政策評価
外務省政策評価アドバイザリー・グループ第23回会合議事録
1 日時
平成27年8月5日(水曜日) 14時30分~16時15分
2 場所
外務省
3 出席者
- (有識者)(五十音順)
- 秋月 謙吾 京都大学大学院 教授
- 遠藤 乾 北海道大学大学院 教授
- 南島 和久 神戸学院大学法学部 准教授
- 福田 耕治 早稲田大学政治経済学術院 教授
- (外務省)
- 彦田考査・政策評価官,村岡ODA評価室長,濱本総合外交政策局総務課主任外交政策調整官,河邉考査・政策評価官室首席事務官,中川総合外交政策局政策企画室首席事務官,前田官房総務課課長補佐,山下会計課総務室課長補佐ほか
4 議題
- (1)平成27年度外務省政策評価書等について
- (2)その他
5 発言内容
(1)平成27年度外務省政策評価書等について
【外務省】
今回は平成25・26年度の2年度分の評価であるが,先生方から事前に貴重なご意見をいただき幸甚。本日の会合においても,今年度の評価対象施策に加えモニタリング対象施策を含め全般的なご意見,アドバイスをいただきたい。平成27年度目標を設定した「平成27年度外務省政策評価事前分析表」も併せて配布している。
始めに今年3月の本件会合で説明した今年度の政策評価の実施要領及び結果について簡単に説明させていただく。まず,実施要領については,評価の対象は平成27年度外務省政策評価実施計画に基づき,基本目標「I 地域別外交」,「IV 領事政策」,「V 外交実施体制の整備・強化」及び「VII 分担金・拠出金」の12施策とし,方式は事前分析表で設定した年度目標に対して達成度を評価する実績評価方式で行った。平成25年12月に評価の標準化及び重点化が図られ,昨年度の評価は改正後初の評価のためその時点で過去1年分の評価を実施したが,本年度から重点化として当省については過去2年度分の評価を行った。判定は3段階で行い,まず各測定指標の平成25・26年度の各年度の年度目標の達成状況の判定をそれぞれ5区分で行い,その上で第2段階としてその両年度の判定を組み合わせる形で2年度分の評価を行った。第3段階として各測定指標の判定結果を積み上げて施策全体について5区分で判定を行った。第2段階の判定の結果,目標達成に至らなかったものはその要因分析を行っている。次に評価結果について簡単に説明したい。評価結果は政策評価書案の「総括・概要」の「本年度評価結果の概要」のとおり,分担金・拠出金の2施策が目標達成,他の10施策は相当程度進展ありとなった。標準化によって統一された基準に従えば目標達成となるのは全ての測定指標について目標達成となった場合のみで,例えば主要な測定指標では目標達成していてもその他の指標で一つでも目標未達成となる場合には施策全体の評価としては目標未達成の判定となる。当省の場合は一つの施策の中に多岐にわたる内容が含まれるため一つの施策の中で設定された測定指標の数も多くなり,そのことが施策単位での目標達成が少ない理由と考えている。
今回の評価にあたり事前に先生方からいただいた所見のうち全般に共通するものをいくつか紹介させていただきたい。1点目は目標未達成の要因を分析することになっているがその分析が不十分なものがあるのではないかとの指摘があった。2点目は測定指標の設定を更に適切にしていく必要があるのではないかとの指摘をいただいた項目もあった。3点目として施策レベルでの個々の取組の濃淡がもう少し整理されていると分かりやすいのではないかという指摘もあった。4点目として世論調査結果を定量的指標として用いている施策があるが,その結果の背景についてもう少し踏み込んで分析をすべきとの指摘もあった。更に活動実績だけではなく成果に関しても更に記述を充実させるべきではないかという指摘を得ており,本年度分の評価書及び今後の評価にあたり可能な範囲で取り入れたいと考えている。
【有識者】
世論調査は具体的にどこで使っているのか。具体的な箇所をご教示願いたい。
【外務省】
今回の評価対象部分のうち,例えば「施策I-2 北米地域外交」の測定指標「1(5)米国における対日世論調査の結果(日本を友邦として信頼できると肯定的に回答した割合)」や「施策I-6 アフリカ地域外交」の測定指標「2(3)内閣府世論調査(アフリカに親しみを感じる人の割合)」等があり,その他参考指標もある。
