政策評価

平成27年5月27日

1 日時

 平成27年3月19日(木曜日) 14時30分~16時10分

2 場所

 外務省

3 出席者

(有識者)(五十音順)
秋月 謙吾 京都大学大学院 教授
遠藤 乾  北海道大学大学院 教授
神保 謙  慶應義塾大学総合政策学部 准教授
南島 和久 神戸学院大学法学部 准教授
福田 耕治 早稲田大学政治経済学術院 教授
山田 治徳 早稲田大学政治経済学術院 教授
(外務省)
垂大臣官房総務課長兼考査・政策評価官,村岡ODA評価室長,濱本総合外交政策局総務課主任外交調整官,杉浦総合外交政策局政策企画室長,河邉考査・政策評価官室首席事務官,羽田考査・政策評価官室課長補佐,鈴木会計課総務室課長補佐ほか

4 議題

  • (1)政策評価制度の改正点
  • (2)平成27年度外務省政策評価実施計画
  • (3)その他

5 発言内容

(1)政策評価制度の改正点

【外務省】
 本日は,今後,平成27年度政策評価を開始するに当たり,当省としての実施要領等をご説明し,それに対してご意見・アドバイスをいただきたい。
 議題のとおり,政策評価制度の改正点,当省としての考え方,27年度の具体的な政策評価の実施計画や要領について説明する。

【外務省】
 政策評価をめぐっては,ここ数年の間に目標管理型の政策評価の導入,政策評価と行政事業レビューとの連携強化,政策評価の「標準化」及び「重点化」の導入等様々な制度変更が行われている。当省としても,これに対応して制度の改善を進めているが,外交政策の評価への適用において難しい点も多いと感じている。
 特に,目標管理型の政策評価や目標等の定量化を進める中で,外交政策の特性を踏まえ,当省としてどのような問題意識をもって対応しているか及び直面している難しさについてご説明させて頂く。
 1点目は,関係国との交渉等を通じて行う外交政策の成果は,関係国の方針変更等の外部要因に左右されることが多く,あらかじめ設定した目標の達成状況で施策の進捗を評価する手法の適用に限界があることである。外部要因に左右されやすい当省の施策の特性については,容易にご理解いただけるものと思うが,このような特性にかんがみ,当省の政策評価では,外部要因への対応策の効果を勘案した評価が行えるようにしている。すなわち,目標設定時の状況が外部要因により大幅に変化し,当初立てた目標の達成が困難となった場合も,この外部要因への新たな対応策の効果が大きかった場合にはこれを勘案した評価を行うことを可能としている。他方,こうした外部要因による説明を安易に行うと,評価の客観性の向上のための目標管理型評価の効果が薄れるとの問題があるのも承知しているところである。
 2点目は,複雑な要素が絡む外交政策では,数値で効果を測る定量的な評価はなじみにくいとの点である。要人往来数,二国間会談数等の定量的な指標を設けているが,こうした指標は外交政策の進捗の一側面しか示さないものが多い。このため,当省の政策評価においては,定性的な測定指標による評価が中心となっている。他方,定性的な指標による評価の欠点は,実施状況の客観的な測定が困難である点であり,この点を補うため,達成できたか否かを事後に測定しやすい具体的な目標の設定に努めている。なお,外交政策においては,交渉における秘密保全等の必要もあり,具体的な目標の設定に困難を伴う場合も少なくない。
 外交政策の特性による当省の政策評価の特徴は,主にこれら2点に絞られると考えられるが,より客観的な評価に向けた工夫につき助言を得られれば幸いである。
 また,26年度より,当省でも目標の達成度合いを表す評語を各府省共通の5区分に統一する「標準化」と,評価の実施周期を,基本的に2年に1度とし,各種要因分析等を一層行うようにする「重点化」の2つを進めることとしたことはご承知のとおりである。制度変更により,外交政策の特性への対応を一層精緻なものとする必要性が高まっている。

(2)平成27年度外務省政策評価実施計画(案)

