政策評価
外務省政策評価アドバイザリー・グループ第33回会合議事録
1 日時
令和3年1月25日(月曜日)14時30分~16時00分
2 場所
オンライン会議形式
3 出席者
- (有識者)(五十音順)
- 遠藤 乾 北海道大学公共政策大学院 教授
- 神保 謙 慶應義塾大学総合政策学部 教授
- 南島 和久 新潟大学法学部 教授
- 福田 耕治 早稲田大学政治経済学術院 教授
- 山田 治徳 早稲田大学政治経済学術院 教授
- (外務省)
- 本田 大臣官房考査・政策評価室長(司会)
- 西野 大臣官房ODA評価室長
- 室谷 大臣官房会計課首席事務官
- 高尾 総合外交政策局総務課首席事務官
- 鴨川 総合外交政策局政策企画室首席事務官
- ほか
4 議題
- (1)令和3年度外務省政策評価実施計画案等
- (2)政策評価をめぐる最近の動き
- (3)行政事業レビュー
5 発言内容
【外務省】
本日は第33回外務省政策評価アドバイザリー・グループ会合に御出席いただき感謝。
当省では、令和元年度から3年周期の評価サイクルを試験的に導入し、初年度となる令和元年度は全施策モニタリングを、令和2年度に地域局の施策を中心に3年間の実績の評価を実施した。令和3年度は、この試験的3年周期の最後の年となり、機能局の施策を中心に平成30年度から令和2年度までの3年間の実績について評価を行う予定。
本日は、令和3年度外務省政策評価を実施するに当たり、令和2年度政策評価の結果概要、及び、令和2年度までの試験的3年周期の実施状況について簡単に報告した上で、令和3年度政策評価の実施計画及び実施要領を当方から説明し、有識者の皆様に御確認いただく。
平成14年の政策評価法施行後、その都度評価方法を見直し、試行錯誤しながら政策評価を実施してきた。質の高い、メリハリのある効果的な政策評価の実施を引き続き目指したいと考えているところ、本日は、忌憚のない御意見・御助言を賜れば幸いである。
議題1 令和3年度外務省政策評価実施計画案等
【外務省】
まず、令和2年度当省政策評価について報告させていただく。令和2年度は、地域局の施策を中心に12施策の評価を実施し、全施策とも府省共通5区分の「相当程度の進展あり」の評価結果となった。また、測定指標の評定は、bが多い結果となっている。例年夏に開催しているアドバイザリー・グループ(AG)会合については、令和2年度は新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響で開催を見送らざるを得ず、有識者の皆様には書面で所見をいただいた。学務が多忙を極めた時期での執筆依頼となってしまったが、おかげさまでなんとか無事評価を終えられたことに感謝申し上げる。全省庁的にも、例年8月末の概算要求が9月末に延期され、それに伴い、政策評価の公表も例年より1か月遅れであった。また、当省においても、コロナ禍でのテレワーク等による作業ではあったが、なんとかやり遂げたところである。令和3年度もテレワーク等での作業が想定されるが、前年度の経験も踏まえ、より効率的に作業を行いたい。
【外務省】
政策評価書は年々分量が増加しており、国民への説明責任、政策への活用の観点及び業務合理化の要請も踏まえ、令和元年度政策評価から、試験的な3年周期導入、政策評価体系の見直し、政策評価書等のフォーマット等の変更を行っている。
令和2年度評価を終え、試験的な3年周期の実施状況の中間レビューを内部的に行った。評価の質に関しては、記述が良くなっているという指摘もいただき、一定程度改善していると考えられる。ただし、至近の1年度の状況に評価が左右されやすい傾向が見られ、この点については、今後運用を重ねる中で改善に努めていきたい。業務合理化の観点からは、一定程度の合理化ができたと思われる。もっとも、評価対象期間の分析等を行う際に振り返らなければならない年数が長くなり、その分の負担が増し、また、モニタリングの年数が多くなる分、政策担当部局の評価作業に係る知見が蓄積されにくくなる点に留意が必要と思われる。評価書類の分量の削減に関しては、評価書及び事前分析表の合計ページ数から見て、令和2年度は平成28年度並みに縮減され、3年間の評価を行った年としては一定の成果が出ていると考えられる。