【有識者】
世論調査結果の背景についてもう少し踏み込んだ記述が必要ではないかというご意見を紹介いただいたが,どこまで書き得るのか,あるいは現状が記述としては限界なのかということについてご説明いただければと思う。
【外務省】
今年の評価作業を通じていろいろな点が含まれていると感じている。1点目は,例えばアフリカの調査では日本国民が相手国等に対して親近感を感じる割合,米の調査では米国の「一般」及び「有識者」の日本に対する信頼度という違う種類のものを測定指標にしている。一般に世論調査では,日本人に対するものも外国人に対するものも,基本的には広報努力や首脳の往来や外交的取組による注目度,親近感の向上改善もあるだろうし,あるいは日本という国の持っているイメージ,それは技術やクールジャパン,政策的なものに対する信頼感や知識等いろいろな要素が組み合わさっていると考えている。基本的には広報努力によるものと考えるが,どこまでが外務省の施策で働きかけ得るものなのかという問題が一つある。もう一つはいろいろな要素を考慮してどこまで踏み込んで書けるのかという点であると思う。評価書ではこれらを勘案して書いており,このような書き方が一つの有り得る方法ではないかとして提示させていただいた。
【有識者】
基本的には現在の記述以上に分析的なことは書きにくい,このあたりが相場ではないかという理解でよろしいか。それとも,もう少し広報効果が得られるかについて踏み込んで分析的に記述できるのか。この指標をどう捉えるか,どのような理解の仕方をすればよろしいか。
【有識者】
これに関連し,「親しみを感じる」等の割合を増やすこと自体が目標となっているところとそうでないところがある。この指標を本当に目標にするなら何が理由で目標に達しなかったのかを,省内のどこかで分析されるべきであろう。その上で外務省としてできることとできないことがより分けられて,あとは外的な要因があるということになるのだろうが,確かにこの指標の位置付けがよく分からない。もしかしたら目標を数値化しなければならないということが先にあったのではないか。一番取りやすい指標なのだろうが,逆にそれに囚われると変なことになるのだろうと思った。アフリカの場合がとりわけ典型的と思われ,日本国民にとってアフリカが身近に感じられなければならない必然的な理由はあまりなくて,これ自体政策目標にすべきかということが議論になりうると考える。他方,そこが重要ではないので,止めた方が良いという訳ではなく,安全保障等含めていろいろな施策をしていかなくてはならない,それと内閣府の世論調査等で親しみを感じなくてはいけないということとの比重をどう考えたらいいのかむずかしい。
【外務省】
先ほど申し上げたことと重なるかもしれないが,世論調査の結果は広報努力の成果ということかもしれない。例えば日本国民の他国に対する親近感は我が国にとっての目標であると共に,同時に相手国にとっての目標であるかもしれないし,その広報努力の結果が出ているものかもしれない。いろいろな要素が世論調査の結果には入ってくると思う。もちろん施策目標のための目標ではあるが,やはり二国間関係,地域との関係を所管している部署として,一般的に信頼関係があり,親しみを感じるという数値は総合的な二国間関係,地域関係を表すものとして念頭に置いて目標にしたいものだと思う。ただ,毎年度そのために何か手を打って数値を作っていくというものではないと考える。単年度の目標にはなっているが,どちらかと言うと中期目標で書かれているような広い意味で長い目で見た二国間関係に関して念頭に置いておきたい数値,いろいろな取組の結果が現れてくる最後の形としての数値という位置付けではないかと思う。
【有識者】
この世論調査に関するやりとりについて,そのような説明があった方が分かりやすいと率直に思う。全体にかかる話だと思うので評価書冒頭の「総括・概要」に括り出して説明していただいてもよいのではないかと思う。
【有識者】
中国・韓国はいわゆるメディア戦略として欧米のメディアを招いてアピールするという努力をしている。そういう各国メディア,特に日本との関係を考えなければならない国々の欧米に対するメディア戦略というものも検討して,日本も検討する必要があるのではないかという印象をもった。
