政策評価
外務省政策評価アドバイザリー・グループ第29回会合議事録
1 日時
平成30年6月29日(金曜日) 14時30分~16時00分
2 場所
外務省 南272号室
3 出席者
- (有識者)(五十音順)
- 秋月 謙吾 京都大学大学院法学研究科 教授
- 南島 和久 新潟大学法学部 教授
- 福田 耕治 早稲田大学政治経済学術院 教授
- (外務省)
- 遠藤 大臣官房総務課長
- 真鍋 大臣官房考査・政策評価官(司会)
- 八塚 総合外交政策局総務課外交政策調整官
- 川埜 総合外交政策局政策企画室長
- 宮森 大臣官房ODA評価室上席専門官
- 園田 大臣官房会計課首席事務官
- ほか
4 議題
- (1)平成30年度外務省政策評価
- (2)行政事業レビュー
5 発言内容
(1)平成30年度外務省政策評価等について
【外務省】
本日は,お忙しい中,第29回の外務省政策評価アドバイザリー・グループの会合にご出席頂き,感謝申し上げる。
前回の会合以後も,北朝鮮情勢を始めとして,日本を巡る外交安全保障環境が目まぐるしく動いている中で,日本の国益とは何か,それを守っていくためにはいかなる措置がとれるか,ということを日々考えながら外交を展開している次第である。
今回の会合では,当省の分野別外交に関して,平成28年度,29年度における実際の成果,評価について,ご議論を頂く。具体的には,安全保障,軍縮・不拡散,経済,経済協力,広報・文化交流などに関する施策についての評価である。これらの施策については,特に外部要因も多々あり,評価が容易でない面もあるが,それぞれの施策が日本の外交政策全体の視点から求められる成果を達成できたかという点を勘案して,これまで以上に,客観的かつ厳格な評価を試みた。
先生方におかれては,予め送付させて頂いた政策評価書案について貴重なご意見を頂いており,感謝を申し上げる。頂いたご意見,本日の会合におけるご議論を踏まえて,評価の質をさらに高め,より効果的,効率的な外交政策を推進して参りたい。本日は,是非,忌憚のないご意見・ご議論を賜りたく,よろしくお願いする。
【外務省】
最初に,簡単に評価結果の概要について説明し,その後議論に入らせていただく。
今回は,主に分野別外交についての評価である。評価結果の全体像としては,全部で10の施策のうち,「目標達成(A)」と評価したのが1件,残りの9件については「相当程度進展あり(B)」の評価をしている。各施策の下の測定指標のレベルでみると,全体で「A」が9件,「B」が100件,「C」が2件となっている。2年前の分野別外交に対する評価では,施策レベルでは「目標達成(A)」が4件,「相当程度進展あり(B)」が6件,測定指標レベルでは2年前は「S」が5件,「A」が98件,「B」が11件であり,全体的に,評定を厳しくした。
これは,各施策が日本の外交政策全体の視点から,求められる成果を達成したかどうかという点を勘案し,これまで以上に客観的且つ厳格に評価をした結果とご理解いただければ幸いである。
全体に関わる話で気づきの1点を申し上げたい。
分野別外交について評価する場合,地域別外交の場合に比べて外部要因の影響が大きい印象を受けた。分野別外交は,多国間の枠組みを通じて外交を実施することが多く,その場合,外交の成果が各国の立場や,政策,あるいは国際情勢全般に影響を受ける度合いが大きいという側面があるためと考えられる。この外部要因をどう考えるかということにつき,理論的には,この外部要因による影響を勘案して評価を行うことも可能ではあるが,評価は具体的な成果に基づいて厳格に行うべきという観点から行った結果,全体として,厳しめの評定になった。
それでは,これから具体的な議論に入りたい。
【有識者】
まず海外広報の実施,国内報道機関対策の実施に関係して,NHKの国際報道の在り方を改善した方が良いという点について,NHKでは英語の番組を英語以外の16か国語に翻訳して世界に発信すると承知しているが,スワヒリ語とかヒンディー語にも翻訳されている反面,ドイツ語,イタリア語及び日本語がない。ヨーロッパ内で母語としてドイツ語を使用している人口が一番多いだけに,ドイツ語の発信が必要ではないか。
また,海外在住の日本人向けに日本語放送もあった方がよいのではないか。
放送の内容については,色々な評価の仕方があるが,ビビッドな話題も国際放送で取り上げており,悪くないと思う。