以上を踏まえた現時点でのとりあえずの評価としては、3年周期化により、評価の質の向上、業務合理化の推進、評価書類の分量の削減のいずれの面においても一定程度の成果が上がっていると思われる。
令和4年度以降については、令和3年度政策評価を実施した後、この3年間を検証した上でとなるが、現状では、3年周期の評価サイクルの本格導入には大きな問題点は見られないと考えている。また、3月末に総務省の政策評価審議会から発出予定の提言の内容も考慮しつつ、令和4年度以降に向けた検証をしていきたいと考える。
【外務省】
令和3年度実施計画について、広報・文化交流対策、経済協力、地球規模の諸問題への取組等の分野別外交を中心に7施策の評価を実施するほか、政策評価法に基づき、ODA未着手・未了案件及び租税特別措置等に係る事後評価を行う計画である。評価書フォーマットについて、前年度からの主な変更点としては、冒頭の予算額欄に分担金・拠出金の予算額欄が加わった点である。これは、令和3年度から従来施策VIIであった分担金・拠出金が施策I~VIに溶け込んだ評価を行うことによるものである。
以上、令和3年度外務省政策評価の実施計画等について御説明申し上げた。御意見・御助言などを賜りたい。
【有識者】
3年周期というスパンで評価することになって、省内の評価担当・関係者からはどのような意見が寄せられているのか。働き方改革の一環で以前より作業が楽になったのか、評価がやりやすくなったのか、あるいは以前と変わらないのか、負担が大きくなった等、率直なところを聞きたい。
【外務省】
3年度分の実績の評価としては令和2年度が初めてであったが、自分が承知している限り、省内からは3年周期の評価に対してネガティブな反応は出ていない。一方、政策評価体系の組替えに当たり、実際に施策VIIを他の施策に入れ込む作業に当たっては原課サイドで戸惑ったと思われるが、当室の担当者から必要な説明を追加的に行いながら進めた結果、大きなヒッチはなかった。3年度分の政策評価について、直近の1年に引きずられる印象があるため、運用の中で改善して参りたい。
【有識者】
令和2年度は、コロナの影響と外交政策のパフォーマンスをどのように評価するのかが大きな課題になると思う。多くの外交日程が変更を余儀なくされたことは紛れもない事実である。その一方で、今回評価対象である国際経済に対する取組では、イギリスとの関係やRCEPにおいて進展があった。このような通常とは異なる体制の中で、どのようなことが出来て、何が出来なかったのかという点を踏まえ、評価基準の設定において何か特別な考慮をしているかどうかを承知したい。
【外務省】
コロナによってどのような影響があり、それをどのように評価するかを検討しなければならない。政策評価は過去3年間の総合評価であり、平成30年度、令和元年度における取組も含まれる。その上で、令和2年度については、コロナによる不可抗力的な要素をどのように勘案していくのかを検討することとなろう。例えば御指摘のとおりのオンラインでの条約交渉などの成果については、別段の評価はあり得ると考えている。そのあたりの取組・工夫や努力については、各担当局部が自分達でアピールをして評価書に書き込んできてくれることを期待している。また、従来出来なかったこと、例えば国際保健分野では、従来は考えられなかったイノバティブな協力等についても然り。その一方で、令和2年度については、コロナによる影響により目標達成が困難なものや現場に物理的に行けない等の制約が大きく影響した政策分野もあろう。評価部局としては、そうした分野における取組についても、担当部局がそのような状況等をつまびらかにしつつ、評価書の記述を工夫してくれることを期待している。
【有識者】