【外務省】
ご指摘の点は必ずしも世論調査の数値やメディア戦略という形ではないが,今回の評価対象施策のうち各地域課ごとに例えば測定指標の一部に招へいプログラムやその分野での努力を書き込んでいるところもある。基本目標「III 広報,文化交流及び報道対策」は今回はモニタリング対象であり,来年度評価対象となるが,このような施策の評価でご指摘の視点も踏まえて対応させていただきたい。
【有識者】
NHKの国際放送は,17カ国語に翻訳されているがドイツ語,イタリア語がなく,なぜ入っていないのか疑問に思っている。最近はインターネットで世界中に広報できるのでいろいろな言語で広報できればいいのではないか。
【有識者】
ある種の世論調査に近いものとして,在留邦人に対する領事サービス向上のための大部なアンケート調査があり,300名上の邦人が居住する在外150公館の在留邦人等を対象にした調査結果を集計データとして扱っている。恐らく,すごく評判が良くて現地の方々に頼られている公館と,必ずしもそうは言えないところとがあるのであろう。こういう集計されたデータに基づき世界中の領事関係職員ががんばろうというのではなくて,公館を特定して比較して,各公館が自分たちももっとがんばって在留邦人に頼りにされるようにしなければならないという形の調査とし,政策評価にも使えるようなものにすべきではないか。
【外務省】
評価書の「施策IV-1 領事業務の充実」にご指摘の施策の分析欄がある。領事窓口サービスの向上に関し,どこの公館とは書いていないが「丁寧ではない」という厳しい回答をいただいた割合が10%を超えている公館には個別指導等対応を取っているとし,まさにこのアンケートをとる目的としてご指摘の点があると思うのでそのような使い方をして取組を行っているということを書かせていただいている。【有識者】
「丁寧ではない」の回答が10%を超えたところに対して指導を行うという記載には留意するが,領事研修が行われており,それによって領事サービスが向上するのがステップかと思う。評価書の記載としては,領事研修関係のデータは基本的に受講生が満足したかというデータであり,研修が領事サービスの対象である在外邦人の満足度にどう繋がるのか,という点が切れていると考える。
【外務省】
領事研修の記載には正にご指摘のような面がある。他方,その結果というか,実際にサービスの享受者である現地邦人の方々からの反応を踏まえ特別に手当を要するところは問題意識をもって手当している旨を記載している。研修の成果は,サービスを受ける邦人の方々の満足度に表れるべきであるというご指摘はその通りと考える。
【有識者】
これについては典型的なサービス業であり,官公庁としては一番難しいところだと思うが,民間のサービス業の視点やシステムを導入しているのか。どこかで満足度の数字は出ていたか。
【外務省】
例えば施策「IV-1 領事業務の充実」の測定指標「1 利用者の評価等サービスの向上」平成26年度の具体的施策としてIT化の推進,領事シニアボランティア制度を活用したサービスの向上,領事実施体制整備,在外選挙人名簿登録促進,IC旅券の発給等の取組を記載している。その結果として,在留邦人等を対象としたアンケートで領事サービスに対し,窓口業務で78%,電話対応で74%,「丁寧な対応」との評価をいただいた。150公館をならせば78%かもしれないが,どこかの公館は85%でどこかの公館は65%であるかもしれないではないか,とのご指摘は正にそのとおりで,一部の公館に対しては特別に指示をして対応を取った。研修に際して,民間サービス業の視点というご指摘につき,この場で具体的回答を持ち合わせていないが,例えば在外公館における領事サービス業務の一部で夜間の緊急連絡対応等では民間のサービスを利活用している。
【有識者】
基本的には,評価書に記載されている23年度からアンケートでの満足度も記述内容も変化しておらず,おおむね落ち着くところに落ち着いているという印象を受ける。そうすると,△の評価は何なのかと疑問に思われる。「普通」及び「丁寧ではない」という評価はよろしくないとのことであれば,随分ハードルが高いのではないか。この目標については,見直した方がよいのではないかと思えるのだが,いかがか。
【外務省】
