グローカル外交ネット
令和7年度 地方連携フォーラム
地方連携推進室
令和8年2月17日、「令和7年度地方連携フォーラム」をウェビナー形式で開催しました。本フォーラムは、地方自治体の国際的取組を支援する目的で、地域レベルの国際交流活動に関する外交政策等や最近の国際情勢等に関する説明を地方自治体の実務担当者等を対象に行うものであり、平成20年度から実施しています。今回は第1部「経済安全保障と外交」、第2部「ハラル・ビジネスの展望と地域経済活性化 地方自治体の取組の視点から」、の二部構成で、それぞれ地方自治体の関心が高いテーマについて、第1部は講師による講演を、第2部は講師による講演及びパネルディスカッションを行いました。
第1部 外交政策等説明会
『経済安全保障と外交』
講師:舟津 龍一 外務省経済局経済安全保障課長
第1部では、昨年8月に新たに設置された外務省経済局経済安全保障課の舟津龍一課長が講演を行いました。
冒頭、国際情勢の複雑化や社会経済構造の変化に伴い、安全保障の「対象」と「手段」の双方向が経済分野に急速に拡大しており、我が国の平和と安全、経済的繁栄を確保するために経済上の措置を講じる「経済安全保障」が喫緊の課題となっていることを説明しました。
次に、日本は、「自律性の向上」「優位性・不可欠性の確保」「国際秩序の維持・強化」という方向性の下で、重要土地等調査法を始めとした国内法制度の整備や特定重要物資の安定供給に取り組んでいることを説明しました。
さらに、国際連携の場においても、G7の結束した対応を主導した取組やG7のみならずOECDなどに連携を広げていく重要性などを紹介しました。
加えて、国際頭脳循環の確立に向けた今後の取組として、在外公館の研究者ネットワーク構築や現地の動向に関する情報収集と共有体制の強化を進めていくことを紹介しました。
最後に、質疑応答の場では、自治体の役割に係る質問に対して、舟津課長から、地方自治体や大学が重要技術の領域で国際連携する際、可能な範囲で経済安全保障上の観点に留意してもらいたい旨示唆がありました。
舟津経済安全保障課長による講演
第2部 有識者による講演会
『ハラル・ビジネスの展望と地域経済活性化 地方自治体の取組の視点から』
講師:佐久間 朋宏 一般社団法人ハラル・ジャパン協会 代表理事
パネリスト:安東 義貴 岡山市産業観光局観光部プロモーション・MICE推進課副主査
パネリスト:西田 光孝 福岡県商工部観光局観光政策課 観光産業係長
パネリスト:島居 里至 アセットフロンティア株式会社 代表取締役CEO
第2部の有識者による講演会では、はじめに、佐久間朋宏 一般社団法人ハラル・ジャパン協会代表理事が「ハラル・ビジネスの展望と地域経済活性化 地方自治体の取組の視点から」をテーマに講演しました。続いて、佐久間代表理事に加え、上記パネリスト3名を交えてパネルディスカッションを行いました。
冒頭の佐久間代表理事による講演では、日本の少子高齢化が進む中、世界人口の約4分の1を占めるムスリム市場は大きな将来性を有することを紹介しつつ、ハラル認証の世界的な統一基準は存在しないことから、基本を学び、ターゲットに合わせて正しく活用することが大切であることを紹介しました。特にインバウンドでは、好まれるメニューの傾向を知ると同時に、自社基準を示して判断してもらうことも重要であることを紹介しました。さらに、ハラル・ビジネスについては、ベジタリアン、オーガニックといった分野も取り入れ、国内外の需要に応じて活用することで、より広い市場を創り出すことができる旨紹介し、こういった取組が地方創生や経済の活性化に繋がることを期待する旨述べました。
続いてのパネルディスカッションでは、岡山市の安東副主査から、ムスリムが安心して店や商品を選択できる独自の基準「ピーチマーク制度」の制定などによって受入体制を整備してきたことや、インフルエンサーによる情報発信や現地プロモーションなどを活用した誘客プロモーションによって、実際に岡山では宿泊者数の増加といった成果が生まれているとの話がありました。また、福岡県の西田係長からは、文化や宗教にかかわらず食の楽しみを提供する「食の多様性対応」を推進するため、飲食店や宿泊施設等を対象にヴィーガン・ムスリム対応の試食体験セミナーの開催、専門家によるメニュー開発個別支援、リーフレットやWEBサイトを通じた情報発信を実施している旨の紹介がありました。また、島居アセットフロンティア株式会社代表取締役CEOからは、ムスリムに向けたプロモーションでは、インフルエンサーなどの活用に加えて、地道な営業努力によりブランドに魅力を感じてもらい、SNSなどを通じて口コミが拡散していくことも重要であるとの指摘がありました。
さらに、第2部終盤における質疑応答の場では、アウトバウンドのプロモーション戦略や、中小企業のハラル対応に係る質問に対し、佐久間講師から、アウトバウンドでは輸出国の想定が大切であり、特にマレーシアなどでは地域ブランドやハラル対応で差別化が必要、また、ハラル認証といっても万能ではなく、国によって様々であるため中小企業としてはターゲットを明確にして相手を正しく学ぶことが大切である等の示唆がありました。第2部の締めくくりとして、佐久間講師は、地方自治体においては、日本がムスリムの国ではないなかで日本でできることは何かを考えること、インバウンドとアウトバウンドの取組を自治体組織の中で連携させていくこと等が重要である旨を強調されました。
佐久間ハラル・ジャパン代表理事による講演
パネリストを交えてのディスカッション
実施後、参加者からは、「経済安全保障において日本が重視していることを知る良い機会になった」「経済安全保障の基本的な概念や国際情勢について理解できていなかった点を整理して理解することができた」、「ムスリム市場の可能性やハラルの意味合いについて、改めて認識、確認できた」「ハラル認証を含めたインバウンド対策について、行政の関与にイメージを持っていなかったが、豚由来の成分が含まれない商品のPRなどから始めてもよいと分かり、取組開始のハードルが下がったと感じた」といった感想が寄せられました。