「国際機関を通じた政務及び安保分野に係る国際貢献」について,特に国際機関において勤務する日本人職員が少ないということは20年以上にわたって指摘されているが,一向に改善の兆しがない,あるいは減っているという側面があり,2001年のデータで(国連事務局の定める「望ましい職員数」の)三分の一程度であったのが,2012年でも同じ状況であった。この評価書にもあるように,やはり日本人職員の少なさが,拠出金との割合で見て諸外国に比べて極端に少ないというのは,国連事務局の言う「望ましい職員数」の範囲からの逸脱の度合いが激しく,何らかの対応・対策を立てる必要があるのではないか。
JPOなどの増員を目指すと骨太の方針に書いているが,実際,JPOでどれだけのアウトカムがあったのか,つまり制度自体の有効性,20年かかっても成果が出ないというのは,制度の在り方自体に何らかの問題,限界があるのではないか,ということを検証して,インプットとアウトプットの因果関係を明確に評価し,特に10年単位,20年単位で制度の在り方を考える必要があるのではないかと思う。
実際,JPOの制度を通じて国際公務員になるのは難しいと聞いている。
特に専門職以上の有能な人材を国際機関に送り,日本のプレゼンスを高めるという観点から,米国のフレッチャー・スクールや欧州のカレッジ・オブ・ヨーロッパ(欧州大学院大学)を念頭に,EU諸国が実施しているような授業料や生活費も含めた国家的な財政支援がある程度必要なのではないか。かなり有能な人が日本で育っているのに,国際公務員に繋がっておらず,何らかの制度的な対応が必要ではないか。
三点目として,医薬品の研究開発関連のところで,医薬品の規制の何がどのように変更されたのか,他の国がモデル法として参照することの意味や効果は何なのか,というようなことももう少し書いていただきたい。
法務的な支援とは,ロシアが行った場合はロシア,中国が行った時は中国,アメリカが行った時はアメリカという形で,その国の法体系を途上国に広げて,その国の企業が入っていく下地を作るということだが,医薬品の場合,特にM&Aが進んでおり,ヨーロッパ系企業,アメリカ系企業の医薬品が,日本の法制度が広がることで,日本の国益にとってどういう意味があるのか,ということも少し触れていただきたい。
ODAとの関連で例えば,日本のODAで研究室を建てるが,研究員として入るのはヨーロッパ系ないしアメリカ系の医療研究者が中心で,日本が建てた研究室だということさえ知られていないという話を聞いている。入れ物だけ作って研究をする人は外国の人だという現実があり,なかなか日本の貢献の顔が見えないという指摘がある。
ビジビリティを高めるため,国会議事堂を建てる国もあるところ,研究所は本当に必要なものだろうが,それを継続的にバックアップしていくのであれば,日本の貢献としてわかるような形を考えた方が良いのではないか。
【外務省】
NHKの国際放送言語については,NHKで何らかの基準又は方針に基づいて決めていると思われる。ドイツ語が入っていない一方で,例えばスワヒリ語が入っていることから言語人口以外に色々な考慮や基準があると思われる。国際報道がどうすればもっと魅力的な内容になるのかということについては,総務省,外務省とNHKの間で連携しながら対応している部分もあり,この言語の問題についても,どういったことが可能なのか,海外広報を担当している部局に相談してみたい。
日本人職員の増強は,重点的に取り組んでいる課題である。成果に繋がっていないというご指摘をいただいた。日本の分担金・拠出金の割合から比べると日本人職員の割合が少ないということは事実である。しかし,最近,取組を強化した結果,成果が上がっている部分もある。具体的な数字で申し上げると,例えば平成27年の末で,国連機関の場合,日本人職員は793名であったが,平成28年末には820名,平成29年末には850名と,年間約30名ぐらいのペースで増えている。政府全体の目標として,2025年に1,000名の国連機関の日本人職員数を目標としており,日本再興戦略・未来投資戦略にも書かれている。このペースで行くと,なんとかこの目標は達成できるというペースで増えているという状況である。先ほど申し上げたとおり,分担金・拠出金の割合と比べると日本人職員は少ないということも事実であり,また,この目標のあとも引き続き,中長期的に取り組んでいかなければいけない課題であると思っている。
