公邸料理人

令和6年10月10日
ライブビデオで手元を参加者に見せながら寿司の握り方を説明する金崎公邸料理人
日本とジョージアのシェフが共演して作った寿司とヒンカリ。寿司には日本酒、ヒンカリには「チャチャ」を添えて。
マリオットホテルのシェフ(右)に寿司の握り方のこつを伝授する金崎公邸料理人(左)
ヒンカリの作り方を学ぶ金崎公邸料理人

 世界で活躍する公邸料理人のなかでも数少ない女性公邸料理人。そのうちの一人が在ジョージア大使公邸で働いています。今回は金崎優子氏をご紹介します。

 金崎公邸料理人は、2024年1月にジョージアに着任しました。それ以前は、フランスの三つ星ホテルや東京の名店で主にパティシエとして腕を磨いていました。そのフランス料理の腕前はジョージアに駐在するフランス大使館の外交官もうなるほど。様々な調理場で経験を積んできたおかげで、日本料理やイタリア料理にも精通しています。着任直後に開催された天皇誕生日祝賀レセプションでは自身で寿司800貫を握り、ジョージアや各国の賓客から高い評価を得ました。

 なぜこれまでのキャリアと全く違う公邸料理人という道を選んだのか尋ねてみたところ、「何か新しいことに挑戦してみたかったから」だそう。公邸料理は一般的なレストランで振る舞う料理とは異なり、任国政府等の賓客との食交流を通じて、情報収集、人脈形成等を行う外交活動の一つに位置づけられています。別名「食の外交官」と呼ばれています。任国で入手できる限られた食材と調味料を使い、異なる風土で育った人々に「日本」を味わってもらうという重要な役割を果たしているのです。

 近年、ジョージアの食文化は日本でも認知されるようになってきました。例えば、大手チェーン・松屋が提供するジョージアの伝統料理「シュクメルリ」は、一時期日本でもメディアに取り上げられるなど大きな話題となりました。また2013年に日本の和食と一緒にユネスコの無形文化遺産に登録されたジョージアのワイン製法「クヴェヴリ」をはじめ、ジョージアワインを日本で見かけるようになってきました。アジアとヨーロッパの連結点であるジョージアは、食文化をはじめ、様々な文化が交差するユニークな国として多くの旅行者を引きつけています。

 着任後、さまざまな会食、レセプション行事で腕を振るってきた金崎公邸料理人ですが、最近では2024年9月20日に在ジョージア大使館とトビリシ・マリオット共催の「日本食普及および食文化交流」事業に講師として登壇しました。前述した通り、日本の和食とジョージアの「クヴェヴリ」製法は同じ年に無形文化遺産に登録されたという深い縁があります。ジョージアでは近年、日本の寿司をはじめとする日本食のニーズが高まっていることから、トビリシ・マリオットの依頼により、金崎公邸料理人による寿司のデモンストレーションと両国のシェフが共演する食文化交流が実現することとなりました。

 寿司といえば、ウニやマグロ、いくらといった新鮮なネタが浮かびますが、ジョージアで手に入る新鮮なネタは限られています。「料理は素材で決まる」と言われるように、金崎公邸料理人はよい食材探しに妥協を許さず、この日のために数日かけて市内の店舗に足を運び、新鮮なネタ探しに駆け回りました。

 食文化交流はトビリシ市内のマリオットホテルで開催され、外交団をはじめ国際機関の関係者約40人が参加しました。金崎公邸料理人が寿司を、そしてマリオットホテルのシェフがジョージアの伝統料理である「ヒンカリ」を披露しました。金崎公邸料理人が提供した寿司は大西洋産マグロや黒海産スズキなど計6貫。寿司米の握り方をはじめネタの調理法を説明し、家庭でも気軽に作れるこつを伝授しました。そして講師として登壇したマリオットホテルのシェフにも作り方を教え、一緒に寿司を握りました。イベントの後半には、金崎公邸料理人もジョージア人シェフから「ヒンカリ」の作り方を学び、客人にもてなしました。会場にはジョージアの主要メディアや有力メディアも駆けつけ、石塚英樹特命全権大使や金崎公邸料理人にインタビューをして全国放送で流れるなど、関心の高さが伺えました。それぞれの伝統料理を披露し共演したことで、日本とジョージア両国のさらなる友好関係の増進につながりました。レセプションに参加者からは「初めて本場の寿司を食べてこんなに美味しいものなのかと感動した」という声が聞かれ、金崎公邸料理人は「食の外交官」として大活躍しました。

 金崎公邸料理人に今後の抱負を聞いてみたところ、「このジョージアという国で捕れる魚や食材を、いかに日本食に応用できるのか探求していきたい」と意気込みを語ってくれました。今後も金崎公邸料理人のジョージアでの活躍に期待しています。

公邸料理人へ戻る