【外務省】
 「平成27年度外務省政策評価実施計画(案)」に基づき,27年度の評価対象は,基本目標I「地域別外交」,基本目標IV「領事」,基本目標V「外交実施体制」及び基本目標VII「分担金・拠出金」に属する施策となる。評価方法は,26年度に作成した事前分析表で設定した目標に対しての達成度を評価するもので,基本的に26年度と変更はない。
 26年度は重点化導入の初年度のため過去1年分だけを評価したが,27年度は初めて2年度分の評価を実施する点が新しい点である。2年度分の評価には難しい点があるが,後ほど説明するとおり,試行的に基準を作り,それに基づき評価を実施する予定。

 「評価書の構成」につき説明する。
 目標管理型の政策評価の実施に関するガイドラインで示された基本形に基づいているが,なるべく見やすく分かりやすくする観点や外交の特性を踏まえたものとしている。
 各施策全体を総括するページの重要な項目は「評価結果」欄であり,ここの「各行政機関共通区分」欄に,5区分の評語を記入し,その下に評語の背景となる各個別分野の各測定指標の評価をバックデータ的に列挙する予定。
 個別分野のページでは,まず「施策の分析」欄に特に有効だった取組につき,その要因分析を記入し,さらに,うまくいかなかった取組についても,その要因分析の記入を検討してもらう。外部要因の影響もここで説明することを考えている。これらの分析を踏まえて「次期目標等への反映の方向性」欄に,27年度の目標にどのように反映させていくのかを記入する。

 施策全体の目標達成度合いの判定基準,手順について説明する。
 2年度分の評価は,1年度分ごとに年度目標の達成度を判定し,それらを同等の重みで組み合わせて2年度分の評価を行うとの考え方に基づいて行うこととした。(判定の手順等につき具体的に説明。)

 各年度目標の達成状況の判定の際の留意事項としては,重要な取組についてその重要性を勘案した測定ができるように,重要性が高いと思われる測定指標については加重平均的な判定を行うことを可としている。
 また,関係国の政策変更や自然災害,治安の急激な悪化等の外部要因の影響があった場合,それに応じて打った対応策が効果的だったのであれば,必ずしも当初の目的が達成できていなかったとしても対応策によってある程度の成果が得られたことを勘案した評価をすることとしている。但し,この場合には,判定結果の背景となる外部要因の影響やその対応策について,「施策の分析」欄で説明することとしている。
 また,年度目標にはなっていないが,施策の進捗を後退させるような事態が起きた場合は,施策全体を進める上での影響の大きさを考えて,こうした事態の発生を防ぐことができなかったことを勘案した判定を行うことを考えている。
 27年度評価作業の過程で新たな問題点等が出てくると想定しており,今回,試行的に実施した上で,先生方からのアドバイス等も踏まえて,改善していくことを考えている。
 2年度分の評価をどのように実施していくのが適当なのか,小さな測定指標の年度目標達成状況を積み上げて,全体の施策の目標達成度合いを判定することが果たして妥当なのか等についても,アドバイスいただければ幸甚である。また,国際政治の観点から,様々の外部要因が外務省の政策評価に与える影響をどのように考え,どのように評価に反映させればよいのかについてもご意見等あればいただきたい。

【有識者】
 冒頭にご説明頂いた外交政策の評価が難しいという点は非常に大事なことと思うが,ご指摘の点以外にも,外交政策の効果の説明しにくさはいくつかあると思う。
 先ほど発言のあった,細かい評価を積み上げて大きな評価につなげることができるのかという点も絡んでくると思う。つまり個別の事業レベルあるいは取組がうまくいった,いってないという評価と,マクロで見たときに,ある施策が外交上,有益であったか有益でなかったかという判断は異なると思う。直結するものもあるかもしれないが,違う視点で見なければならないものもある。
 もう1点,施策や取組の重要性に関して難しいのは,外交は相手があるので,どの施策や取組が重要か,あるいは効果があるかないかということを表明することが,場合によっては適当でない場合もあり得ると思う。
 また,政策評価では有効性を問われるので,有効性が説明しにくい理由はより丁寧に説明した方がいいとの印象を受けた。以上,コメントである。