JPO制度については,JPOで派遣した方が,その後どれくらい国際機関に採用されているのかフォローしており,最近のデータで言うと,大体80%以上が,JPOに派遣された後に国際機関の職員になっている。JPOでの派遣は,国際機関における日本人職員増強の上で効果がある,貢献していると言えるのではないかと思う。日本人職員増強の取組については,国際機関にいかに働きかけるかという部分と,送り手である日本の側でいかにして人材を発掘・育成するか,という課題がある。人材の育成の部分について,留学制度等,活用したらよいのではないかというご指摘について,政府としてどこまで行うべきなのか,予算の制約がある等の課題はあるが,何ができるか担当部局に相談してみたい。
医薬品の研究開発についてであるが,いろいろな支援をした結果がどのような効果があったのか,という点が欠けているというご指摘と理解する。評価書の内容も,どちらかと言うと何をしたかという実績,すなわちアウトプットについては書いてあるが,その結果どうなったのかという成果,つまりアウトカムの部分については必ずしも十分に記述されてないという傾向はある。ただし,医薬品の研究開発は投資,支援をしてから,成果が実際に出るまでに,なかなか時間がかかるという意味で,成果がすぐに現れるものではないと思う。そうした中で,もう少し成果の部分について,何か書けることはないのかということについては,担当部署と相談してみたい。法制度支援が,具体的にどういう意義があるのかという点についても,担当している部署に相談してみたい。
【有識者】
国際公務員を目指す場合,ジュネーブを頻繁に訪れ,人的コネクションを築くことも必要であろう。ある程度,上級役職の人事権のある人たちに知ってもらうためにも(本部のあるところに)行ったり来たりするということが必要である。欧州諸国などは自国出身の国際公務員が当該国の職員送り込みに役割を果たすといった現実もある中,本人の自己努力,国際競争試験を受けて,というだけではなかなかポストは得られないので,何らかの支援があればよいのではないか。
【外務省】
国際機関職員の採用においては,本人の自己努力だけではなくて,人的ネットワークや政府の支援が大事だということは,ご指摘のとおりと思う。その意味で,いろいろな国際機関に日本人職員を採用するように働きかけを強化しているところであり,いくつかの機関については既に成果が出ている。例えば,FAOは,日本人職員は元々多いとは言えなかったが,その後FAOとの間で戦略的対話を立ち上げ日本人職員増強について積極的に働きかけた結果,昨年1年で32名から46名に14名,日本人職員が増えたという成果を得た。そのうち幹部職員も6名から9名に増えた。我々としても国際機関への働きかけを通じて,日本人職員の増強に取り組んでおり,一部の機関については具体的な大きな成果が上がっているということで紹介させていただいた。
【有識者】
評価書を全体的に読ませていただいたが,国民一般がアクセスをして,外交について知りうる資料として,堅いと言うかわかりにくいところが多いというのが全般的な印象である。
施策のII-4「的確な情報収集及び云々」についての質問であるが,「情報コミュニティ省庁」というのが頻繁に出てくるが,具体的には何省と何省がこの中に入るのか教えていただきたい。例えば,厚生労働省にはWHOがあり,文部科学省にはUNESCOがあるという形で,国際機関と直接に繋がっていない役所であっても,何らかの情報収集等あるのではないかなということで表現も含めて気になった。
表現上の問題であるが「次期目標等への反映の方向性」の測定指標2「情報分析の質の向上」のところで,「SNS等を用いた情報や公開情報の収集……云々」ということが出てくるが,SNSを情報収集対象に入れるということをわざわざ特記する必要があるのか。SNSを見ているからといってそれが分析の質の向上に繋がるという保証もないわけであり,違和感がある。
情報コミュニティ省庁と連携した上で外務省の情報集能力,分析能力を高めるという姿勢だけではなくて,文字どおりその国際的な情報収集の司令塔である外務省の取組が,日本政府全体の情報収集にどう影響しているのか,どう貢献しているか,あるいはどう阻害しているか,という視点も必要なのではないか。
例えば,ある省庁から出向して,在外公館勤務をしていると,自省に対するメッセージも込めて公電を出しても,なかなか自分の出身省庁には届いていないという例を聞いている。
繰り返しになるが,日本政府全体の国際情報の収集・分析の司令塔であるという位置づけで,分析,政策評価も見直してみる必要があるのではないか。逆に言うと他省庁の収集情報というのは,外務省がいかにうまく使うかというツールであるということ以上に,より強い連携を構築していく必要があるのではないかと考える。
