公邸料理人
公邸料理人の活動紹介
「山国ブータンでの和食紹介」
(在インド大使館 スポット・カドペット公邸料理人)



「世界一幸福な国」として日本でも知名度を上げつつあるブータン。実は、ブータンには日本の大使館が所在せず、駐インド大使がブータン大使も兼任しています。人口約77万人の山国ブータンはとても親日的な国です。ブータンの人々に経済協力や文化交流を通して日本をさらに身近に感じてもらおうと、平松大使は着任から1年で既に4回ブータンを訪問し、第四代国王陛下、第五代国王陛下や首相、外相を始め、様々な要人と対話を重ねるとともに、ブータン国民とも交流を深めています。
さて、2016年は日本とブータンの外交関係樹立30周年の記念すべき年でした。1年を通して両国において様々な展示やスポーツ大会、踊りや音楽を通した交流を行った結果、国民の間での親近感が飛躍的に高まり、双方の国を訪れる旅行客数も大幅に増加するなど、両国の関係を一段と近づけることができました。その締めくくりとして、ブータンの首都・ティンプーにおいて昨年12月末、平松大使夫妻主催のクロージング・レセプションが開催されました。
レセプションでは「ブータンでの和食紹介」という初めての試みを実現するために、平松大使の専属料理人であるスポット・カドペット公邸料理人がブータンまで出張して腕を振るうことになりました。スポットさんは、タイで日本料理の経験を積んだ料理人歴20年以上のベテランですが、未知の国ブータンで食材を探し、ブータン人の嗜好に沿った料理を作るという挑戦を前にして非常に緊張したそうです。まず、スポットさんは現地で調達できる野菜を念入りに調査し、魚やお肉等をインドから持ち込むための調整を行った他、会場ホテルのシェフとも綿密に連絡をとりながら準備を進めました。その結果、当日は、「いつもどおり料理ができる」という万全の状態で臨むことができたと言っています。
近年に至るまで外国との関わりをあまり持たなかったブータンには独自の食文化が根付いています。米を主食とし、山菜を好む点では日本人の嗜好とも近いものがありますが、唐辛子を香辛料としてではなく野菜として大量に食べるなど、大きな違いもあります。和食をどのようにして馴染みのないブータンの人に受け入れてもらえるように調理するか、ということは料理人の腕前にかかっています。
スポットさんの念入りな準備が奏功し、今回の和食紹介という試みはブータン首相や外相をはじめ、レセプションに招待されたブータン国民からも絶賛を浴びる大成功となりました。巻き寿司のデモンストレーションにも注目が集まり、お酒好きで知られるブータン人も日本酒の奥深い味わいに舌鼓を打っていました。
食を通した交流は、お互いの歴史や文化を知り、尊重するための良い機会となります。また、和食をきっかけにして日本ファンとなる人も多く、和食は日本が誇るソフトパワーとして外交の重要なツールとなっています。まだまだ発展途上にある日本とブータンの関係ですが、文化的な結びつきを通して両国民の親近感を向上させ、さらなる人と人との交流につなげていくため、大使館員一同、そしてスポットさんも、隣国インドから日ブータン関係の発展に尽力していきたいと思っています。