政策評価
外務省政策評価アドバイザリー・グループ第26回会合議事録
1 日時
平成29年1月13日(金曜日) 14時30分~16時5分
2 場所
外務省
3 出席者
- (有識者)(五十音順)
- 秋月 謙吾 京都大学大学院法学研究科 教授
- 遠藤 乾 北海道大学大学院公共政策学連携研究部 教授
- 南島 和久 新潟大学法学部 教授
- 福田 耕治 早稲田大学政治経済学術院 教授
- 山田 治徳 早稲田大学政治経済学術院 教授
- (外務省)
- 船越大臣官房総務課長,鈴木大臣官房考査・政策評価官,村岡大臣官房ODA評価室長,入谷総合外交政策局総務課主任外交政策調整官,中川総合外交政策局政策企画室首席事務官,山下会計課総務室課長補佐ほか
4 議題
- (1)平成29年度外務省政策評価
- (2)政策評価をめぐる最近の動き
- (3)行政事業レビュー
5 発言内容
(1)平成29年度外務省政策評価等について
【外務省】
本日は第26回政策評価アドバイザリー・グループ会合に出席いただき感謝申し上げる。昨年は日本が8年振りにG7議長国となり,広島での外相会合及び伊勢志摩サミットを開催し,また,オバマ大統領の広島訪問が行われた。8月にはTICAD VIをアフリカで開催した。昨年1月から国連安全保障理事会の非常任理事国を務めており,日本が国際社会の議論をリードする多くの機会があった。首脳間の往来も多く,年末にはプーチン大統領の訪日があった。29年度はこれらを含む政策の評価を行うことから,難しい仕事をお願いすることになる。
政策評価に当たっては,目標管理型の評価手法の適用や目標の数値化による定量化が引き続き主な検討課題であると認識している。複雑な要素が絡む外交政策の特性を踏まえると難しい点もあると考えるが,先生方のご意見を伺い,国民への説明責任を果たす政策評価の実施に取り組んでいきたい。
この後に詳しく説明するが,28年度からの主な改善点を紹介したい。1つめは,評価書の簡単な要約の作成,2つめは,目標の達成状況の判定プロセスの明確化・透明化を図るため,これまで2年分一括の判定のみを公表していたものを,各年毎の達成状況について判定を公表したい。3つめは,目標の達成状況を示す記号を,より分かりやすくするためアルファベット表記に変更すること。4つめは,評価書及び事前分析表の見やすさや作業効率化の観点からフォーマットを改善することとした。
我が国の外交をとりまく国際情勢はめまぐるしく変化しており,当省の施策遂行に困難が伴うこともあるが,引き続き与えられた任務を全うすべく外交政策を推進していきたい。政策評価を通じ,外交政策をより効果的・効率的なものとするとともに,国民への説明責任を果たしていく考えである。
【外務省】
平成29年度実施計画案及び実施要領案について説明する。実施計画案について,毎年度と基本的構成は変わらない。評価対象は,アジア大洋州地域外交を始めとする地域別外交施策を中心に,領事,外交実施体制及び分担金・拠出金に関する施策である。評価実施にあたり改善点は,先程紹介した4点である。
1つめは,評価書概要版を作成する。28年度評価に際しての先生方からのご意見を踏まえ,国民への説明責任及び省内幹部への注意喚起の観点から,29年度は概要版を作成する。次回のアドバイザリー・グループ会合の際には,概要版を先生方に見て頂きたいと考えている。2つめと3つめの変更点は,まとめて説明する。これまでは,各測定指標の達成状況は2年分を一括して判定して評定を公表していた。これを細分化し,29年度評価では,27年度と28年度のそれぞれをどう評価したかを公表することとした。また,各年度毎の目標達成状況を示す記号をアルファベット表記に変更した。これにより,各測定指標の判定プロセスを明確化することを目的としている。4つめは,フォーマットの改善である。見やすくすることと作業の効率化の観点から変更した。
以上,実施計画案及び実施要領案について変更点を中心に説明したが,先生方のご意見があればお願いしたい。
【有識者】
目標管理型の評価ということで最終的に目標を達成しているのかどうかを判定することになる。ブレイクダウンした個々の取組で各年度毎の評価が付くことになるが,それが単純に2年分集約されて直近2年間の評価になるのか疑問がある。個々の取組の評価結果と大きな視点から見た複数年の評価結果がリンクしているのか,リンクしないものもあるのではないか。例えば,ODAでは個々の事業の費用便益比で評価されるが,外交上の意味は違うところにあるのではないか。個々の取組を集約することで全体の評価をミスリードする部分が出てきてしまうのではないか心配する。