施策III-1について,一例を挙げると,「定期的に日本事情等を発信する在外公館発行インフォメーション・ブレティンは24公館,単発で発行する不定期広報資料は24公館にて作成され,」という数字が書かれているが,日本の在外公館は100以上あるなかで四分の一しかやってないのかということであり,経費や重要性の観点からの結果ということであれば,理解はできるが,総領事館を通じて,地元に対して,日本に関するPRの努力は,そんなにお金をかけなくてもできるのではないかという気がしており,しっかりやっているから安心だという印象を全体として受け取ることができなかった。
Webに関して,アクセス分析の詳細なものが実際に行われているのかが,うかがい知れなかった。例えば,チラシは,自分でいくらものすごい写真を送り出したとしても,それを消費者がどこで何回見ているかということが反映されないが,Webの場合,自分が本来伝えたいことが伝わっているか,見て欲しいところを見てもらっているかということを含めた分析が可能であるが,その点がなされているのかどうか,よくわからなかった。
施策IV-1「経済協力」について,非常に成功した例が,先日NHKで取り上げられていた。A国の研修生を日本の富山の立山町で訓練し,同研修生がA国への帰国後,B国でのインフラ整備に際して,日本メソッドでやり,日本の宣伝役を担っている。Aに値するような国というのはけっこうある。戦略的に,A国だけを潤すバイの関係ではなくて,A国に帰った後で,近隣のところで日本のやり方で,また国際的な役に立つというような重層的な協力にも,力を入れるべきではないか。
施策のVII-1とVII-2の「国際機関を通じた……云々」という二つの分野に係る国際貢献について,日本人職員の問題に関しては,今,説明にあったように,目に見える形で増えているということで,大変意を強くした感がある。
政策評価的に申しあげると,職員数というものの多寡,増減というものの中に,いわゆる省庁からの官僚派遣というものとそうでないものとの区分が,可能であればついていたら良いのではないか。もちろん政府の派遣も拡げていくというのが非常に重要だと思うが,いわゆる真水部分との区分が可能であれば,分析の上で役に立つのではないか。
【外務省】
全体的に表記が堅すぎるという話があったが,以前にも同様のご指摘をいただいており,例えば,用語についてはなるべくわかりやすくするとか,カタカナで意味がわかりにくいものは日本語に直すといった工夫をしている。一般の方からするとまだまだわかりにくいところがあるということであるので,引き続き,どうしたらわかりやすく書けるのか検討していきたい。
インテリジェンス関係の官庁については防衛省等が入ってくる。ほかの省庁,例えば厚生労働省がWHOを通じて収集している情報についての指摘もあったが,情報とインテリジェンスの違いがある。
SNSについては,その影響力が非常に増していて,例えばテロ活動についても,SNSを使って色々な活動が行われたり,宣伝が行われたりしている中で,SNSも,最近の動向にかんがみて情報収集する際の対象に加えるのが適切との考えから取り組んでいるところである。
情報収集において,政府内で役割分担があるが,外務省としては,外交政策を実施する上で必要な情報を収集して分析して,それを,官邸やほかの省庁とも共有しながら,政府全体として,外交政策を効果的に実施する上で,インテリジェンスを活用していくということになると考える。
海外広報について印刷物の資料を発行している公館が少ないのではないかというご指摘があったが,印刷物については予算の制約等もある中で,重点化し優先度の高いところで実施しているということと理解している。
Webを使った広報については最近特に力を入れている分野であり,海外広報の中でも力を入れて成果も上がっている分野だと思う。評価書にも書いているが,例えばジャパン・ビデオ・トピックスのWeb配信再生回数が,28年度は220万回だったのが,29年度は270万回になっているほか,ウェブサイトの「Web Japan」のページビューについて28年度は1,700万ページビューだったのが,29年度は1,800万ページビューになっているというように,着実に成果を上げており,我々としてもしっかりフォローしている。
経済協力について,日本方式を広める上で中心的な役割を果たせるような国はほかにもあるのではないかというご指摘があったが,我々としても,そうした国がどこで,どこに優先的に取り組んでいくかということを踏まえて,日本方式の普及についても取り組んでいく。