年度目標としてはここ数年間「丁寧な対応」の割合を80%以上に維持するとしており,25年度及び26年度はそれに達していないので△となった。他方,例年の実績については主管部局も認識しつつ,在外邦人の方々の最後の拠り所であるので80%という目標は維持したいということで,中期目標も年度目標も80%を目指すということで努力をしている。
【有識者】
その姿勢は高く評価できると思う。だが,他の施策との並びを見たときにやや厳しいのではないかというのが感想である。もし機会があれば見直しの対象に入れてもいいのではないかという印象をもった。在外公館が仕事していない印象を与えるのもよろしくないと思う。問題は目標値に達しない約10%のところが,何か克服しがたい課題を抱えているのかが見えない点である。そこを何とかしたいということであればまた違う別の意味があると思う。
【有識者】
入館時の受付対応という調査項目があるが,例えば在ベルギー大使館で個人的に経験したことだが,受付で英語では対応してもらえず仏語に変えたら対応してくれた。パスポートを落とした日本人旅行者が来られた時どうするのだろうか,仏語ができる日本人は少なく,受付で不親切だと感じる人はいるかもしれない。受付を現地の人にアウトソーシングしてブラッセルだと仏語圏だから当然といえば当然なのだが,そこを利用するのは仏語が得意でない日本人であったりするので,せめて英語で対応できる案内にしてくれればと思う。アウトソーシングするなら日本語・英語ができる人がブラッセルにはたくさん住んでいる。そのようなことは評価に影響するのではないか。館内に入れば非常に親切な対応をしてくれるが,入口の受付のところが課題。
【有識者】
私も同じ経験をしたことがある。受付で私の前の人が英語しかしゃべれず,英語でいくら聞いても仏語で返すという対応をしていた。領事業務は海外で最も顔が見えるサービス業であって,中期目標の書き方もそうかもしれないが,80%の目標に対して△という評価になったことについて,目標を下げるというのも一つのやり方だと思うが,先ほど民間の話をしたのは,役所の人が役所の人を研修しても何年間も向上していないので,本気で取り組むなら研修等にサービス業の人を入れたり少しドラスティックな施策を取り入れた方がいいのではないかという趣旨である。
【外務省】
研修は日本人の領事担当職員が対象だと思う。そこに外部講師が入っているかどうかについては事実関係を確認の上報告したい。またご指摘いただいた受付対応は現地採用の職員だと思う。このようなケースは満足度に影響しているはずであるのでそういうものを含めて対応すべきと考える。
【有識者】
ほかに領事関係では,在日外国人に対する取組は積極的に評価すべきだと感じたが,外務省のみでできることには限度があると感じた。例えば,国際シンポジウムの開催,在日外国人を包摂統合しようという指向性は見られるが,他方,おそらく外国人旅行者は我々の想像を超えたスピードで増加しているし,東京オリンピックもあるし,短期滞在もあるが長期滞在も2012年に増加傾向に反転していると書いてある。在日外国人問題への取組は,芽が出ているだけであまり伸びていかない,リソースが足りなさそうな書き方になっている。この辺は学会等に多文化主義を含めて知見が蓄積されているので協力・連携,外部人材の活用等もっといろいろなことができるのではないか。
【外務省】
施策「IV-1 領事業務の充実」の個別分野「3 外国人問題への取組」の1つ目の測定指標が査証の発給要件との関連で外国人の旅行者,訪問者の方々,2つ目の測定指標で在日外国人の問題を取り上げている。特に2つ目については,ご指摘のとおり日本の政府機関全体の中で外務省が必ずしも主たる対応者,主体ではないかもしれないが,領事関係業務を行っている立場から可能な限り,26年度目標にも在日外国人が抱える問題の緩和・解決の一助のためにと書いているとおり,できることをやっていくということだと思う。一方,査証については関係省庁もあるが当省として記載しているような施策を行ってきており,特に査証の発給緩和等については近年いろいろな施策が具体的に実施され,それに伴い訪日外国人数も大きく動いてくると思う。これらの施策についてはご指摘のとおり関係省庁と連携して取り組むべきであると思う。
【有識者】
