政策評価
外務省政策評価アドバイザリー・グループ第20回会合議事録
1 日時
2 場所
3 出席者
- (有識者)(五十音順)
- 秋月 謙吾 京都大学大学院教授
- 稲澤 克祐 関西学院大学専門職大学院教授
- 中西 寛 京都大学大学院教授
- 福田 耕治 早稲田大学政治経済学術院教授
- 山田 治徳 早稲田大学大学院教授
- (外務省)
- 細野考査・政策評価官,中村考査・政策評価官室首席事務官,岡野総合外交政策局総務課長,大貝ODA評価室長,杉浦総合政策局政策企画室長,田村官房総務課課長補佐,鈴木会計課総務室課長補佐ほか
4 議題
- (1)政策評価制度の改正点
- (2)平成26年度外務省政策評価実施計画
- (3)その他
5 会合経過
(1)政策評価制度の改正点及び平成26年度外務省政策評価実施計画
【外務省】
来年度の評価書のフォーマットについては昨年末のガイドライン改定を受け現在検討中である。本件ガイドライン改定の背景としては,まず安倍内閣の経済財政諮問会議で,重要な政策・予算につきいわゆるPDCAサイクルをより実効性あるものとすることとされ,政策評価についても「政策の効果と質を高めるためのインフラ」であるとして改善が求められたという流れがある。制度を所管する総務省からは,これまで府省ごとにばらばらに記述されていた評価結果を表す標語等を各府省で共通化しわかりやすくすること(標準化),さらに必ずしも毎年評価を実施するのではなく,数年おきに評価を実施する代わりに内容を充実させること(重点化)の2点が提案され,各府省とも協議の結果,新たなガイドラインが昨年12月に策定され来年度から実施されることになった。標準化については,各府省共通に「目標超過達成」,「目標達成」,「相当程度進展あり」,「進展が大きくない」,「目標に向かっていない」の5つの区分を各府省共通で用いて施策ごとの目標達成度を判断することとなる。重点化については,毎年度評価を実施しなくてもよいので,事前に設定した目標が達成できなかった場合の要因の分析や達成手段の有効性・効率性の検証,目標の妥当性と必要な見直し等について深掘りした評価をすべしとの内容である。
当省としては,標準化については5つの共通の評価区分を使用するとともに,重点化については,外交の場合三年以上の周期になると,状況の変化が大きいためきちんとした評価ができなくなるおそれもあるなど,様々なバランスを考慮し,二年に一度評価を行うこととしたいと考えている。また,二年に一度全ての施策を評価するのではなく施策をおおむね半分ずつのグループに分けて交代で評価することを考えている。
いわゆる地域局と機能局の二つのグループに分け,機能局のグループから先に評価を実施することを考えている。なお,評価を実施する年度であるかないかを問わず,事前分析表は毎年度作成する必要がある。
新ガイドラインを踏まえ,評価書には,「目標達成度合いの測定結果」,「施策の分析」及び「次期目標等への反映の方向性」の3つの欄が加わることになる。その年に評価の対象とならない施策についても,実績については記述し公表する必要がある。
当省の場合,従来各局又は部の単位に対応する施策の構成要素として課室レベルでの単位に対応した具体的施策という区分けを設け,具体的な施策の評価を積み上げて施策を評価してきたが,新ガイドラインでは測定指標の達成度を踏まえて施策単位で評価を行うこととなった。このため,「達成すべき目標」の欄には,従来具体的施策ごとにも記していた目標を,施策の目標の中にまとめた形で記載することを考えている。「評価結果」の欄には,測定指標に基づく評価とその判断根拠を記入する。「施策の分析」欄には,施策そのものの問題点,達成手段が施策目標に有効かつ効率的に寄与しているか,外部要因等事前に想定できなかったことにより実績に与えた影響を記入し,「次期目標等への反映の方向性」の欄には,目標の妥当性等をどのように見直し,今後の施策にどう反映させるか記入することが求められている。従来,具体的施策としていた区分を今後どのような名称とすべきかも検討したい。