評価を3年周期にすることの良い面についての説明はよく分かった。令和元年には皇室関係行事やG20大阪サミットがあり、非常に大きな外交成果があったということだと思う。令和2年にはコロナがあり、令和3年には米国大統領が替わり、東京オリンピック・パラリンピックがどのようになるかというところに立ち至っている。これらの成果と実績について、単年度評価であれば、きめ細やかに、かつ抑揚をつけやすい評価が可能になろうが、3年周期だと分かりにくくなる面がある。そうした点を、3年周期の評価の中で、どのように取り扱うのかについては、テーマを持って課題として念頭に置いておいてもよいだろう。
また、総務省の政策評価審議会では、「しなやかな評価」、「役に立つ評価」、「納得できる評価」という三本の柱を軸に制度の改善を目指しているが、それと関係させながら各年度の特色をどう表現していくかは考えておいても良い。
【外務省】
政策評価審議会で検討されている三本の柱については承知しており、出される提言をよく見ながら考えていきたい。画一的な評価ではなく評価の「重点化」を行うと、それに入らない政策は重要ではないと思われるものも出てくるわけで、予算との関係でも、それらをどこでバランスさせるかも重要であり、難しさを感じている。
【有識者】
総務省との関係もあるだろうが、アフターコロナという視点からの評価指標を考えていく必要があるのではないか。外交政策は、日本だけではなくてグローバルに行われるものであるから、そうした視点も評価指標には必要なのではないか。評価指標の見直しに関し、例えば、現代は国連SDGsの時代であるため、それに合わせていくつかの指標を変更することも考えてよい。また、ロンドン原則(国連責任投資原則:PRI)に基づいた持続可能性やESG投資等、環境や社会性やガバナンスを念頭に置きつつ、政策評価の指標をグローバルな水準に変えていく検討も必要である。とりわけ、日本はEUと同じく2050年までにグリーン化とデジタル化を達成するという目標を掲げていることから、2023年か2024年にはコロナの時代は終わることを踏まえつつ、その後の時代に沿った評価指標というものを考えていく必要がある。
現在の政策評価において、統一性、政策一貫性、経済性、利便性、分配性、受容性に対する評価を行うに当たり、持続可能性という基準をも重要視するべきであろう。
【外務省】
政策評価は法律が定めた枠組みの中で目標管理型の実績評価を行っており、その中で、どのような評価ができるのかを最大限考える必要がある。また、国際的な基準に基づいた評価としては、例えばODAについては、DACの評価基準を踏まえた評価という取組を行っており、政策評価との役割分担ができるか考えていきたい。
【有識者】
3年ごとの評価では、政策担当部局の各課室において評価の経験やノウハウが継承されるかという点が懸念されるところ、考査・政策評価室で慎重にモニターした方が良いと考える。
【外務省】
御指摘の点に関しては、正に留意すべきこととして考えているところであり、当方の中間レビューでも認識している点である。いかにノウハウを継承していくか意を用いて行っていきたい。周期という意味では、オプションとしては例えば3年より長い期間での周期化もあり得るわけだが、実務としてそうした副作用的な部分も良く見極めていくことが重要と考えている。
【外務省】
本日お示しした令和3年度当省政策評価実施計画案等に従って、今年度の評価を進めさせていただく。日程に関して言えば、6月中旬頃、有識者の皆様に所見を依頼させていただきたいと考えているところ、よろしくお願い申し上げる。
議題2 政策評価をめぐる最近の動き
【外務省】
現在政策評価審議会において、制度導入後20年を迎える政策評価の改善に向けた提言が検討されている。本年3月に出される政策評価審議会の提言を見つつ、外務省としての取組をどのようにブラッシュアップできるかを考えていきたい。
【有識者】
私から若干補足したい。政策評価の見直しをしていく中で、これまで出てきたのが「標準化」と「重点化」の二点である。「標準化」については、標準的な様式ということで、S、A、B、C、Dを付けるようになり、外務省のかつての評価のやり方から新しいやり方に変わったというのが「標準化」である。