違う論点についてだが,施策「V-1 外交実施体制の整備・強化」の測定指標「1 外務省の人員,機構の更なる整備」に△がついているが,何が足りなかったのかを記載する方がよいと思う。何が足りなかったか,あるいはもっと定員を付けてくれればこういうことができるというような点を説明する必要がある。
【外務省】
ご 指摘の側面はあると思う。他方,政策評価として,年度目標に対して官房当局として是非実現したいと取り組んだものに対してその年の様々な要因があって届かなかったという客観的な実績を書き,その理由は政府内で調整をした結果その数値までは届かなかったので△ということだと思う。当省としてのニーズを説明して要求したが結果として当該年度に関しては届かなかったということで,体制面については,外交政策とは目標の立て方も評価の記載も異なる面があると思う。
【有識者】
一つは地域局・機能局については,実績として事実関係を積み上げて外交とはどういうものか見てもらうという書き方をしておられる。もう一つは政策評価では本来であれば,バックオフィス業務を評価対象にしないが,それでも書く場合には効果の説明が軸になる。外部要因の説明というより,「効果的な外交を実施するために必要な体制である」というロジックの説明を丁寧にした方が目的には合致すると思う。工夫していただきたい。
【有識者】
他の先進国並みの外交要員確保ということで,外目で見ても実際に人員が足りない印象があるが,26年度46名純増してNSCに振り替えしたということで,増員によりどれだけ実際に外交機能が強化されたかということをポジティブにきちんと説明すべきではないか。そういうのがあまり見られない。同じように少し前だがジブチや最近だとアイスランド,南スーダン,マーシャル,ナミビア等大使館新設についてもそれぞれ存在理由が分かるように書くべきであろうし,逆にベレン,ハンブルク,ポートランドの公館を廃止した経緯も大事だと思う。在外公館のスクラップ・アンド・ビルドにつき,省内できちんとレビューしていただくことが必要だと思う。
【外務省】
まさにスクラップ・アンド・ビルドにつき新しくリソースをいただいて設置しているところもあるし,記載のように廃止もあるが,スクラップ・アンド・ビルドについては部内では真剣に検討をしている。
【有識者】
今回初めて評価に参加させていただき,とても難しかったところを含めてお伝えすると,例えば二国間あるいはある地域と日本の関係が増進したということが,第三国との関係等を含め総合的な意味で日本の国益になっているのかは別であることもある。そのようなクロスエリアなのかクロス項目なのか,評価する側としてはそういった視点が必要ではないかというのが1点目である。
2点目は,外交政策は特別なのかもしれないが,施策ごとのおおまかな予算総額は各施策の冒頭ページに示されているが,さらに細分化したそれぞれの施策にどのくらいのリソースが割かれているのか,対応関係がおおざっぱにしか分からない中で評価した。本来的には項目分けされた支出のようなものと施策がインターアクトするような形で評価するのが普通ではないかと感じている。
3点目は評価対象の選び方について,国際機関の分担金・拠出金では,IAEA,OECDとオゾン層保護関連の施策が取り上げられており,順次取り上げるということなっているが,順次どのように取り上げていくのか説明があった方が評価する側としてはありがたい。
【外務省】
1点目,ある施策とある施策がそれぞれの施策を追求した結果,全体としてどうなのかという点は非常に重要であり得べき視点だと思う。より全体として総合的な判断をしなければならない事象が出てくれば,政策及び評価にも反映をしていかなければならない。非常に重要な指摘をいただいた。
2点目については,「平成27年度外務省政策評価事前分析表」に記載がある。この事前分析表で達成手段として事業予算及びそれがどの測定指標に関連するのかを書き,執行予定の目安として載せている。平成27年度事前分析表の予算額は27年度の目標に関連するもので,今回の評価対象である26年度実績に関連する予算額は平成26年度事前分析表に同様に記載し外務省HPにも掲載している。なお,今回の評価対象である地域局の施策遂行に必要な主な予算は一般的に言うと出張予算や招へい予算,会議やシンポジウム開催予算等になる。