職員数については先ほど申し上げたとおり,着実に成果を上げており,引き続きこの取組は強化していきたい。なお,省庁派遣とそうでない人の区別についての把握は可能である。
【有識者】
ジャパン・ハウスは,例えばドイツのゲーテ・インスティトゥートとか,そういう文化交流拠点みたいなものなのか。
【外務省】
大まかに言えばそういうことになる。
【有識者】
そういうのは,戦後,今まで無かったということか。
【外務省】
文化交流という意味では国際交流基金があり,世界各地に事務所があって文化交流活動を行っている。それに加えて,日本の魅力を効果的に発信するにはどうしたらよいかという観点で,発信拠点として,より効果的なものを作ろうということで,ロサンゼルス,ロンドン,サンパウロの三か所に設置した。
【有識者】
既存の国際交流基金やその他の組織との関係はどうなっているのか。互いに適当に棲み分けて行こうということなのか。
【外務省】
国際交流基金の場合は,基本的にはいろいろな文化交流事業を各地で実施するということであり,ジャパン・ハウスは,そのジャパン・ハウス自体が,一つの拠点になって色々なイベントを実施したり,展示をしたり,日本食や日本酒を提供したりしてガストロノミーという観点からも日本を発信する等,多面的な大きな拠点になっているという意味で,違いがある。
【有識者】
冒頭に指摘のあった点だが,ほかの官庁等と比べ,そもそも外部要因が強いという説明は非常に重要だと考える。その中でバランスを取りながら,実際には調整をかなりされているというところが,外交の重要なポイントだと思うので,アウトカムというよりも,その調整のプロセス自体に,価値や重要性があるのでないかと思っている。ただそれをアウトカムで評価しようとするとなかなか難しく,外部要因が強いという指摘自体が非常に重要だと思っている。
論点に入る。
1点目は行政事業レビューとの関係である。本文の方を見ると,何を指摘されたかがちょっとわからないのでそれがわかるように書いていただきたい。より重要な点は,その行政事業レビューとの関係で,自民党行政改革推進本部行政事業レビューチームという党の組織との関係も,論究されている。党の組織の話であり,政務の側の指示として下りてくるのであれば行政機関の議論として扱いやすいと思うが,党の話をここまで直接的に書いてよいのかどうか,立ち止まって考えてみてもよいのではないか。レビューチームの提言が重要だというのはわかるが,直接的にこれを書いてよいのかが疑問である。
2点目はアウトカムの関係である。例えば,外交に関する世論調査のことが,施策II-1で書かれているが,内閣府の世論調査を見てくださいと書いてあり,今度はそちらを拝見すると,政府施策の企画立案に資することが目的としてうたわれている。内閣府でも行政事業レビューはされているが,世論調査の結果の各府省の審議会,各府省の利活用度がアウトカムとして設定されている。しかしながら,外務省の説明は,必ずしも政策の企画立案等に資するというわけでもなさそうであり,ここのつながりはどうなっているのか。このように,他の評価との関係で気になるところがある。
アウトカムとの関係では,さらに,例えば,条約の締結とか交渉の妥結というのが頻繁に出てくるが,その中で日本の貢献が著しいか著しくないかという点に関し,TPP11の話も書いてあるが,これは高く評価しても良いのではないか。ところが評価の方を見ると,「B」評価となっており,そういうことでよいのであろうか。
ワークショップや会合の参加国の多寡が論じられている指標(施策II-2指標4-5)のところ,我が国の考え方の反映度合いが本質であるということが書かれている。何をアウトカムとして見るのか,全体を通じてバラバラ感が強い。いくつかカテゴリーとして作って,このタイプのものはこういう考え方を取るといった議論ができそうに思われ,アウトカムの整理もそろそろ考えてよいのではないか。
3点目は「A」判定,「C」判定に関してである。多くが「B」判定,中には「A」判定と「C」判定があるということだが,まとめて申し上げると「B」判定ではなく「A」判定だ,あるいは「B」判定ではなく「C」判定だという説明が,うまく読み取れないというのが率直な感想である。
4点目は,国際交流基金,独法関係ということになるが,書きぶりについてどうなっているのかと思ったところがある。独法の制度改正が行われていて,現在の中期目標管理法人の中で,政策実施基盤の最大化というのがうたわれているが,従来の制度の上の政策評価と独法評価との関係の整理とは違っているのではないか。そこはどう整理されているのか。
