更はしなかったということだが,ただ,変えてはならないと整理したわけではなく,変更することもあり得る。

【有識者】
 コメントだが,外交なので,相手国があっての話であり,状況が急速に変化する場合もあるかと思う。何を重点的に評価するか,あるいはアピールするか,何を軸として議論するかというのも変わりうると思う。重要なのは,中期目標を変える場合の手続きであり,ここがしっかりしている必要がある。変更したなら変更したと,例えばこの場(AG会合)で説明していただくなど。もしもその辺りの手続きを整理されていないなら,制度の切り替え時期に合わせて,整理していただければと思う。

【外務省】
 詳細について,明確に整理していたかどうか,確認させていただきたい。

(2)行政事業レビュー

【外務省】
 6月7日に,春の公開プロセスが行われ,査証関連業務,在外公館施設,国際交流基金の運営費交付金のうち,日本語教育事業の3件が取り上げられた。
 以下,評価の概要を申し上げる。
 いずれも,評価結果については,事業内容の一部改善という形の評価をいただいた。
 一つ目の査証についてだが,来年オリパラもあり,時宜にかなった案件選択であったと思っている。議論の方もその点を考えながら,活発に行われた。多くの方が来日するイコール査証の発給業務が急激に増えていくことにつながり,他方で査証の本来目的である,水際対策や,安全性を確保しなくてはいけない中で,急激に増える業務に対していかに合理的かつ円滑に対応していくかということが中心的な話題となった。具体的には,中国人に対する観光一次ビザに関するオンライン申請,今後の査証発給システムの話や,査証申請・取得にまつわる様々な問い合わせが急激に増えている中で,ホットラインのような形で,今年度から始めた事業について,査証発給業務がどれだけ円滑に合理的に行われているのかというのが議論の中心になった。有識者からは,「システム」で対応できる業務は積極的にシステム化すべきであるというご指摘があった。他方で,当然ながら,システム化することは,投資をするということになり,投資効率がしっかりと数字で表わされ,算定できることが必要だが,必ずしも明確になっていないのではないかという指摘を頂いた。例えば実際これをやったらどれだけ人を減らせるとか,1件当たりの処理速度がこれだけになる,しかし,実際安全対策や水際対策はどうなっているのか,それらが定量的にちゃんと計られた上で,投資効果が議論されなくてはならないというご指摘があった。
 在外公館の施設について,平成22年に取り上げられているが,その際にも言われた公館の国有化が今回も議論の中心になった。国有化にはどういう意義があるのかということだが,これは簡単にご説明すると,国有化できているのは40%位しかなく,それ以外は,借り上げていることになり,一つは安全対策,あるいは警備対策が問題になり,十分な警備ができないという可能性がある。この点について,議論があった。もう一つは,在外公館の建物の劣化について,気候風土が厳しいところにある大使館,大使公邸など,壁に実はシミがあるということが往々にしてある。どのような形で在外公館施設を修繕していくかということも議論になった。有識者からは,一部反対意見はあったが,先ほど申し上げたとおり,国有化率はやはり高めるべきであり,長期的にしっかり予算をつけて進めるべきではないかとのご意見を頂いた。他方で,国有化率を上げる方策,工夫が,まだ不足しているというご指摘があった。修繕に関しては,対処療法がかなり多いのに対して,やはり予防保全が重要ではないか,予算の制約はあるかもしれないが,その点は安定的な予算を確保すべきでないかというご指摘をいただいた。
 国際交流基金の日本語教育事業について,これは外国人労働者の受入れにも関わってくるが,海外において日本語教育の環境がだいぶ変化している中で,基金を通じた日本語教育事業が,どれだけ効果的,効率的に行われているかを検証する形で,予算規模が最も大きい日本語専門家の派遣に絞って議論が行われた。定量性が足りないのではないか,アウトカムの設定が足りないのではないかというご指摘や,外国人の受入れに関して,今年度から外国人材の受入れが拡大されたが,基礎的な日本語会話教育が必ずしもしっかり整備されていないところもあり,これに対してどういう形で対応できるのかという点について,有識者からは,それぞれの国・地域毎にどういう課題があってそれを踏まえたアウトカムはどうあるべきかということをしっかりきめ細やかに重点的に設定すべきではないかというご指摘があった。
 以上が今回の行政事業レビューの概要であり,いただいた提言については,引き続き予算への反映につなげていきたい。

【有識者】
 国際交流基金の関係で,運営交付金が下がっている状況の下で,サービスは拡充しないといけないという理解でよいのか。それとも,別に補助金か何かで,これから増えていく外国人たちのためのサービスを拡充していくという別の手立てで対応されるということか,補足いただきたい。

【外務省】
 国際交流基金の予算については実は今年度は昨年度より増えて,今年度始まった外国人材の受入れの関係で増額されている。昨年度の補正でもその部分の手当てをしているので,予算的に減っているとは必ずしも言えない。ただし,やはり求めとしては,財政規律,財政の制約があるので,効率的でないものや,既に役割的にはそれほど重要でないものを,不断に見直しをした上で,その分を新しいところにつないでいくということである。制約の中でどれだけ効率的に使っていくかというところは,基金の方でも,あるいは外務省の方でも,しっかりそれを見ながらやっていくということである。その上で更にまた,色々なニーズが増えているというところについて,頭を悩ませるところではるが,今回,行政事業レビューで指摘を受けたのは,効率化とか合理的なことを考える上でも,成果の把握,実施状況の把握を,しっかりときめ細やかにすべきであり,地域別国別という形でしっかり把握すべきであり,しっかり定量的に計った上,予算をどれだけ効率的に使うか,合理的に使うかというご指摘を受けたところである。

【外務省】
 ご議論を伺いながら,改めて政策評価のあり方について,いろいろ考えているところであり,本日も忌憚の無いご意見に感謝する。本日,改めて,二点感じたところがあり,一つは,効果的効率的な政策評価のあり方をどう考えたら良いかということである。ODA評価もやっていることに加えて,政策評価法に基づく政策評価の中でも,経済協力という目標を一つ立てており,行政事業レビューでも,ある意味では評価がなされている。先ほど議論されたところの国際機関評価もある。外務省独自の取組も種々あり,使っているリソースとしては,それなりに大きく,ホームページでご覧にいただくとよくわかるが,大量の作業をやっている。こういう中で,どういう形で効率的な,かつ関連する法令ときちんと合致した形での評価をやっていくか,ということは改めてよく考えていかないといけないことである。もう一つは,評定について,政策評価を効果的に行うためには目的意識がはっきりしていなければならないという点である。すなわち,3年にするなら3年にするなりの目的を明確にして,中期目標を策定しないと,この制度の変更に合致した形での政策評価はできないということだと思う。政策評価の評定は,誰のために,どういう意味で付けているのかということを改めて考えながら,評定の仕方を考えていかなければならないということだと思う。そのためには,クライアントと言うか,対象となった人たちにとって適切な形での政策評価の仕方というものがなければいけないのは当然のことである。簡単に変えられるものではなく,基本は法に基づいた作業であり,制約はある中でも,工夫の余地を見出しながら,できるだけ効果的にかつ効率的な政策評価を行っていきたいと思っているところ,先生方におかれては,ご指導,アドバイス等をよろしくお願い申し上げる。


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