3点目の国際機関の分担金・拠出金については,政務及び安全保障,経済及び社会,地球規模の諸問題という3つのカテゴリーに分け,目安であるが10億円以上拠出をしている分担金・拠出金について,順次取り上げて一通りカバーしていこうという形で回している。政治・安全保障分野であれば国連分担金やPKO拠出金から回している,母数の少ない分野については二巡目に入っているものもあるし,母数の多い分野では一巡目の途中というものもある。
【有識者】
今の1点目と3点目に関わると思うが,例えば地球規模で安全保障を考える時に,プーチン大統領が7月初めにBRICsとSCO(上海協力機構)の会合を同時開催した。その意味は軍事安全保障面ではSCOを使い,経済の方はBRICsを使うという形で,クリミア半島を支配下においたウクライナ問題の影響でG8から排除されたことに対して,経済的安全保障と軍事的安全保障をひっくるめてプーチン大統領が世界に見せた一つの欧米対抗姿勢といえる。これを見ると,日本も個別地域別に安全保障を考えるだけでなく,まさに2030年代を考えるのであれば世界規模で今後どう動くかということを見据えたグローバルな枠組みというものを検討・評価の対象に入れるべきかもしれない。SCO6カ国と準支援国について日本ではほとんど取り上げられないけれども,NATOと遜色ないくらいの軍事的規模であり,中国が新シルクロードとして中央アジアのルートを作ろうとし,ロシアもそこに存在意義を見いだしている。例えば日本外交として親日的な国もある中央アジアに積極的に関係を強め,アメリカ一辺倒ではない安全保障を考えていくべき時期ではないか。そのようなことを考えていくために評価についても地球規模で経済も安全保障も考える評価項目がどこかにあってもよいのではないか。
【外務省】
ご指摘の二国間関係を総合的にどう評価するかだが,最近で言えばイランの核問題の最終合意を受けて、今後日イラン関係を前向きに進めていくことが日米関係の中でどう評価されるのかという点があげられると思う。アメリカも来年大統領選挙があって,イランへの方針も180度変わるかもしれない中で,日イラン関係の進め方は難しい。かつては日イラン関係と日米関係がトレードオフの時代もあった。二国間関係が良くなれば総合的に我が国の国益に資するというのは一般論ではあるが,日イラン関係や日キューバ関係の例もあり、ご指摘のように二国間関係の評価のみでは良くない。BRICSについては,外務省では新興国外交推進室において担当している。今までの外務省の政策評価は二国間関係や項目ごとにその政策の評価が中心であまり総合的な視点はなかったというのはおっしゃるとおりだと思われ,それを超えて総合的にまた別途視点を設けるかどうか今後の検討課題とさせていただきたい。
【外務省】
ODA評価室では,地域別の視点という観点で昨年度初めてメコン地域のODA評価を行った。従来まさに二国間関係でタイの評価とかラオスの評価とか地域の評価を行ってきたが,メコン地域の連携性という観点からベトナムからミャンマーに至るメコン地域を日本がODAを使ってどのように開発してきたかという評価を行った。その視点で見ると様々なものが見えてきた。他方,評価結果を踏まえて有識者の方々から,ODAは二国間の国別援助方針があるが,地域への政策がはっきりしていない,地域別の支援戦略を今後固めるべきというご指摘をいただいた。ODAについても同じような指摘があるということで紹介させていただいた。
【有識者】
ご指摘のあったとおり,そもそも個別の外交活動そのものが「多面性を持っている」という視点が大事である。「二国間」だけで切れないので「地域局」があり,それでも割り切れないので「総政局」がある。こういう組織構造により外交関係は多面的に見ることとなっている。それは,一次元では評価できない,総合的に見ないといけないということである。そのため,外務省が政策評価を導入したときに「総合評価方式」でやってきたのは意味がないことではなかった。多面的に見ないといけないということがまずベースにあった。その上で予算と施策,個別の行政活動との関係である。例えばODAでやっている技術協力は,はっきりと一対一の関係で見えるが,他方,何の効果があるのか分からない,まさに安全保障の面で見るのか,経済の面で見るのか,外交関係にはどこの面で見るのかによって解釈が変わってくるものがあって,一対一で対応できないものが含まれている。同じような政策は防衛政策で,「運用」による対応が必要とされている。このため,予算との関係で個別の施策を一対一対応させることができない。そういう側面が外交にもある。外交政策が一対一で対応しないという点は,そもそもの議論として,最初の総括等で外交政策の特徴としてご説明いただければと思う。その上でこの枠組みに沿って評価書を書き,議論していくものだと思う。評価書の議論は,全体の中の一部分を議論しているという認識が必要だと思う。