【外務省】
先生ご指摘の点は何年も課題となっている点である。行政機関の評価が目標管理型になっており,外務省もこれを取り入れている。他方,外交は数値で評価することが難しいが,その中でできるだけわかり易く評価しなければならないことを踏まえて判定基準を作成した。また,2年分を単純に集約して全体を評価することは難しいということも認識している。ただし,国民へのわかりやすい説明という点から,このような各年ごとの評価の組み合わせで2年分を評価する基準が必要だと考えている。そうでなければ,長い文章で説明することになるが,それでは何らかの基準に従って客観的に評価するという要請には応えられないという懸念がある。個別の取組の評価と全体の評価をリンクさせる方法を取った際に,外交上の正しい評価になっているかについて議論の余地はある。その点については,「施策の分析」や「次期目標への反映の方向性」の欄での文章での説明で配慮しているので,これも見て頂くことで全体の適切な評価を実現できればと考えている。
【有識者】
政策,施策,事務事業という階層性があるとして,下位の事務事業レベルの評価が施策や政策レベルに積み上がっていくということは公共事業ではありえると考えているが,外交は逆に上から戦略的に見ていくのが施策の特性ではないか。公共事業と同じ評価でいいのか,課題として念頭においてほしい点である。
【有識者】
評価体系のうち,「欧州地域外交」施策の中でだけ「国際場裏」という言葉が使われているが,適切なのかという感じを受ける。また,地域外交では「アジア大洋州地域外交」施策では個別分野の名称に複数の国名が列記されており,これらの点はどうなのかという印象を受ける。3点目は,かなり疑問なのだが,「アフリカ地域外交」施策の個別分野2は,「アフリカとの対話・交流及び我が国の対アフリカ政策に関する広報の推進」とあり,仕事の半分が広報のようで,かつ基本目標IIIに広報関連施策があり,重複している印象がある。なぜアフリカ政策の広報がこれほど前面に出るのか違和感がある。国民への説明の観点からは,もう少し全体としてそろえられないのか,工夫の余地があるように感じる。
【外務省】
アフリカ関連施策については,これまで国内でのアフリカに関する認知度の低さの改善や,日本の貢献がアフリカでより認知されるため,相互の認識を高めるということに重点を置いてきた。アフリカ担当部局の意思として広報を打ち出したという点はある。
【外務省】
政策評価体系は,できるだけ全体的に整理された形で示したいと考えているが,一方,個々の地域の日本との関係が千差万別であるために,体系の階層が若干ずれた形になっているというのは事実である。また,評価体系の文言は,直近の首脳会談等の共同声明での文言に左右される傾向があり,表現に濃淡が出ると言うことはある。また,国名が列記される点については,政策評価体系が局課の所掌単位で作成されているため,ご指摘のような状況が出てきている。ご指摘の点については,アフリカ部にも伝達し,今後検討したい。
【有識者】
アドバイザリー・グループとして評価結果の内容はチェックしてきているが,設定された目標自体を有識者がチェックする機会はあるのか。外務省の業務のうちで,領事業務は,定量化しやすいサービスと考えるが,その中の取組に領事研修がある。評価では,研修を受けた人の満足度が取り上げられているが,研修の結果としてサービスが向上したかは別のものである。実際にサービスが向上したかを客観的に評価しなければならないので,そのためには,設定する目標にも改善が必要ではないか。
【外務省】
一部の局課は,有識者の評価書へのコメントを踏まえて次年度の目標を変えたり,評価年度の施策の分析欄で有識者コメントに答える書きぶりにする等,有識者のご意見が評価書や事前分析表に反映されるよう措置を執っている。一方,領事局については,コメントが反映されていないので,29年度の事前分析表の作成に際しては,領事局にもう少し考えるようにリマインドしたい。
なお,在外公館が在留邦人に対して行った領事窓口等の対応に係るアンケート調査の結果を評価書に記しているが,研修の結果として領事サービスの向上なのかどうかは分からない。
【有識者】