5点目は分担金・拠出金の関係である。分担金・拠出金の評価について,いわゆる政策評価書の様式に則って書いてあるが,この枠組みでよいのかと率直に疑問に思った。分担金・拠出金に関して疑問を呈される場合,ここに書かれているような説明が求められているのであろうか。分担金・拠出金の関係に関しては,政策評価の方ではどういうレビューの仕方をすべきか考えてもよいのではないか。現行の政策評価の枠には合っていないというのが率直な感想である。
【外務省】
自民党のレビューチームの話については,党として出されている提言を踏まえて政府としてもできるだけ対応しているものであり,特に問題ないと考える。
【有識者】
質問の本質は,ファクトとして自民党が提言を出しておられることについて言及しているのではなく,それに「基づいて」対応をされているという書き方をされている部分である。
【外務省】
提言を受けたら,真摯に受け止め,政策を考えていくということだと思うが,表現として適当かどうかについては確認させていただく。
世論調査をどう活用しているかについては改めてご連絡させていただく。
TPP11は高く評価してもよいのではないかというご指摘があったが,外交的な影響が大きいものとか,我々として重視しているものが締結された場合には,適切に評価には反映している。経済連携協定で言えば,2年間で見ると「B」となっているが,29年度の評価は,TPP11の署名,日EU・EPAの大枠合意等がある点も考慮して「a」判定にしている。28年度については,元々の目標が,TPPの発効と日EU・EPAの大枠合意であったため,それが28年度には達成できなかったということで,28年度は「b」と評定し,2年度分では「B」になった。TPP11自体は我々としても,高く評価している。
定量指標のワークショップ等の回数について,考え方が十分整理できていなかった面もあるが,我々としては,定量指標として掲げた以上,達成できなかったときには,それに対応した評価にするということで「C」評価にさせていただいた。その上で,この定量指標の妥当性について,改めて検討した結果,変更させていただいたということである。また,定量指標については,単純に数を達成していても,具体的な成果が得られてない場合には,必ずしも「A」にならないということもあり,厳しめに評価しているということで,ご理解いただきたい。
【有識者】
補足するが要は,アウトカムとして,とりあえず数値目標を書かないといけないので,参加国の多寡といった話になるのはわかるが,まじめに考えれば考えるほど,参加国が多いか少ないかではなく,我が国の考え方をきちっと反映できるかどうかというところが本質ではないかという議論になる。それは,アウトカムをどう表現するのか,何によって成果をみるのかという話に直結するものであり,この問題にまっすぐに向かい合っていただきたい。
今のご説明は,厳格に評価することになると,一旦掲げたものを尊重せざるを得ないという話だと思うが,外交として大事な話がここに含まれているように思う。アウトカムをどう表現するかがやはり厳しいところであり,担当部局も交えて,是非,一緒に考えていただきたい。
【外務省】
そこは非常に悩ましいところであり,そもそも外交政策というのは定量的な指標には馴染まないところが多く,どうしても定性的な指標を設定し,それに基づいて評価することが基本になる。他方で,政府全体の方針として,政策評価においては定量指標をなるべく用いることとなっており,定量指標を一部設定している。定量指標のあり方については,改善できる部分,あるいは今後検討していかなければいけない部分もあると思うので,引き続き改善していきたい。
「A」判定,「C」判定の説明については書きぶりが工夫できないか検討させていただく。
【外務省】
アウトカムのところで申し上げると,外交政策は,参加国が多ければそれでよいのか,というと全くそういうことではないわけで,それがどう成果があったのか,まさにそれこそ我々の考えたとおりにできたのか,ということが重要であるが,そういう定性的な目標を立ててしまうと,定性的に,「皆さんの理解が得られた。」といって,お手盛りの評価になってしまうところがあり,定量的にできるところはなるべく定量的にしようということでやっているわけである。どういうアウトカムを設定するのか,というところは,悩みながら考えるということなのだろう。
【外務省】