【外務省】
 1点目のご指摘はそのとおりである。本来は小さな指標の評価の積み上げと,マクロ的な視点からの評価を組み合わせることが必要であると思う。ただ,マクロの視点からの評価は難しく,基準も抽象的なものになる。今回は初の2年度分の評価のため,判定基準をなるべく分かりやすくするとの観点から,このような基準を策定し試行的に判定を行うこととした。今回の作業過程で,やはりもう少しマクロの視点が必要との考えも生じてくるかもしれず,いただいたコメントも意識しながらやっていきたいと思う。

【有識者】
 補足させて頂きたい。基準等の設定は提示されたもので良いと思うが,先ほど冒頭で説明頂いた外交政策評価の難しさの論点に加えて頂けたらとの趣旨である。

【外務省】
 政策評価で最も重要なのは,効果的かつ効率的な行政のため,前年度の実績を測定し,その分析を行い,次年度の施策の目標や達成手段に反映していくPDCAサイクルによる見直しであると考えている。あらかじめ設定した目標の達成状況という有効性の部分を取り上げてわかりやすく提示する5区分の判定は,国民への説明責任の徹底のための重要な工夫として実施していくが,その判定が全てではなく,PDCAサイクルによる施策の見直しが最も重要であることを省内でも周知している。

【有識者】
 ODA評価では,アカウンタビリティとラーニングが評価の目的であると言われる。私が申し上げたのは,アカウンタビリティの属性の話で,今のコメントはラーニングの属性の話だと思う。その2つは高い次元で両立することが望ましいが,まずはアカウンタビリティの観点から,もう少し説明するのが望ましいとの趣旨。

【有識者】
 質問がいくつかある。ジャパン・ハウス等世間でも注目されている日本の対外的PRのための施策にかなり予算がついたということだが,外務省の政策評価において新規施策・事業はどのように扱われるのか。
 自治体等では,施策か事務事業か,新規事業か継続事業か終了事業かによってカテゴリー分けし,評価方法,フォーマットが異なっている。
 もう一つは基本的なことであるが,2年度,あるいは複数年度評価をするのは総務省からの要請か。

【外務省】
 当省では,特に新規事業,継続事業,終了事業を分けておらず,一律,当省の施策や事業として評価している。具体的には,例えば27年度開始の新規事業の場合,27年度事前分析表の年度目標に,新規事業の初年度としての目標を記載し,評価をしていくことになる。

【有識者】
 具体的には,政策評価書の測定指標等の欄で,前年度,前々年度が空欄になっているのが新規事業ということか。

【外務省】
 予算上の制約等もあり,新たな測定指標を立てるほどの新規事業はそれほどないが,そのような事業がある場合,27年度から指標を設定して評価することとなる。

【外務省】
 補足だが,新しい予算事業には新しい「行政事業レビュー事業」が作られ,政策評価上は,事前分析表の「達成手段」欄に,その事業と対応する新たな達成手段として記載することになる。この新たな達成手段と測定指標は紐付けされているため,その達成目標は既存又は新たな測定指標に記載されることとなる。

【外務省】
 「重点化」は総務省からの要請である。基本計画期間内に一度は評価を行うとの指針で,例えば5年に1度でも良いのだが,当省では検討の結果,施策をめぐる状況が変化しやすい外交政策の場合,3年に1度だと少し長いため,基本的に2年に1度の評価とした。

【有識者】
 次年度にすぐ役立てるのは無理なので,中長期的なサジェスチョンとして述べるが,自治体でも中央省庁でも同じだと思うが,細かくブレイクダウンして,それに評価や指標を貼り付けて評価する方法の欠点は,「木を見て森を見ず」になる点は皆さんご指摘のとおり。ではミクロを積み上げてマクロへどうつなげていくかというなかで,具体的に何がマクロなのかは,おそらく大きく分けて2つあると思う。
 1つは,ある外交目標を設定した場合,その目標設定自体が正しいのか。目標設定自体が若干でもずれていたら,達成できたとしても成功したとは言えない。大きな目標は,極論すると,国会,政府与党,官邸,世論等の全体の中で決めることでいいのではないかと考える。このようにトータルで組んだ目標の設定が正しいのかという問題もあるが,こうした全体のことを「森」という考え方があると思う。
 もう1つ,少し視点が異なるが,部局毎の施策の評価では,その部局全体のあり方や哲学,あるいは広く人事のあり方等も含むものとなると思う。評価の観点の角度をもう少し変えて,外務省全体のあり方や外交官の仕事の仕方の評価も,将来必要になってくるのではないかと考えている。このためには,発想を変えて違う見方をする必要がある。1つのあり得る方法は,他省庁からの在外公館出向経験者の意見を聴取してはどうか。外務省に出向していた知人は,自省の話をするよりも,他省庁の話をする方が的確な指摘をしている。
 外務省はあらゆる省庁の人と,いろいろな意味である種タッグを組んで,時にはけんかをして,仕事をされているわけだが,そういう方の知見を,組織全体を見るときの一つの視点として生かすということは考えられないか思う。これは当然中長期的な話で次年度の話ではない。