民間での顧客満足度調査のような領事サービスの水平的な評価はできないのか。全在外公館でサービスのレベルにはばらつきがあるはずなので,統一的に評価し,比較すればレベルの向上につながると思う。次に,以前も指摘したが,日本に来る外国人について,今後オリンピック・パラリンピックに向けて野心的な取組があってもいいのではないか。年度目標や中期目標でもう少し内容を詰めてもよいのではないか。
【外務省】
領事サービスの評価については,全在外公館を一人で横断的に評価するのは難しい。顧客満足度調査の観点から,在留邦人へのアンケートにより評価している。来日外国人については,領事局も様々な対応を始めており,また,東日本大震災を契機として被災した外国人への対応等幅広い取組を行っている。オリンピック・パラリンピックも視野にご指摘の点も踏まえていきたい。
【有識者】
基本目標I「地域別外交」とVII「分担金・拠出金」でともに国際機関が扱われていると考えるが,それぞれの関係はどうなっているのか。
【外務省】
基本目標VIIは,分担金・拠出金が200近くあるなかで,3つの分野から1つづつを抽出して評価する。29年度でいえば,国際刑事裁判所(ICC),世界貿易機関(WTO),世界食糧計画(WFP)の3つの機関を取り上げて評価する。これらの国際機関の分担金・拠出金の評価とそれ以外の基本目標の関係は,例えば国際経済や地球規模課題について国際機関への評価を含む形で評価しているところがある。ただ,地域別外交では国際機関への評価は含まないものが多くなっている。
【有識者】
28年度評価書の「欧州地域外交」施策の個別の測定指標の中期目標で,「欧州の各国及び国際機関との関係を強化する」との非常に漠とした形の目標が設定されている。戦略的パートナーシップ協定(SPA)なりEPAを日本と欧州で戦略的に率先してやっていくという目標は書かないのか。
【外務省】
28年度評価書では,27年度の目標として「EPA交渉と並行して,SPA交渉を加速させる」とあり,これに対応した実績を記載している。
【有識者】
年度目標で設定しているので,中期目標に入れる必要はないということか。
【外務省】
中期目標では,大きな方向性を設定するのに対し,年度目標で具体的な取組を記載している。
【有識者】
オリンピック・パラリンピックについては,領事と文化関連施策で言及があるが,それ以外に関連施策はないのか。外務省として体制整備して力を入れていくのか。仮に力を入れていくということであれば,外務省の政策評価は2年サイクルなので,経年的に見るためにも,オリンピック・パラリンピック関連施策を別枠で管理するという考え方もありえると思うので伺いたい。
【外務省】
当省でのオリンピック・パラリンピックの体制整備はもう少し先になるのではないか。一方,東京オリンピック・パラリンピックについて在外公館で広報を実施している。基本目標III「広報,文化交流及び報道対策」の中で,オリンピック・パラリンピックに関する言及は始まっている。評価という形で先生方に見て頂くのは2年に1回になるが,事前分析表は毎年作成しており,それを見て頂きたい。
【有識者】
現政権が熱心に取り組んでいるインバウンドについて,領事政策の文脈だけで取り上げられているが,他省庁との連携もあろう。地味に扱いすぎているような印象を受ける。
【外務省】
インバウンドで日本に来る外国人を直接対象とする施策は,領事局の「外国人問題への取組」にあるが,その前段階として外国人に日本を広報するという仕事があり,そこは広報文化部が担当している。また,観光庁との連携は相当やっている。
【有識者】
領事サービスの中で,「たびレジ」を評価している。ただ,領事サービス改善のアピールがなく,現状維持が目的のように見えてしまう。改善の余地はあり,在留邦人のアンケート結果が悪い公館については抜き打ち検査や指導を行う方法もあると思う。
【外務省】
領事については,アンケート結果を踏まえた指導を行っているほか,外務省では在外公館の査察を行って,領事サービスに限らず改善に向けた指摘をしている。改善のための取組結果を評価書に反映できるかについては,領事局に検討を促したいと思う。
【有識者】
先程,領事サービスの話があったが,アンケート調査で80~90%が良い回答でも,説明責任には弁明責任も含まれることを踏まえると,その他の残りの部分についての分析が重要。その説明・分析がないと,評価書の中で,次につながるどのような改善が行われたのかが見えてこない。この点は引き続き検討課題ではないかと考える。