政策評価と独法評価の関係については,基本的には独法評価は独法が評価するということで,JICAと国際交流基金の二つということになるが,政策評価は,外務省自身の施策を評価するということで,評価の対象が異なる。外務省と,JICA,国際交流基金の関係というのは,外務省が政策を企画立案して,具体的な個々の事業を実施するのが国際交流基金とJICAである。それぞれの部分について,政策評価と独法評価で評価するのが基本になる。
もちろん我々の政策も,JICAとか国際交流基金を通じて実施する部分もあるので,その部分は政策評価に含まれる。
分担金・拠出金が政策評価の枠組みに馴染まないのではないかという点については,政府全体の方針として政策評価の項目と予算項目を対応させるというものがある。外務省の予算項目の中で,分担金・拠出金があり,そこも政策評価の中で評価するということになっており,このため代表的な国際機関を毎年選んで評価する形をとっている。国際機関自体の評価については,別途「国際機関評価」により個々の分担金・拠出金についてより詳しく評価を行っている。
【有識者】
分担金・拠出金は,別のフレームで評価をされているということか。
【外務省】
政策評価は政策評価法に基づくものであるが,国際機関評価は外務省独自の取組としてやっているものであり,別の枠組みである。
(2)行政事業レビュー
【外務省】
行政事業レビューの関係では,今月の12日に「春の公開プロセス」があったので,その概要につき,簡単にご説明申し上げる。
今回の春のプロセスで取り上げられたのは,JPO,領事システムの最適化,JICA運営費交付金のうちの「青年研修」の3つである。
「領事システム」の件について,平成22年に,領事システムを改善,最適化して,例えば旅券,査証,あるいは在留届といったシステムを統合しようという計画を立て,今年度から,これが実質的に運用されるというタイミングもあり,取り上げた次第である。一番大きな指摘としては,最適化が,業務の合理化や運用経費の圧縮,という方向に主眼が行くのは良いが,領事サービスは国民へのサービスであるという視点が若干欠けているというものであった。政府全体で,デジタルガバメント計画も進めていることから,国民へのサービスというのが一番の主眼になるので,こういうところでしっかりと領事システムの最適化と改善をやるべきではないかというご指摘であった。
次にJICAの「青年研修」であるが,先程来,アウトカムについての議論があったが,成果の評価自体が非常に弱い,明確な評価がないのではないかというご指摘をいただいた。更に,受託業者が長いこと一社応札という状態であり,コスト増になっているのではないか,外的要因がいろいろあるかもしれないが,そういう点もしっかりと見て,コスト減に努めるべきであるというご指摘もあった。
JPOが,やはり大きな議論になった。先ほどの議論にもあったように,人材の発掘において,どのように裾野を広げていくべきか,広報のやり方を抜本的に改善していくべきではないか,大学,更に高校までアウトリーチして,優秀な人材はどういうところで発掘できるかを考えていくべきではないかというご指摘を受けた。JPOを終えた後に国際機関への継続採用が叶わなかったというケースがやはりあり,何が足りなかったのか,問題点をきちんと洗い出して,そこに手当てすべきではないかというご指摘もあった。
今回も非常に有意義なご指摘をいただいたところであり,これをしっかり反映させて,予算の方にも繋げていきたいと考えている。
【外務省】
本日は,時間が限られている中,貴重なご意見をいただき感謝する。
完全に議論を尽くせたとまでは言えないが,政策評価の本質的な部分,何がポイントなのかといった点や,誰のために,また,何のために,といったご指摘もあり,有意義であったと思う。
評価の過程において,その基準をどうするか,基準を決める際に,外部要因が大きい中でどう判断するのか,TPP11がまとまったという次元の話から,セミナーへの参加者の数まで,そもそも並べて評価するのが適当なのかといった問題は,我々も,感じてきているところである。
様々な経緯があって,政策評価,ODA評価,独法評価,国際機関評価,そして行政事業レビューがある,という複雑さをどう整理できるのか,引き続き課題であると考えている。簡単に整理ができる話でもないとは思うが,我々も,この政策評価の質を高め,目的を持った形のプロセスにしていきたいと考えており,引き続き先生方より貴重なご意見を賜れば幸いである。
本日の積極的な御議論に感謝したい。
【外務省】
以上をもって,外務省政策評価アドバイザリー・グループ第29回会合を終了する。