【外務省】
 中長期的なご示唆に感謝。我々は外交の評価は容易ではなく,定量的な評価が難しいと言っているが,ご提案のとおり,例えば他省庁からの出向者に評価してもらう等柔軟な発想もあるかもしれない。
 他方,総務省主導による各省庁共通の制度の下,当省だけ全く違う方法で評価を実施することは,正直申し上げて難しいところはあるが,柔軟な発想で考えてみるという先生のご提案は非常に参考になった。

【有識者】
 日本の場合,ヨーロッパ諸国と違い,省庁間のいわゆる「渡り」はないので,今発言があったような行政管理レベルの評価,例えば人事のあり方等について比較することができない。行政管理レベルで,省庁間にある程度効率性やPDCAサイクルを回していく上で必要とされる共通部分があるかもしれない。あるいは外交政策にかかわる官庁の場合は,それは別途の評価基準を設けるべきだという考え方もあるが,そうすると,例えば日本と,フランスやイギリス,政策評価を日本と同じ2001年から制度化しているEUの外交政策の評価のあり方を国際比較して考えてみる,また,他の公共政策分野との違いの有無等も,総務省レベルで検討しないといけないのではないかと以前から考えている。外交政策レベルの評価と行政管理レベルの評価をどのようにバランスをとって評価書に落としていくのかということも考えないといけない。
 また,このアドバイザリー・グループでも以前から,外交政策は単年度評価ではなく,もう少し長期的に見るべきという意見が非常に多く,2年,3年,5年,場合によっては10年というタイムスパンの中で,それぞれの時点で評価することが必要ではないかとの意見が出されてきた。今回2年度分の評価の試みを行うのは評価したい。今後,さらに3年にするのか5年にするのかを含めて,長期的な評価を実施してみるのもおもしろいと思う。
 他の省庁で長期的な評価を実施する省庁が増えてくるのかどうかも,政策評価の観点から非常に興味がある。今後の方針として,外務省はどう考えているのか。

【外務省】
 当省としては,先ほど申したように,「重点化」導入時に種々検討の結果,2年度の評価とした。毎年度,年度目標を設定し,その達成状況を複数年分積み上げる方法と,先生のおっしゃる数年間のスパンの評価方法は少し異なるものと思われる。
 今後制度が変わり,目標も,例えば3年間のスパンで長めに立てて評価もその期間分まとめて行うことになれば,改めて検討する必要があると考える。とりあえずは,現行の評価制度の下,単年度の目標の達成状況を2年度分積み上げる方法で実施していきたい。

【外務省】
 目標の立て方にもよるが,1年間で外交政策の成果が出るのかという問題意識もある。当省も政府の一員として様々な将来的課題に取り組み,評価が求められているが,例えば,27年度から取り組む海外情報発信の強化も効果が上がるのはもしかすると10年後,20年後かもしれないし,その間,何をしているのかとご批判を受けるかもしれない。なかなか難しい点があるが,基本的には単年度予算制度の下,年度ごとに目標を立てて予算を使っていくという前提がある。