【外務省】
ご指摘の点がまさにPDCAによる評価の反映なので,特に領事局についてはアドバイスしていきたい。
【外務省】
外務省の政策目標自体に先生方からご意見を頂くことは非常に大事なプロセスである。もし,先生方のご意見に対し外務省としての考えがあれば,それをフィードバックして先生方ときちんとしたコミュニケーションをしていきたい。また,「国際場裏」という文言に関するご意見があったが,欧州には日本と価値観を共有している国も多く,もう少し二国間関係の文脈で国際場裏での協力を推進したいという地域局の気持ちが表れているのではないかと感じた。また,対アフリカ外交の施策に広報が入っていることは,かつてはアフリカについて積極的に取り組んでも注目されなかったことから目標にしたいということがあったのではないか。しかし,アフリカが注目されるようになった今でも,広報を目標として掲げるのかという点はある。領事業務については,ダッカ事件を経て外務省として重点的に体制強化を行っており,政策評価の枠を超えて取り組んでいるものであり,ご指摘の点は領事部に伝達する。インバウンドについては,評価の文脈を越えて,領事施策のみならず,地方連携や広報文化,経済関連施策も連携して外務省として取り組んでいく。さらに,外交の評価は積み上げではなく,大きな目標があってその視点から見ていくというご意見があったが,そのような点を踏まえて政策評価を行っていきたい。最後に,先生方から政策評価を超えて,貴重なご意見を頂けたことに感謝したい。
(2)政策評価をめぐる最近の動き
【外務省】
総務省が政策評価の全体を見ているが,最近の動きを説明する。1つめが,目標管理型評価の改善である。総務省の政策評価審議会に目標管理型評価ワーキンググループが設置され,27年度に3つの改善方策が提示された。1つめが,施策の特性に応じた評価である。2つめは,目標設定するまでのプロセスの明確化である。3つめは,測定指標の定量化は必要だが,施策の特性に応じ定性的評価も活用するということである。28年度は,3つの改善方策が検討されている。1つめが測定指標の洗練化・高度化である。全府省で約2400の測定指標があるが,この中から定量・定性指標の好事例を抽出している。2つめはモニタリングの活用で,モニタリング活用施策の評価サイクルを分析している。3つめは,参考指標の活用で,参考指標の具体的な活用状況について分析が行われている。これらの分析を通じて,今年度末に総務省が好事例を取り纏め,全府省への展開を図ることが予定されている。それを受けて,外務省としてどのように反映していくかを検討していく。
次に,総務省の総合性確保評価について説明する。これは複数の府省にまたがる政策について,総務省が総合的な観点から評価を行うもの。外務省の関連では,現在,グローバル人材の育成とクールジャパンの推進に関する2件の総合性確保評価が行われている。グローバル人材については,教育振興基本計画が策定され,グローバル人材を育成する方針が示され,関連する施策の効果を調査することになっており,外務省を含む6省庁等で調査が行われているところである。外務省の関連では,JETプログラムや留学生交流事業が対象となっている。クールジャパンの推進については,閣議決定された日本再興戦略において国家戦略として日本の魅力を発信することになり,現在,総務省による関係省庁等への調査が行われている。外務省の関連施策は,在外公館文化事業,国際交流基金事業,対日理解促進交流プログラムである。
(3)行政事業レビュー
【外務省】
行政事業レビューでは,春と秋の年2回,公開検証の機会がある。春は外務省が主体となって行うもの,秋は内閣官房が中心となって行うものである。昨年11月に秋の公開検証が行われ,外務省の事業では内閣官房による選定により無償資金協力と旅券関連業務が対象となった。特に,国民目線の情報提供という観点から,無償資金協力では支出先ごとの配分額や役割分担を示すこと,旅券関連業務ではマイナンバー制度活用による行政コスト削減の必要性について指摘があった。
【外務省】
無償資金協力については,秋の公開検証での指摘を受けて,ODA評価で実施している第三者評価を活用した改善を検討している。この評価を実施した場合には,次の政策評価アドバイザリー・グループ会合で紹介したい。