今度テーマになってくるのが「重点化」である。すなわち、大事な政策は大事であると、また、成果が出ているものは出ているとして国民にPRすべきであり、こういうところが一つのポイントになると考えている。総務省も同じ方向で議論していると承知している。
他方、「重点化」を行えば、予算要求との関係をどう整理するかという点に関して難しい問題が生じ得る。すなわち、特出ししたところだけに焦点を当てられるとか、ルーティーンとしての行政からは離れるといった点である。結局は、「重点化」するものとそうでないものの両者をどのようにバランスを取るかの問題に戻ってくる。
やや「重点化」の方に力点を置いて何かできることはないかと考えているというのが今回の提言の宿題であると考えてよいだろう。
【外務省】
次に、EBPMに関する外務省の取組等に関して御説明申し上げる。令和2年11月にEBPM推進委員会が開催され、この中で外務省を含む6つの省庁からEBPM関連の取組について報告した。外務省からは、従来の政策評価体系において基本目標VIIに位置付けていた「分担金・拠出金」を他の施策の中に溶け込ませた取組について紹介した。同時に、令和2年度概算要求の予算書体系の中では、「分担金・拠出金」に対応する「国際分担金」が独立した区分であったが、令和3年度概算要求の予算書体系においては、同区分をなくし、各施策の中に溶け込ませるという区分の組替えを行ったので、これについてもあわせ紹介した。
今回の組替えについて若干表現をかえて説明すれば次のとおり。従来、各分担金・拠出金の担当部局が担う施策に係る政策評価においては、分担金・拠出金という当該施策の目的達成手段に係るインプット量(予算額)が直接的にはカウントされてこなかったが、今回、これを当該施策に係る直接インプットとしてカウントすべく組替えを行い、目標と達成手段を整理し直した。これにより、各施策レベルにおけるインプット、アクティビティ、アウトプットをより明確かつ一体的・総合的に評価することを図る。ちなみに、外務省の令和2年度当初予算は総額約7,120億円であるが、このうち分担金・拠出金の予算額は約1,373億円(予算総額に占める割合は約19.3%)となっている。これらのインプット量が、担当部局が担う施策に直接計上されるように今回施策の組替えを行ったものである。
議題3 行政事業レビュー
【外務省】
行政事業レビューは、毎年6月に各省庁において、「公開プロセス」を通じて外部有識者に事業を点検していただいているが、本年度は4月に日本で緊急事態宣言が発出され、外国でも厳しい外出制限が取られて、外部有識者の先生との会合や事前勉強会等の準備が十分にできないとの判断に至り、行政改革本部事務局とも相談し「公開プロセス」を見送ることとなった。同事務局が主催する「秋のレビュー」では外務省の案件は取り上げられなかった。
他方、行政事業レビューシートを通じた自己点検及び外部有識者の書面での点検は例年どおり実施した。外務省のレビュー対象となる事業が約400あるが、毎年、約80の事業を外部有識者に点検をいただいている。本年度は、一般経費について欧州局、経済局、外務報道官・広報文化組織、領事局を中心に37件、分担金・拠出金について43件点検をいただき、成果目標や評価指標の是正、事業のコスト削減へのさらなる努力の必要性等、多岐にわたるご指摘をいただいた。また、令和元年度の執行率が低いため適切な予算額の設定を検討するよう指摘を受けたことも踏まえ、令和3年度の予算要求額を減額した案件もある。必要な事業を効率的に実施し、また、国民への説明責任が十分果たせるよう、頂いた指摘を踏まえて、来年度の執行内容及び評価方法について不断の見直しをしていきたい。
【外務省】
本日は、忌憚のない意見をいただき感謝。枠組みがある中でも工夫の余地を見出しながら、外交という政策の特性を踏まえつつ、できるだけ効果的にかつ効率的な政策評価を行っていきたいと考えている。引き続き御指導・ご助言をお願いしたい。