【有識者】
 冒頭の外務省からの発言に関して,政策評価法ができて13年,その後制度改革,主に抜本的な機能強化として,規制の影響分析や租税特別措置に関する政策評価が導入され,実効性の確保のための標準様式の導入,行政事業レビューとの連携,「標準化」,「重点化」が行われてきた。このなかで取り残されてきたのは政策評価法1条及び3条の「客観的かつ厳格な政策評価の実施」である。
 制度的には客観性担保評価はあるが13年間大きな見直しは行われておらず,基本的には各省にそれぞれ対応が任されていると考えている。冒頭に言及された客観性とは何かと考えると,全て網羅しているかどうか心許ないが,まずは,定性的であれ定量的であれ指標が目標を適切に反映したものとなっているかどうか,2つ目は,指標に基づいてきちんと評価が行われているか,3つ目は,良いエビデンスも悪いエビデンスも公平に評価しているかである。
 今後の評価を考えると,より重要なのは3つ目だと思う。外務省の政策評価に携わらせて頂いて,外務省だけに限ったことではないが,良いエビデンスのみを取り上げて評価しているのが気になる。先ほどアカウンタビリティという話もあったが,実効性の評価を分かりやすく説明する,その先にあるのは,国民に対して納得してもらう,これがいわば客観性で,そうすると,やはり良いエビデンスも悪いエビデンスも公平に評価しているかが,特に重要になってくる。達成状況の判定の際,そもそも取り上げた指標が良いエビデンスのものだけでなく,客観的かという点の確認が重要な鍵になってくるのではないかと思う。
 悪いことは出したくないというのはあろうかと思うが,まさに客観性,表現を変えると第三者性と言われ,第三者的な立場で見て納得できる視点からエビデンスを出せるかという点にかかってくると考える。以上コメントである。

【外務省】
 ご指摘のとおり,施策担当課は主に良い面を記載しがちであり,うまくいかなかった点をどう取り上げていくかが課題である。先ほどもご説明したが,各測定指標で目標を達成できなかった場合は,その原因を分析するようにしている。
 目標の達成水準の設定については,定量指標であれば過去の実績値の平均値を,定性指標についても過去の実績と遜色ない施策の進捗,過去の平均的な施策の進捗を目安としており,目標達成に至らない場合が相当数出る水準を目標の設定水準とすることに努めている。他方,施策をめぐる状況が非常に悪化した場合には,その最新状況を勘案した目標を立てることになる。

【有識者】
 法3条の「厳格な実施」とは,定量的な指標をできるだけ使った合理的な手法。外務省の場合は必ずしも定量的手法はうまくいかない,定性的にもなかなか難しい。そうすると,やはり良いエビデンスだけでなく悪いエビデンスも含めて提示していくことが大切だと思う。政策評価はとにかくPDCAサイクルを回して,これを国民に示すことであると総務省も言っていると思う。各省庁の自己改善能力,マネジメント能力をいかに浸透させるのかである。政策評価担当課の論理と原課の論理はあるが,アドバイス,コメントとして申し上げる。

【外務省】

 各施策担当課には政策評価は評価が目的ではなくPDCAを回すことが必要であり,うまくいかなかったことについても率直に反省し分析し,どのように次につなげていくかを提示するものであると説明している。これは,通常業務の中で当然行っているプロセスであるが,評価書にはうまく反映できていない面もあると思う。良い面悪い面を率直に提示し,PDCAを回していく重要性につき引き続き省内で浸透させていきたい。