事前分析表については,目標設定,測定指標,達成手段などこれまで記載してきた要素が基本的に踏襲される。
さらに,今回のガイドラインの改定を踏まえ今後5年間の基本計画と来年度の実施計画についても必要な修正を行った。特に,基本計画については,従来,外交政策の評価の方式は外部要因等もあり目標と結果の因果関係のみでは評価できないとして総合評価方式としていたが,一昨年より目標管理型の評価が導入されフォーマットにおいて目標とそれに基づいた実績及び評価という形で評価を行うようになった上,今回更に目標管理型が徹底されたことなどを踏まえ,実績評価方式で評価を行うことを基本とした上で,外交の特性を勘案するという点は今後も同様であるとの趣旨を明確化した。以上が今回のガイドライン改定の内容とこれを受けた当省での現時点での検討状況である。ご意見やご助言を頂ければ幸いである。
【有識者】
重点化に対応して地域局と機能局とに分けられたとのことだが,定型的・ルーティン的な業務であるとか,業務が多いから隔年での評価とするのであれば理解しやすいが,単に重点化だけを理由に,地域局は今年度は評価を実施しないというのは果たしてどうか。例えば,対アジア外交について今年度評価しなくても意義が薄れたりしないか。重点化という場合,本来なら悪しき一律的な作業から脱することに意義があると考えられるが,その趣旨を踏まえる必要があると思う。ただ,ウェイトの置き方によってはいろいろと議論も出るのではと思われる。もう一つ,標準化により導入された共通の区分については,最上位の「目標超過達成」であれば望ましいかといえば実はそうではなく,場合によっては目標設定水準が不適切であったとか,資源が過剰に投入されたから超過達成できたにすぎないのかもしれないという点に留意する必要があろう。
【外務省】地域局についても実績は今年度も公表するほか,明年度には25~26年度の2年分の評価を実施することとなっている。
【有識者】
具体的施策のところで,その更に下位の概念として事務事業レベルの評価は行っていないのか。
【外務省】
現在は政策評価の中では事務事業レベルの評価は行っていないが,「行政事業レビュー」の中で,個別の予算や事業の見直しを行う制度となっている。
【有識者】
参考にしていただければと思う点が1つある。もし,施策の分析の中で行うこととなっている達成手段の有効性の検討を具体的施策のレベルでも行うのであれば,具体的施策の下位の概念である事務事業についても,具体的施策の達成にどのように貢献しているかを分析するというふうに考えられるのではないか。目標達成に対する達成手段の寄与を施策レベルでまとめて見るべきところを具体的施策の分析の中でも達成手段の有効性を分析して書くかのように,想定しているように思えるが,事務事業評価を行っていない訳であり,2つのレベルでそれぞれ達成手段の有効性を分析するという場合,作業が過大となるか事実上不可能にさえなり得る。具体的施策の分析欄においては,達成手段が効率的に執行されたかなど別な説明をするのであれば良いが,「達成手段が有効かつ効率的に寄与しているか」ということをここでも書くようにすることは避けた方が良いのではないか。
【外務省】
ご指摘も踏まえ,よく検討したい。
【有識者】
施策の分析や外部要因等事前に想定できなかったことにより実績に与えた影響などを分析するというように深掘りするのであれば,評価書のスペースを十分にとる必要があろう。なお,地域別外交の分野では,地域ごとに施策の下に示す従来の具体的施策に相当する項目の立て方や項目の数などが異なるが,どのような理由によるものか。
【外務省】
施策は,局・部のレベル,その下の具体的施策は,課・室レベルに対応した政策を表している。
【有識者】
要するに,担当する課や室の数等の違いに応じて,このようになっているということか。
【外務省】
その通りである。
【有識者】