【外務省】
重ねてご指摘いただいた司を超える総合的な評価の仕方,組織構造としても地域局の上に総政局があるのだろうというご指摘をいただいたが,まさにそういう総合的な視点についての評価は今後の検討課題で考えさせていただきたい。
(2)その他(行政事業レビュー)
【外務省】
行政事業レビューは,予算の確実な執行という観点から,各府省自ら自分たちが行っている行政事業の内容及び効果について点検を行うものである。効果的,効率的な方法で各事業が実施されているかということを自律的に点検して,それを次の予算要求や具体的な予算執行に活かしていく。本年についても平成26年度が終了した段階で,事業レビューの点検作業を始めており,現在7月中に各課が行っている各事業の点検の結果を外務省HPに中間公表という形で公表している。我々行政機関が自分たちの事業を点検するだけでなく,より客観的な評価を行っていくために外部有識者から意見をいただく取組を2つの観点で行っている。その一つが,行政事業レビューシートを書いた段階で,そのいくつかの事業について,外部の有識者の先生に点検を行っていただく作業であり,現在行っている。5年間で全ての事業の点検作業が一周するよう実施しているので,毎年約50の事業につき点検を行っている。それからもう一つが公開プロセスであり,公開での点検が有効であると思われる事業をいくつかピックアップして,外部有識者の方々に点検をしていただく。議論の状況はインターネットの動画で視聴可能で,報道関係者からご希望があれば実際にその場で取材をしていただきながら議論を行っている。
本年については6月24日に,3件の事業を対象として公開プロセスを実施した。簡単に評価の内容について御紹介させていただくと,1件目がJICA交付金の技術協力について,特にその中で行っている評価事業に焦点を当てる形で評価を行っていただいた。公開プロセスでは4段階のとりまとめの評価をいただくことになっており,それぞれ「現状通り」,「事業内容の一部改善」,「事業全体の抜本的な改善」,「廃止」のいずれかの評価をいただくことになっている。このJICA交付金の事業については,評価事業においてより外部からの視点をより取り入れるべきである,また専門的,多様な視点がもう少し反映されるように工夫するべきだというご意見をいただきつつ,全体として「事業内容の一部改善」という評価をいただいた。2件目は国際機関職員派遣信託基金拠出金という事業で,日本人の優秀な人材を発掘して,その方たちを国際機関に一定期間派遣して実務をしていただくという事業だが,その優秀な人材の母数を増やすための努力をすべき,より幅広い優秀な人材を発掘するための広報努力を強化すべきだといったコメントをいただき,これも「事業内容の一部改善」の評価をいただいた。最後に国際交流基金の運営費の交付金につき,特に日本語教育事業に焦点を当てて議論いただいたが,国や地域別により中・長期的な目標を設定して,適正な資源の地域配分に努めるべきである,あるいは,他の日本語普及関連事業や,他の政府機関や教育機関との連携を進めるべきであるというコメントをいただいて,全体として「事業内容の一部改善」の評価をいただいた。こうしていただいた評価,あるいは現在進めている全ての行政事業レビューの結果を,8月末に予定される来年度予算の概算要求に反映すべく,現在作業を行っているところ。
【外務省】
本日,政策評価について踏み込んだご意見をいただいたので,今年度の評価に反映できる部分とそれから来年度以降の大きな評価体系に係る部分とあろうかと思うが整理させていただき,個別のコメントに対してもご相談させていただき調整をさせていただければと思う。