【有識者】
 いくつか重複はあると思うが,コメントを申し上げる。
 1点目は,政策評価の仕組みそのものに関わることだが,前回の会合で申し上げた,実際に目標を立てて政策が実施され,それを評価する時に,施策の評価はあるが,その前提となる目標そのものが果たして適切であったのかどうかの評価はない。目標の中にも,「交流の強化」のように簡単に達成できる目標から,「安保理改革を進める」といった非常に難しい目標や「サミットの開催」という,何年かに一度めぐってくるからこそできるもの等いくつか目標の性質に大きな違いがあるのは間違いない。スケートでもスキージャンプでも,難度の高いものを達成できれば高く評価され,難度の低いものをいくらできてもあまり評価されない。定性的目標の性質の置き方は非常に大事だと思う。加重平均という仕組みは大変大事で,他方,指摘があったようにそもそも加重平均自体を示すことが外交的に適切なのかというのも非常に重要な点である。定性的な分析による評価基準は,不断の見直しをしながら評価を定めていくことが大変重要と考える。
 2点目は,今回2年度分だが,年度初めに目標を立てて年度終了後に評価をするなかで,ルーティン的に積み上げ型でやっていく目標のほかに,テロへの対処,中国でデモが起きてそれにどう対応するかとかいうような事態対処型の政策が必ずあるわけで,これは外務省の業務としては決定的に重要な業務だと思う。したがって,目標として必ずしも当てはまらないような項目,年度当初に想定し得ないことが生じたときの評価項目をどう評価していくかという仕組みを考えた方がよいと思う。実際本当にいい仕事をしたのに評価書に書かれないとか,実際にはとてつもなく大きな失点をしたにもかかわらず評価の対象にならないというのも,外務省の仕事を国民に示すという点においては必ずしも良くないことではないかと考える。
 3点目は,26年度の政策評価の経験から,外交政策は相手があるということに関係するが,見えないことがたくさんあると感じる。例えば外務大臣や総理が多くの提案をしたからすばらしいと評価するのか,それが中身を伴って5年後,10年後に結実していくようなしっかりとした調整や投資がなされている提案なのかというのも評価に大きく関わってくる,まさに外部有識者がそれを見るということもあるのだろうと思うが,そういうことも含めて外交の評価は難しい,その難しさを自由記述の中でどう表現するのかを重視する必要があると思う。

【外務省】
 目標設定が非常に重要である点はご指摘のとおり。但し,施策担当課は実際には高い目標をもっていても,外交上「秘」である等の理由でそれを表に出すことが難しい場合も多い。
 2点目の事態対処型についてだが,可能な限り,事前の目標の対象ではなくても事後に評価の対象とするようにしている。1年に1度あるいは2年に1度の評価のため,なかなかすぐには表れないが,例えば目標設定後に発生した在アルジェリア邦人に対するテロ事件に関しては,事件を受け,外交政策の3本柱を新たに立て,具体的な取組をここまで実現したということを評価の時点で記述している。

(3)その他

【外務省】
 行政事業レビューの関係につき簡単に紹介する。
 27年度の行政事業レビューについては,まだプロセスは始まっておらず,通常のスケジュールでいくと,3月末頃に行革推進会議が開催され,そこで実施要領が決まり,それに基づいて各省で取組を進めていくということになる。通常,行政事業レビューは政策評価の一段下にある個々の事業について行うものなので,年度末に各担当課が評価をして,それを翌年度の予算要求につなげていくべく,5月~7月に作業をして概算要求前までに公表することになっている。例年6月に3件程度選定し,外部有識者による公開プロセスを行っている。今年度も同様のプロセスで進んでいくのではないかと考えている。
 昨年の秋頃からの動きを簡単にご紹介すると,行革推進事務局主催「秋のレビュー」があり,当省からは国際機関の拠出金と分担金の4事業が選定された。とりまとめ結果は既に公表されているが,今後は,もっと外務省において国際機関の分担金・拠出金等について多面的に評価すべきなのではないかという指摘がされている。このような指摘もあり,かつ,以前から個々の行政事業レビューシートの書きぶりについて定量的な指標が強く求められてきたこともあり,任意拠出金について指標の立て方を再度検証し,極力定量的な指標を設けることとした。改訂した指標については,既に外務省ホームページで公表を行っている。
 また,27年度に向けては,国際機関の評価について,できる限り透明な形で国民にきちんとPDCAが回せているということを示せるように改善すべく検討を行っている。

【有識者】
 毎回の事業レビューで検討される項目の選定はどのように行われているのか。

【外務省】
 秋のレビューでは,内閣官房の行革推進事務局の方で全て事業選定を行っているので,各省庁で自主的に選んでいるということではない。
 我々が主催する毎年6月の公開レビューでは事業の規模がある程度大きく,また,ある程度継続されている事業で,まだきちんと検証されていない事業をいくつか選んで,通常は公開で検証を行っている。

【外務省】
 本日は,貴重なご意見やご指摘をいただき感謝申し上げる。

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