深掘りした評価に言及されている点は興味深いが,特に事前に想定できなかった要因の分析については,政権交代等も含めてどのように記述していくことになるのか。重点化として追加された欄では,中身としてにどのような深掘り要因を取り上げるかが重要となるのではないか。段階的な評価区分を標準化すると同時に,なぜ達成されなかったかについての分析をどのように表現するか。相当な分析力・洞察力が必要となると感じる。
【外務省】
従来の評価書の中でもかなり深掘りをしてきた部分があると考えており,これを活かしていければと考えている。定量的な指標を掲げて,それが満たされたかどうかで判断される事例も少なくない中で,当省の評価書は,外交の特性からも,定性的な評価を行わねばならない施策が多く,そのような難しさの中で,「施策の分析」欄の施策の問題点,達成手段の有効性・効率性,外部要因の3つの要素について,どう深掘りしていくかは,正にこれから考えていきたい。これまでの具体的施策に相当する部分を積み上げた上で施策レベルで達成度を判断し,その上での分析を求められていると思うので,そこについてできるだけのことをしていきたい。
【有識者】
これから種々検討されると思うが,効率性の問題だけではなく,実質的な政策のPDCAサイクルに活かしていくとすると,省内で検討組織を作り,どのような意味で目標が達成できなかったのか,また,目標そのものを変える必要があるのか,既存の目標をそのままにしていいのか等を検討すれば,政策を見直す上で様々な検討材料になると思う。せっかく実施するのであれば,政策形成につながる形で評価を使っていけば一層意義があるのではないか。
【有識者】
PDCAサイクルの実効性を確保する観点から,このように二年ごとに分けられた中で,外交政策の効果の評価と行政管理的な効率性の評価は分けて考えるべきとの印象を有している。政策評価に要するコストについて,日本の場合何%以内といった制限を定めているか。例えば,EUの場合,当該施策のコストの5%以内までしかその政策評価にコストをかけてはいけないと決められているが日本の場合は如何。
【外務省】
日本では,そのような定めはないと承知する。
【有識者】
ODAの評価等では外部に評価を委託する場合があるとのことだが,監査法人や国際機関など外部機関に託すということなら,評価に要する費用も評価の対象にしないのか。実質的な評価を深めるには,各分野への資源配分の妥当性というものを評価することも重要ではないか。国別のODA,例えば日本からウクライナへのODAについて,今後増やすことがいいのか,緊迫した喫緊の課題が出てきたときにどのように評価するのか,政変等の状況の変化に対して今後財政支援をするのであればどのような形のODAがいいのかを検討する必要があると考えるが,そのような場合2年に1度の評価で大丈夫なのか,一年経ってから評価するのでは,対応が難しいのではないかと感じる。
【外務省】
ODA評価については,政策評価とは別のラインで動いており,政策及びプログラムレベルは外務省が,事業レベルはJICAが担当している。ODA評価に関しては,自己評価ではなく第三者評価という形で実施している点では異なるが,国別評価は基本的に5年間ごとに作成している国別援助方針の改定前後に評価を行っており,スパンは長い。2年に1度という点では,機動性は政策評価の方が高くなっていると言えるかもしれない。
【外務省】
2年に1度の評価となる事後評価とは別に,政策評価法の下では,ODA案件の一定規模のもの,例えば無償資金協力であれば10億円以上のプロジェクトについては,事前評価をすることになっており,その際に必要があれば見直す機会というものが存在している。ただし,今回のウクライナの事例に照らしてみて,最近事前評価した対ウクライナの案件はなかったと思われ,機動的に見直すという機会まではなかったと思われるので,ご指摘はごもっともと感じる面がある。
【有識者】
例えば,中間段階の評価で当初の目的が達成されていないのでそこで減額するなど,制裁を含めた予算への反映は日本の場合はしないのか。ヨーロッパには,最初の20%から25%の段階で評価をし,次の50%を出すか出さないか決めるとか減額するとか,次に50%払った段階で再度評価をして見直す。最後の100%まで行き着くかどうかは,それぞれ中間評価の段階の評価結果を見てお金を出すかどうか決めるといった事例もあるが,通常のODAの仕組みとは違うかもしれない。
【外務省】
中間段階のモニタリングやレビューの実施及び反映に関しては,例えば事業レベルではJICAが個別案件ごとに進捗管理を実施しており,課題・問題点等が確認されれば,フィードバックを行い,改善への対応策の検討等を行っている。
(2)その他(行政事業レビューについて)
【外務省】
予算と政策評価の連携強化は以前からも取り組まれていることであるが,25年度から,行政事業レビューの項目と事前分析表の達成手段を合わせることを求めるガイドラインが定められ,25年度に作成した事前分析表では達成手段欄に,行政事業レビューシート上の各事業が番号等を明示する形で掲載されている。こうした背景を踏まえ,行政事業レビューの現状についてご説明させていただく。
【外務省】
行政事業レビューについて,まず通常のプロセスとして,前年度が終了した4月の段階で行政事業レビューシートを各担当課が作成し,その中で行った自己評価をもとに外部有識者に評価をしていただき,また省内でも行政事業レビュー推進チームというものを作り,官房長の下で評価を行うほか,6月にいくつかの事業について公開で検証プロセスも実施している。その上で8月の各省の概算要求に行政事業レビューの評価結果を反映していくという流れになっている。昨年も,このような形で24年度の評価結果を概算要求に反映させた。昨年は,その後10月1日の閣議決定「消費税率及び地方消費税率の引き上げとそれに伴う対応について」の中で国民に負担増を求める際に行政として無駄がないように取り組んでいく旨が謳われ,「秋のレビュー」を行革事務局の下で行った。そこでは各省ごとにいくつか事業を選定し,通常のプロセスに加え再度レビューを行っている。11月の13日から15日にかけて各省でいくつかの事業について外部有識者による評価を実施。外務省に関しては,広報に関する事業について在外公館文化事業と国際交流基金の事業の役割分担や効果的な連携がきちんとなされているかの検証と,経済協力について有償資金協力と無償資金協力のそれぞれの対象の判断基準が明確ではないのではないかという問題意識でレビューをしていただいた。この結果を踏まえ,再度12月の平成26年度政府予算案に反映させるとともに,ここで出た評価結果に対応して,今後改善措置を講じていくこととしている。行政事業レビューについては先ほど申し上げたサイクルで実施しているので今年も3月末の年度末で評価を実施して外部有識者にレビューしていただく形で進めていく予定。
【有識者】
行政事業レビューと政策評価との関係について,もう少し説明してほしい。
【外務省】
行政事業レビューは個々の事業レベルを扱っている一方,それと施策レベルの政策評価をどう結びつけるかということになるが,現在,政策評価の事前分析表の達成手段に,行政事業レビューの事業名が対応して掲載されることで,技術的な連携が図られている。政策レベルでは,様々なプロセスにおいて,予算・行政事業レビューと政策評価の間でできるだけ連携と整合性を図ることが求められている。
【有識者】
先ほど具体的施策とその下位の単位となり得る「事務事業」のことで申し上げたが,行政事業レビューのほうは,ピックアップでレビューをするということで網羅的に行う実績測定型,実績評価型の評価を行っている訳ではないということか。
【外務省】
基本的に,予算がついている事業は行政事業レビューの対象として扱われるので,網羅的に行われているといえる。政策評価の体系の一番下に来るのが行政事業レビューの事業と考えていただくことも可能。現在250以上もの個別の事業があり,その一つ一つについて毎年レビューしている。4~5年に一度は各事業につき外部有識者からの評価を受けるようになっている。
【外務省】
その中でいくつか取り上げて深掘りをしたものが,上述の秋のレビューの対象案件である。
【外務省】
多くのご意見やご指摘を頂戴し,感謝。ご示唆いただいた点も参考に,今後の評価作業を進めていきたい。